特集 2018年9月24日

知ろう!フレッシュ唐辛子

生の唐辛子が美味しいものだと、生まれて初めて知りました。
生の唐辛子が美味しいものだと、生まれて初めて知りました。
私と唐辛子との付き合い方は、鷹の爪という名前で売られている乾燥したやつを料理にちょっと使ったり、立ち食いそばに一味を掛けたりする程度。激辛料理への興味は皆無で、辛さへの耐久もおそらく普通レベルだろう。

このように辛味の優先度が低い人生を送ってきた訳だが、友人の案内で世界中の唐辛子を栽培しているマニアの元へと訪れたことで、自分が唐辛子の魅力をまったくわかっていないということに気が付いたのだ。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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> 個人サイト 私的標本 趣味の製麺

フレッシュな唐辛子を求めて群馬の奥地へとやってきた

「生の唐辛子をちゃんと食べたことがないんだったら、ここの農園は絶対に行った方がいいよ!」

そんな友人の熱い推薦を受けてやってきたのは、群馬県安中市にある「PEPPERS.JP」という家族経営の小さな農園。昔はこのあたりにも集落があったけど、今も人が住んでいるのはこの一軒だけという、ものすごい山の中だ。

正直なところ、現時点で唐辛子に対する思い入れはそれほどない。果物や野菜だったら収穫したてを試食する楽しみがあるけれど、唐辛子だとその場で食べられないのでは。そもそも唐辛子って、辛さのレベル以外に味の違いってあるのだろうか。
2匹の番犬から気持ち良いくらいに吠えられた。
2匹の番犬から気持ち良いくらいに吠えられた。
出迎えてくれたPEPPERS.JP代表の村山晋作さんは、平日は東京都内でコンピューターのエンジニアとして生活をしており、週末になるとこの農園にきて唐辛子の世話をするという二重生活。

元々辛いものが好きだった村山さんが唐辛子の栽培に目覚めたのは10数年ほど前。最初は自宅に置かれた小さなプランターからスタートし、いくつかの偶然が重なって現在に至ったようだ。
「周囲に人は住んでいませんが、クマなら昨日もそこに出ました。イノシシもたくさんいますよ」と、冷静な口調で教えてくれる村山さん。
「周囲に人は住んでいませんが、クマなら昨日もそこに出ました。イノシシもたくさんいますよ」と、冷静な口調で教えてくれる村山さん。
「もともとは激辛唐辛子として話題になったハバネロの栽培キットをネットで取り寄せて、自宅のプランターで育て始めたんです。その種にハラペーニョという別の品種が混ざっていて、全然違うものが育って、食べてみると香りも辛さも全然違う。同じ唐辛子でもこんなに違いがあるものかと驚きました」
一見するとプチトマトみたいだけれど激辛なハバネロ。
一見するとプチトマトみたいだけれど激辛なハバネロ。
そして偶然出会ったというハラペーニョ。形がぜんぜん違ってピーマンみたいだ。
そして偶然出会ったというハラペーニョ。形がぜんぜん違ってピーマンみたいだ。
「それをきっかけにいろいろと栽培するようになったのですが、ちょうどその頃、東京に住んでいた母がここ群馬に一人で引っ越したんです。それで畑も近くにあるし、もっと本格的に作ってみたらおもしろいんじゃないかと、10年前から唐辛子農園を始めました。だから趣味の延長なんです。趣味と実益……いや実益にはなってないかな」
ハバネロに混ざったハラペーニョの種、そして群馬の山奥に引っ越した母。この二つの偶然が村山さんを週末唐辛子農家へと変えていった。
ハバネロに混ざったハラペーニョの種、そして群馬の山奥に引っ越した母。この二つの偶然が村山さんを週末唐辛子農家へと変えていった。
「畑の広さは大体千坪くらいで、今年は120~130種類の唐辛子と、トマティーヨというメキシコ原産の食用ホオズキを少し育てています。唐辛子はすぐに品種が混ざってしまうので、種は基本的に毎年種苗業者から取り寄せます」

