特集 2018年4月17日

大人が3人いれば「ドクロ」くらい漢字で書けるんじゃないか

「ドクロ」を漢字で書こうとしています。
「ドクロ」を漢字で書こうとしています。
ぼんやりとイメージはできるのにどうしても具体的に思い出せないことがある。漢字とか、駅の順番とかだ。普段はスマホで検索して「そうだったそうだった」で済ましてしまうものだが、これって、他の人と相談すれば大体分かるんじゃないだろうか。
1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

前の記事:靴下で神経衰弱をすれば、もっと靴下のことを理解できるかもしれない


ぼんやり分かるけど具体的には分からないものがある

なんかぼんやり正解が見えるのだが、どうしても具体的に思い出せないこと。そんなもやもやを抱える3名が集まりそれぞれの「ぼんやり」を持ち寄れば、足りない部分を補完し合って正解が導き出せるのではないか、という試みである。
ぼんやり分かるけど具体的に分からないもの。例えばこういうことだ。
ぼんやり分かるけど具体的に分からないもの。例えばこういうことだ。
筆者が1人で考えるとこうなった。下の、2重線が引いてあるものが最終的な解答です。
筆者が1人で考えるとこうなった。下の、2重線が引いてあるものが最終的な解答です。
これが特にひどい。自分で見ても意図が分からない。
これが特にひどい。自分で見ても意図が分からない。
正解はこれ。「あーー!」となる。
正解はこれ。「あーー!」となる。
「初めまして」ではないのだが、即答できたかというと絶対無理だ。法事でしか会わない親戚ぐらいのぼんやりさだ。目を離したらまた忘れてしまいそうである。

特に「薔」の真ん中のところとか、「薇」の真ん中の下の「几」みたいなようでちょっと違うやつのところとか、かなり記憶に濃く残っていないと答えられないだろう。

でもこれをたまたま誰かが当てずっぽうで書いたり、自分がいい加減に書いたパーツを誰かが見出してくれれば、どうなっていたか分からないぞ、と思うのだ。

3名ずつのチームでやってみよう

こういうぼんやりした考えごと、やはり人に相談できれば正解に近づくんじゃないかという感触がある。これを3人のグループでやってみよう。集まったのはこちらの6名だ。ちょうど2チームできた。
デイリーポータルZのライター6名。背景はぼんやりした何か。
デイリーポータルZのライター6名。背景はぼんやりした何か。
上の3名をくまさんチーム、下の3名をきりんさんチームとします。
上の3名をくまさんチーム、下の3名をきりんさんチームとします。
『3人寄れば文殊の知恵』とも言う。大人が3人で相談すれば大体のことは分かるはずだ。それではやってみよう。
江ノ島さん、井口さん、北向さんのくまさんチーム。
江ノ島さん、井口さん、北向さんのくまさんチーム。
ネッシーさん、與座さん、トルー(筆者)のきりんさんチーム。
ネッシーさん、與座さん、トルー(筆者)のきりんさんチーム。
後ろに色々なものが置いてあるが、そういうレンタルスペースで撮影を行った。紙とペンしか使わない催しなのにもったいない気もするが、漢字や駅名が思い出せそうで思い出せない、整理のつかない我々の頭の中を象徴していると思いながらご覧ください。
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「バラ」と同じく、見れば分かるけど書けない漢字だ。でも見れば分かる、ということは3人でそれっぽい漢字を書き続ければいつか誰かがピンと来るかもしれない。できる気がする。3人も大人がいるのだ。
制限時間は5分。開始と同時にネッシーあやこさんがドクロの絵を描いた。
制限時間は5分。開始と同時にネッシーあやこさんがドクロの絵を描いた。

漢字の元祖は象形文字である。そういうアプローチもいいかもしれない。とにかく開始と同時にそれっぽい文字をたくさん書いてみる。
何も打ち合わせていないのに「とにかく数を出そう」という気持ちが全員にあった。
何も打ち合わせていないのに「とにかく数を出そう」という気持ちが全員にあった。
くまさんチームも同じく、各々が思う「ドクロ」を書き出していく。
くまさんチームも同じく、各々が思う「ドクロ」を書き出していく。
江ノ島さんが「骨」を3つ重ねていた。多分違う。正解は分からないのだが違うことは分かる。
江ノ島さんが「骨」を3つ重ねていた。多分違う。正解は分からないのだが違うことは分かる。
「轟」みたいな漢字が頭の中にあったのだろう。この後も「嬲」のように「骨」を「男」2つで挟んだ漢字を書きながら考え込んでいた。
他のみんなも、もやの中を手探りで歩く。これも何か違う。
他のみんなも、もやの中を手探りで歩く。これも何か違う。
なんか違う。
なんか違う。
なんか違う三銃士。
なんか違う三銃士。

