とにかく東急ハンズへ行けばどうにかなる
冒頭からまくし立てたが、「緑の電球がグリーンピースっぽいのでそれでシュウマイのランプを作りたいんです」と編集部に相談し、「いいねぇ!」と言われただけである。編集部のOKが出たらこっちのものだ。
今回作るものはシュウマイランプ。何のことかわからない、という方に説明すると、シュウマイの形をした、ランプである。おれもそこから先はわからない。
素材の構想など何もなかったが、東急ハンズへ行けばどうにかなるはずだ。
緑の電球は却下
グリーンピースの核の部分
まずは緑の電球を手に入れよう、と辿りついたのは照明売り場。
電球をカゴにいれ、ソケットとコンセントも見つけ買い物は順調である。とはいえ工作初心者なので「こういうものを作ろうと思うのですがこれで出来ますかね…」と近くの店員さんに念のため訊いてみる。
この図を見せた
雑な図に不可解なコンセプト。少し、恥ずかしい。ただ、”肝っ玉母さん”を具現化させたような店員さんは図をパッと見るなり笑顔で答えてくれた。
「電球がグリーンピースになるのね!いいね!」
理解が早く、そして心強かった。いいねと言ってもらえた。そうか、おれはシュウマイランプを作っていいんだ、と後押しをされた気になる。筆者の気持ちを知ってか知らずか店員さんはいろいろと考えてくれた。
・電球はかなり熱を持つので周りを囲うのは危ない
・ホラ、近づいてごらん。熱いでしょ(電球の前に移動しながら)
・200円程度高くなるが予算があえばLEDにしたら
・サイズは少し小さくなるが…試しに点けてみる?
促されるまま店内でそのLEDを点けてもらう。なるほど、確かに電球より一回り小さいが、触ってもほぼ熱を感じない。安全第一だし、何よりこの店員さんの心意気に応えたいと思った。LEDの購入を決意した頃にはもう店員さんは他の客の対応をしていた。
「ありがとうございます、これに決めました」彼女にお礼を告げ、次の階へ向かった。
ライトとソケット、そして台座。これがシュウマイの直径になる
どの階にも心強い店員さんがいる
シュウマイ部分を何で作るか。ぼんやりと紙粘土か、ぬいぐるみ的な素材かと悩んだまま手芸売り場にたどり着く。
「こういうものを作ろうと思うのですが…」
先ほどと同じ図を見せる。わからないことは人に訊く、最近ようやくそれが素直にできるようになったのだ。
店員さんは訝しむこともなく「だったら、シュウマイと同じ作り方がいいんじゃないかしら…」とフェルト売り場に案内してくれた。
「こう、シュウマイって四角い皮で包むでしょう。その要領でどうでしょうか」
そうか!紙粘土でそれらしく成形すれば…と考えていたのだが、今回はシュウマイを作るのだ。だったら本物に倣うべきなのである。
フェルトに台座を貼り付ける。ここからはシュウマイと同じ要領
ネットショップでの買い物も安くて便利だけれど、これだけ親身になってもらえるとやっぱり頼って訪れてしまう。おれの東急ハンズポイントカードは溜まるばかりだ。
「綿は、ここにもあるけど100均でも買えますので」ハンズの店員からよく聞くアドバイスを受けながら、その他細々したものを揃えて店をあとにした。
綿をぐるっと巻いただけで全容が見えてくる
皮をボンドで留めていく。確かに紙粘土よりもずっと簡単にできそうだ
ところであのグリーンピースは、給食でシュウマイを出す際に、子ども達に人気なショートケーキのイチゴに見立てて乗せられたものらしい。さすがにそれは子ども達も騙されないと思うのだけれどどうだろうか。
かわいそうなシュウマイ
そして輝くシュウマイランプ
少しずつ形が出来ていく。手芸と言い張るが、ここまでボンドしか使っていない(小見出しはウルトラソウルを意識している)。
1.厚紙で丸く台座を切り抜く
2.白いフェルトの中心に台座を置く
3.台座にソケットを固定し、コンセント用の穴をフェルトに開け、通す
4.硬めの綿を適度に巻きつける
5.フェルトを畳みながら折り上げていく
ここまでおよそ1時間半。平日、風呂上がりから寝るまでの時間で作ることができた。
いいかも
皮の端、直角部分が目立っていて、「これ蒸してないだろう」的な固さを感じたのでハサミで直角部分を鈍角にカットする。さらにもう1枚買っていたフェルトで少し皮を足したら…
完成!
