ボウリングをすり抜けて生きてきた
ボウリングをこの年になるまでやってこなかった。
近所にイーグルボウルというボウリング場があったが、2つ上の姉がよく出入りをしていた。姉とは中高生時代、ここに書けないほど折り合いが悪く、なんとなく行きづらくて誘われても断っていた。
大学の頃はもっぱらカラオケに行っていたので、ボウリングに行く機会をすり抜けて生きてこれた。
あと大学生くらいになってくるとボウリング未経験なのが恥ずかしくて避けていたという節もあった。こうして完全にボウリングをするタイミングを失ったのだった。
そんな筆者のボウリング初陣に参加してくれたメンバーをご紹介。
編集部の古賀さん、安藤さん、ライターの江ノ島さんだ。
以前安藤さんと江ノ島さんには人生初のボルダリングにも付き合ってもらった。安心安全の心強いメンバーである。
知らないルールその1「突然の大喜利」
渋谷にある大きいボウリング場にきた。建物全体がアミューズメント施設になっていて、卓球やダーツ、ビリヤードがなんかもできる。
階段を下りてそのまま受付に行くと思いきや、入る前に古賀さんがおもむろに受付わきにある机に向かい、そこに置いてある紙を取った。
「ハイ、月餅さん」と紙を渡される。会員制なのか??Tポイントカード的なやつを作る流れか??
ディスプレイに表示される用の名前を決める大喜利が始まる
ゲームを始める前に別のゲームをしている気分だ。緊張感が走る。おもしろくありたい。でもすべりたくはない。
時間をかけてすべったら一番かっこ悪いので、ここは無難に「ゲッペー」とした。
江ノ島さんも普通に「エノシマ」と書いていて安心した。
これでようやく受付に行けるらしい。ボウリングに行く人は球を持つ前にペンを握る。そんなことも知らなかった。付き添ってくれる人がいて本当によかった。一人だったら何もわからないで立ち尽くして泣いていたと思う。
肉眼で見るボウリング場は、すごく明るい
受付の人がなんやかんやセットしてくれてエレベーターで自分たちのレーンに移動する。
ボウリングのスコアの話になると、ひたすら愛想笑いで乗り切り、空気と化すことに徹していた。相場を知らないので、数字を聞いてもなにもわからないのだ。
高校時代、苦手な数学のテストでまぐれの高得点を記録してしまい、上級クラスに移動させられたことがある。
そのクラスは先生は目をらんらんと輝かせながら数字のことを「コイツ」と呼ぶタイプで、あるとき、新しい定義を説明するときに別の単元の例を引用して、「○○をしたらだめですよ、▲▲じゃないんだから~」と言った。教室中がドッと笑いに包まれる。わたしは1ミリも理解できず、授業後、その足で先生にもとのクラスに戻りたいと嘆願した。
ボウリングのスコアの話をされると、あのときのみじめな感情を思い出す。でも案ずることはない。もう今日限りでそんな感情とはおさらばできるのだから。
フロアに到着してエレベーターの扉が開いた瞬間、カーンカーンと軽快な音が鳴り響く。みんなめちゃくちゃボウリングをしている。
ピンが見えないと意味がないので当たり前だが、かなり明るい。フロントは暗くてアダルトだったのに。
真ん中のレーンあたりで忘年会をやっているらしきサラリーマンの集団がいた。10人くらいはいそうなにぎやかさだ。かと思えばカップルで楽しんでいる人たちもいて、ボウリングは自由であることを知る。
投げる前にやることが多すぎる
さっそく、投げるぜ!と思いきや、ここでもみんながレーンじゃない方に歩いていく。よくわからないままついていく。
ボウリング専用のシューズに履き替えないといけない
シューズレンタル専用のマシーンがある
このゾーンをボウラーズエリアというらしい。かっこいい。
靴入れがテーブルの引き出しになっているのが機能的でいい。
そういえばボウリング用の靴も両足セットになるようにスナップボタンで止めてあった。縁のなかった世界の工夫を知ることはおもしろいしうれしい。
荷物を置いて球を取りに行く。全部ポンドで記されていて、重さのイメージがつかない。
球の単位は「ポンド」(1ポンド=453.6グラム)
重い方がバーンって飛ばせるからいいけど投げるのが難しいんだよね。
重い方がいいっぽい。バーンと飛ばしたい。とりあえず重そうなゾーンを物色する。
これ投げられる人いるのかよ……と思っていたら江ノ島さんが迷いなく14ポンドの球を選んでいた。本当に???