淡々と質問に答えてくれる村山さんは、農業に関してはまったくの素人だったのに、この畑を整備しなおして、手間暇をかけて唐辛子を育てている。どれだけ唐辛子が好きなんだ。

「今まで購入した品種ごとに連番をつけて管理しているのですが、今年で1100くらいまでいっています。ただ海外から取り寄せた種は発芽しないものも多く、実際に育ったのは600~700種でしょうか。唐辛子は適応性の高い植物なので、ここ群馬で世界中の品種が育てられるんです。味も辛さも結構違うし、香りがかなり違いますよ」

唐辛子に辛味以外の香り成分があるというのは、今まで気にしたことがないかも。唐辛子は現在もどんどん品種改良が進んでおり、世の中に何種類あるのかは村山さんでも把握できていないそうだ。
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唐辛子の基礎知識を学ぼう

村山さんとお母さんが世話をしている農園を見学させてもらいつつ、唐辛子に関する基礎知識を教えてもらったのだが、これが知らないことばかりだったのだ。

■1:私を含めて『唐辛子=鷹の爪』という認識の人が多いけど、本来の鷹の爪は、あくまで唐辛子の品種のひとつ。へー。
これが生の鷹の爪。日本の唐辛子にも、種類はいろいろある。
これが生の鷹の爪。日本の唐辛子にも、種類はいろいろある。
■2:唐辛子の実は、上を向いたり、下を向いたり、上を向いていたけれど成長して重くなると下を向いたり、品種によってつき方が違う。上記の鷹の爪は上向き。

■3:多くの唐辛子は緑から赤へと変化し、辛味成分であるカプサイシンが増えるが、熟すことで甘さも増す。品種によって収穫のタイミングは違い、メキシコなどでは緑の状態で食べることが多い。また最初から赤や黄色だったり、熟しても緑のままの品種もある。
これはピクルスやサルサに使われるセラーノというメキシコの品種で、緑の状態で収穫をすることが多い。
これはピクルスやサルサに使われるセラーノというメキシコの品種で、緑の状態で収穫をすることが多い。
■4:唐辛子は暑いところで育てると辛くなり、寒いところで育てると甘くなるという俗説があるけれど、それは育てている品種が違うから。寒い国では辛くないもの、熱い国では辛いが好まれるので、需要にあった品種が育てられている。粉唐辛子の甘口とか辛口も品種の違い。

■5:唐辛子は大きくて身が厚いものは甘く、その逆は辛い傾向にある。ただし例外も多々ある。

■6:唐辛子はナス科トウガラシ属であり、栽培種には5つの分類がある。そのうちのカプシカム・アニュームには、辛くない唐辛子として品種改良されたピーマンやパプリカが含まれる。

■7:この農園の収穫時期は7月の頭から霜が降りる11月の中頃まで。特に9~10月は収獲できる品種が多いため、様々な生の唐辛子を楽しめる。

■8:唐辛子は部位によって辛さは全然違う。一番辛いのは胎座という種ができる部分。ここで辛味の元となるカプサイシンが生成され、身の方に移っていく。種は本来辛くないのだが、胎座がつくことで辛くなる。

■9:辛味は慣れるし、唐辛子はうまい。これは後ほど体感することとなる。
「辛い品種の唐辛子でも先っぽだけ齧れば、そこまで辛くないです」と、表情を変えずにバリバリと食べまくる村山さん。
「辛い品種の唐辛子でも先っぽだけ齧れば、そこまで辛くないです」と、表情を変えずにバリバリと食べまくる村山さん。
試しにセラーノを齧ってみたが、確かに激辛という感じではない。赤く熟しているため、味の濃いパプリカみたいな甘味を感じる。
試しにセラーノを齧ってみたが、確かに激辛という感じではない。赤く熟しているため、味の濃いパプリカみたいな甘味を感じる。
種ができる胎座こそが辛いそうです。ピーマンでいうところのワタの部分だ。これはブータンのシャエマ。
種ができる胎座こそが辛いそうです。ピーマンでいうところのワタの部分だ。これはブータンのシャエマ。
「ちょっと試しになめてみますか」と、聖火リレーのトーチみたいに渡された胎座部分。
「ちょっと試しになめてみますか」と、聖火リレーのトーチみたいに渡された胎座部分。
「あああぁぁぁ!あああああぁぁぁぁぁ!あぁーー!」 久しぶりに大きな声が出た。なるほど、胎座は辛い。
「あああぁぁぁ!あああああぁぁぁぁぁ!あぁーー!」
久しぶりに大きな声が出た。なるほど、胎座は辛い。
このように、まるで知らなかった唐辛子の豆知識を体で知ることができたのは、100種類以上も育てている唐辛子農園へ一番忙しい収穫期にやってきたからこそ。