あぁできた! これは誰が見てもシュウマイなのではないだろうか。LEDではなく電球だったらこの1.5倍くらいの大きさになっていたはずだ。このサイズで良かったと思う。
緑の灯がともる。これだ、これが見たかった
さっそく点灯してみた(オンオフの切り替えスイッチをつけているのだ)。
自分だけのシュウマイランプ、すでにかわいい。いい具合である。さらに電気を消すと…
あ、幻想的なシュウマイ
グリーンピースが部屋をやんわりと照らす。少し青みがかった緑色だ。緑や青の照明は安心感をもたらすとのこと、道理で心が安らぐ。
デスクワークの癒やしとして
テーブルの雰囲気作りにシュウマイを
LEDとはいえ、熱をまったく出さないわけではないので取り扱いには注意したい。何せ燃えやすい綿で覆っている。点灯するときは目を離さず、使い終わったら念のためグリーンピースは外そう。
鏡に反射させて。これを友人に見せ「夜のお花畑みたい!」とメッセージを送った形跡があるのだが、いかさか頭がメルヘンだった
いいものができたなぁ、というここまでが本編の予定だったのだけど、愛着が湧いてきた彼に外の世界を見せてあげたいと思った。
シュウマイの本場である横浜へ彼を連れて行ったので見ていってほしい。
シュウマイに横浜を見せたかっただけの紀行
さて、この見出しの通りの文章がこのあと丸1ページ続く。
電源がないと光らないので、外に連れ出した瞬間ランプでも何でもなくもはやただのシュウマイに成り下がるのだけれど、きっとそんなの瑣末なことだ。
お相手は北向ハナウタとシュウマイです
スタートは東京駅。
上の写真は、複数の電車の発着が一望できる丸善4階のカフェからだ。東京に訪れた際は「へーこれが東京か」というやつができるので、過剰な期待はせずに訪れるのもいいと思う。はじめて電車に乗るシュウマイとの1枚。
東京駅から東海道線で横浜へ向かう。25分と想像以上に近い
はじめての外出で少し不安げなシュウマイ
今回のメイン目的地はシウマイ弁当で有名な崎陽軒の本店だ。ちなみになぜ「シウマイ」と表記するかというと、初代社長の栃木訛りの「シーマイ」を中国の本場の発音に近づけた結果の「シウマイ」らしい。わかるようなわからないような。
おっ、ここか!
