特集 2018年4月11日

韓国と北朝鮮の境界をまたぐ

向こう側は北朝鮮
向こう側は北朝鮮
朝鮮半島情勢が目まぐるしく動いている。

今月末(2018年4月)には、韓国と北朝鮮の首脳会談が板門店でおこなわれる予定だ。

その板門店は、北朝鮮と韓国の実質的な国境線上にある。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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38度線

境目とあらば見ておきたい。あわよくばまたがりたい……という思いが高じ、最近は、国境を見に海外へ行くことがある。

たしか、朝鮮半島の境界線は38度線を基準として引かれたということを中学校の社会科で習ったのは覚えている。

この国境は、EUの国境のように、気軽に行き来することはできないし、ましてやふざけてまたぐことなんかできっこない。
赤と青の境目が国境です
赤と青の境目が国境です
韓国と北朝鮮の境界線は、南北軍事境界線と呼ばれている。北朝鮮も韓国も、お互い本来は朝鮮半島全部が領土という建前になっているので、この境界線は厳密に言うと国境ではない。

軍事境界線から南北にそれぞれ2キロメートルの幅の非武装中立地帯(DMZ)が、黄海から日本海まで、朝鮮半島を横断するように設定されており、ここへは一般人の立ち入りは禁止されている。

そんなピリピリした境界線の中で、1か所だけ、観光客が南北の境界線をまたぐことができるポイントが板門店だ。

ツアーに申し込む

板門店は、ぶらりと一人で見に行っても中には入れてくれない。日本人は必ずツアーに申し込まなければ行くことができない。

ツアーには、さまざまなコースがあり、臨津閣観光地、第三トンネル、都羅山展望台、都羅山駅、板門店など、DMZ周辺の観光地を組み合わせて催行しているものが多く、値段はソウル市内から、だいたいひとり7000円から15000円ぐらいで行くことができる。
バスで移動します
バスで移動します
DMZまでは、ソウル市内から、漢江にそって伸びる高速道路を北上し、バスで1時間ほどの距離にある。
警備小屋だ
警備小屋だ
高速道路の脇に目をやると、川にそって延々と鉄条網が続いており、所々に監視小屋がこしらえてある。

昔はこんなものは無かったらしいけれど、むかし、泳いで国境を越えてやってきた北朝鮮の工作員がいたため、こういったものが設けられたという。

バス車内では、英語と日本語で、板門店についての注意がガイドのひとから案内される。

板門店は、さすがに最前線の軍事基地であるため、厳しい制約が多い。
まず、ふざけた服を着て行くとだめだといわれた。北朝鮮側の兵士などを挑発したりするような服はだめということのようだ。これは、よっぽど変なかっこうでなければ咎められることはないらしいが、一昔前までは、ジーパンは北朝鮮を刺激する可能性があるので、ダメだったらしい。

もちろん、ガイドのひとの話を聞かずに勝手に境界線を越えたり、警備する兵士に話しかけたり触ったりとかそういうのも一切禁止である。

バス車内では、その他、朝鮮戦争の経緯などをガイドの方が解説してくれた。日本では、朝鮮戦争と言うけれど、韓国では韓国戦争と呼称するらしい。

都羅山展望台で北朝鮮を望む

板門店に行く前に、都羅山(トラサン)展望台という展望台に向かう。
迷彩模様の展望台
迷彩模様の展望台
宣伝村が見える
宣伝村が見える
北朝鮮の宣伝村とは、北朝鮮が国の豊かさをアピールするため、国境近くに作った町だ。目を凝らしてよくみると、ひときわ高い国旗掲揚塔に北朝鮮国旗がはためくのが見える。
北朝鮮の宣伝村
北朝鮮の宣伝村
旗、はためいてるね~
旗、はためいてるね~
かなり立派な住宅などが見えるものの、人は住んでいないのだ。。

一方、韓国側にも一般人は立ち入ることができないDMZ内に村が存在している。

ちょっと右側にある国旗掲揚台が自由の村
ちょっと右側にある国旗掲揚台が自由の村
自由の村と呼ばれる村で、この村には実際に人がすんでいる。しかし、自由とはいうものの、住民以外は勝手に入ったりすることはできない。

