特集 2018年7月11日

スリランカカレーには調和と自由と優しさがつまっている

「ワンプレート」の名前だけでも覚えていってください
「ワンプレート」の名前だけでも覚えていってください
カレーが好きだ。カレーの何がすごいって、いくら食べても個性が尽きないところだ。お店ごとにその店らしさが色濃く表れている。インド人が毎日カレーを食べ続けても飽きないのも頷けてしまう。そんな千差万別なカレーの中でもひときわ個性が凝縮された、「カレーのるつぼ」とでも言うべきカレーがある。

それがスリランカカレーだ。
1992年東京生まれ。普段は商品についてくるオマケとかを考えている会社員。好きな食べ物はちくわです。最近子どもが生まれたので「人間ってすごい」と本気で感じています。(動画インタビュー)

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スリランカカレーは調和

スリランカカレーはその名の通りスリランカで一般的に食べられているカレーで、独特なスタイルを持っている。一枚のお皿に複数のカレーと数種類の付け合わせ、そしてライスまでもが一緒に盛られた「ワンプレート」というスタイルだ。

スリランカについて首都の名前が難しい(スリジャヤワルダナプラコッテ)くらいの知識しか持ち合わせてない人も、今日は「ワンプレート」の名前だけでも覚えていってください。

芸人みたいな口上はいいから早くカレーを出せと全国1.2億人のカレーファンの声が聞こえてくるので、早速スリランカカレーの魅力を伝えていきたい。
というわけでまずは日本橋にあるKANDYにやってきた
というわけでまずは日本橋にあるKANDYにやってきた
KANDYは正統派のスリランカカレー店で、野球でいえば高校野球で活躍しドラフト指名1位でプロ野球入りした選手のような王道感がある。
その証拠にお店のオーナーとスリランカの要人たちとのツーショット写真がメニューに並んでいる
その証拠にお店のオーナーとスリランカの要人たちとのツーショット写真がメニューに並んでいる
そんなスリランカ政府のお墨付きといっても過言ではないKANDYのワンプレートがこちら。
カレーは1種盛り~3種盛りまで選べるが今回は一番デラックスな3種盛りを選択
カレーは1種盛り~3種盛りまで選べるが今回は一番デラックスな3種盛りを選択
カレーが別な器に入ってくるので、ワンプレートじゃない!と思われるかもしれないが、食べる時は大きいお皿にカレーも移して食べるため最終的にはワンプレートスタイルが完成するので安心してほしい。全ての道がローマに通ずるように、全てのスリランカカレーはワンプレートに通ずるのだ。(個人的な見解です)

注目してほしいのがカレーとライス以外の付け合わせである。これがプレート上でかなりの量を占めており、このお店だと6種類もの付け合わせが盛られている。そしてどの付け合わせも普段馴染みのないものなので、未知のものに出会ったワクワクとドキドキが一挙に押し寄せてくる。ちょっとした旅に出かけたような気分だ。

改めてプレートの構成を見てみよう。
注釈が入っていても分からないものばかりだ
注釈が入っていても分からないものばかりだ
店員さんにそれぞれの付け合わせについて教えてもらったのだが、知らないものばかりで学生時代の自分に見習ってほしいくらい質問をしてしまった。恐ろしく知的好奇心を刺激するプレートである。

一つ一つ掘り下げていくと全然カレーを食べられずに記事が終わってしまいそうなので簡単に説明したい。
マッルンは野菜を削りココナッツや香辛料と炒めたもの。この日はカレー味に炒めたダイコンのマッルン
マッルンは野菜を削りココナッツや香辛料と炒めたもの。この日はカレー味に炒めたダイコンのマッルン
「あかもく」という海藻を練り込んだ小麦のヌードル
「あかもく」という海藻を練り込んだ小麦のヌードル
ココナッツサンボールはココナッツのふりかけのようなものでスリランカカレーには欠かせない付け合わせ
ココナッツサンボールはココナッツのふりかけのようなものでスリランカカレーには欠かせない付け合わせ
コットウ・ロティは、小麦粉で作ったパンを千切りにして野菜と一緒にカレーソースで炒めたもの
コットウ・ロティは、小麦粉で作ったパンを千切りにして野菜と一緒にカレーソースで炒めたもの
チャツネはアジア地域で広く食べられているソースだが味は多種多様。このお店ではピリ辛なチリソースのような味。
チャツネはアジア地域で広く食べられているソースだが味は多種多様。このお店ではピリ辛なチリソースのような味。
パパダムは南アジアで食べられている薄焼きのクラッカー。細かく砕いてご飯と混ぜる。
パパダムは南アジアで食べられている薄焼きのクラッカー。細かく砕いてご飯と混ぜる。
これらの付け合わせを全て混ぜるのではなく、それぞれをご飯と混ぜつつカレーも混ぜて食べていくのだ、と店員さんが教えてくれた。その割にはご飯が圧倒的に足りないような気もするがまぁよい、早く食べよう!
カレーもご飯と混ぜていざ実食!
カレーもご飯と混ぜていざ実食!
お!これは!!
お!これは!!
口の中にいきなり完成度の高い「調和」が入ってきた。実は付け合わせをそれぞれ単体でも食べてみたのだが、正直ピンとこなかった。もちろん美味しくないというわけではなく、どれも初めての料理で自分の中に参照すべきデータがなかったからである。