今思い返すと、とても貴重な体験をさせていただいている。

辛い唐辛子はこれだ!

村山さんに見せてもらった様々な唐辛子を、辛いもの、辛くないもの、変わった形のものに分けて紹介していく。

まずは辛いものから。生でそのまま食べるのはオススメしないということなので、試食はほとんどしていない。
島唐辛子などと同じくカプシカム・フルテッセンス種のチャワ。原種に近いもので、実の色は緑→黒(なったりならなかったり)→赤と成長していく。激辛だが鳥は辛さを感じないと言われており、食べて種を運んでもらうためにポロリととれやすくなっている。哺乳類よりも鳥類に食べてもらいたいチャワの知恵なのだ。
島唐辛子などと同じくカプシカム・フルテッセンス種のチャワ。原種に近いもので、実の色は緑→黒(なったりならなかったり)→赤と成長していく。激辛だが鳥は辛さを感じないと言われており、食べて種を運んでもらうためにポロリととれやすくなっている。哺乳類よりも鳥類に食べてもらいたいチャワの知恵なのだ。
こちらは激辛でお馴染みのハバネロと同じカプシカム・シネンセ種のピメンタ・ディオマー。ぷっくりしたフォルムがかわいい。
こちらは激辛でお馴染みのハバネロと同じカプシカム・シネンセ種のピメンタ・ディオマー。ぷっくりしたフォルムがかわいい。
「味はもちろん、赤く熟すと香りが良いんですよ」と嗅ぐ村山さん。
「味はもちろん、赤く熟すと香りが良いんですよ」と嗅ぐ村山さん。
確かにフレッシュな唐辛子ならではの華やかな香りがする。この香りに慣れて嗅ぎわけができるようになると楽しいんだろうな。
確かにフレッシュな唐辛子ならではの華やかな香りがする。この香りに慣れて嗅ぎわけができるようになると楽しいんだろうな。
タイ料理などでおなじのプリッキーヌ。直訳すると『ネズミの糞』で、味ではなく見た目からのネーミング。オオイヌノフグリと並ぶひどい名前だ。
タイ料理などでおなじのプリッキーヌ。直訳すると『ネズミの糞』で、味ではなく見た目からのネーミング。オオイヌノフグリと並ぶひどい名前だ。
タバスコを作るための品種、その名もタバスコ。これの熟したものを岩塩などと発酵させたものが本来のタバスコ。現在は違う品種で作ることも多いとか。
タバスコを作るための品種、その名もタバスコ。これの熟したものを岩塩などと発酵させたものが本来のタバスコ。現在は違う品種で作ることも多いとか。
ショート・イエロー・タバスコ。短くて黄色いタバスコですね。
ショート・イエロー・タバスコ。短くて黄色いタバスコですね。
このように数ある辛い唐辛子の中でも、この畑で一番辛いのが、キャロライナ・リーパーである。最近の激辛トレンドではシワシワしたタイプなのだ。