いざ、投球!
球を選んでボウラーズエリアに再び入る。球置き場のところに車のエアコンみたいな穴がある。
手を乾かす用の機械がある
ボルダリングでは滑り止めのために液体のチョークがあったが、ボウリングでは手を乾かすために「風を起こす」という原始的な装置が当たり前に存在しているの、おもしろい。
レーンに上がっていいのは1人だけだし、隣の人が投げてるときは投げちゃダメ。
そんなこんなでようやく初投球。※隣のレーンが空いていたので、江ノ島さんに撮ってもらいました。
ゆっくり、真ん中に添わせる。ゆっくり、真ん中に添わせる……
しっかりガターである。
ボールが戻ってくるんで、そのまま2回目投げてください。
ボールが戻ってくるまで待つんだ。行くメンバーによっては気まずそうだな……
無事戻ってきた球を取り、2投目。
ゆっくり、真ん中に添わせる。ゆっくり、真ん中に添わせる……
ピンが1本残ったとはいえ、倒せたことがうれしい。これがボウリングの楽しさか……。
え、結構多いな……
1ゲームは1人最大2投×10回。1回を「1フレーム」と数える。
コガサン、ムカナイさんの投球を終え、力の差を見せつけてきたのは江ノ島さんだった。
全部倒したらグータッチで盛り上がっていい
嘘です。これはテレビで盛り上がってるのを見たことがある。
本当にそうかもしれない。重いのを投げるには相当な筋肉と強靭な肉体が必要なはずだ。はやく江ノ島さんみたいにならなくては。
でもうまくいったりいかなかったりの落差が激しいのがボウリングだよね。
2フレーム目に奮わなかった筆者を救う言葉だ。安心してガターを出してもいいんだ。
うまくいくときとそうでないときの落差が激しいのがボウリング
人生初スペアで知るボウリングの快感
上手くいったのは1フレーム目の2投目だけだった。でも見ているだけでかなり楽しい。
そんな筆者に奇跡が起こったのは4フレーム目。8本倒し、2投目で全部倒せるかというところ。
気持ちよすぎる。みんなこのためにボールを投げていたのかよ。いいな。わかる。わたしもよさがわかった。うれしい。
このあともずっとほとんどガターだった。なんかちょっと曲がった球も出た。魔球を生み出す暇があったらヒット率を上げてほしい。
ムカナイさんは安定してスペア出し続け、コガサンは筆者と同じくガター多めながら、6フレーム目でストライクを叩き出した。
一緒にガターを重ねてきた古賀さんと点差が開いていく。
マラソン大会で「一緒に走ろう」って約束してたのに一人ぼっちになった時の気分だ。じりじりと焦る。でもいい。もう当たっただけでうれしい。という気持ちもまた事実なのだから。
江ノ島さんはたまにガターを出しつつ、4回ストライクをしていた。
ボウリングの知見がなくとも、パワープレイだな、と思わされる。
最後は最大3回投げられます。ストライクかスペアでもう一投していい。
東京フレンドパークでそんな感じのゲームあったな……
10フレームは最大3投投げていい
安藤さんは最終フレームで1投目ストライク、3球目で見事スペア。
江ノ島さんも1球目ストライク!なんだこの安藤江ノ島コンビは。かっこいい。わたしもああなりたい。
ゲームを終えて球を元の場所に戻し、
そんなこんなで1ゲームで初ボウリングは終了となった。
お店によっては会計時に成績表をくれるところもあるらしい。今回はもらえなかった。 でもいいんです。大事なのはスコアじゃなくて楽しい思い出なのだから。
ボウリングもカラオケも喉を使う
はじめてのボウリングは「楽しい」の一言に尽きた。
こんなに楽しいのになんで今までやってこなかったんだろう。
でも30歳になる前に知ることができてよかった。
次世代の若者たちにアドバイスをするとしたら、ボウリングは早いうちからやっておけといいたい。なぜなら上手いとかっこいいので。
あと、フロアがやかましいので思ったより喉を酷使する。
声がガラガラしかけている。それはカラオケも一緒だ。人はお金を払って大声を出したがるのかもしれない。