盛り合わせたい
味に甲乙つけがたい。食べたいときの気分で好きなものを食べて損はないけど、敢えていえば味の素の餃子は安いし簡単で無難できるし驚いた。
また予想外の発見としては、様々な餃子を盛り合わせたことで気分が高まったということだ。
種類が集まれば相当だ。味覚に自信があるわけではないが、かなり豪華に見えてきたのでよかった。
大人が飲み会に行くと、チーズ盛り合わせ、串7点盛り、刺身5点盛りを頼みがち。餃子の盛り合わせもまたしかり。いろんなものを盛り合わせると心が満たされそうだ。
たまに食べたくなる餃子。なんとなく買ったり外で食べたりする餃子。
餃子と言ってもいろいろある。スーパーには冷凍餃子が売られているし、餃子のチェーン店もあるし、餃子で町おこしする街もある。
餃子といえばそもそもは中国だが、他の国でも餃子が味や形を変え食べられている。外国人向けの食材が買えるようになり、中国以外の餃子も入手できるようになった。様々な餃子を選び放題できる時代がいつのまにかやってきていた。
だけどこれまで各国の餃子を比べたことがなかった。何を選べばいのかよくわかってない。ふと思いついて、餃子を比べることにした。
比べるには餃子を買い揃えなければいけない。
どうせなら尖ったものを買いたいと思い、まずは地元の中国人御用達の中華食材屋へ。本国中国の商店さながらの中華食材屋に入ると、普段はスーパーで全く見ないような漢字だらけの商品の海の中、冷凍食品コーナーで何種類もの水餃子を見つけた。
水餃子だけで焼き餃子はない。しかし中身が違ったり、メーカーが違ったり、なかなか豊富だ。そして概ね1kgパッケージで売られていてダイナミックだ。
次に向かったのは食材販売も兼ねるネパール食堂。
近年いろんなところで見かけるようになり、最近はテイクアウトもしやすくなったネパール食堂だが、中にはネパールの食材の販売も兼ねているところがあるのだ。
入るとインド料理でおなじみの香辛料の臭いが鼻につく。ちょっと東アジアっぽいが南アジアっぽくもあるネパール人のおじさんにモモを買いたいと日本語でいうと「冷凍で買う?一個から買えるよ」と答えてくれた。
「でも専用の蒸し器が必要よ」と金属製の小籠包の籠みたいなのを指差す。ネパールのモモは実は製法にこだわりがあということが伝わった。感謝を伝え、バラ売りのモモを何個か購入した。
続いてロシア圏の餃子「ペリメニ」が欲しくなった。
ロシア商店は中国商店やネパール商店のようにどこでもあるわけではなく、銀座にある「赤の広場」が数少ない店らしい。
そこで赤の広場に行ってみると…こじんまりした店内の外で入場制限ができるほどの人気となっていた。
ロシアのお土産屋のように外からはマトリョーシカがずらりと並ぶが、中にはチョコやお茶やお菓子などいろいろ売られている。
そしてその先には冷凍庫の中にポツンと、ペリメニらしきプチ餃子がつまった、何も書かれていない食材を発見!
これペリメニですか?ときくと、はいそうですよ、とロシア人であろう店員は片言の日本語で応えてくれた。
製法についてはカタコトで「ゆでればだいじょぶです」といったので、なんとかなるだろう。ゲットだ。ハラショー!
