スタートアップ!ってイメージじゃない
Bitkeyの創業は2018年のいわゆるスタートアップ企業である。だけど、キムワイプがある工房でドア材を調べたり、1日中ドアノブを回して実験したりとやっていることは泥臭くてまさにものづくりだった。
ものづくりは地道な積み重ねですね、って思うと同時に、設備が整った工房で専門知識のある同僚と働けるなんて羨ましい。プッシュプルゲージがあるだけで羨ましい。
しかも京橋で帰りに銀座に寄れるのだ。
さあ、ここからハートが試される企画である(いい出したのは自分だが)。
僕と石川さんが作っているハードウェアを本物のエンジニアに見てもらうのだ。
「顔が大きくなる箱」だ(こちらの記事で製作した)。
段ボール箱のひとつの面に凸レンズがついており、なかに入れた顔が大きく見える。顔が暗くならないようにLED照明がついているのがハードウェア要素だ。
しかしハードウェアエンジニアのすごいところは、即座にこれで顔認証が通るかどうかを確かめようとしたことである。
改善点は暑いから冷却ファンをつけたらどうかとのこと。LEDを光らせているバッテリーが12Vなので、PC用のファンならばすぐに付くという具体的な実装方法まで教えてくれた。
次は石川さんの作品である。
4つのうちひとつの鐘が風を受けるとスイッチが入るようになっていて(センサーの役割)、残りの風鈴のなかにソレノイド(電気で直線運動をする装置)が入ってて鐘を鳴らす。
「風鈴のランダム性を台なしにしました。」というコメント通り、ウェイ系の風鈴である。
こんなケーブルむき出しのもので改善点を聞くなんてまったく…
改善案がいくつも出て即座にホワイトボードを使っての打ち合わせが始まった。
本気の改善点が挙げられた。
取材の帰り、石川さんが駅で「ああいう改造案がすぐ出るなんて…」と思い出し畏怖をしていた。
次がCapsule Cheeper。カプセル上のブザーがランダムにチーチー鳴るおもちゃで、石川さんがキットを作っている。以前の記事にも登場したもの。
ブザーの回路が断線している状態を意図的に作り出し、動かすことで中の導線や抵抗がつながってチーチーと鳴る。動かすことでランダムな音が出るのがおかしい。
「『断線して微妙に接触している』という状態は困る(笑)」と言いながらも「発想がおもしろい」と喜んでくれた。
ハードウェアエンジニアの触っちゃいけないところにぐいっと手を突っ込んだ作品だった。
おもしろがりつつも、コードの被膜が破ける可能性を減らす、梱包設計(ハードを箱にきれいに詰める設計)の改善など端的な指摘だった。
石川さんは「そもそも電池がむき出しなんですけどねーアハハハー」と気にしていなかった(気にしろ)。
Bitkeyの創業は2018年のいわゆるスタートアップ企業である。だけど、キムワイプがある工房でドア材を調べたり、1日中ドアノブを回して実験したりとやっていることは泥臭くてまさにものづくりだった。
ものづくりは地道な積み重ねですね、って思うと同時に、設備が整った工房で専門知識のある同僚と働けるなんて羨ましい。プッシュプルゲージがあるだけで羨ましい。
しかも京橋で帰りに銀座に寄れるのだ。
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