特集 2019年4月17日

3Dのようで2Dな少し3Dな3Dプリンター

単色の3Dプリンターでカラフルな絵を描いてみよう、という内容です。

3Dプリンターをいじくりだして1年が経った。色々作って来たが、ちょっと変わった使い方を思いついた。

3Dプリンターを使った版画である。

今回は、3Dプリンターを2Dプリンターっぽく使うとどうなるのかを紹介したいと思います。

あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:マトリョーシカ餃子を食べたい(デジタルリマスター版)

> 個人サイト keiziweb DIY GPS 速攻乗換案内

ふつうに作るとどうなるか?

普通に単色の3Dプリンターで物を作ると、当然出来るのは単色になります。1年くらい前に作ってたのはこういうやつ。

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炭鉱櫓のペン立て。白、あるいは灰色一色。
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消波ブロックの箸置きは灰色一色。
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材料はフィラメントです

熱で融かした材料を積層して物を作る3Dプリンター(FDM式)の材料は、樹脂を紐状にしたもので『フィラメント』と言います。リールに巻かれており、様々な色や素材のものがあります。

これを細いノズルから熱して押し出して積み重ねていくと『物』になります。

IMG_7583.JPG
色んな色を使いたい場合は、それぞれの色のフィラメントを買う。これはABS樹脂のフィラメントで1本2500円くらい。1年で30本くらい買いました。

普通は途中でフィラメントを切り替えたりせず、単色で一つのものを作ります。

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途中でフィラメントを切り替えると色が変わる

でも単色で作るのはなんか寂しいので、僕は印刷中に一時停止してフィラメントを切り替えて多色印刷をしています。

プリント中に一時停止して、フィラメントを一度抜いて違う色を差し込んで再開すると途中から違う色でプリントできます。

※そういう事が出来る機種と出来ない機種があります。

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お猪口。なお、実際に使うと酒が漏れます。
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横から見るとこう。青、白、青、白と何度も切り替えます。
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うちの3Dプリンターは、左右にもフィラメントを設置できるような部品を3Dプリンターで作って改造しました。フィラメントの切り替えが捗ります。
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鼻笛。何度もフィラメントを切り替えるのは面倒だけど、多色を使うと可愛くなります。

という感じで多色を使っていたところ、3Dプリンターで絵を描けることに気が付きました。

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こういうものを作ってみた

試しに作ったのがこれら。

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妻のいたずら描きを立体化してみた。
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名付けて版画メソッド

手順は、

1.いたずら描きの写真を撮って、
2.画像処理ソフトで線をトレースして、
3.PNG形式で保存して、
4.PNG→SVG変換サイトでSVG形式に変換し、
5.SVGを3DCAD(Fusion360)に読み込んで色ごとの版を作り、
6.3Dプリンターで色ごとに重ねてプリントしていく。

です。

3DプリンターとかCADを触ったことがないとピンと来ない気がしますが、ピンと来なかった方は気にしないで読み進めてください。

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元のいたずら描き。

なんやかんや手を動かすと3Dモデルになります。作業時間は30分くらいでしょうか。

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色ごとに3Dモデルを作ります。まわりの円はプリント時に位置を正確に合わせるために必要になります。

実際に黒の版をプリントすると、こういう感じになります(CGのシミュレーションです)。

1.png
位置合わせのための円はプリントせず、1層目だけプリントしたら停止してフィラメントと印刷するデータを切り替えます。

黒い線がプリントされたら、そのままオレンジを上に載せます。するとこうなります。

2.png
オレンジも1層だけプリントして停止させて、フィラメントを白に切り替え。

 最後に白のデータをプリントして完成。白だけは厚めで、安全ピンを付けるための突起があります。

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これをプリントすると完成。

 裏返すとこういう感じになります。

4.png
版画というか、アニメのセル画の方がイメージに近いかもですね。

 下の写真が実物です。大体予定通りの出来になりました。

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多少線が曲がってたり色がはみ出たりしますが、味です。
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超発展させてウォーホる

で、版画メソッドを発展させるとこうなります。

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定番のキャンベルスープ缶を3Dプリンターでウォーホった。