あっという間に着いてしまったが、それもそのはず横浜駅を出て1分という立地に崎陽軒本社はあるのだ。浅草駅から雷門までの距離並に近い。
一瞬で聖地巡礼ができた。シュウマイも満面の笑みを浮かべている
崎陽軒の中はイタリアンやティーラウンジなど、思ったより多国籍だった
崎陽軒の女性店員さんに話しかけてみようか、あわよくばシュウマイと一緒の写真を撮ってもらおうかとレジの周りをそわそわうろうろとしたのだけど「これ、どれくらい賞味期限持ちますか」と聞くのが精一杯だった。
若くて、東急ハンズの店員じゃなかったからだ。
シウマイは買えた、あとで食べよう
冒頭で「シュウマイのグリーンピースが絶滅危惧種だ」とお伝えしたが、崎陽軒のシウマイには”中に練り込む”という形で彼らが残っている。シュウマイの頭上で目立つグリーンピースが駆逐されていくなか、中に紛れることで絶滅を逃れたのだ。
ご覧、ここが横濱だよ
シュウマイもどこか誇らしげだ。やっぱり来られてよかったな
話は唐突に戻るが1ページ目のシュウマイの撮影、あたかもスムーズに終わったかのように書いていたけど実際はLEDが明るすぎてけっこう苦戦した。
グリーンピースの面影もなくなんかめっちゃ光っている写真ばかり撮れてしまうのだ。
何がなんやらの失敗例
「こうして宇宙は誕生しました」というキャプションがしっくりくる。かぐや姫のシュウマイ版のようでもある。緑に輝くシュウマイにきれいな女の子が眠っている話だ。それをシュウマイ採りの翁が見つける。
部屋の明るさを微調整し、カメラの設定を変えどうにか撮ったのが1ページ目の写真だ。もう少し撮影がうまくなりたい。
それとは関係なく屋外でも意味のわからない写真を撮った
「やっぱりせっかくなら外でも光らせたいな、こう電池とかでどうにか…」と思い横浜駅の東急ハンズにも駆け込んだけれど、今回の仕様では電源を確保しない限りはどうにもならないらしい。ごめんなシュウマイ、主人の衝動だけで突き進んでいるばかりに。
いいさいいさ、崎陽軒をシュウマイに見せるという主目的は達成できたんだ。せっかくだから海まで行こうか。
あれがブルーラインだよ、初乗りが高いんだ
横浜から桜木町へ
横浜から桜木町へは徒歩圏内だけれど、このあたりを「横浜」と呼ぶとハマッ子(注1)からありあけハーバー(注2)で殴られてしまうかもしれない。なんとなく、桜木町は桜木町であり、みなとみらいなのだ。
注1:定義は曖昧だが、「江戸っ子」の要領で横浜に住む彼らは自らを「ハマッ子」「浜っ子」と呼ぶ
注2:CMも流れる横浜銘菓。食べる機会はあまりない
筆者も小3~6、中2~社会人3年目まで横浜市に住んでいたのでハマッ子を名乗って差し支えないはずなのだけれど、正直横浜駅周辺に数えるほどしか行ったことがないのでこのあたりはあまり自信がない。
横浜市歌(注3)も歌えるしウェーブ(注4)も踊ったのだけれど。
注3:「我が日の本は島国よ」からはじまる横浜市民が全員歌える市の歌
注4:運動会では6年生が「ウェーブ」というダンスを踊らされた。横浜の小6が集う体育大会ではすごい人数でウェーブを踊るのが壮観
ご覧、浴衣のカップルだよ
どうやらこのあたりで盆踊り大会が開催されていたらしい、当日は浴衣のカップルをちらほら見かけた。おれは寂しくないよ、シュウマイがいるから(注5)。
綺麗だね、赤レンガ倉庫だ
赤レンガ倉庫は日が沈む直前の夕方が一番魅力的だ。ライトアップされた赤い壁は、夜よりむしろ夕暮れどきの紫色の空と相性がいいように思う。
あんなに暑かったのが嘘だったかのようにここ3日間くらい涼しい。この時間だとTシャツ一枚では肌寒いくらいだ。
真夏のピークが去った
「シュウマイだ!」と通行人から静かに指を指される。もう4回目だ。これがみんなにもシュウマイに見えるのだと思うと誇らしい気持ちになる。
いや、やっぱり恥ずかしい。ひとりでシュウマイを抱えて撮影をするのだ。気持ちの置き方がわからない。
これはちゃんと記事になるのだろうかと多少の不安を感じながら気がつけば19,000歩ほど歩いていた。
シュウマイ、きみはずっとカバンの中だから楽だろうけどおれは結構歩いたよ
すっかり日も暮れてヨコハマの夜景が我々を照らす。
そのまばゆい光をシュウマイが見上げる。そうか、君もそろそろ光りたいよね。家に帰ったらまたコンセントに繋ごう。
そろそろ帰ろうか
外でも光るようにしてあげたい
その日は取り憑かれたように写真を撮って横浜をあとにした。次にここを訪れる時は彼を外出先でも光るようにしてあげたいと思う。