看板とはいえ、奈良でハブを探す日がくるとは思いもよらなかった。
奄美・沖縄のハブもルーツは「食む」「這う」などヘビと同じくしている説がある。なんだかんだ、ヘビとしての特性を見て、感じて、人はその名を呼ぶのだな。
ゆるやかな傾斜を登りながら出現する看板を総チェックする勢いで見て、見まくる。
芝生をすべらないように、猿もすべりませんようにと歩き回って古墳の近く、散策路と山の境のようなうっそうとした場所に、マムシ注意看板を発見した。
残念ながらハブではなかったが、これはこれであまり見かけない表記なのでレアポケモンをゲットした感じになってありがたい。「等」はなんだろう。イノシシとかかな。
けっこう探し回ったがこれ以上のものは見つからなかった。しかし、迷い込んだ事務所で尋ねてみると興味深い情報が得られた。
「ああ、入口のところに前ありましたね。ハブに注意ってなっていたけどもうそうは言わないっていうんでマムシに変えたんですよ。あまり気にしたことないからよくわからないけど、今はその上から別の看板つけてるんじゃないかな」
上から!まったく気付かなかったがそれなら元の看板が見られるんじゃないか。入口に戻りふたたびペット禁止看板を見るとたしかに裏側に板が見える。
上半分がぱっつりと切られ「〜に注意」の部分だけとなった看板が今の看板の下に存在していた。
ハブをマムシに替える際に上半分をカットして貼り替えたのだろうか?それはそれで手間な気もするが詳細はわからない。
貴重なハブマム注が、たしかにここにあったという時層として末長く鎮座してもらいたい(二礼二拍一礼)。
さらに駐車場付近、おそらく公園の敷地との境目と思われるが、そこには現役バリバリの方言マム注が掲げられていた。
マムシは人に咬みつくから「ハミ(食み)」といい、ここからハビやハブと呼ばれるようになっていったという説がある。
※「ハミ(食み)」ではなく、地を「這う」から来ているという説などもあり、変遷も多様なのであくまで一説です。
冒頭の西さんのコメントにもあるように、和歌山ではマムシのことを「ハビ」と言っていたし、「語源十二支物語」(山中襄太 大修館書店 1974年)によれば奈良県でもマムシのことをハビと呼んでいたとある。
とはいえ、「ハブ」が替えられたように今では「マムシ」のほうが一般的だろうし、それでもこのへんでは「ハビ」のほうがまだ伝わりやすい人もいるんじゃねえかなーとこのような併記型になったのだろうか。
同書によれば京都や奈良ではヘビもハビとも呼ばれたりしていたらしいので「マムシとかヘビがおりますよ」みたいなことかもしれない。
いずれにせよ、ハブにハビと超ハードコアーなご当地性を放つ最高のマム注を採取した。達成感のあまり、鹿とせんと君が見たくなった。
看板とはいえ、奈良でハブを探す日がくるとは思いもよらなかった。
奄美・沖縄のハブもルーツは「食む」「這う」などヘビと同じくしている説がある。なんだかんだ、ヘビとしての特性を見て、感じて、人はその名を呼ぶのだな。
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