しかしカレーもかけてそれらの付け合わせと一緒に食べると、驚くほどに調和がとれているのだ。全てのカレーと付け合わせが手に手を取ってプレート上で出会えたことを喜んでいる。なんだこれは。イッツ・ア・スモールワールドか。
左から野菜、チキン、魚のカレー。それぞれに全く違う味わいで飽きることがない
左から野菜、チキン、魚のカレー。それぞれに全く違う味わいで飽きることがない
カレーはどれもそれなりの辛さだが、素材の味がしっかり出ているので野菜カレーは比較的マイルドな口当たりだ。逆に魚カレーは濃厚な魚の味が感じられてかなりエッジが感じられる。そんな二つのカレーを混ぜてみると、これまた丁度良いバランスになる。

個人的にお気に入りなのはチキンカレーと魚カレーのブレンドだ。肉と魚の旨味が感じられる力強いカレーとなる。ラーメンでいえば魚介豚骨といったところだろう。絶対にうまいやつだ。
そんな風に色んな混ぜ方を試していたらプレート上がすごいことになってしまった
そんな風に色んな混ぜ方を試していたらプレート上がすごいことになってしまった
正直、最後の方は色々なものが混ざり合って何が入っているのかよく分からない状態になっていたが、混ざれば混ざるほど深い味わいになっていくし、一口ごとに味も少しずつ変わっていく。こんな風に最初から最後まで違った味わいが楽しめるのもスリランカカレーの醍醐味だろう。
あっという間に完食。食後にいろんな味の記憶が残るので5食くらい食べたような気になる。
あっという間に完食。食後にいろんな味の記憶が残るので5食くらい食べたような気になる。
この調子で、あと2つ紹介させてください。

スリランカカレーは自由

スリランカカレーは複数のカレーや付け合わせを混ぜて食べるスタイルなので、混ぜ方によってその人独自の自由な食べ方が出来るのも特筆すべき点だ。
さらなる自由を求めてやってきたのは蒲田にあるアーユルヴェーダカフェDidean
さらなる自由を求めてやってきたのは蒲田にあるアーユルヴェーダカフェDidean
Dideanはアーヴェストホテルというビジネスホテルの1階に入っており朝の6時からカレーを楽しむことができる。このお店の特徴は何といってもこれだ。
自分で盛り付けることができる「セルフ・ワンプレート」です!
自分で盛り付けることができる「セルフ・ワンプレート」です!
何度でも盛れるブッフェではないので注意
何度でも盛れるブッフェではないので注意
自由な食べ方ができるスリランカカレーだが、ついには盛り方まで自由なお店が出てきてしまった。普段、何かと制約の多い社会で生きる僕らにとってこのスリランカカレーの自由さはまぶしすぎる。生まれ変わったら、鍋の底で物言わぬスリランカカレーになってもいいかもしれない。
自由に不慣れな現代人のために盛り方の説明はちゃんと用意されている
自由に不慣れな現代人のために盛り方の説明はちゃんと用意されている
早速盛り付けスタート。セルフスタイルってそれだけでテンションがあがるのはなぜだろう。
早速盛り付けスタート。セルフスタイルってそれだけでテンションがあがるのはなぜだろう。
ここではメインのチキンカレーだけは別に出してもらえるのだが、それ以外のメニューはセルフで盛り付けていく。ここでもいくつか付け合わせを紹介しよう。
これはスリランカカレーでは割と定番のビーツのカレー。カレーといっても辛さはほとんどなく、むしろ野菜の甘みが感じられる
これはスリランカカレーでは割と定番のビーツのカレー。カレーといっても辛さはほとんどなく、むしろ野菜の甘みが感じられる
右側にあるのがココナッツサンボール。ここのは酸味が強めで個人的に好きな味
右側にあるのがココナッツサンボール。ここのは酸味が強めで個人的に好きな味
一番記憶に残ったのが、中央にあるキュウリのライタ。ヨーグルトにキュウリを漬けたもので酸っぱいのだが、これがカレーにすごく合う。
一番記憶に残ったのが、中央にあるキュウリのライタ。ヨーグルトにキュウリを漬けたもので酸っぱいのだが、これがカレーにすごく合う。
このような付け合わせを盛り付けていき完成したのがこちら。
かなりインスタ映えなプレートができあがった。
かなりインスタ映えなプレートができあがった。
今回は初めてということもありお手本に忠実に盛り付けてみたが、次回以降は好きな付け合わせを多くとるなど自分の色を出していけるはずだ。仲間で集まって自分だけのワンプレートを作り、その良さを互いに発表するのも楽しいだろう。
一口食べてこの顔である。
一口食べてこの顔である。
相変わらず満足度が高い。チキンカレーはハーブが多く使われているのか少しとんがった味でけっこう辛いが、そこに豆を使った優しい味わいのカレーや甘みのあるビーツのカレーを混ぜることで辛さと甘みのバランスが釣り合い、奥深い味わいとなる。そこには紛うことなき相乗効果が生じている。
そして先ほども書いたキュウリのライタがいいアクセントになっている
そして先ほども書いたキュウリのライタがいいアクセントになっている
さらに言うと、スリランカカレーには自分だけの相乗効果を見い出せる余地があるのだ。普通の料理は食べる以前に作り手側から「ラーメン×煮玉子」「明太子×高菜」などと「この組み合わせ良くないですか?」というものが提示されていることが多い。