激辛で有名なハバネロが30万スコビル(辛さの単位)程なのだが、この6倍以上となる200万スコビルとも言われてるとか。そんなの誰が食べるんだ。
この畑で一番の辛さを誇るキャロライナ・リーパー。見るからにやばい。
この畑で一番の辛さを誇るキャロライナ・リーパー。見るからにやばい。
そんな辛い唐辛子に罰ゲーム以外の使い道があるのかと思ってしまうが、辛いソースを作る時などに少量で足りるため、辛い程経済的という合理性もあるのだ。

もちろん辛党の人からの、もっと辛いものを!という要望もあるのだろう。世の中には、辛い品種を作ってやろうというグループやコミュニティがあり、どんどんと開発が進んでいるのだとか。
キャロライナ・リーパーをガブリと齧る村山さんと、恐る恐るなめる私。外側を舐めてもあまり味はしなかった。
キャロライナ・リーパーをガブリと齧る村山さんと、恐る恐るなめる私。外側を舐めてもあまり味はしなかった。
やばいかなと思いつつ、せっかくなのでキャロライナ・リーパーの胎座を舐めてみた。辛いというか、舌にスタンガンを当てられたのかという衝撃がドーン。今年一番大きな声が出た。あー!
やばいかなと思いつつ、せっかくなのでキャロライナ・リーパーの胎座を舐めてみた。辛いというか、舌にスタンガンを当てられたのかという衝撃がドーン。今年一番大きな声が出た。あー!
ウイスキーのチェイサーとしてビールを飲むように、キャロライナ・リーパーを舐めながら甘めの唐辛子(といってもそれなりに辛い)を齧る。だんだん辛さが楽しめるようになってきたんですよ。
ウイスキーのチェイサーとしてビールを飲むように、キャロライナ・リーパーを舐めながら甘めの唐辛子(といってもそれなりに辛い)を齧る。だんだん辛さが楽しめるようになってきたんですよ。
他にも辛い唐辛子はまだまだたくさん存在する。それぞれの味を確かめる気にはならないけれど、村山さんの淡々とした解説付きで見て周るのがおもしろい。

なんだか『世界のプロレスラー大図鑑』とか、『これが毒の強い生き物だ!』みたいな本を読んでいるようなドキドキ感がこみあげてみた。

唐辛子、栽培をすることによるコレクション性がとても高いようだ。
かわいい見た目だけど激辛のイエロー・セブンポット・プリモ。
かわいい見た目だけど激辛のイエロー・セブンポット・プリモ。
ピーマンですよとウソをついて食べさせると大喧嘩になりそうなマスタード・ブート・ジョロキア。
ピーマンですよとウソをついて食べさせると大喧嘩になりそうなマスタード・ブート・ジョロキア。
これから赤くなるジェイズ・ゴーストスコーピオン・レッド。ペンシルバニア州のジェイズさんが栽培している赤いサソリのオバケという名の唐辛子だ。
これから赤くなるジェイズ・ゴーストスコーピオン・レッド。ペンシルバニア州のジェイズさんが栽培している赤いサソリのオバケという名の唐辛子だ。
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辛くない唐辛子もたくさんある

ピーマンやパプリカが品種改良された唐辛子であることからもわかるように、世の中には辛さ控えめ、あるいはほぼ辛くない唐辛子というものも存在する。

もちろんそれらの栽培もしているので、生でバリバリと試食した。

まずはカレイドスコープという唐辛子から。直訳すると万華鏡である。大きくて肉厚な唐辛子は辛くないという法則を教えていただいたが、さてどの程度のものだろうか。
「生でも安心の美味しさです!」と渡された真っ赤に熟したカレイドスコープ。いやこれは辛そうですよ。
「生でも安心の美味しさです!」と渡された真っ赤に熟したカレイドスコープ。いやこれは辛そうですよ。
いくら辛くないといっても、それは村山さんにとっての話で、実はそれなりに辛いんだろうなと覚悟をしつつ齧ってみると、これがまったく辛くない。

