2008年3月1日、両国国技館
そして2008年、両国。武藤敬司さんが社長を務める全日本プロレスの「プロレスLOVE in 両国 vol.4」という大会にドリー・ファンク・ジュニアが登場する。引退試合はタッグマッチで、ドリーは西村修選手とタッグを組み、天龍源一郎&淵正信組と対戦する。
ドリーの引退試合は60分1本勝負で行われる。もし、中々勝敗が決まらずフルタイム戦う事になったら……、ドリーの体が心配だ。なるべく早い時間帯での決着が望ましい。
そんな事を考えているうち、会場が暗くなりプロジェクターにドリーの姿が写し出された。本人登場前の「煽りVTR」である。プロレスの試合には「煽りVTR」というものがあって、選手たちの試合にかける意気込みなどが会場内に流れるのだ。怒りながら「あいつを絶対潰す!」みたいにやって見せるアレである。
ドリーの今までの活躍を描いた煽りVTRの最後に、現在のドリーが登場した。ファンに向けたメッセージである。もちろん、「あいつを潰す!」というような過激なパフォーマンスはなく、静かな口調で「今までありがとう」とファンに語りかけていた。ザ・ファンクスに夢中だった少年時代を思い出し、僕も少ししんみりした。あれから25年、あの頃の未来に僕らは立っているのだろうか。
VTRが終わり、ドリー&西村組の入場だ。
ザ・ファンクスのテーマ曲「スピニングトーホールド」が国技館の中にこだまする。スピニングトーホールドとはザ・ファンクスの必殺技の名前だ。寝転がった相手の片足を取ってぐるぐる回るアクティブな関節技である。邦名を「回転足首固め」という。
ドリーの姿を見るまでは、正直、67才でプロレスなんて出来るはずがないと思っていた。しかし、リングに立ったドリーはとても颯爽としていた。腰も曲がっていない。このコンディションであれば普通に試合が出来そうだ。スピニングトーホールドで決めてくれるに違いない。がんばれドリー。
そしていよいよ、引退試合のゴングがなる。
15分7秒に凝縮されたドリーの生き様
最初に言ってしまうが、ドリーは淵選手にスピニングトーホールド(回転足首固め)を決めて勝利した。試合時間は15分7秒。最近、僕(38才)は10分以上集中力が持続しない。それなのに、67才のドリーが15分間も戦ったのだ。本当に凄い。
そんなドリーの生き様が凝縮された907秒間をダイジェストでお伝えしよう。
とても67才とは思えないこの動き。淵選手が背後を取ると「やめろ、淵!死んじゃうぞ!」という野次が飛んでいた。