自由ポータルZ 2022年6月10日

きれいなミミズ・おじさんと私・日本一長い路線バス~自由ポータルZ

こんにちは、石川です。

今週は応募多数、しかも力作ぞろいということで、編集部一同嬉しい悲鳴という感じでした。

ところで自由ポータルからワンポイントアドバイス。何本かまとめて作品をドバっと送ってくれる方がいるのですが、たまにあるハイレベルな週にあたってしまうと掲載基準が厳しくなって損ですし、また同じ週に同じ人の作品を2本は基本的に載せないので、別の週にばらして送っていただいた方がいいと思います。
では今週の自由ポータルです。

…のまえに、noteと共催の記事コンテスト「やってみた大賞」実施中です!

また来週6/16(木)はオンライン配信「デイリーポータルZ編集長とnote代表が語る、おもしろい記事をつくるチェックリスト」も開催。あわせてチェックしてください。

自由ポータルZは毎週金曜日に更新の記事投稿コーナーです。読者の方が執筆した記事をご紹介しています。

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【入選】田舎のミミズがキラキラしていて綺麗

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[投稿者]窪田 鳳花さん (もがき続けて100年生き抜くブログ
[コメント]とにかく綺麗なので見てもらいたいです。

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石川大樹のコメント

「田舎のミミズがキラキラしていて綺麗」。これ以上最高のタイトルがあるでしょうか。「田舎のミミズ」と「キラキラしていて綺麗」の対比のおかしさ。それでいてなんとなく絵が想像できるところもあって。本文読む前から引き込まれました。

ミミズが思ったよりモリモリ出てくるのもいいですね。なかなか見つからず最後に発見!!…的な展開かと思いきや、いきなり家にいたっていう。

「光をやさしく反射するしなやかで伸びやかな」みたいな写実表現と、「灰かぶり姫ならぬ土まみれ姫」のような喩え、両方からミミズの姿が表現されていて、奥行きを感じました。地図アプリのくだりもおかしかったです。

余談ですが昨年は平坂さんが別のきれいなミミズを捕まえに行っていました。きれいなミミズっていっぱいいるんだ…。

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林雄司のコメント

ミミズのでかさにギャッと思うけど、たしかに半透明なブルーは他の生き物で見たことないテクスチャですね。

宇宙のたとえ話がよくわからなかったので(宇宙って実際に見たことがないものだから分かりにくい)、ここは別の比喩の方がいいと思います。

ヒョウ柄は良いけどヒョウは怖いとか。

途中で何の説明もなく登場する巨木とか、宮崎の森の迫力に惹かれました。

 

【入選】おじさんと私

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[投稿者]渡部直子さん (おじさんと私(色々書いているのですが、その中のマガジンの一つです)
[コメント]ここでは、お笑いコンビ「きくばやし」について語りたいと思う。
お笑いには疎いが、有名になって西野カナに会いたいと願う当時60歳の女装おじさん「菊池カナ」と、当時育休中だった普通の会社員「渡部」。これは、全く気が合わない男女が四谷で出会い、なぜかM-1を目指すことになったという切ない物語である。
これはお笑いとの戦い、いや、おじさんとの戦いを記したいわば戦記だ。
念のためお伝えしておくが「おじさんと共にお笑いに挑む」ということではない。
そういう場面ももちろんあるだろうが、基本的な対戦カードは「おじさん対私」である。

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石川大樹のコメント

おもしろかったです。パート7まで一気読みしてしまいました。

エピソード自体がものすごく面白いんですけど、文章がそれに負けていないのが素晴らしいです。

変なことがたくさん起きるじゃないですか。コンビ結成からまず変だし。でもその変さを過剰に強調したり、わざとらしく盛り上げたりしてないんですよね。意外なほど素直に書いてある。それでいて、それほど奇異ではない小さなエピソード(6話でエレベーターの扉が各階で開くシーンとか)がちゃんと拾われて、面白く書かれている。このバランス感覚はすごいなと思います。逆だと下品な文章になっちゃうんですよ。これはすごく丁寧な印象なんです。

あと2話の最初「基本的な対戦カードは「おじさん対私」である」。読者に記事の読み方を最初に提示しておくのはすごく有効で、このタイミングでこれを書くのは相当な書き慣れを感じました。