辛くないというか、パプリカよりも甘くて味が濃いのだ。肉厚で果汁も多く、胎座を食べてもへっちゃらである。それでいてどこかピーマン唐辛子っぽさが残っている。これはうまい。
断面をみると、確かにカレイドスコープ(万華鏡)だ。
断面をみると、確かにカレイドスコープ(万華鏡)だ。
まだ緑のカレイドスコープも食べさせてもらったのだが、こちらはさらに爽やかな味で、鼻に抜ける香りがグリーンアップルガムっぽい。
グリーンのカレイドスコープ、これぞ唐辛子界の若大将である。
グリーンのカレイドスコープ、これぞ唐辛子界の若大将である。
こちらはインドの唐辛子であるカシミール・ミルチ。カシミール・チリと呼ばれる香辛料の原料で辛さは抑え目。カレーなども唐辛子の品種を使い分けることで、味のコントロール力がアップする。
こちらはインドの唐辛子であるカシミール・ミルチ。カシミール・チリと呼ばれる香辛料の原料で辛さは抑え目。カレーなども唐辛子の品種を使い分けることで、味のコントロール力がアップする。
アルバ・スウィート・ペッパー。ほぼピーマンというか、ピーマンが唐辛子の一種なのだ。辛くない唐辛子の多くはピーマンと同じカプシカム・アニューム種。
アルバ・スウィート・ペッパー。ほぼピーマンというか、ピーマンが唐辛子の一種なのだ。辛くない唐辛子の多くはピーマンと同じカプシカム・アニューム種。
この農園に来るまでは辛くない唐辛子の存在意義がわからなかったが、実際に食べてみてよくわかった。フレッシュな肉厚の唐辛子は、野菜として個性的でうまいのだ。

唐辛子は香辛料であり、生の唐辛子は野菜でもあるという気づきを得た。これってカツオを鰹節で、イカをスルメでしか食べてこなかったようなものなのかもしれない。

変わった形の唐辛子

見た目がおもしろい、変わった形や色の唐辛子もたくさん紹介してもらった。

唐辛子だといわれなければわからないようなものも多く、お花屋さんで売られていてもおかしくないようなファンシーさだ。
農園には色とりどりの唐辛子が実っていて、お花畑のように鮮やかだった。
農園には色とりどりの唐辛子が実っていて、お花畑のように鮮やかだった。
だが村山さんクラスの唐辛子栽培マニアになると、心のときめくポイントが一般人の理解を大きく越えてくる。

「最近の品種だと、お気に入りはセブンポットバブルガム・ナガという辛い唐辛子。激辛系ってヘタがこじんまりしてるのがほとんどですが、これは帽子をかぶっているみたいで、かなりおもしろいですね」
ヘタの形が特徴的だというセブンポットバブルガム・ナガ。視点がマニアックすぎる。
ヘタの形が特徴的だというセブンポットバブルガム・ナガ。視点がマニアックすぎる。
すみません、もうちょっとわかりやすいのはないですか?

「わかりやすいのだと、このクリスマス・ベルですね。その名の通り、ベルみたいな形をしています。かわいいだけでなく、そのまま食べてもおいしい唐辛子です」
わかりやすく特徴的な形をしたクリスマス・ベル。これから赤くなってさらにクリスマスらしくなっていく。
わかりやすく特徴的な形をしたクリスマス・ベル。これから赤くなってさらにクリスマスらしくなっていく。
ピーマンよりも癖が無いのではという食べやすさ。非常に身が厚く、瑞々しくて美味しい。これはもうフルーツ唐辛子だ。
ピーマンよりも癖が無いのではという食べやすさ。非常に身が厚く、瑞々しくて美味しい。これはもうフルーツ唐辛子だ。
「これはカプシカム・バカタム種という分類で、実の形もいいんですが、特徴は花なんです。唐辛子は真っ白い花が多いですけど、これは斑点がついていてかわいい!」

