サラダ巻きの元祖は宮崎の寿司屋の「レタス巻き」(らしい)
さっそく買ってきた。
そうそう、君だよ。
具材を確認するために海苔を剥がす、日本人としてのなにかが揺れる。
分解!
このサラダ巻きの具材は、玉子焼き、カニカマ、きゅうり、ハム、すじこ、サーモンっぽい切り身。商品名を「海鮮&サラダ巻き」と謳っているから、後ろのふたつは除いてもいいだろう。うん、となると、イメージ上のサラダ巻きだ。が、この具材だけをサラダだと言って出されても、冷蔵庫の残り物を処理するにしてもまだあったろうと嫌味なことを思ってしまいそう。
調べてみると、サラダ巻きは昭和41年に宮崎の寿司屋が発明したものらしい。レタスと海老とマヨネーズを巻いた、今に比べればシンプルなもので、名前も本来は「レタス巻き」。当初、酢飯とマヨネーズの組み合わせは一部でヒンシュクを買ったが、その美味しさが広まったことで「変わり種巻き」の分野が発展した。へー、補足で調べたつもりが勉強になっちゃったよ。
君もいろんな歴史を経てここにいるんだね…。
レタス巻き!分かるよ!しかーし、それをサラダ巻きと呼ぶなら話は別でい。一度でいいから見てみたい、本物のサラダでサラダ巻きをつくるとこ。という訳で、本題に入ります。サラダでつくるサラダ巻きは美味しいのでしょうか。
今ってラップでぐるぐる巻きにするんじゃないんですね。 帰国して二ヶ月経ってもなお、コンビニの進化に驚く海外在住者。
ふつうのサラダが意外と売ってない問題
しかし、サラダを探す、たったそれだけのことに意外と難儀した。イタリアン系のレストランで出てくるサラダは出されたからしゃあなし気分で食べていた自分だが、ほしいときに限って見つからない。しかも、スケジュール上の都合で、ちょうど一時滞在していた土地勘のない名古屋で調達しなければならなくなってしまった。
地元の方から「デパ地下なら豊富にある」という情報を聞きつけて行くも…
「香ばし筍と海老の春色サラダ」に「蒸し鶏とパクチーのやみつきサラダ」に…
「フレッシュバジルとアボカドのサラダ」に「シャキシャキれんこんの梅しそサラダ」に「カレークリームの海老&アボカドのマカロニサラダ」に…
いや、ちょっとオシャレすぎる。
サラダ巻きの具材は徹底してストイックにサラダしていてほしい。これじゃおしゃれなデパ地下巻きだ(それはそれでおもしろそうだけど)。ともかくベーシック、ただサラダであることが取り柄なだけの、不器用な、高倉健のようなサラダがほしいのだ。まぁ高倉健の映画『ぽっぽや』しか見たことないけど。さらに愛知のエビ好き文化も相まって値まで張る!(詳しくは「愛知でエビを食べるべき理由」)。
さてどうしようかと思っていたら、
コンビニで一気に解決しました~!
いやー最近のコンビニってほんとすごいね、高倉健が7人も!朝6時からサラダだけを買い込む私に、レジ打ちしていた南米出身と思われる店員さんが何を思ったのかちょっとだけ気になるが。たぶんもう会わないだろうしまぁいいか。使うサラダはこれでよかろう、よっしゃ本番。
サラダでつくるサラダ巻きはうまいのか
具材に使うサラダは、ポテトサラダ、かぼちゃサラダ、明太ポテトサラダ、マカロニサラダ、ごぼうサラダ、春雨サラダ、たまごサラダ。この計7種類。
こんなにサラダを食べる日は今までになかったな…。
つくります!
上海のお見合い大会の取材で同行した水谷くんに駆けつけてもらった。上海からではない、彼はあのあと(と言っても2ヶ月前だけど)帰国して愛知県は一宮市に戻ったのだ。これまでベトナムと台湾と中国と日本で一度ずつ会っているのでお互いに神出鬼没感がすごい。
まったく食欲のそそられない調理風景ですが、ひたすら巻いていきます!
