額と名画を取り扱うに当たって図書館で本を借りてみたのだが、ほとんど参考にできる話題がなかった。『額縁と名画と肉のトレイ』という本があったらよかったのですが。
けっこう額縁だった
肉のトレイである。一般的なものは真っ白だが、模様がついている時がある。
こういうトレイだ。冷しゃぶ用の豚肉が入っていた。
全面に刻まれた木の様なテクスチャ。上下には水を思わせる鮮やかな模様がゆったりとしたカーブと共に描かれている。サッと食べられる涼やかな肉料理を連想させる、素敵なトレイである。
このトレイの中央にポストカード大の穴を開け、
絵を、裏からテープで固定すると、
けっこう額縁だった。
フランスの画家、クロード・モネの『印象・日の出』という作品である。印象派の絵画の代表作であり、「印象派」という名前のきっかけにもなった。作品の舞台はフランス北西部の都市ル・アーヴルの港とのことだが、冷しゃぶを彩っていた、水の模様とよく合っている。
この、作品とトレイの境、トレイの厚みが分かる部分がすごく額っぽい。
けっこう額っぽい。いいぞ。
というわけで、ここからきれいな肉のトレイと、それに合うと思った名画を何点か紹介します。
というわけで、ここからきれいな肉のトレイと、それに合うと思った名画を何点か紹介します。
ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』
群馬県産桜もち豚こまぎれのトレイ。
鮮やかできれいである。めでたい感じのするトレイだ。
トレイだけにするとこう。
短冊型の紙のようなものを縄で束ねたものが描かれている。何だろうこれは。
肉は玉ねぎと、和風おろしドレッシングで炒めて食べた。
そして、選んだ名画はこちらである。
「みんな、特売だよ~!」
ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』である。絵単体で見たときと比べてずいぶん印象が違う。なんだか楽しそうになってしまった。
絵だけ見るとこう。重厚で気品を感じる。
トレイに入れる絵を選ぶにあたって、額縁の選び方を簡単に勉強したのだが、絵の配色と額の色を合わせるといいということだった。今回は額縁から絵を選ぶので主体が逆になるが考え方は同じだろう。
特売っぽくなったこの額装は、中央の「女神」が持っているフランス国旗の赤と、トレイの左右の赤、そして絵全体の黒っぽさとトレイの中央の黒が対応している。
特売っぽくなったこの額装は、中央の「女神」が持っているフランス国旗の赤と、トレイの左右の赤、そして絵全体の黒っぽさとトレイの中央の黒が対応している。
あと、トレイ全体のレイアウトもフランス国旗と同じく縦に3つに分かれている。
こんな感じで色々関連はしているが、トレイの和の楽しげな模様の影響か、今まで見たことのない『民衆を導く自由の女神』になった。これはこれでいいと思う。
アセンシオ・フリア『巨人』
次のトレイはこちらである。
鹿児島産黒豚のバラうすぎり
茹でてレタスと一緒に食べました。
冷蔵庫に少しだけ残った焼肉のたれがあって、使い切りたくてそれをかけて食べた。ポン酢とかの方がおいしかっただろうなーと思いながら食べた。
トレイはこんな感じ。
黒と金のシンプルな配色。しかし色の境目にはとても細かい、有機的な模様が描かれている。力強さと繊細さを併せ持つトレイである。
今まで同様、カット。
ちなみに、切り口のギザギザしてしまった部分は、目の細かい紙ヤスリで整えられた。
穴の大きさ間違えた。
縦横の比率を何も考えずカットしていた。この穴に合う名画がない。どうしようかと思い調べたら、額装には「マット」というものがあるらしい。
これがマット。
寸法の不一致を調整するだけでなく、額装に広がりと奥行きを与えてくれるそうだ。よかった。是非与えてもらおう。広がりと奥行き。
そしてマットに色画用紙を使って額装した名画はこちらである。
そしてマットに色画用紙を使って額装した名画はこちらである。
アセンシオ・フリア『巨人』