うおー、マニアック!
普通の花がわからないので共感できないけど、珍しいタイプの花だそうです。
普通の花がわからないので共感できないけど、珍しいタイプの花だそうです。
こちらは乾燥させると種がカタカタと音を立てるカスカベルという品種。春日部とは関係ない。
こちらは乾燥させると種がカタカタと音を立てるカスカベルという品種。春日部とは関係ない。
イチゴみたいな形が特徴的なトールシ・ビーバー。
イチゴみたいな形が特徴的なトールシ・ビーバー。
鮮やかな黄色のレモン・ドロップ。うっすら柑橘系っぽい爽やかな香りだが、その辛さは懐にナイフを隠し持っている系だ。酢に漬けて料理のアクセントに使ったりするそうです。
鮮やかな黄色のレモン・ドロップ。うっすら柑橘系っぽい爽やかな香りだが、その辛さは懐にナイフを隠し持っている系だ。酢に漬けて料理のアクセントに使ったりするそうです。
アダムスキー型っぽいこちらは、ブラジリアン・スターフィッシュ。ヒトデである。
アダムスキー型っぽいこちらは、ブラジリアン・スターフィッシュ。ヒトデである。
紫からピンクになるフィダルゴ・ロクサ x ガロ・ダ・ボーデ。こう見えて激辛の系統である。なめてはいけない。
紫からピンクになるフィダルゴ・ロクサ x ガロ・ダ・ボーデ。こう見えて激辛の系統である。なめてはいけない。
鮮やかな色の黄とうがらし。これは激辛。
鮮やかな色の黄とうがらし。これは激辛。
ナスみたいな色の紫とうがらしは奈良の伝統野菜。花まで紫色だ。
ナスみたいな色の紫とうがらしは奈良の伝統野菜。花まで紫色だ。
断面は緑色で、これは全然辛くない。黄色が辛くて紫が辛くないとか、法則がわからないよ。
断面は緑色で、これは全然辛くない。黄色が辛くて紫が辛くないとか、法則がわからないよ。
こうして唐辛子の品種を教えてもらうことで、世界中には様々な種類があり、自分で栽培したり、食べ比べてみたくなる気持ちがよくわかった。

村山さんはこの農園を自分で趣味の延長というだけあって、品種が多すぎて商売としては売りにくそうだ。やっぱりその正体は、スーパー凝り性の唐辛子コレクターなのだろう。
これはメキシコの食用ホオズキであるトマティーヨ。
これはメキシコの食用ホオズキであるトマティーヨ。
すっぱくないライムみたいな風味が新鮮。うまいなこれ。
すっぱくないライムみたいな風味が新鮮。うまいなこれ。
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生唐辛子の料理法を教わった

農園でいろいろと試食させてもらい、その奥深さを知った世界の唐辛子。続いてはその特性に合わせたおすすめの調理方法で食べさせていただいた。

いきなり唐辛子料理を食べてもピンとこなかったかもしれないが、先程の農場見学でだいぶ唐辛子に対しての知識が増えて、食べたいという欲求が高まったところなので楽しみで仕方がない。いろいろと贅沢な取材である。
「ありあわせの材料ですけど」と、私には使い方がまったくわからない唐辛子を調理してもらった。
「ありあわせの材料ですけど」と、私には使い方がまったくわからない唐辛子を調理してもらった。
村山さんは慣れているから素手でやっちゃうけれど、普通の人が唐辛子を調理するときは手袋が必須。目を触ると文字通りひどい目に合うし、男性はトイレに行って後悔することとなる。
村山さんは慣れているから素手でやっちゃうけれど、普通の人が唐辛子を調理するときは手袋が必須。目を触ると文字通りひどい目に合うし、男性はトイレに行って後悔することとなる。

唐辛子の調味料、ハリッサ

唐辛子の特性というよりは、村山さんの性格を一番よく表してくれたのが、ハリッサというチュニジアやモロッコなどで食べられている唐辛子の調味料だった。

細いタイプの真っ赤に熟した唐辛子であるマレーシアのチャベブロングを蒸して、フードプロセッサーでコリアンダー、クミン、塩、ニンニクと混ぜて粉砕したと思ったら、それをインドから取り寄せたという電動の石臼で潰しだしたのだ。
「石臼、いいんですよ(ニヤリ)」と、今日一番の笑顔を見せてくれた。
「石臼、いいんですよ(ニヤリ)」と、今日一番の笑顔を見せてくれた。
「フードプロセッサーでやっちゃってもいいんですけど……気分が違いますよね」