手順は上の猫バッジと同じです。手間が桁違いだけど。

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写真を撮って補正して色ごとにトレースしていきます。

絵が下手な人は写真を撮ってトレースしましょう。デッサン力なんか無くても絵は描けます(ダイナミックなアドバイス)。

なお、他人が撮った写真をトレースすると面倒くさいことになるので自分で撮るのがオススメです。

IMG_7579.JPG
色別のPNGからSVGを作ってCADに読み込む。こういう絵は処理に時間が掛かります。

手順は猫バッジと同じですが、色の多さと図柄の複雑さで時間と手間が異様に掛かります。

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黒、黄色、赤、灰色を重ねた状態。最後に白を厚めにプリントして完成。

出来たものをステージから剥がしたら完成。

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細かい部分が潰れてるけど、作り直す時間はもう無い(締切1時間前に3時間掛けて完成)。

CGでは下の画像みたいになるはずでしたが、実物はアナログと言うか手作り感が出ました。

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ちょっと絵柄が細かすぎたかも知れません。もう少しデフォルメしてもよかったか。 

 で、これを作ってなんの意味が?とか思うでしょうけど口にしちゃダメです。アートに意味などありません。

(え、アート活動だったの、これ?)

浮世絵もいける

キャンベルスープがいけるなら浮世絵もいけるでしょって事で、浮世絵。はい、浮世絵も3Dプリンターで刷れます(超めんどくさかった)。

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色ごとにトレースして版を作ります。単に画像処理でやるとキレイに分離できないので手作業で塗ります。分かりやすい様に赤系で塗ってます。

版を作ってる時点で後悔してきました。すっげーめんどくさい。

で、CADで色ごとのモデルにします。

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青の版。青は濃い青、薄い青、水色の3色があります。
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黄色の版。

気づかれたと思いますが、色ごとの版を普通に3Dプリントすれば版画を刷ることも出来ます。僕がやりたい事とは違うのでやらないけど。

CAD上で色を着けてやるとこうなります。

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3D空間に出現した富嶽三十六景。

で、プリント。

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7回のフィラメント交換が必要なので超めんどくさい。

版を作ってインクでプリントした方が手っ取り早そうですが、それやると「普通にインクジェットプリンター使えばいいじゃん」ってなるのでやりません。3Dプリンターで作るのがいいんですよ。

で、完成。

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細かい部分は潰れましたな。作り直したいけど時間が無い。

こういう細かい絵は3Dプリンターに向いてません(そもそも絵を描くための機械じゃないのでみんな知ってる)。

道路標識が作りやすい

キャンベルスープとか富嶽三十六景は手間が掛かりすぎるので、もうちょい楽そうな物を作ることにしました。そう、道路標識とか。

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図の単純さと色数の少なさで手間が激減!

道路の標識などを写真に撮って、

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1.写真を撮る。
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2.画像処理ソフトで歪みを補正してトレースしてPNGにする。
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3.SVGにしたらCADに取り込んでモデルを作る。この時点で色を付ける必要は無いんだけどテンションが上がるので色を着けてみてる。気持ち、大事。

手順は同じですね。

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3色のフィラメントを重ねて完成。3色で済むので楽です。

なお、道路の標識には著作権が無いそうです。

むしろ一覧がPDFで公開されているので、写真を撮ってトレースするとかいう手間も必要なかったっぽい。

道路標識一覧(国土交通省)

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人さらいの標識(うそです)。白をプリントしたあと、青を重ねました。

裏にピンを付けるとバッジになります。

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熱したピンを押し付けると融着します。

 

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交通標識バッジ、可愛い。

ちなみに歩行者標識は作り方を間違えるとFBIと宇宙人っぽくなるので要注意。

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あの有名な宇宙人写真っぽさ。青を先にプリントするとこうなる。

猫注意コースター

勝手に標識っぽいものを作るのも楽しい。

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コースター。
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猫注意です。
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猫の写真を元に足や尻尾は適当に描き足しました。

色んな色のフィラメントがあると楽しいので、みんなも3Dプリンターを買ったらフィラメントも10色くらい揃えるといいです。

IMG_7604.JPG
作ったものまとめ。

 


今すぐ買おう、3Dプリンター

3Dプリンターはその名の通り立体を作るためのものだけど、敢えて平面を作ってみるのも面白かったりします。間違った手段と目的で道具を使うのは楽しい(壊したり事故ったりしないように注意)。
 
僕が使ってるのは4万円くらいの安い家庭用プリンターですが工夫すれば楽しいおもちゃになります。
 
3Dプリンターに興味がある方は、こちらを読んですぐに買ってください。買えばなんか作るものを思いつきます。
 
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