食べてみよう、宇宙食
こちらがその宇宙食だ。チューブタイプの宇宙食は1960年台に使われてたが、それ以降はないようなので、当時っぽい雰囲気で作って販売されてるのだろう。
左から「ボルシチ」、「子羊のマリネ」、「カッテージチーズとりんごのピューレ」。前方の「牛タンとオリーブの缶詰」はたぶん宇宙食ではないが、同じ自販機で購入。
公式サイトを見ても、ロシア語のみなのでまったく分からない……!! 翻訳にかけてみると、こうなった。
こう見ると、コース料理のメニューっぽく思えてくる
こんなメニューを見ながら注文し、料理が出てきたかのように演出すれば、きっと本格気分を味わえるはずだ。
「レストランでコース料理を食べてる風」に食べてみよう。
こちら、ボルシチでございます。
ぼ、ボルシチか……
接着剤と同じように密封されてるので、蓋に付いてる突起を利用して穴を開け……
チュウウウウウウウ……
んんんんン……!?!?
いや、味も香りも普通で美味しいのだ。ちゃんとボルシチの味はする。なのに抵抗感がある。ほんのりケミカルななにかを感じる気がするのは見た目のせいかなぁ。
周りにいた人たちにも試食してもらったら、「離乳食っぽい」「猫缶っぽい」「ミートソースに独特のスパイスのようなものが混ざった感じ?」の意見が出つつも、みなさんそこまで抵抗はないようだ。
撮影の場に、調理を生業としてる方がふたりもいたので、味の評価の信憑性は高いと思う(突然出てきたのは、撮影協力してもらってるお店の鶴井シェフと、この近所で飲食店をやっておられるライター馬場さん)
なんとなく絵の具ぐらいの硬さのものを想像してたが、中身は意外と水っぽい。チューブの容器からスープとひき肉なんて出てきたことがないから、目の当たりにするとびびる。
チューブから出てこられると、見慣れないうちは若干引く
出てくる効果音も「ブリ……ブリブリブリ……!!!!」って、うっわーと言いつつ笑うしかない
メインディッシュへ
つぎは「子羊のマリネ」。味のイメージがまるで出来ない。
おっ、きたぞ……
わっ、子羊!!
突然の生肉。ここで撮影で使わせてもらったお店にたまたまあった肉をさばいてもらったのだった。
「そうか、チューブの中身はこれか……!」と思い込もうとするが、このかたまりを見ただけでそこまでリアルにイメージするのは難易度が高すぎる……。
気を取り直して……
こちら、子羊のマリネでございます
さて、羊でしかもマリネってどんなもんだ。吸ってやろう。
恐る恐る……
ヴェェ…… オエェ……
いや! 違うんです、味は美味しい! 美味しいんですよ!!
と言ったところで何の説得力もない。そこそこ美味しいと思いつつもこの拒否反応。自分で自分がよく分からないので、ひとまず他の人たちにも食べてもらう。
結構大丈夫そう
ラム肉のひき肉に強めのスパイス効いている。原材料を見ると、黒コショウと唐辛子だ。マリネなので、ほんのり酢の酸味もあり、バター風味。
そんなペーストに対し、「猫缶の匂い」「スパイスが強いから好みが分かれそう」の意見が出た。
撮影係だった編集部の安藤さんは、「普段から猫が残した猫缶食べてるからこれも美味しい」と言っていた。野性みがある。
ペーストのどアップがこちら。こんなの載せてすいません……と、何となく謝っておく。
味は大丈夫なのに、ボルシチも子羊のマリネも、なんでこんなに抵抗あるんだろう? 帰宅後、試しに加熱してみたら意外と大丈夫になった。
形状への抵抗と生ぬるさへの不快感か? ひとまずそう結論付けよう。
ワインへの安心感が半端ない。身体がナチュラルなものを欲す……
妙に美味しいデザート
デザートの「カッテージチーズとりんごのピューレ」。
結果を言ってしまうと、これは普通に美味しかった。クセもなく、「安いコンビニスイーツ感ある!」という意見も出た。
ちょ! ちょっとこれいける!!
美味しがってたら「せっかくなので盛り付けてみましょうか」と言ってもらった。えっ、いいんですか!
前のふたつは水っぽくて盛り付けは厳しいが、これはちょっとクリームチーズっぽいペーストなので盛り付けやすそうだ。
厨房でささっと手際よく盛り付けてもらい、
まさかこれが宇宙食だなんて……!
すっかり普通のデザートっぽくなった。もちろん美味しいし、普通に店で出てきたらなんの疑いもなく受け入れるだろう。
スープや肉料理と比べ、デザートのレベルが異様に高かった。
あっ、食べる前にインスタ用!(と言ってみただけ。インスタほぼ動いてないのでアップもしてない)
たぶん宇宙食じゃない缶詰
ついでに同じ自販機で買った缶詰についてもちょっとだけ紹介。
この「牛タンとオリーブの缶詰」は、とても良い酒のつまみになりそうだなと思ったが、
牛タンはすこしゼリー寄せのようになってる。酒に合いそうな塩加減。
その場にいた料理人ふたりに言わせると、「肉のくさみを消さないで煮込んだときの感じがする」「口に入れた瞬間、納豆のような発酵臭がする」とのこと。
傷んでるときのにおいと近くて「こわい」とまで言い出した。そうか、こわいか……
私も安藤さんもまるで気にせず美味しがってたので、さすがプロの言うことは違うなぁ。
これが一番酒が進んだ
一通り食べたところで、4種類を食べた4名の感想をまとめてみた。缶詰を評価に含めても、やっぱりデザートの美味しさは満場一致だ。
エピソードゼロ
最後に宇宙食の入手について軽く振り返ろう。これはロシア国内の大きめの都市に数カ所設置されている自販機で買える。
モスクワの「宇宙飛行士記念博物館」や
モスクワの空港でも買える。漢字で「大空食品」とあるのは中国語表記。
私が購入したのは、サンクトペテルブルクの映画館が入ったモールのようなところ。ここには公式サイトの設置一覧を見て行った。じゃないと確実にたどり着けない。
市街地からすこし外れたところ
入口は行ったら目に入るのはメリーゴーラウンドとスタバ
向かって一番左の簡易プリクラみたいな機械の隣にあるのが、宇宙食の自販機
その右隣にあるコンタクトレンズの自販機も充分めずらしすぎたが……。
こんなに手軽に買えるのか(このときは、1ルーブル=1.8円前後)
コンタクトレンズを忘れてロシアへ行ってもなんとかなりそうと分かったところで、肝心の宇宙食はというと、
ズラララララ……と
缶詰は6種類
ボルシチ(БОРЩ)が一番多く補充されてる
価格はひとつ300ルーブルなので、540円ぐらい。そう高くもないので、ちょっとしたお土産感覚でも買える。
どれがなんの味なのか見当がつかないので、宇宙食の公式サイトと翻訳アプリを行き来しつつ選ぶ
そしてこのように購入したのだった……というのが分かる地味な動画を最後の最後にどうぞ。
宇宙は大変だ
コース料理っぽく食べてから少し時間を置いた今思うのは、やっぱり「チューブに入った食べ物」は抵抗感を増長するかもしれないな……ということだ。その辺りも気になってくる。
当日みんなが「宇宙って大変ですね」と口々にしていた。ちなみに私は宇宙に行きたくない派なので、こういうものを地球上で楽しんで生きていきたい。