特集 2024年3月7日

16年前に住んでいた学生寮に泊まる

立川の街を行く

そして2024年1月13日の14時。僕らはJR立川駅に集合した。

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久しぶり、という挨拶もそこそこに、僕らはまず「伝説のすた丼」へと直行した。寮へのチェックインは夕方だったから、まだ時間があったし、なによりこの回帰の旅を始める場所は、すた丼しかないように思えた。

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ドーミー立川に住んでいた者たち

すた丼は相変わらずの山盛り白米に、香ばしいニンニク臭を放っている。あ、もう懐かしい。もしかしたら、今日はずっと懐かしがる日になってしまうかもしれない、とこの時点で思った。その予想は的中することになる。
すた丼は、この歳で普通盛り(※一般的な定食屋換算で大盛り)はきついよな〜、とか言いながら食べていたら、するするいけてしまった。懐かしさで、胃袋が一時的に若返っているのかもしれない。

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寝心地のいい枕の持ち主I。まだその枕を使っているらしい

膨れた腹をさすりながら、今度は北口のロータリーに向かう。当時と同様に右手にビックカメラが見え、その奥には商業ビルがずらりと並んでいる。

田舎からこの街へやってき日には、「なんて大都会に来たんだ...」と驚愕したものだが、今でも立川は大都会だと思う。買い物も飲み会も映画も、駅前で全てが揃うから、都心まで出る必要がない。しかもあれからIKEAやドン・キホーテもできたというから、恐ろしい街である。

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駅前のビックカメラ。新生活の家電は全部ここで揃えた

飲食店もかなり充実していて、今なら思わず入りたくなる店がたくさんあるけど、あの頃はすた丼ばかり行っていたように思う。朝晩は寮で食事が提供されたし、当時は店を開拓するという発想がまるでなくて、とりあえず安く白米を食べられたらなんでもよかった。本当になんも考えてなかった。

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商業ビル「フロム中武」。当時はこのビル壁面に「立川は、力持ち!?」「本気(マジ)で立川」といった、立川のキャッチコピーが掲載されていた

初めて歌ったカラオケを通り過ぎ、初めて投げたダーツバーを通り過ぎ、初めてアルバイトをした高島屋を通り過ぎる。この街には、僕の初めてが詰まっている。どれも懐かしいが、特に高島屋にはひときわ思い出がある。
高島屋のアルバイト研修では、お辞儀を一日かけて練習したのをよく覚えている。挨拶、感謝、謝罪でお辞儀の角度をそれぞれ変える必要があった。おかげで今でも簡単に頭を下げられる。

ただ、次の僕らの目的地は、高島屋ではなく、その隣にある「オリオン書房」という本屋にあった。友人の一人が当時ここでバイトをしていて、よくみんなで押しかけては漫画を買っていたのだ。僕もよくお世話になった本屋だし、立川に来たからには、オリオン書房に寄らねばならない。

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オリオン書房・ノルテ店

当時に比べると、書店スペースはだいぶ縮小されてしまったようだ。それでもこの時代に、本屋がずっと残っているのは嬉しいことだ。長きにわたる営業に、感謝の角度でお辞儀をし、少年ジャンプを買った。みんなで回し読みできるし、枕にも使える。

縮小された書店スペースには、代わりに中古ゲーム店が入居していた。懐かしいゲームがたくさん売られている。まだ寮に行ってないのに、こんなに懐かしんで大丈夫だろうか。懐かしいという言葉は、宿泊に備えて取っておかなければいけない。

ただドーミー立川といえば、毎晩遅くまでゲームに興じた場所。あの思い出を、もっと蘇らせたい。せっかくの機会だから、ノスタルジーのベストコンディションで臨みたい。

というわけで、ゲームを買った。

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当時よくプレイしていた桃鉄とウイイレに加え、プレイステーションの本体ごと買った。コントローラーが2つあることも確認済みである。

完璧だ。食堂、風呂、ゲーム。この3点が揃えば、完全に16年前へ戻ることができる。

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ゲームが楽しみすぎる

「プレステ重いな!」
「朝までゲームしようよ」
「いや途中で寝ちゃうわ」
「じゃあ俺はジャンプで寝ようかな」

空から初雪がぱらつき始めたが、僕らの昔話は熱を増していく。勢いそのままに、いよいよドーミー立川へ向かおうとした時、しかし気づいたのだった。

テレビが無い。

ドーミー立川は家具備え付けだが、家電はない。あの時の部屋に帰る気満々でいたから、空室にはテレビがないことをすっかり忘れていた。懐かしさは油断を生む。

テレビがなければプレステができない。プレステができなければ当時を再現できない。でもテレビなんて重いし高いし、チェックインの時間も迫ってるし、そもそもテレビをすぐ買える場所なんてあるのか?

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あった。

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買った。

これが時を経て成長した、大人の資金力である。

ちなみにテレビを買おうと思ったけど、ゲームのできるモニターが売られていたので、そっちを選んだ。あとプレステと接続するケーブルも買った。やはり立川ではなんでも揃う。

プレステとモニターを抱えて、雪降る立川の道を行く。

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ドーミー立川は駅からすこし離れた場所にあって、当時は歩くたびに「思ったより2ブロック遠い」と感じていた。
その感覚をまだ足が覚えていて、この辺で曲がるか?というところからさらに2ブロック先で左手に曲がると、見覚えのある道に出た。

そして細い路地を抜け、立川競輪場の前を通って、見えてきたのが...

 

ドーミー立川だ。

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あの頃と同じ、ドーミー立川だ。

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正門の看板が新しくなっていたが、逆にそこに目がいくくらい、他の外観は当時そのままだった。

インターホンを押すと、共立メンテナンスの戸谷さんが出迎えてくれた。今夜は戸谷さんも一泊するらしい。「荷物すごいですね」と言われた。

こうして僕らは16年ぶりに、ドーミー立川の門をくぐったのだ。

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