ミュージアムへと変貌した円形校舎
円形校舎とは、その名のとおり、筒型をした丸い形の学校施設のことで、1950年代から60年代にかけて日本各地に建設された。
なかでも、日本で三番目に建設され、現存するものとしては日本最古の円形校舎が倉吉に存在している。ぼくはまだ改装工事がはじまる前の2016年の冬に訪れ、中を見せてもらった。
そのときのようすは
「現存日本最古の円形校舎の中はどうなっているのか」をごらんいただきたい。
きれいになっていた!
前回の記事の最後でお伝えしたとおり、紆余曲折を経て、円形校舎はフィギュアミュージアムに生まれ変わった。
ミュージアムに生まれ変わった!
白い。まぶしいぐらいに白い。
ちなみに2016年の様子はこちら。
2016年の円形校舎
2018年の円形校舎。白い。BGMは、松谷卓「匠」でお願いします。
「なんということでしょう」といいたいのをぐっとこらえていうが、あんなにボロボロだった円形校舎が、こんなに漂白されて、きれいになった。
円形校舎は、改修工事を施され、2018年4月に開業した。そのさい、オープニングセレモニーに訪れた石破茂衆院議員が、似合いすぎる魔人ブウのコスプレで登場し、世間を震撼させたことも記憶にあたらしい。
中を見比べてみよう
前回訪れたときは、まだ工事が始まっておらず、なかは廃墟のような状態であった。
しかし、今は見学に訪れた子供が、螺旋階段をかけまわるほどの建物に生まれ変わっている。建物がいきいきしている。
螺旋階段に続く廊下
螺旋階段のまわりには、補強の壁が作られた ©カラー
螺旋階段の様子は、以前とかわらない
現在、フィギュアミュージアム内では、特別展として「海洋堂エヴァンゲリオンフィギュアワールド」が行われている。(2018年9月2日まで)
紫色のにくいやつ、初号機です ©カラー
エヴァンゲリオン展の入り口には、展示されているフィギュアをスマホで撮影するさい、ケースの映り込みを防止するためのレフ板まで準備してある。普通、撮影禁止の美術館が多いなか、展示物のスマホでの撮影をむしろ推奨してるような姿勢はとてもうれしい。
映り込み防止用の簡易ボード
フィギュアの展示室は、1階と2階にあり、1階はミュージアムショップと特別展用の展示室。2階のジャンル別展示室は、恐竜、動物、ミリタリー、キャラクター、日本文化と別れており、様々なメーカーのフィギュアがジャンル別に常設展示されている。
恐竜・小学生ぐらいの大きさがあるなんらかの恐竜
恐竜・緑色のにくいやつ、ティラノサウルス
動物・耳がデカイのでたぶんアフリカゾウ
ミリタリー・ガルパンのキャラ。ガルパンさっぱりわからないので、元ネタご存知の方どうぞ
ミリタリー・こちらもガルパン。戦車兵の福田といえば、司馬遼太郎を思い出します
キャラクターのコーナー
日本文化・四天王のフィギュア。なんかゴチャゴチャしててかっこいい
日本文化・男前な阿修羅像。当たり前なんだけど、仏像って本質的にフィギュアであることをあらためて思い知りますね
フィギュアの見どころは、これぐらいにして、ぼくがきになっている、建物がどんなふうにきれいになったかをもうすこしみていきたいと思う。
屋上のペントハウスもきれいに
円形校舎の螺旋階段の最上階には、ペントハウスとよばれるガラス張りの小屋があり、屋上に出られるようになっている。
前回おとずれたときは、カラスが勝手に巣作りをして、窓ガラスを割っており、たいへんいたましいことになっていた。
しかし、そんなペントハウスもすっかりきれいに。
カラスの巣があった場所は以前を想像できないほどきれいになっていた
ペントハウスのガラス戸は、壁になっていた。おそらく、強度の問題だろう
みなさんきれいサッパリお忘れのことと思うが、2016年の10月に、倉吉市は最大震度6弱の地震におそわれた。
以前は、屋上から市街をみると、落ちた屋根瓦の応急処置のブルーシートが目立っていたが、現在はずいぶん消えている。
確実に復興しとるなー
倉吉の地震は、死者が出なかったため、あまり注目されることなく忘れ去られてしまったが、なんとかかんとかやっているようだ。
昔の自由研究がすごい
3階には、学校だった頃の教室を再現した部屋も存在している。
とにかく明るい教室、人が戻ってきた感すごい
木枠のガラス戸は、ほとんど残し、一部アルミサッシになっていたところは、特注で木枠のガラス戸を作って設置。すばらしいです
何もなかった教室には、椅子と机が置かれて、休憩で使用できるようになっている。
教室内には、改修工事中に黒板の後ろから出てきたという1959年(昭和34年)ごろの小学5年生の自由研究が張り出されていたのだが、これが実におもしろく、興味深いものだった。
これを見るために来てほしいぐらい
ちこくのげんいん。道草!
ちこくのげんいんは忘れ物が多い。だからなんだという感も否めないが、遅刻の原因が道草というのもすごい。遅刻しそうなのに道草するやつの肝の太さに感心してしまう。
ある店のたばこの売上
自由研究の題材に「ある店のたばこの売上」を選ぶ小学生5年生もすごいが、それを許す社会の雰囲気に隔世の感がある。
そして、いちばん売れているたばこは「しんせい」である。ダントツだ。二位の「いこい」に比べて倍以上売れている。
「しんせい」も「いこい」も、フィルターのついてない安いたばこで、この当時は人気の銘柄であった。しかし1960年にフィルター付きの「ハイライト」が登場し、一世を風靡する。そのため、「しんせい」や「いこい」といった両切りたばこは、人気の座を追われることになった。この統計資料は「ハイライト」登場以前のたばこの人気銘柄をうかがい知ることができる貴重な資料だ。
どんなことをして遊ぶのか
どんなことをして遊ぶのか。これもすごい。
この統計が、男女別なのかどうなのかわからないけれど、全体の約4分の1が野球をして遊ぶという野球人気のすごさ。
サッカーがないのは当然として、相撲がないのが意外である。(もしかしたら、その他に入っているかもしれないが)子供に人気のあるものとして「巨人大鵬卵焼き」と並び称された大鵬だが、横綱になるのは1961年でこの時代よりもう少し後である。
人気の遊びは野球に続いて、かんけり、ぼうやこ、自転車のり、木のぼりと続く。ちなみに「ぼうやこ」というのは、鳥取の方言で「鬼ごっこ(おいかけごっこ)」のことだ。「追う」をこちらの方言で「ぼう」というのだ。
賃金
1時間働いてもらえる賃金。
「10」の丸ひとつで100円というわかりにくさだが、日本の1時間の賃金が78円というのが衝撃的でもある。時給78円。
当時の物価を
>こちらのサイトで調べると、1959年は、大卒初任給が10800円、牛乳14円、かけそば35円、ラーメン50円、銭湯17円、週刊誌30円、映画館180円。となっている。
この物価をみると、まあ、78円は妥当な値段ではないだろうか。
ここで思い知るのは、アメリカの豊かさである。
建物のおもしろさも堪能したい
フィギュアミュージアムとして新生した円形校舎。
館内を駆け回る子供たちをみると、こんなにも変わるものかという思いが強くなる。やはり、建物は人に使われてこそのものである。
現在、日本に残る円形校舎の中で、一般人が自由に入ることができるのは、ここしかない。
フィギュアももちろんだが、螺旋階段の異次元感や、木枠のガラス戸のノスタルジックな雰囲気など、建物のおもしろさもたのしみたいところだ。