煮汁を作るために使われた野菜は、この後みそ汁の具になったのだが、どれもスカスカした味わいでおもしろかった。特にエリンギは「弾力という概念」だけを食べているような空虚さだった。
友人を呼んだ
野菜の煮汁である。家で一人で飲み比べたら侘しい気持ちになりそうだったので、友人とピクニックスタイルで調べてみることにした。
友人の中野坂さん(仮名)と河川敷に来た。
ピクニックなので菓子パンを買った。
特に詳しい事情も告げず、休日の中野坂さんを呼び出してしまった。川に来て、腰を落ち着けて初めて呼び出した主旨を説明する。
「野菜のだしの味ってさ、野菜が何種類か入ってるじゃん。だから野菜単体の煮汁ってどんな味がするか、ここで飲み比べるんだよ」
中野坂さんは「あー」と限りなく感情の起伏がない声で同意してくれた。
「野菜のだしの味ってさ、野菜が何種類か入ってるじゃん。だから野菜単体の煮汁ってどんな味がするか、ここで飲み比べるんだよ」
中野坂さんは「あー」と限りなく感情の起伏がない声で同意してくれた。
青空、日差し、野菜の煮汁、「あー」
なんて平坦な「あー」だ。そっとビー玉を置いてみたがビクともしない。よし、この家は大丈夫だ。そういうわけなので早速飲み比べてみよう。
甘くて土臭い、ニンジンの煮汁
用意した煮汁は5種類。それぞれ水筒に入れて持ってきた。
何となく新鮮な煮汁の方がいいような気がして、当日の朝、野菜を煮た。
色はこんな感じ。少し濁った。
水筒から少し注いで中野坂さんに渡す。
すごく警戒していた。
飲んだ後の顔。
筆者も飲んだが、すごく強い土っぽい香りと、砂糖入れたんじゃないかと思うくらいの甘みが印象的だった。こんなに煮汁が甘かったら、煮た後のニンジンってスポンジみたいにカスカスになっちゃうんじゃないかと心配になるくらい甘い。この土臭さと強い甘みが、カレーや肉じゃがに含まれていると思うと不思議である。
中野坂さんに評価をしてもらった。おいしくはなかったみたいだ。
ちなみにこの星は中野坂さんに「おいしいかどうか」で付けてもらっている。つまり香りも味も強烈だったが、そんなにおいしくはなかったということです。
目の前ではゴルフをやっていた。
そういえばと思い、中野坂さんに好きな野菜を聞いたら「ナス」とのことだ。でも煮汁を飲みたいとは思わないらしい。ナスは食感が大事だからだ。
かなりおでんの味がする、ダイコンの煮汁
ここから中野坂さんの提案で、何の野菜か告げずに煮汁を飲んでもらうことにした。
やはり警戒している。
飲んだ。何の野菜か分かったようだ。「ダイコンでしょー」
正解だ。ダイコンの煮汁はかなり分かりやすかった。おでんなのだ。かなりおでんっぽくて、苦みや渋みがない。程よく甘くておいしい。中野坂さんは「塩が欲しい」とずっと言っていた。確かにこの煮汁に塩分を足したらおいしいだろう。
なかなか良いねえ、という感じで飲んでいたが評価は3。
中野坂さんの評価が辛めでとても頼もしい。
ダイコンを煮る様子。煮る時間や野菜の分量も煮汁の味に影響するのだろうなと思う。
色は、ニンジン同様少し濁った程度。
この辺から「たくさん飛んでいるのでちょうちょの写真を撮ろう」のコーナーもはじまった。
中野坂さんの撮った写真。
ちょうちょは逃しているが、手前の葉っぱがボケているので何となくいい写真みたいな雰囲気がある。
意外とえぐみのある、タマネギの煮汁
次の煮汁は、なかなか正解の野菜が出ない。
「…キャベツ?」と言っている。
正解は玉ねぎだ。タマネギの煮汁ってオニオンスープのイメージがあったので当てやすいかと思ったのだが、そうでもないみたいだ。
筆者も飲んでみたが、確かに知っているタマネギの味の他に、えぐみというか渋みというか、一筋縄ではいかない野生のパワーみたいなものを感じた。そう、大地だ。大地を感じた。
筆者も飲んでみたが、確かに知っているタマネギの味の他に、えぐみというか渋みというか、一筋縄ではいかない野生のパワーみたいなものを感じた。そう、大地だ。大地を感じた。
大地のパワー。
色はこんな感じです。
香りはとても良かった。味に反して優しい、ほわっとした香り。
野菜の煮汁を3種類飲んでからコンビニで売っている菓子パンを食べたら「なんて調えられた味だ!」という感動があった。
あと、中野坂さんが「好きな姿勢の話」をしてくれた。
この姿勢が好きなのだが、おばあちゃんちでこうしてテレビを見ると怒られるそうです。
意外としっかり味が出る、ハクサイの煮汁
4種類目の煮汁。
これもなかなか当たらない。葉物野菜だということは分かったが、ホウレンソウ、コマツナ、レタスなどが挙がってからやっとハクサイにたどり着いた。
ハクサイの煮汁は、お鍋のいい味のスープみたいになるかと思ったが、芯の部分の苦味が強く出てしまっていた。葉っぱだけ煮れば結果は変わったかもしれない。とにかく芯の味がしてしまっていた。パンに合わない。
ハクサイの煮汁は、お鍋のいい味のスープみたいになるかと思ったが、芯の部分の苦味が強く出てしまっていた。葉っぱだけ煮れば結果は変わったかもしれない。とにかく芯の味がしてしまっていた。パンに合わない。
意外としっかり味がします。
あとハクサイ、すごく色が出ていてびっくりした。
今回使った野菜の中で一番煮汁に色が付いていた。
「ちょうちょを撮ろう」のコーナーも佳境だが、結局これが精一杯だった。
あとゴルフの練習場に、きれいなハート型の植え込みがあった。
香りが強いが味はほぼお湯の、エリンギの煮汁
いよいよ最後の煮汁である。
嗅いで「めちゃめちゃくさいね」と言っている。
今までとは全然違う香りと味になった。「…もやし?………え?肉?」という混乱っぷりだった。
香りが強いのだがとにかく味が全然ないので、考えようがない、という感じだった。でもよく嗅いでみたら、知っているきのこの香りがしないでもない。
香りが強いのだがとにかく味が全然ないので、考えようがない、という感じだった。でもよく嗅いでみたら、知っているきのこの香りがしないでもない。
予想していない香りが悪い方向に影響してしまったかもしれない。中野坂さんの評価はオール1。
味はなかったけどまあまあ色は付いていた。
調味料ってすごいし河川敷は楽しい
野菜単体の煮汁は、カツオや昆布みたいにだし汁だけでおいしくいただける、という種類のものではなかった。他の材料や調味料でかなり調えられた結果、いわゆる「野菜のだし」が作られているのだ。
何となくずっと気になっていたので筆者としては大変満足である。
何となくずっと気になっていたので筆者としては大変満足である。
わざわざ来てくれた中野坂さんにも満足して欲しいので、このあと川を見て、
日陰に入って、
将棋のアプリで遊んで、
近くのバッティングセンターに行って、
とんかつを食べて解散した。
いい休日だったと思う。日焼けした。
理由は分からないけどなんか未来っぽいな、と思った。