スペイン最大の画家と言われるゴヤ、そのゴヤのの弟子、アセンシオ・フリアの作品。ゴヤの代表作とされていたが、2009年に所蔵先の美術館の検証で、その弟子の作品であることが発表された。
黒と金のトレイが、作品の力強さを際立たせている。色の濃い額には、絵を引き締める効果もあるらしい。確かにぎゅっと絵に視線が集中する感じがする。豚肉のバラのうすぎりが入っていたとは思えない。
黒と金のトレイが、作品の力強さを際立たせている。色の濃い額には、絵を引き締める効果もあるらしい。確かにぎゅっと絵に視線が集中する感じがする。豚肉のバラのうすぎりが入っていたとは思えない。
ゴッホ『ひまわり』
最後に紹介するトレイはこちら。
鶏むね肉パン粉付きソテー用カレー風味
パン粉付きでカレー風味だ。おいしいのが分かる。
おいしかった。
残ったトレイはこちら。
木を模した模様に、金とピンクと白の「シャッ」という何かが飛び交っているトレイ。生命力を感じる模様だ。
これも、穴の大きさ間違えた。
上のふたつのトレイだけ別の日の朝にとりあえずと思いカットしていたのだが、見切り発車で取り返しのつかないことをするもんじゃないなと思った。
仕方がないのでまたマットを使って額装した。
仕方がないのでまたマットを使って額装した。
かわいい。
荒々しい生命力を感じさせるゴッホの『ひまわり』だが、このトレイに入れるとかわいらしさが前面に出た印象がある。女子の部屋に飾ってありそうだ。
『ひまわり』はゴッホが長い期間に渡ってシリーズで描いてきたモチーフらしく、7点制作されたことが分かっている。シリーズ全てを肉のトレイに入れて鑑賞してみたら壮観だろうなと思う。
『ひまわり』はゴッホが長い期間に渡ってシリーズで描いてきたモチーフらしく、7点制作されたことが分かっている。シリーズ全てを肉のトレイに入れて鑑賞してみたら壮観だろうなと思う。
美術館みたいにもなる
肉のトレイ、大いに額っぽくなった。全部で6作品を額装してみたので、壁に付けて美術館みたいにしたい。
やっぱりだ。やっぱり良い。
学芸員の人もいる。聞けばトレイにどんな肉が入っていたか教えてくれます。
絵のことを聞かれると「いいですよね~」と答えます。
これはフェルメールの『牛乳を注ぐ女』
トマトのトレイだったと思う。真っ黒の額もかっこいい。
そして、もうここまできたら白いトレイでもいけるんじゃないかと思って作ったゴッホの『星月夜』
やはりちょっと寂しい感じもするが、シンプルでかっこいいかもしれない。
名画ばかりのいい美術館だ。
もっとトレイに寄せるとどうなるか
トレイに穴を開けて絵をはめるとかなり額っぽくなった。では、スーパーで見る、肉の入った状態のトレイにもっと様子を近づけるとどうなるだろうか。
この状態にもっと近づける。
まず、今までよりもっと「肉」っぽい名画を入れる。
高橋由一の『鮭』である。肉っぽい、というか肉である。魚肉。
この絵画は、幕末期に西洋画を見てそのリアリティーに感銘を受けた高橋由一が、日本人として取り組んだ油絵の名作である。
トレイに合わせてもすごくリアルだ。木の模様のトレイに入った縦長の画面の絵画。サイズこそ違うが本当に鮭が入っている感じがする。
この絵画は、幕末期に西洋画を見てそのリアリティーに感銘を受けた高橋由一が、日本人として取り組んだ油絵の名作である。
トレイに合わせてもすごくリアルだ。木の模様のトレイに入った縦長の画面の絵画。サイズこそ違うが本当に鮭が入っている感じがする。
これにラップをして、
今までのトレイのラップから切り取っていたシールを、
貼る。どうだろうか。
絵画っぽいだろうか。
これはなんだろうか。「名画が入ったトレイが壁に貼り付いている」それ以上でも以下でもないものになった。なんだろうか。少なくとも絵画っぽくはない。
トレイを額にしたいと思ったら、ラップやシールは捨てたほうがいい。
トレイを額にしたいと思ったら、ラップやシールは捨てたほうがいい。
あとラップがないと重ねられるのでしまうとき便利。
そう、トレイを額にしようと思ったらラップはしないほうがいい。ラップをするとトレイがすごくトレイらしくなるからだ。
借りた本。