自由の村の住民は、税金や兵役が免除されている代わりに、移動や外出など日常生活にさまざまな制限があるらしい。

ちなみに、この異常に高い国旗掲揚塔は、韓国が98.4メートルの塔を建設したところ、北朝鮮が160メートルの掲揚塔を建設した。
あわや、国旗掲揚塔の高さ戦争が勃発かと思われたが、韓国は乗らなかった。そのため、国旗掲揚台の高さは韓国の方が低い。

この煽り耐性の強さ。SNSですぐ炎上する芸人なんかに見習って欲しいスルー力だ。

板門店にやってきた

都羅山駅(韓国と北朝鮮を結ぶ鉄道、京義線の韓国側の最後の駅だが、現在は使われていない)や、第3トンネル(北朝鮮が韓国に向けて秘密裏に掘り進めていた地下トンネル)という観光地に寄りつつ、板門店へ向かう。
都羅山駅
都羅山駅
地下トンネルに行くためのケーブルカー
地下トンネルに行くためのケーブルカー
板門店は、店という字が入っているが、何らかのショップではない。

板門店ではブリーフィングルームで、事前に朝鮮戦争などの歴史についてのビデオを見させられ、何か起こった場合の責任は自己責任です。という誓約書にサインをする。この間、カメラでの撮影はできない。

そしていよいよ、本会議場だ。ツアー客は、二列に整列させられ、本会議場へ向かう。

北朝鮮との境界が見えるところへやってきた。ここから写真での撮影が許可される。
水色の小屋が「本会議場」
水色の小屋が「本会議場」
色分けするとこんな感じ
色分けするとこんな感じ
韓国側で警備しているのは国連軍の兵士だけれど、これがびっくりするほど動かない。特に、屋根の下で体を半分だけ隠して立っている兵士はマネキンかというぐらい動かない。
動かない
動かない
会議場の中に入る。
境界線上に机が置いてある
境界線上に机が置いてある
境目はこんな感じだ
境目はこんな感じだ
会議場の中を見学できる時間は5分ほどしかないので、慌ただしく、写真をとっていく。

窓の外をみると、境界に沿って石が連なっており、地面の造りが韓国と北朝鮮で違っていた。
意図してそうしたわけではないと思うけれど、境界マニアに優しいわかりやすい境界である。
砂利のほうが韓国で、土の方が北朝鮮だ
砂利のほうが韓国で、土の方が北朝鮮だ
と、窓の外を見て感心している時間はない。軍事境界線をまたぐしかない。
はい、またぎました
はい、またぎました
慌ただしすぎるのと、見学者が多いのでなにが何やらわからない状態だったけれど、ひとまず目的はたっせられた。
こういうことですね
こういうことですね
境界またぎ写真はいろいろ撮ってきたけれど、これほど緊張する場所はない。下手こいたらマジで怒られるやつなので、ふざけもほどほどにしなければいけない。
せいいっぱいふざけてこれ
せいいっぱいふざけてこれ
警備の兵士と記念写真である。

ちなみに横の兵士は微動だにしない。感心するほどうごかない。
ぼくのひきつった笑顔を見て欲しい、せいいっぱいふざけてこれである。兵士のひとに触ったり話しかけたりすると、即逮捕なので、顔がひきつっているのだ。
べつにふざける必要ないだろうというご意見があるのは重々承知だが、やっぱりどうしても、こういう緊迫した場所ではちょっとふざけたくなってしまう。緊張と緩和の笑いである。

この写真、なんかおもしろいのでもう一回載せとこう。
みればみるほど変な写真だ
みればみるほど変な写真だ

今はツアーを受け付けてない

さんざん、板門店ツアーの紹介をしてきたのだが、南北首脳会談に向けた警備と整備のため、残念ながら、現在この板門店ツアーは中止されている。(2018年4月現在)

南北首脳会談が終わり、その次の米朝首脳会談がどこであるのかわからないけれど、それが終われば、おそらく再開されると思う。
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