 

【入選】四十路女が日本一長い路線バスに乗って片道6時間の旅へ。日本最古の神社で文学賞最終候補祈願するのこと

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[投稿者]こもちししゃもさん (珍獣ヒネモスの枝毛
[コメント]奈良交通の日本一長い路線バス、その魅力は、単に長距離移動する乗り物だということではなく、一つ一つの停留所に人が待っている可能性がある(そして実際途中かなりの人が乗ってくるし、その分だけ途中で降りていく)地元に根ざした日常の交通手段であるというところなのです。

そんな八木新宮バスに乗ったことは勿論、その先で更に私は「選ばれし者だけが辿り着ける」という伝説の、玉置神社にまで足を伸ばします。比喩ではなく本当に雲の上の神社。そこに行く迄には、一筋縄ではいかない様々な道のりがありました。

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林雄司のコメント

書き慣れてますね。軽いだ・である体が心地よかったです。

でも急に「おばはんいつも不思議やねんけども。」と関西弁を出すリズムが憎いです。

> オーバードーズ(※ボラギノールを多めに投入すること
> なんだか長いホースを握りしめて、シーシャしてるインスタ女子っぽいね、
> 紀州のドンファンの元嫁がドンファンに買ってもらったことで有名な

特に気に入ったのはこのへんです。

批評性があって、でも毒が出すぎてないし、ベースでこういう文章をかけるのであれば何をやっても成立するんじゃないかと思います。

でもこれぐらい文章書ける人が変わったことをしている文章が好きなので満足でした。また投稿してください。

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石川大樹のコメント

おもしろかったです。導入部から軽快で引き込まれますね。林もこの点は触れていますが「絶対ミスするやんか。」で急に口語になるところとか、緩急のつけ方が絶妙だと思います。

たまにちょっと真面目に情報を書くパートもあるのですが、そのあと毎回ひとユーモア入れて回収しに来る(風呂が貸し切り→熱いとか、旅の持ち物→みかんとか)ところに心意気を感じました。面白い文章にしようというスタンスが一貫してて気持ちがいいです。

気になったのはタイトルの「四十路女が」で、卑屈な印象になって何も得をしないのでつけない方が良いと思います。内容と深く関わってくるわけでもないですし。書き手を想像しやすい効果はありますが、それが狙いであれば本文中で何かのエピソードに関連付けて年齢を入れるのがいいと思います。

あとは写真の画質がなぜかガサガサに劣化しているところで、以前にも似た現象の投稿があったので調べてみましたが、どうもはてなブログの仕様でそうなる場合があるようです。はてなフォトライフの設定変更、アプリからではなくブラウザからアップする、などお試しください。「はてなブログ 写真 画質」で検索するとやりかたが出てきます。

 

【もう一息】拾ったお金を受け取りに

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[投稿者]宮西野あやさん ((新しい)置き場
[コメント]誰もが一度は聞いたことのあるシチュエーション「お金を拾って届ける」、そして「自分のものになる」を経験したので記録しました。

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古賀及子のコメント

おもしろかったです!
本文にも「知らないことがまだまだたくさんある」と書かれていましたが、まったくその通りの記事だったなーと思います。

大まかな流れだけじゃないディテールが拾ってあったのがすごく良かったです。

・記念貨だけ特記する欄ある
・権利の放棄についての「後で考えて決めます。」
・遺失物センターの地図の良さ

このあたり、深度のある「へぇ~」が出ました。
最後にこの記事の最大の魅力があって、それはここ!

>「これ、あのとき拾ったお札そのものですか?」

この質問は鋭かったですね!!! よくぞ思いついたなと思うし、それに短い受け渡しの時間に逃さず聞けたなと、完全なお手柄でした。

せっかくネタが良かったので、思い切ってもう少しレポートに寄せて、交番の場所が分からなかったり途中で寿司を買ったりといった日記的な要素は削ってもよかったかなと思いました。日常に突然起きたことは要素としてあったほうがいいから、なかなか塩梅の難しいところですよね。

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石川大樹のコメント

「みんなが知ってるけど実際やったことがないことをやる」は記事の定番…というか理想形ですらあるとおもいますが、そのどまんなかの記事です。記念硬貨が別枠とか、お礼をもらうかどうかをチェックボックスで選べること、また「(考えて決めます)」の存在など、とにかく実際やった人しか知らないことのオンパレードでした。

文章も、読ませるな、と思いました。「私は拾った千円札を持ち、エスシはお寿司を持ち」のところがいいですね。ただ持ってるだけなんですけど、テンポで面白く読ませていたりして。宮西野さんはずいぶん長く投稿していただいていると思いますが、いよいよ垢抜けてきたな…という感じがしました…!