しかしスリランカカレーはそんなヒントはないのである。どんな組み合わせでも美味しいのだが、その中から自分だけの相乗効果を探し出すことが求められている。必要なのは探求する心だ。スリランカカレーはそんなことまで僕たちに教えてくれる。
食後にはデザートとコーヒーも出してくれます
食後にはデザートとコーヒーも出してくれます

スリランカカレーは優しい

最後は少し変わり種を紹介したい。
青山一丁目にあるタップロボーンというお店
青山一丁目にあるタップロボーンというお店
こちらも人気店でお昼時の店内はいつも混み合っている。パキスタン出身のオーナーは日本に住んで20年以上、いまや日本国籍を取得しており、スリランカ料理本来の味を日本人に伝えるためにこのお店を開いたという。
スパイスは実家の母親が選び3週間に一度直輸入しているらしい。規模のでかい仕送りだな。
スパイスは実家の母親が選び3週間に一度直輸入しているらしい。規模のでかい仕送りだな。
そんなインターナショナル仕送りによって届けられたスパイスを使って作られるのはもちろんワンプレートスタイルのスリランカカレーだが、この店では変わったメニューが食べられる。それがスリランカ式お弁当「ランプライス」だ。
がっつり「現地」っぽさのあるビジュアル
がっつり「現地」っぽさのあるビジュアル
このランプライスはワンプレートと同じく数種類のカレーと付け合わせをあぶったバナナの皮の上に盛り付けたものである。つまり違うのは容器だけなのだが、思わず手で食べてしまいそうになるくらいの異国ムードが漂っている。
バナナの皮を開くとこんな感じ
バナナの皮を開くとこんな感じ
ぎゅっと押し込められてどこかちまきのような雰囲気も醸し出しているが、正真正銘のスリランカカレーである。お米も本場通りのインディカ米を使用しており、バナナの皮で包んでいるだけあって、忠実に現地の味を再現していることが分かる。

押し込められているので一見量が少なそうだが、カレーも豆、野菜、魚と3種類入っていたり、その他にもチキンやゆで卵が入っていたりとボリューミーな一品だ。ただ全体的にあっさりめの味付けなのでぺろりと完食できてしまう。
少しずつ混ぜて食べても結局すぐに全体が混ざってしまう不思議
少しずつ混ぜて食べても結局すぐに全体が混ざってしまう不思議
それぞれのカレーもそこまでエッジが立っているわけではなく、仲良くバナナの皮に収まっている。一つ屋根の下の大家族といった趣がある。きっとスパイスと一緒にお母さんの優しさも一緒に送られてきたのだろう。まさにスリランカの母の味だ。そういえば母の味ってもう何年も食べていないな…。

スリランカに縁もゆかりもないのにうっかりセンチな気分になってしまった。スリランカカレー恐るべしだ。

スリランカカレーは調和で、自由で、優しい、と書いてきたが、それってつまり「愛」だ。スリランカカレーはつまるところ愛なのだ。

カレーを食べると元気が出るとよく聞く。多種多様なハーブや香辛料によって胃の中がすっきりするから、という理由だと言われるが、一番のスパイスになっているのは「愛」だろう。これからも嫌なことがある時や怒りが収まらない時はスリランカカレーを食べて元気を出そう。
タップロボーンでは普通のワンプレートも食べられます。こっちも美味しいです。
タップロボーンでは普通のワンプレートも食べられます。こっちも美味しいです。
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