1日で46,070日と22.5時間分の功徳を授かる
最後に今回巡った場所のお得さをまとめておこう。
今回の場所を全て一日で回っとすると実に46,070日と22.5時間分の功徳をたった一日で得られることになる。
忙しい現代人はお得な日や場所を使ってお得に功徳を授かっていきたい。
人類は古くから神や偉人を祀って祈りを捧げてきた。果てしない道のりを巡礼したり、断食したり、恩恵を受けるために苦労を伴うことも少なくない。
しかしながら神は慈悲深い存在である。苦労や努力が必要な時もあれば、ほとんど苦労することなく徳を得られる機会も少なからず存在している。
そんな機会の中でも特にお得な出血大サービスデーなのが「四万六千日」である。なんと1日お参りするだけで46,000日分お参りしたのと同じ徳が得られるのだ。お得すぎるぞ。
四万六千日(しまんろくせんにち)は全てのお寺で行われているわけではなく、大規模なお寺で実施されていることが多い。東京近郊だと浅草寺や護国寺、鎌倉の長谷寺なんかで行われている。
特に有名なのが浅草寺で行われる四万六千日で、この期間にはほおずき市が催される。四万六千日という名称よりほおずき市の方がなじみ深いという人も多いだろう。
浅草寺では観世音菩薩の縁日が月に1回設けられており、その日にお参りをするといつもよりも多くの徳を得られる「功徳日」に設定されている。
縁日というと屋台が並ぶお祭りがまず思い浮かぶが、もともとは書いて字のごとく、仏教に関する縁のある日である。神仏の降臨や成仏などの縁のある日にその神仏の供養をし、それを記念して祭りを行う。
あくまで神仏との縁がベースで、その縁を祝うために金魚をすくったりバナナにチョコをかけたりするのだ。
そんな月に1回の縁日の中でも最大のものがこの四万六千日の縁日である。毎月の功徳日も1回のお参りで100日分や1,000日分の功徳が得られるのでかなりお得なのだが、年に一度の四万六千日はまさにけた違い。
ドラゴンボールの戦闘力にも引けを取らないインフレ具合だ。スカウターが爆発するぞ。
なぜ四万六千日なのかには諸説あるが、浅草寺のホームページには【米の一升が米粒46,000粒にあたり、一升と一生をかけたともいわれる】と記載がある。さらに【46,000日はおよそ126年に相当し、人の寿命の限界ともいえるため、「一生分の功徳が得られる縁日」】とも書いてある。
一生分の参拝が一日で済んでしまうなんて嬉しさを通り越してちょっと申し訳ない気分になる。「どうぞどうぞ」「いえいえ大丈夫です」「そんなこと言わずに受け取ってください」というやり取りを10回くらいはしないと気が済まない。
四万六千日は200年くらい前には定着していたというので、換算すると25,400年分の功徳がこの200年で与えられていることになる。100日分や1,000日分の功徳が得られる日もあるので実際にはもっとだ。
ネアンデルタール人が絶命した時くらいからの功徳がたった200年で消費されているわけで、石油や石炭よりも功徳が尽きないか心配になってくる。でも尽きる気配はないので観世音菩薩まじ慈悲深い。
この四万六千日のお得さ、グラフでも表したい。
どんな決裁でもおりるグラフになった。業績が落ちてしまった会社の株主総会資料には無意味にこのスライドを挟んでおこう。
四万六千日ほどではないものの、仏教周りにはお得なものが色々あるのでこの機会に徳を積みまくろう。
一般の方が参加できる信仰で特に苦労が伴うものに「巡礼」があるが、なかでも四国八十八箇所巡礼いわゆるお遍路はツアーが組まれて観光化されるなど現代でも人気が高い。
バスで巡るなんてご利益が半減しそうと思わなくもないが、実はお寺が公式にお遍路の超簡易版を設置していたりする。当サイトでもライターの榎並さんが過去に巡っている。
弘法大師こと空海が開いた高野山の東京支社といった位置付けの寺院だが、その一角にこんなスペースがある。
この大日如来の足元にはお遍路で回る88の各寺院から集められた石が収められており、このスペースをお参りするだけでお遍路を制覇するのと同様の功徳が得られるのだ。
お遍路を始めとした巡礼は江戸時代の頃から庶民の間にも広がり大変流行したという。しかしながらなかなか巡礼の旅に出られない人も多く、そのような庶民のためにこのような簡易的な巡礼疑似コーナーは存在する。
ちなみにWikipediaによると高野山東京別院の地下には東京電力パワーグリッド高輪変電所があるという。地中送電線で275,000Vの電気を受電しているらしく、そう聞くとなんだかパワーが満ちてそうな気がする。
この高野山東京別院は本当に超簡易版という趣きだが、もうちょっと「参った感」が欲しい人は二子玉川にある玉川大師もおすすめだ。
一見普通のお寺だがここには地下霊場があり、そこを通ることでお遍路と同様の功徳を得ることができる。
写真撮影は不可だったが、100m近い真っ暗な地下参道を歩いていると信心深くなくてもどこか神聖な気持ちになってくるありがたい霊場だ。
仏のありがたさとお得のありがたさをダブルで感じることができる。「木曜特市」と「7の付く日はポイント2倍」が重なったあの日のありがたさである。
江戸時代に流行したお参りといえば富士詣も忘れてはいけない。「富士講」と呼ばれるツアーを組んで、富士山に登る。最近登山ブームがきているがそんなものとは比べ物にならないくらい富士登山は流行していたという。
そんな庶民の星、富士山を身近に感じたいと作られたのが富士塚だ。都内のお寺にも富士山を模した塚が大量につくられた。そのいくつかは今でも残っている。
つまり一日で何回も富士山に登ることもできる。
はじめて地下鉄の護国寺駅で降りたが出口を出たらすぐに護国寺があってびっくりした。「護国寺前」とかじゃなく純粋に「護国寺」を名乗る資格がある。
めちゃくちゃお手軽だ。こんなちょっとした丘を登ることで富士登山と同じご利益が得られるなんてサービス精神が旺盛すぎる。富士塚じゃなくて得塚だ。
ただ簡易的とはいえ、途中で道が分かれていたり、実際に富士山にある巨石が再現されていたりと芸が細かい。今のように娯楽施設などない江戸時代には富士塚も非日常を味わえるレジャースポットだったのかもしれない。
どんどんいこう。
次は新宿のビル群の中に突如現れる富士塚だ。
富士塚はただ土を盛った丘ではなく、ちゃんと富士山の火山岩を用いて作られている。そのため富士山独特の荒々しさが再現されていて高さの割には登りがいがある。腐っても鯛、塚でも富士である。
まぁ本物の富士山には登ったことないのだが。
最後は渋谷区の鳩森神社にある「千駄ヶ谷富士」だ。
この富士塚は最短ルートで登ればなんと30秒で登れてしまうためお得度が高い。1秒、1分を争う忙しいCEOにもおすすめの富士塚である。
約2時間程度で富士に三回も登頂できた。登頂時間だけを合計するとわずか3分半だ。
本物の富士山は一番短いルートでも登るのに5時間くらいかかる。3回登ろうと思ったら15時間である。めちゃめちゃお得だ。
ビジネスの時短技を身につけるよりも富士塚に登ることで圧倒的な時短を感じることができるので、ビジネスマンはまず富士塚に登ろう。
最後に今回巡った場所のお得さをまとめておこう。
今回の場所を全て一日で回っとすると実に46,070日と22.5時間分の功徳をたった一日で得られることになる。
忙しい現代人はお得な日や場所を使ってお得に功徳を授かっていきたい。
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