1000円っていう金額もちょうどいいですよね。連絡欄に「金額を書くべきか迷った」とありましたが、書いてよかったと思います。

また次回作もぜひ!

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林雄司のコメント

エッセイでいいのですがやや冗長ですね。2回繰り返している文章が多いので、そこを絞って1文にすると量を減らせます。

例えば前のほう

「お金の恩返し。娘に姿を変えて美しい反物を織ってくれるのだろうか。雪の大晦日に米俵やなんやらを背負ってどすんどすんと訪ねてくるのだろうか。
いずれにせよ「お金の恩返し」、いい響きじゃないか。げへへ。」

→ いずれにせよからはじまる一文は削れます。

気に入ったフレーズが出るとひとつのシーンを重ねて書きがちですが、そこを意識するとすっきりします。

 
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林雄司のコメント

缶でカバーされている三輪自転車がいいですね。旅先で独特の習慣を見つけるとガッツポーズとりたくなります。

こういうよく分からないものをもっと書いていいと思います。

トイレの注意喚起など情報を書こうとしているところに真面目さを感じるのですが、「島の雰囲気は最高の一言。」など自分の言葉で書いたほうが良いところを簡単に済ませているのが気になります。

よそのサイトに載ってないエピソードを書いちゃってください。

 

【もう一息】結婚式で花嫁にサプライズをしたら、一次産業から加工までを行う方々にリスペクトすることになった話。

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[投稿者]文香ヒロさん (note投稿作品
[コメント]最初は結婚式で妻を喜ばすだけのはずでしたが…

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林雄司のコメント

おつかれさまでした!
「クレイジーな明太子」が何を指しているのかが途中までわからなかったので、「明太子を材料の入手から手作りする」とはっきり書いたほうがいいと思います。
手作りすると書いたあとに
・タラを釣る
・鰹節を手作り
・韓国へ明太子を買いに行く
と流れを書くと先が見通せて読みやすくなります。
デイリーも6000文字ぐらいの原稿は平気であるんですが、「本記事は約6300文字の投稿となっている」とあると長いと思っちゃいますね。
親切なんですが先に長いよ~って言うのもあんまり良くないなと気づきました!

 

【もう一息】空港は主張する

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[投稿者]ぷかぷか自由研究部さん (note
[コメント]空港の滑走路の隣にいろいろなものが書いてあることを発見したので調査しました!

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林雄司のコメント

好きなジャンルの記事でした。デイリーっぽくもっとフィジカルにしたいんですが、こういうのって実際に行ってもわからないし、難しいんですよね。

(そこにこだわってるのデイリーだけで、フィジカルじゃなくても受けてる記事は世の中にたくさんあるんですが)。

空から見える文字なんですが、成田空港近くの倉庫は空から見られることを意識して屋根にやたらと文字書いてるんですよ。

これを伝えたかったので選びました。

 

Tips:他人として読みかえす

文章って冗長になりがちです。特に書き慣れた人ほど、多くの文字数をスラスラ書けるので冗長になってしまう。それを防ぐのが、あとで読み返して推敲することなんです。

なのですが、書いた人がそのままのテンションで読んでしまうと「うん、うまく書けた!」~おしまい~になってしまうので、記憶を消して、他人が書いた文章を読むつもりで読み返す必要があります。そうしないとわかりにくい点や冗長な点を見つけられないので。

とはいえ記憶を消すのは不可能なので、やり方としては、書いたあと一晩置いてから読み返す。あとは物理的な他人(家族や知人)に読んでもらう、とかでしょうか。我々、編集部の役割って実はこれが大きいです。あとは、慣れると自分でもそこそこ記憶を消せるようになります。

ではまた来週! 

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