解答発表

なんか違うなんか違うを繰り返して、制限時間の5分が経った。
それぞれのチームに、
それぞれのチームに、
チームとしての解答を出してもらう。
チームとしての解答を出してもらう。
くまさんチームの解答はこちら。
くまさんチームの解答はこちら。
なんか言いたいことは分かる。急いで書いたので分かりにくいが1文字目は「骨」の隣に「蜀」だろう。
きりんさんチームの解答はこちら。
きりんさんチームの解答はこちら。

当時はいい線いってるぞ!と思って出したが、今見ると「複雑にしとけばいいだろう」という投げやりな姿勢も見られる。しかしどちらもチームも、ドクロの「ロ」は「路」の字が入っているだろうと予想した。それぞれ当てずっぽうに書き出したが、結局は一番説明の付きやすいパーツを選んだのだ。

そして、気になる正解はこちらである。
「あーーーー!」となった。
「あーーーー!」となった。
またである。また、法事でしか会わない親戚がいた。「そうそうそうそう」と思うが、じゃあ制限時間内に書けただろうかと考えると、絶対に書けない自信がある。「これは書けないぞ」という確かな手応えがあるのだ。「髏」の右側なんてひどい。こんなのパッと思い出せるわけがない。
と思って自分たちの用紙を見返すと、
と思って自分たちの用紙を見返すと、
それっぽいパーツを與座さんが書いていた…!
それっぽいパーツを與座さんが書いていた…!

これである。これに誰かがハッとすれば正解できたのだ。絶対無理だと思っていたが思わぬところに道はひらけていた。3人いれば光明が見えるのだ。
勝者は「髑」を見つけたくまさんチーム。勝利の証に、ぼんやりした花で飾りをつけました。
勝者は「髑」を見つけたくまさんチーム。勝利の証に、ぼんやりした花で飾りをつけました。
3人で相談すると、正解が近づく感じがするし何より楽しい。いつも1人ぼんやり悩んでいたことが人に話せるのが嬉しいのだ。問題を変えてもう少しやってみよう。
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第2問 消防車のイラストを描け

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ぼんやり分かるけど正確には分からないもの。消防車なんかどうだろうか。大きい赤い車でホースがあって、と要素はたくさん出てくるが、なんとなくそれぞれが噛み合わない。全体像がはっきりしないのだ。
みんな、思い思いの消防車を描く。なんだそれは。幼稚園か。
みんな、思い思いの消防車を描く。なんだそれは。幼稚園か。
本当に幼稚園だったのかもしれない。
本当に幼稚園だったのかもしれない。
上にある現代アートのようなものに、各々が要素を足していく。しかし「これはあった」「これはここにある」とそれぞれが主張を譲らないので、どちらのチームも要素全部盛りの消防車ができた。
くまさんチームの解答
くまさんチームの解答
うしろのところに小さいはしごが付いている。そして真ん中上部のおまんじゅうみたいなものは「ホースを取り付けるところ」
うしろのところに小さいはしごが付いている。そして真ん中上部のおまんじゅうみたいなものは「ホースを取り付けるところ」
あと真ん中にある「ドア」だが、この中に必要な道具が色々入っているらしい。消防士の絵が上手なのでそれっぽく見えるが、車だけ見ると目を細めてしまう。言ってることは分かるけどなんか違う、という感じだ。頭の中のぼんやりした消防車がそのまま出てきたみたいでおもしろい。
きりんさんチームの解答
きりんさんチームの解答
これも同じく、頭の中にあるぼんやりした消防車だ。
ポイントは、側面に「消防庁~」と所属っぽいものが書いてあるところと、背面にシャッターがあるところ
ポイントは、側面に「消防庁~」と所属っぽいものが書いてあるところと、背面にシャッターがあるところ
シャッターは與座さんがしきりに主張していた。なんか分かる気がするのだ。シャッターありそうなのだ。

では正解を見よう。狂おしいほど見たかった正しい消防車はこちらである。
「はあぁ~~」となった。(写真:写真AC)
「はあぁ~~」となった。(写真:写真AC
ホースの位置は両チーム大体合っているがくまさんチームが言っていた小さいはしごはない。ドアもない。でもホースを取り付けるスペースはある。きりんさんチームの「なんか書いてある」はあったが位置が違う。もっと前だ。