ペリメニを無事ゲットし、赤の広場から出て考えた。そうだ、ここは銀座だ。都道府県のアンテナショップがいくつもあるから、どこかの店で餃子が売られているに違いない。
そこで銀座をはじめとしたアンテナショップをめぐり、大阪の豚まんで有名な「551蓬莱」の餃子と、栃木の宇都宮餃子「白の焼き餃子」と、茨城の「凄汁餃子」という見るからに巨大な餃子をゲット。いずれも焼き餃子だ。
そして近所のスーパーで売上ナンバー1と書かれた味の素の冷凍餃子(焼き餃子)を購入。
売上ナンバー1ということは、日本全国どこでも手に入りやすく、食べられているに違いない。こんなのうちの県にないぞ、という人がいたらむしろ知りたい。でもタイとか中国の県とかはなしだ。
役者は揃った。カバンは餃子でパンパンになった。
こんなに沢山の餃子が冷蔵庫の冷凍室に入るわけがない、一度に全部食べるのはしんどいな…と構えていたが、保冷対策されたパッケージから出せばかなりコンパクトになった。
餃子は恐れずにどんどん買っていって大丈夫だ。
作ってみる。中国の水餃子とロシアのペリメニはいずれも茹でる。これは料理が得意でない人でも、ただ鍋に入った熱湯でゆでて掬うだけでいいのでノーリスクだ。
ネパールのモモは蒸すのだがこれがなかなか難しい。
お湯の入った鍋にモモを入れたお茶碗を入れ、蓋をして火にかけるという蒸し方をしたが、皮がくっついてしまったりこわれたりするのだ。
脳内で「ほらダメでしょ?」とネパールのおじさんに高めの声でたしなめられてしまった。
日本の餃子はいずれも焼き餃子だ。
皮が鍋にはりつかないようにちょっと油を引いてフライパンに並べ、冷凍のまま焼き付けて熱湯を注ぐ。注ぐとふわっと水蒸気がフライパンから湧き上がり、さっと蓋をしめる。さくっと焦げるので、時間をかけすぎず焼けたのを確認して取り出す、そんな感じだ。
「そんな感じだ」というのは、振り返ると人生であまり焼き餃子を繰り返し焼いたことがなかったからである。最初は焦がしてしまった。
そんな中で異彩を放ったのは「ただ焼くだけ」と訴える味の素の焼き餃子で、焼き餃子ながら失敗することなくそこそこにいい感じのができてしまった。恐るべし。
また茨城の凄汁餃子は焼きすぎても焦げてしまうが、かといって焼かないと火が通ってなくて冷たいままなのでちょっと難しかった。
さてせっかく様々な餃子を作ったんだ。雰囲気を高めるために回転テーブルにおきたい欲がなぜか高まった。しかし回転テーブルがない。そこでオフィスチェアに置いてみた。
回転テーブルのようにまわして餃子を取って、感覚的本格中華料理屋を味わった。背もたれの一面からは全くとれないが、気持ちは満足した。
餃子の宴だ。
大きさでいうと、ペリメニ、モモ、味の素、それから蓬莱と宇都宮が僅差で、凄汁餃子が圧倒的な大きさを見せつけた。味の素の餃子がちょうどきっぷ大の大きさでつまりは外国勢はそれよりも小さい。いっぽう凄汁餃子はパソコンのマウス大はある。握れるサイズだ。
ロシアのペリメニはサワークリームやハーブをつけて食べると書いてあるが、そのまま食べてみた。皮は厚みがあり食べがいがある。一番皮を食べてる感じが強い。肉は少ないけど、でも肉に説得力がある
ネパールのモモはネパールなカレー味だからこの中でも最も尖ってる。醤油など何もつけずとも食べた瞬間ネパール感が口に広がる。
中国の水餃子はよく量産されてるだけあって形も整って食感も安定している。醤油などのたれにもあい、しかも茹でるだけなのでズボラにも魅力的だ。ペリメニと水餃子は中身が似ている。
味の素の餃子は、とにかく初心者でも作りやすくてそこそこいいものができるのが魅力。食感は焼餃子ながら、水餃子のような皮のモチモチ感もある。
いっぽう蓬莱と宇都宮はやや作りにくいが、うまくつくってタレをつければ店で食べる焼餃子になる。凄汁餃子は大きさとパワーで圧倒だ。大きさは正義だ。
原材料を見ると、味の素の餃子の中身は、キャベツ、たまねぎ、にら、にんじん、鶏肉、豚肉。宇都宮と蓬莱の中身は加えてしょうがと、なるほど原材料での差別化は難しい。
餃子初心者のぼくとしては、水餃子のようなプリプリめの焼き餃子なら味の素などの冷凍を選び、甲乙つけがたい本格ご当地焼餃子はタレで選び、インパクトで見せるなら凄汁餃子を選ぶ。
また外国の餃子は蒸してカレー味となるモモにするか、味は似ているけどズボラに茹でる水餃子やペリメニを選ぶ・・・そんな感じで違いがつかめた。
ただつけあわせるタレも注意したい。たれでも差別化されているので、餃子をいくつか買ってタレもいくつかを用意すると餃子ライフが一層楽しくなりそうだ。
味に甲乙つけがたい。食べたいときの気分で好きなものを食べて損はないけど、敢えていえば味の素の餃子は安いし簡単で無難できるし驚いた。
また予想外の発見としては、様々な餃子を盛り合わせたことで気分が高まったということだ。
種類が集まれば相当だ。味覚に自信があるわけではないが、かなり豪華に見えてきたのでよかった。
大人が飲み会に行くと、チーズ盛り合わせ、串7点盛り、刺身5点盛りを頼みがち。餃子の盛り合わせもまたしかり。いろんなものを盛り合わせると心が満たされそうだ。
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