外で意識低いご飯を作る実験
「外でご飯を作る」というと、バーベキューだったり、焚火での飯ごう炊さんだったりとガチのアウトドアのイメージだろう。
あれは、野外でしかできない手法でもって楽しむものだ。あらかじめ最高であることが分かっているアクティビティである。
では、そうではない普通のご飯作りも外でやれば美味しく感じるのだろうか。
この公式はどこまで成立するんだろう
普段自宅でやっている調理を、あえて外でやることによってその価値を高められないだろうか。
私の作る弁当がいつも手抜きであることは冒頭で断っておいた。手抜き弁当でも、外で作ることにより「いいもの」にしたいのだ。
ザザーッ(風の音)
ザザザーッ
炊飯器と電子レンジを解き放つ
・炊けたご飯を弁当箱につめて塩昆布をふる
・冷凍庫にあるなんらかのおかずをレンジで解凍して弁当箱につめる
・冷蔵庫にある昨晩ののこりを弁当箱につめる
・プチトマトを詰める
これが私の弁当作りの全貌である(大声)。
こんなにも明らかになって意味のない「全貌」がかつてあっただろうかという全貌だが、事実なので胸をはって大声で言った。
これをそのまま外でやる。今日は家から炊飯器と電子レンジを持ってきた。
ザザーッ(強まる風の音)
ザザーッ
……。
……。
電気や~い!
電気がないぞ~い!
これではただの不法投棄だ。
電気を持ってきた
発電機というものの存在は知っている。お祭り屋台の後ろでブインブインいってるあの赤とかオレンジの色の四角いやつだろう。
だから「そとでもでんきはつかえるよ~!」ということはなんとなく知っていた。
通常、ああいった発電機はガソリンで動くらしいのだが、ちかごろはカセットガスを入れて使える手軽なタイプもあるんだそうだ。
手配しました!(同僚の石川が!)
本稿は通常自宅でやらんということを外でやるとくべつ企画の1本でもある。
同企画に参加しているライターの乙幡さんも外でミシンがけをするということで、電気仲間として一緒に使うことにしたのだ。
白地に赤でHONDAと書いてあるだけでASIMOを思わせ、ASIMOファンの乙幡さんと私は感無量である
ASIMOだ……。ASIMOですね……。(左が筆者の古賀、右が乙幡さん)
ASIMOではなくenepoという機械なのだが胸をふるわせるわれわれ。
ロボットパワーで電気がおらが野外にやってきた。
※ちなみにお詳しい方はすでに「あれ? enepoだと電子レンジは使えないんじゃない…?」とお気づきかもしれない。その通りです。あとで説明させてください。
ロボットじゃない、おまえ、バイクだろう!
まずは炊飯からはじめよう。
この発電機、カセットコンロを装着したあとは、ダイヤルをまわし紐を強く引くと起動するようだ。
紐を力いっぱい引くための姿勢が機械にも書いてある
シャーっ!
ドゥルン、ドゥルンドゥルンドゥルン~~~!!
起動…した…!
ドゥルン、ドゥルンドゥルンドゥルン~~~!!
これは……バイクでは?
ドゥルン、ドゥルンドゥルンドゥルン~~~!!
動作音が完全にバイクのエンジン音なのだ。
ドゥルン、ドゥルンドゥルンドゥルン~~~!!
発電機というものがここまでバイク性の高いものだとは知らなかった。
おまえ、ロボットかと思ったらバイクかよ! そっちのHONDAか!