そして両チーム、背中に背負わせていた大きなはしごがない。調べたら、消防車ってポンプ車やはしご車などすごく色々な種類のものがあって、もちろん種類によって見た目が違う。(写真の消防車はポンプ車だと思う)その色々を全部まとめて「消防車」として記憶していたので、イメージが混ざってぼんやり記憶されていたのかもしれない。
背面のシャッターもなかった。(写真:写真AC)
背面のシャッターもなかった。(写真:写真AC
勝敗は、撮影をしてくれていた編集部の橋田さんに見てもらい、
勝敗は、撮影をしてくれていた編集部の橋田さんに見てもらい、
きりんさんチームが勝ちました!(ぼんやりした花が贈られた)
きりんさんチームが勝ちました!(ぼんやりした花が贈られた)
勝因は、間違ってはいたが背面までがんばって考えたところなんじゃないでしょうか。でも橋田さんは「ほぼ同レベルなんだけど!」とすごく強調していた。

第3問 山手線の路線図を書け

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東京の有名な路線、山手線の路線図である。よく使う区間なら分かるが、一周全部は自信がない。しかしそういう人間3人がいればパーフェクトな解答が出せるのではないか。

1問目、2問目は難易度が高かったがこれはいける、これはいけるぞと思う。
そして解答が出た。こちらはくまさんチーム。
そして解答が出た。こちらはくまさんチーム。
きりんさんチーム。
きりんさんチーム。
きりんさんチームは、開始当初からネッシーさんが怒涛の勢いで渋谷~新宿~池袋周辺を埋めていた。他のエリアも危なげなかったが、品川周辺で少しペンが止まる時間があった。筆者は鶯谷~東京ぐらいだったら自信がある。狭い。

そして答え合わせである。橋田さんに正解を読み上げてもらい、各チームチェックしていく。
くまさんチームは27点。
くまさんチームは27点。
田端の位置の間違いと、新大久保を「大久保」と書いたのでマイナス2点。惜しい!ほとんど完璧だった。
きりんさんチームは28点。こちらもほとんど完璧。
きりんさんチームは28点。こちらもほとんど完璧。
書きながら「何か足りない」とずっと言っていたのだが、3人とも田町が出てこなかった。
きりんさんチームの勝ち!おめでとう!(花を増やした)
きりんさんチームの勝ち!おめでとう!(花を増やした)

3人いれば結構分かる

ここまで3問やってみたが、1人だとぼんやりしか分からなかったことも3人いれば結構具体的になることが分かった。「髑髏」も「消防車」も「山手線」も惜しいところまで行っていた。1人じゃ無理だっただろう。

「文殊の知恵」とまではいかないかもしれないが、一般常識の分野ではかなり有効だと思う。分からないことは人に聞こう。

でも、知っている人が一番強い

でも、でもである。詳しい人が1人いるのならその1人が最強である。
こういうのもやっていた。
こういうのもやっていた。
こういう検証って、参加者全員が分からないが、答えを見たら「あーー!」となる絶妙な問題にする必要がある。これも、マイナーな国をみんなでどれだけ挙げられるかがポイントになるかと思ったのだが、
北向さんがアホほど挙げていた。(ヨーロッパ総合情報サイト EUROPA、(キッズ外務省)世界の国々:ヨーロッパ(NIS諸国を含む)の情報をもとに答え合わせをしました)
北向さんがアホほど挙げていた。(ヨーロッパ総合情報サイト EUROPA(キッズ外務省)世界の国々:ヨーロッパ(NIS諸国を含む)の情報をもとに答え合わせをしました)
アンドラってなんだろう。誰だろうか。エストニア、ラトビア、リトアニア、クロアチアなども聞けば分かるが制限時間内にはなかなか出てこない。

「分からなくても3人で考えれば結構いい線いくねー」となっていた直後、「詳しい人」の登場である。小手先ではどうにもならない力の差を感じた。

分からないことは詳しい人に聞こう。
すごい。
すごい。
優勝です!!
優勝です!!

楽しかったので家でもやった

楽しかった。特に分からない漢字を考えるのは、真っ暗な中を手探りで移動しているみたいでおもしろかった。ふと閃いて「これなんじゃないの…!」と思って書いた字がもう全然違うのだ。
「蓋」と書こうとしています。
「蓋」と書こうとしています。
この漢字を手探りで書くやつが一番手軽にできて楽しいと思ったので、最後に例題を載せます。分からなさを楽しもう。
「蓋」と書こうとしています。
「蓋」と書こうとしています。
「蓋」と書こうとしています。
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