特集 2016年8月25日

顔が大きくなる箱

かぶるだけのワークショップを開いた
顔を大きくするだけで人気者に!
8月上旬に開催されたメイカーフェア東京でデカ顔マスクワークショップを開催した。

もともとは参加者に自分の顔のでかいペーパークラフトを作ってもらう計画だった。しかしそれはひとり2時間かかるのだ。もっと簡単に済む方法はないか考えた結果、箱をかぶってもらうだけにした。

おかげで時間は2時間から2秒に短縮することができた。もはやワークショップと呼んでいいのか不安になる。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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これが2時間バージョン

林ですが中身は違います
林ですが中身は違います
ペーパークラフトで自分の顔を作るワークショップは今年の3月に大阪で開催した。

6方向から顔を撮影したデータを元に展開図を作り、それを印刷して組み立てる。撮影から組み立てまで約2時間。
スタッフを10名用意して、屋外イベントなのに雨が降ったりプリンタが全部だめになったりして辛かったせいかこの時期の記憶があまりない。
ワークショップはテクノ手芸部との共同開発&運営
ワークショップはテクノ手芸部との共同開発&運営
顔の形をシンプルにしたり後頭部を省略するなどの改善案は進めていたが、もっとドカーンと単純にできないか打ち合わせを重ねた。
そういえば春にデカ顔マスクのプログラム部分を作ってくれた岩沢さんがこんな写真を送ってくれていた。
光学式デカ顔
光学式デカ顔
あれでいいんじゃないか。フレネルレンズというレンズである
細かい溝が入っていて平べったいのに凸レンズと同じはたらきを持つレンズだ。灯台のライトの光の調整や、ルーペとして使われている。(こちらの記事にも登場してます)。

上記の写真は理化学研究所・戎崎計算宇宙物理学研究室で撮られたものである。この研究室でも一般公開のときに顔が大きくなるレンズという定番のネタになっているそうだ。
(研究室の名前から想像がつく通り本来は宇宙観測のために作られたレンズである)

ちょうどいいレンズを探す

フレネルレンズを作っているメーカー数社に連絡した。
「ちょうどよく顔が大きくなっておもしろくなるレンズを探しているので実際に試させて欲しい」
スパムにすらなってない意味不明なメールを送ったところ1社から返事があった。寛容な会社である。

さっそく行って試させてもらった。
同じレンズでも焦点距離によって見え方が違う。
うーん
うーん
まあまあか…
まあまあか…
ギャ!
ギャ!
あ、これか!
あ、これか!
ちなみにひとりで行ったので写真はレンズメーカーの人に撮ってもらった。
撮るだけではなく
「どうですか?おもしろいですか?」
という僕の質問にも答えてくれていた。なにハラスメントと呼んでいいかわからない。

箱に入れて照明をつける

ダンボール箱の1面をこのレンズにしても他の面はふさがれているので、箱の内部は暗くなってしまうだろう。
そのために内部に照明をつけることにした。
よしきた!LEDならおいらに任せとけ!とは言ってないけどちゃっちゃと準備するテクノ手芸部よしださん
よしきた!LEDならおいらに任せとけ!
とは言ってないけどちゃっちゃと準備するテクノ手芸部よしださん
今回のデカ顔マスクも前回同様、デイリーポータルZ+テクノ手芸部の作品である。
ざっくり組み立てたのでかぶってみる。
ラッパーきどり、だけど
ラッパーきどり、だけど
はしゃいでも否めない顔色の悪さ
はしゃいでも否めない顔色の悪さ
なんというかこれは標本っぽさがある。
LEDは電球色のほうがいいかもしれない。

レンズメーカーにいきなりコンタクトしたり深夜までLEDの色について議論したり、まだ僕にこんな情熱があったことに驚く。顔を大きくするという方向があきらかに間違っていても、だ。
こういうときに必ず撮影を手伝わされる編集部アルバイト藤原
こういうときに必ず撮影を手伝わされる編集部アルバイト藤原
ちなみに藤原くんはこの撮影の前、締め切りに追われてアップアップしていたが、箱をかぶったとたんに吹っ切れたように見えた。
顔が大きくなると世界からシリアスが消えるのだ。
試行錯誤のすえ、箱のサイズ、レンズの中心位置が決まった。
試行錯誤のすえ、箱のサイズ、レンズの中心位置が決まった。
レンズは手で切った
レンズは手で切った
アクリルなのでレーザー加工機で切ると早いのだが、レーザー加工機に入る大きさではないのであきらめた。板がレンズなのでうっかりレーザーが拡散してシン・ゴジラみたいなことになったらたいへんである。

