カシオの限定モデルは中国にある
中国のOL向けカワイイ電卓を持つカシオのチャオさん
対応してくれたのはカシオ中国のチャオさんだ。チャオさんは日本語が大変上手である。さっそくカシオの電卓についてきいてみた。
「中国では高い電卓は売れません。高い電卓の関心が低いのです。中国メーカーは20元、30元で売ってしまうのです(日本円で320円~480円くらい)。当社の製品は一番安いXシリーズでも30元、40元で、値段ではどうしても中国メーカーにまけてしまいます」
低価格な中国メーカー強し。中国で電卓は家電量販店ではなく文房具屋で売られている。文房具屋の電卓売り場にはカシオの電卓のほか、見たことのない電卓がいっぱいある。
10元なので170円で買える。関数電卓も売っている。確かに安いなあ。
中国の電卓はすごく安く売られていて、低価格ではなかなか勝ち目がないと。そういえば文具屋ではなんだかカシオに似たような名前のブランドの製品が売られていたのを思い出した。
似たようなブランドの登場は、本家の人気の証。いわゆる有名税だろうか。
チャオさんは話を続ける。
「なので当社の電卓は品質をすごく大事にしています。オフィスでは電卓のニーズがあります。そのために男性向け女性向けの電卓をいろいろ用意したのです」
「店で60元でカシオ製品が売ってる一方で、30元で中国の会社の電卓が売られてるとして、その差の30元(日本円で500円)でいろいろなものが買えちゃうんですね。30元で別のモノ買いたいという気持ちもわかるんです」
たしかに余った30元でいろいろできてしまう。中国で映画も見ようと思えば見られる値段だし、1食の食費くらいになりそう。地下鉄に乗って、1日中ぶらり途中下車の旅ができそう。
地下鉄の1日券は30元でおつりがくる。
「カシオはいいものしか出さないという、こだわりがあります。私も自社のを使ってみて、いいな、値段の差だけの価値はあるなと思いました。30元の差はあるけれど、実際使ってみて使い続けてみるとすごくいいんですよね」
「今中国でオシャレな文房具屋ができてて、そこでは今までと比べて値段の高いオシャレなノートとかがでてきてますし、今後は弊社の製品を高くないと感じてくれるのではと期待しています」
こんな雑貨屋のノート売り場みたいに、安っぽくない電卓が並ぶ光景があるのかもしれない。
「女性向けにデザインした電卓で「JS-40B」という製品があります。値段は199元(3300円)でも想像以上に反応がよく、好調な売れ行きを維持しています。使ってみるとキーの感じがいいとか、楽しいとか思ってくれていると感じます」
チャオさんによれば、10元で電卓が売られているのに、定価がその20倍の200元の電卓も売れる!中国は深い…
値段ははりがちでもメタリックピンクで中国女性のハートをわしづかみ。
売れてる電卓はゴツくて多機能
そんな中国で一番売れているカシオの電卓が、中国限定モデル「GY-120」だ。繊細に見えて有能の「JS-40B」とは対照的に、金色でゴツく、それでいてなんでもこなす、頼れる兄貴のような電卓である。
左がGY-120。分厚くてパワフルでゴールデンな電卓だ。
「使うシーンは商店とかの店頭で、オフィスより安定感のない置き場所で使うことを想定しています」
なるほど、底を厚くして本体を安定させている。
「メタリックゴールドは、中国人ではいい意味があるのです。喜んでもらうように作りました」
分厚い。中央には「真人発音」という文字が。これが中国オリジナル。
「ボタンを押すと音声がでるカシオ唯一のモデルで、また時間とかカレンダーがでるのもこのモデルだけ。音声がでるモデルは中国だけで他の国にはないんですよ」
とのこと。他メーカーも含めれば中国では音の出る電卓が無数に売られているが、GY-120は他のメーカーの製品より音質がよく、「音が大きすぎるというお客さんの声もあります」というほど音量が大きいのが特徴だ。
電卓を弾いてもらう
ところで、「中国の電卓はピアノのように弾ける」という噂を聞いたのだけど、本当だろうか。
「できますよー、ちょっと待ってくださいね」
そういって呼んできたのが電子楽器部門に所属しているフーさんという男性だ。
楽器も作っているカシオならではの本気(ガチ)である。
フーさん、電卓をたたいて練習する。
電卓の各ボタンを触ったあと、「まあ見ててください」といい、電卓を弾きはじめた。実は弾ける電卓はほかのメーカーからも出ていて、中国にはそうした電卓を弾くための、数字を羅列した楽譜がある。でもフーさんはそれも見ず、電卓のボタンを叩いていく。
フーさんが持つと、電卓は楽器になっていた…
「音楽を学んでいれば、ちょっと楽器を触って音の出方を見れば、あとは感覚でできるよ」とフーさん。かっこいい。
「ドレミファソ…と数字ごとにふられてるけど、シャープとかフラットとかの半音は出せないし、長音も出せないから不十分だよね」と電子楽器部門からのまさかの指摘。
楽器慣れしているフーさん、上手に演奏。
「むしろ短い音しか出せないなら、ボタンごとにドン、トン、ガッといったようなドラムのほうがよくない?押してて楽しそう」とはフーさん。
確かに言う通り。むしろそういう製品をカシオから出してもらいたい。電子楽器と電卓のノウハウの奇跡のフュージョン!とか思った。
すばらしき演奏に、部署をこえ拍手喝采で大団円!
ボタンのつくものを楽器にしませんか
カシオの中国向けの電卓には日時表記があり、音が鳴り、楽器にできた。ボタンがあって液晶があるなら、それを別の方面に活用しようというアイデアが生まれたのだ。素敵だ。
しかも話を聞くと、かつてキャンペーンで、キーボードと電卓で合奏をしたこともあるとか。面白すぎる!
エアコンやテレビのリモコンから音が出て楽器になると面白いんじゃないか。ボタンを押しながらふっていると長音が出るような。
電卓を見て夢が広がった。