バイクやんけ
バイクで米を炊く
免許も持っていないバイクのエンジンをかけてしまった! という焦りで心はWOW WOWだ。
しかしバイクで米を炊くと思うと変態すぎてはちゃめちゃに興奮する。
盗んだバイクで走り出すのは怖いけど、めしを炊くなら超やりたい。
いや、だからこれはバイクではなく発電機なのだ。しかも石川くんが一生懸命手配してくれたので、盗んだわけでもない。一旦座ろう、おちつこう。
興奮をおさめ、炊飯を進めよう。米と水を窯へ
「はじめて」と「いつもどおり」のぶつかり合い
あまりにもはじめての発電機の衝撃が大きくついあわててしまったが、しかしやるのは人生でもう何千回とやっている「炊飯器で雑にご飯を炊く」という所業なのだった。
今日は「はじめて」と「いつもどおり」をガチンコでぶつかりあわす日だ。
スイッチオン
……。
発電機のコンセントに炊飯器のプラグをさし、いつも通りボタンを押すとどうやら炊飯ははじまった。
スタートしてすぐのいっとき、ドゥルンドゥル音が強まった。バイクが接続した炊飯器を引っ張って走っていってしまうのではないかと不安になったがいつしかその音も多少はおちついた。
炊飯器がご飯を炊きはじめただけでなんでこんなに笑えるのか
しかしひととおり興奮してしまうと、あとはひまなのだった。
だいたい自宅で炊飯器を使うときはタイマー予約をしたり、炊飯器をセットしてからほかの料理を進めたりするだろう。
炊飯器のボタンを押して、さあ! さあ、さあ! と炊き上がりを待ち構えるということはほとんどない。
しかたないので屋外のアクティビティでひまをつぶすしかない。Twitterでも見られたらいいが天気が良すぎて画面が反射でうまく見られないのだ。
なので、四葉のクローバーを探したり
たんぽぽの綿毛をとばしたり
かっこいいポーズを引きで撮影してもらったりした
石川くんは小っさいバッタをつかまえた(この人はバッタが好きなのだ)
炊けました
もう蒸らしは省略してもいいのではと気をもみ始めたころ、米は炊けた。
さて、このなかでHITACHI製の炊飯器を使っている方はどれくらいいるだろう。
私の炊飯器はHITACHI製の2016年ものなのだが、こいつはご飯が炊けると独特のブザーで知らせてくれる。
「テーケテーケテーケテーケテーケテーケテ~♪」
という具合だ(なにが、という具合だ、という分からなさだが)
炊けたときの動画をとっておいたので、特にHITACHIの炊飯器のあの炊き上がり音に共感できそうな方には見ていただけたら幸いであります。
外で!
いつもの!
ご飯が!
炊けました~~!
というボルテージはここで最高潮に達した。
レンジは使えませんでした
さて、発電機のenepoが登場したあたりでも書いたが、enepoでは電子レンジは利用できないのだった。
HONDAのサイトには「
はじめての発電機選び」という丁寧なページがあってそこにも掲載されているのだが、完全に見落としていた。
なので、電子レンジに関しては日光浴をさせるために野外に持ち出しただけ、ということになった。
ぽかぽか、きもちいい~!
稀有な体験をレンジにさせてやれたかと思うと気分もよいものである。うん。
しかし、そうだ、冷凍食品を解凍せねばならない。
ということで、ご飯の上に乗せた
電子レンジがない時代にはよく炊けたご飯の上でいろいろなものを温めたことがあったと聞くが、こういうことか。
そして実際、前日の残りのかぼちゃの煮物と冷凍食品の春巻きはほっかほかにあたたまった。
単純に、炊きたてのご飯は美味しい
あとは淡々と弁当箱に詰め
できました
アー写
感想としては、「外で食べるご飯はやっぱりおいしいねえ」というよりも「炊きたてのご飯はやっぱりおいしいねえ」というのが先にきた。
弁当箱につめたが、どこかへ持って歩いていないので米粒がまだふわっとしているうえほっかほかなのだ。
ふんわりだ!
それに比べると、おかずは笑うほどいつもと一緒だった。ご飯がおいしかったのでおかずの普通さが明らかになってしまったようなところもあった。
温め返しただけではだめだったか。
結果として…
ということがわかった。
とはいえ、春の晴天のもと食べるお弁当はただただシンプルに幸せだった。
敷物が足りてない写真(野外活動にうとすぎて持ってき忘れた)
発電機を使った野外で炊飯器作戦、流行ってもいいんじゃないか。
炊飯器からご飯をふるまうのもよいものだった
火を起こす手もある
そうして思ったのだが、発電機は手配するのになかなか難儀だ。
ご飯を炊くだけなら火を起こせばいいのではないか。
炊飯器は重いが、火があれば小鍋でお米は炊きあがる。
火が起こせる野外というのは限られているかもしれないが、探せばそういうことが許されている場所もあるだろう。
火があれば夜になっても明るいし、なんなら外で一夜をすごしてもいいかもしれない。
そう、これが「キャンプ」の起こりである。
買って以来はじめて炊飯器に取っ手がついていてくれてありがとうと思った