ありあわせで作る料理と言いつつ石臼を出すあたり、さすが村山さんとしか言いようがない。私も「軽くラーメンでも食べていきますか」といいながら製麺機を出したいタイプなので、この歓迎はとても嬉しい。
仕上げにオリーブオイルを少々加えて完成。このミニ四駆のタイヤみたいな石臼、いいなー。
仕上げにオリーブオイルを少々加えて完成。このミニ四駆のタイヤみたいな石臼、いいなー。
シンプルに冷奴に乗せて食べたのだが、唐辛子にスパイスや塩が加わることで、発酵調味料のような深みが出た。鍋料理にも合いそうだ。
シンプルに冷奴に乗せて食べたのだが、唐辛子にスパイスや塩が加わることで、発酵調味料のような深みが出た。鍋料理にも合いそうだ。

オススメの唐辛子はハラペーニョ

数ある唐辛子の中で、一番のオススメはと聞いたところ、ハラペーニョという答えが返ってきた。村山さんが最初に育てたハバネロに混ざっていたという、運命を変えた唐辛子である。

ハラペーニョの辛さは中程度で、香りと旨味のバランスがよく、料理の主役になれる唐辛子とのこと。

鉄板だという調理方法は、チーズを入れたベーコン巻。辛い胎座部分を必要に応じて外し、チーズを乗せてベーコンで巻いて焼くだけだ。
初心者は胎座を外した方が無難です。
初心者は胎座を外した方が無難です。
今日ここで勧められなかったら一生食べなかったであろうハラペーニョ。

今更だが私は辛いものが特に好きではないのだが、これは大丈夫だろうか。
パッと見はピーマンにしか見えないですね。鉄板料理だけどフライパンで焼きました。
パッと見はピーマンにしか見えないですね。鉄板料理だけどフライパンで焼きました。
辛党じゃない私に食べられるのかと緊張しつついただいてみると、チーズとベーコンの塩気、それにハラペーニョの辛さが見事に合っている。これ、好きだ。

ざっくりした心地良い歯ごたえ、厚い果肉から染み出る旨味、フワッと鼻に抜ける刺激付きの青臭さ、どれもピーマンでは味わえない満足感を与えてくれる。
ザクッとした歯ごたえとキリっとした辛味ががいいんですよ。
ザクッとした歯ごたえとキリっとした辛味ががいいんですよ。
最初はチーズがハラペーニョの辛さにフタをしてごまかしているけれど、噛んでいると口の中でだんだんと本性を現してくる時間軸のエンターテインメント性も楽しい。そして赤いハラペーニョを食べると、旨味と辛味が断然濃かった。歯ごたえ重視なら青、味の濃さなら赤だろうか。

