健康の持ち腐れ
僕は激怒した。必ず、尿を提出しなければならぬと決意した。
すっかり個人的な話で申し訳ないが、今回はそういうことなのでお付き合い願いたい。ミッションはこれを届けることである。
普通なら検尿容器は、健康診断で問診をしたりレントゲンを撮ったりするついでに提出すればいいものなのだが、僕はそれを忘れてしまった。
後日の検尿容器の提出期間中には、学校には特別な用事はないので、僕はこれを提出するためだけに学校に出向かなければならない。たったそれだけのためにわざわざ学校まで足を運ぶのは、大変面倒である。
かと言って、やらないでいると健康診断書が発行されない。まさに人質をとられた状態だ。
そもそも、多少慢性的な疲労感はあるものの、僕はだいたい健康である。尿というものさしで僕を測ってほしくない。むしろこんなことで僕を疲れさせないでほしい。
そんなことを考えて検尿の提出からエスケープしようとしたのだが、
「そうやって君はいつも言い訳ばかりだ。何もしてないのに『もう疲れた』って、いつ疲れたんだ。君には疲れる権利がないんだよ」
という内なる邪知暴虐の王の声がしたので、ちゃんと届けることにした。走れ、メ尿ス(メニョス)!
勢いよく電車に飛び乗る。自力で走ったら間に合わない。締め切りは18時半。奇しくも日没に近い時刻である。
学校までは電車で一本なので、こうなってしまえばあとは余裕である。ぐうたらしていたせいで最終提出日になってしまったが、締めきりの時間まではだいぶ時間がある。そんなに急ぐ必要もない。