そして完成

LEDを電球色に変更してみる。メイカーフェアの当日の午前中である。
よし!自然な顔色で顔が大きくなった
よし!自然な顔色で顔が大きくなった
4個用意したのでカップルでも家族でも体験できる。
一家で顔を大きくするニーズなんてあるのかよと思っていたのだが意外にあった。
いろんな家族が顔をでかくして写真を撮って帰っていった。
家族写真はそれぞれ持って帰ったので知ってる人の写真を載せます。 こちらは乙女電芸部。急に芸人っぽくなった。
ひとんちの家族写真は撮ってないので知ってる人の写真を載せます。
急に芸人っぽくなったふたり(乙女電芸部)
とある子どもは顔が大きくなった母親がいたく気に入ったらしく「もういちど~もういちど~顔を大きくして~」と駄々をこねていた。
駄々はたいてい理不尽だが、理由からして完璧な理不尽さだった。
女性に囲まれててもリア充感ゼロ
女性に囲まれててもリア充感ゼロ
箱の内側にLEDライトがみっちりついているため顔が明るく見える。芸能人の楽屋にある鏡状態だ。大きいだけではなく顔が美しく見える(と思っている)。

斜めにしたときの3Dっぽさ

正面からの写真もおもしろいのだが、斜めから見ると妙に3D感があっておかしい。
いや、もとから頭は3Dなんだけど、モニターのなかで3Dモデルがくるくる回っているように見えるのだ。これは新しいナポレオンズかもしれない。
斜めから見たときの立体感よ
斜めから見たときの立体感よ
格闘ゲームっぽさ
格闘ゲームっぽさ(LINEの谷口D)
ペーパークラフトのデカ顔が初代バーチャファイターだとしたら右は相当後のバーチャファイターである。
でかい顔で夢見るような表情(ヤフー myThingsチーム)
でかい顔で夢見るような表情(ヤフー myThingsチーム)
これもいい斜め顔(メイカーファクトリーチーム)
これもいい斜め顔(メイカーファクトリーチーム)
顔が大きくなると皆ふだんはしないようなコミカルな動きや顔をしはじめるのも発見だった。でかい顔は自分の新たな可能性を開放するのかもしれない。
まあなんかストッパー外れた感じはする。

顔が大きくなると着ているものの魅力も増す

思わず写真とらせてください!とお願いしたのがこのふたり。どちらも衣装とあいまって素晴らしいデカ顔である。
どこかで会ったことがある気がするのはどうしてだろう
どこかで会ったことがある気がするのはどうしてだろう
顔が大きくなってかわいさが増している(@MikittySweeterさん)
顔が大きくなってかわいさが増している(@MikittySweeterさん)
スーツで顔を大きくするべきだったかもしれない。次回の課題である。
この箱をかぶって舌を出すと舌の存在感がすごい。
この箱をかぶって舌を出すと舌の存在感にたじろぐ。

オーストリアで顔を大きくしよう

顔が大きくなる箱はレンズを増やすなど改良して、9月に行われるイベントに持っていく予定だ。
イベントはオーストリア・リンツで開催されるアルスエレクトロニカである。

日時:2016年9月8日~12日(デカ顔の展示は9月9日~11日 12時~20時)
場所:アルスエレクトロニカセンター(リンツ・オーストリア)
なんで呼ばれたんだろう
なんで呼ばれたんだろう

メディアアートのイベントだが、なぜか招待されたのでこれをたくさん作って持って行こうと思っている。ペーパークラフトのデカ顔も持っていこう。

オーストリアがどこにあるのかいまひとつわかってないが、ヨーロッパにいるデイリーポータルZ読者の皆様はぜひお越しください。超心細いから!
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