「ハラペーニョさんに3000点!」と、ついクイズダービー風に言いたくなるほど鉄板のうまさ。しまった、絶対にビールが合うやつじゃないか。何で買ってこなかったんだ。

トルティーヤで巻くハラペーニョもうまいんだ

続けてハラペーニョでもう一品。今度は鉄腕アトムのカツラみたいなモルカヘテという石臼を取り出し、ガスコンロで温めだした。

いいわー、村山さん。普通の料理ならある程度は先の展開が読めるものだけど、彼の作ってくれる料理は、これからどうなっていくのかがまったくわからない。
世の中にはいろんな凝り性の人がいますね。
世の中にはいろんな凝り性の人がいますね。
石焼ビビンバでも作るのかと思ったら、丸ごとのハラペーニョと魚肉ソーセージをフライパンで炒め、生のアボカドと一緒に熱した石臼に入れて、唐辛子入りのトマトソースとチーズを掛けてよく混ぜるという展開が待っていた。
これをどうやって食べるんだろう。
これをどうやって食べるんだろう。
これをトルティーヤで巻いて、ガブリと食べるのである。
丸ごとのハラペーニョを包み込むトルティーヤ。唐辛子料理には豆乳がよく合います。
丸ごとのハラペーニョを包み込むトルティーヤ。唐辛子料理には豆乳がよく合います。
「これはそこそこ辛いんじゃないですかね。もぐもぐ。……じんわりした辛さですね。でも無理はしない方がいいですよ」
ハラペーニョを丸ごと食べても、まったく表情を全く崩さない村山さん。
ハラペーニョを丸ごと食べても、まったく表情を全く崩さない村山さん。
それほど辛くないのかと油断して同じように食べたら、わかりやすくむせた。辛いよ!
それほど辛くないのかと油断して同じように食べたら、わかりやすくむせた。辛いよ!
ものすごく美味しい料理なんだけど、やっぱり丸ごとのハラペーニョだと私には辛すぎた。ただ辛いといっても、もう少し慣れればいけるかなという辛さであり、この辛さを克服したいと思っている自分がいる。

こうして人は唐辛子の魔力に魅了されていくのだろうか。
ハラペーニョのワタをとればばっちりうまいんだけど、寿司屋でサビ抜きを頼んでいるみたいでちょっと悔しい。いやサビ抜きはハラペーニョ自体を抜くのかな。
ハラペーニョのワタをとればばっちりうまいんだけど、寿司屋でサビ抜きを頼んでいるみたいでちょっと悔しい。いやサビ抜きはハラペーニョ自体を抜くのかな。
「辛さは慣れます。そして上流に上がっていきます。唐辛子を食べて体が温かいうちは大丈夫。私でも食べすぎるとお腹の中にポコポコとガスが沸いてきたり、頭頂部あたりから汗がダラダラダラダラでてきて、体温が低下してきます。そうなったら観念してベッドで横になります。……無理はしないほうがいいですね」
ブータンのエマ・ダツイというチーズの唐辛子煮。これもシンプルな組み合わせだがうまい。麺と合わせてもいいかもね。
ブータンのエマ・ダツイというチーズの唐辛子煮。これもシンプルな組み合わせだがうまい。麺と合わせてもいいかもね。
お土産にもらったチレ・チポトレという唐辛子の燻製的なもの。表面は鼈甲飴みたいな硬さと甘さがあるけれど、油断するとやっぱり辛い。油に浸けてパスタに使ってみようかな。
お土産にもらったチレ・チポトレという唐辛子の燻製的なもの。表面は鼈甲飴みたいな硬さと甘さがあるけれど、油断するとやっぱり辛い。油に浸けてパスタに使ってみようかな。
唐辛子を焼くためだけのグリルセットなんていうのも持っていた。もう何が出てきても驚かないぞ。
唐辛子を焼くためだけのグリルセットなんていうのも持っていた。もう何が出てきても驚かないぞ。

想像以上に味の幅が広い唐辛子は、香辛料であり、生鮮野菜であり、さらにワインや日本酒のような嗜好品でもあるように思えてきた。

たくさんの唐辛子料理を食べて、実はちょっと胃が熱くなって不安だったのだが、トイレで大変な思いをするということもなく、翌日には納まってくれた。

正直なところあまり興味のなかった唐辛子の世界だが、意外と私に向いていたようだ。
犬好き。
犬好き。

フレッシュな唐辛子って、辛さと旨味と歯ごたえが揃った、とても魅力的な食べ物なんですね。今後も激辛系にあえて挑戦しようとは思わないけれど、ハラペーニョみたいなバランスの良い唐辛子、そして上手に唐辛子を活かした料理であれば、積極的に食べていきたいと思いました。

■取材協力:PEPPERS.JP(通信販売あり)
※隔週日曜に青山ファーマーズマーケットへ出店。詳しくはFBにて。
お土産に摘ませていただいた唐辛子、どれがどれやらわからなくなって激辛ロシアンルーレットみたいになった。
お土産に摘ませていただいた唐辛子、どれがどれやらわからなくなって激辛ロシアンルーレットみたいになった。
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