まだハンザキは出ません
どうも街に祭りの匂いがしないのだ。早く着き過ぎたせいだろうか。
そういえば、移動にかかりきりだったのでまだ祭りの由来を書いてなかった。「はんざき祭り」って、皆さんいったい何のことやら、だろう。
ハンザキはこのあたりの清冽な川に生息している。昔ある若者が、村人を襲っていたオオハンザキを退治したが、その後、その若者の一家や村人に祟りがあり、ハンザキの霊を鎮めるために祠(鯢大明神)を立てた。その故事にちなんで、毎年この時期に祭りが行われるようになったということじゃ。おしまい。
いったん荷物を預けに宿へ向かった。宿のおかみに「このお祭り、どこから来る人が多いんですか」と訪ねたら、県内からが主で、後は大阪とかかしらねえ、と言っていた。お盆で帰ってくる、この辺の人の親戚とかかしら、とも言っていた。東京から来たと言うと「まあ、がっかりしないでくださいね」とも笑った。さすがに不安が増してきた。
山の中とはいえ、日差しは強い。高い陽に焼かれながら、宿のチェックイン時間まで街を見て回る。はんざき祭りの街だ、何かハンザキにまつわる物を探しに行こう、と自分を鼓舞する。
すっかり「はんざき祭り」のことしか頭になかったが、ここ湯原温泉は「全国露天風呂番付」の西の横綱なのだ。と、観光パンフレットに書いてあった。
事前の調べでは、祭り本番は今日8日だが、前日の7日にも前夜祭があったはずだ。前夜祭は主に子供向けのイベント中心で、ハンザキ色が強いわけではないようだ。祭りの余韻は感じられない。街は通常運転という雰囲気。
それでも、広報カーが街を時折回っていたり、広場には設営中のステージがあったりして、静かな中にもヒタヒタと、ハンザキの影が忍び寄っているように(勝手に)感じられる。
未だ耳慣れない「ハ・ン・ザ・キ」
とはいえ、山車が出るのは18時。今は12時。祭りのヤマ場まではまだまだ時間がある。遠くに行く足はない。高い陽に焼かれつつ、歩いて街を見て回るか。はんざき祭りの街だ、何かハンザキにまつわる物を探しに行こう。って前にも書いた。暑さで頭がループ中。
一見どこにでもありそうな街角に「はんざき」の姿が、文字が躍るのを見るたび、きゅうーっと愛しいのと同時にどうにも奇妙な気分にさせられる。
ところで、温泉施設の土産物屋も覗いてみたが、意外にもハンザキ関係のグッズはほとんど見あたらなかった。ぬいぐるみと手ぬぐいくらいか。あるもの全部買うくらいの覚悟でいたが、ちょっと拍子抜け。街にもハンザキの姿は、期待したほどは見当たらなかった。
が、兵庫のNPO法人「日本ハンザキ研究所」が出張していて、詳しくハンザキの生態について、町行く人に熱心に説明していたのはよかった。祭り自体は、それほどハンザキそのものの生態についてはクローズアップしていない印象である。
いずれこちらにも取材させていただきたい、それはいいとして、なかなかハンザキ本人が出てきませんね。でも次のページでやっと出ますよ。本物も作り物も。