で、完成!
うん、想像通り見た目は悪い!でもここに来るまで一時間以上がんばったから目をつぶってほしい。それに見るべきものは味である。
「明太ポテトサラダ巻き」はいきなり失敗
初手はなんとなく美味しそうな明太ポテトサラダ巻きから。
いただきまーす。
撮影に回ってくれていた川西さんも。
もちゃ…もちゃ…
水嶋「全然おいしくないわ…」
水谷「ですね…」
水嶋「マッシュポテトとご飯の食感が絶望的に合わない」
水谷「明太子は合うと思いましたけどあまりそっちの感じがしませんね」
水嶋「かろうじて辛味を感じるくらいかね」
期待していた明太感はなく、マッシュポテトとご飯との相性の悪さが際立った。今はじめて知った、日本米ってペースト状のものとの相性が最悪だったのか。サラダ巻きのレタスは食感担当なのだ、たぶん。勝手にかけ合わせておいて何を言うかという話だが、初手から垂直墜落。
ただ、味そのものが悪いかというと、とにかくふつう。
三人の評価(5段階)はこちら!
明太ポテトサラダ巻き
水嶋:★★☆☆☆
水谷:★★★☆☆
川西:★★★☆☆
「ポテトサラダ巻き」は明太ポテサラよりも意外とおいしい
つづいてはポテトサラダ巻き。 明太ポテトサラダにならえば、期待はできないが…。
おや?
水谷「あれ、意外とおいしい」
水嶋「え、うそ」
川西「ほんとだ、いけるじゃないですか」
水嶋「えー?でも食感はよくないでしょ。ポテトサラダとご飯いっしょに食べてるだけやで」
水谷「そこは否定しませんけど、マヨネーズがマッチしてるんですよ。明太ポテトサラダと違って味がよりシンプルな分、存在を感じるので」
川西「明太よりも合うのは意外ですよね」
明太ポテトサラダがダメならもっとダメだろうと思われたポテトサラダ、意外にもこちらの方が軍配が上がる。サラダ巻きの酢飯&海苔というフォーマットだと、明太よりもマヨネーズの方が勝つということなのかもしれない。確かに、辛いものと酸っぱいものが両立する料理って知らない。ただ、個人的にはポテトサラダとご飯を食べてるだけという印象は否めなかった。
ポテトサラダ巻き
水嶋:★★★☆☆
水谷:★★★★☆
川西:★★★★☆
「ごぼうサラダ巻き」は文句なしに絶品
ごぼうサラダ巻き、食感の基準で考えれば美味しいはず!
水嶋「これは…これって…サラダ巻きじゃないの!?」
水谷「シャキシャキしていてふつうにおいしいですね」
川西「ちょっとだけ味薄くないですか?」
水嶋「うーん、俺はちょうどいいかなぁ」
薄いっすよ。
ふつうにおいしくて、逆にコメントが出てこなかった。よくよく考えたら、回転寿司チェーンのサラダ軍艦はごぼうが入っていなくもない気がする。ほかのサラダに比べてもマヨネーズが多めでシッカリとした食感、という最高のマッチング。明太サラダ巻きの真逆だ。
ごぼうサラダ巻き
水嶋:★★★★★
水谷:★★★★★
川西:★★★★☆
「マカロニサラダ巻き」は腹が膨れるだけのレーション
食べる前からなんとなく察しはつくが…
もぐも…あっ!
も…あっ!
水嶋「これはねちゃねちゃするし…」
川西「味もしないですね…」
水谷「そもそもご飯よりも柔らかいものと食べちゃダメですよ」
水嶋「もはや異物混入のレベルやな」
水谷「それですね」
水嶋「まずいレーション(軍隊で食べられる携帯食)ってこんなんだと思う」
水谷「食べたことあるんですか?」
水嶋「ない。けど、この味がなく腹だけが膨れる感じがまさにイメージ通り」
ご飯より柔らかい触感の時点でペアリング禁止。味も薄いのでご飯の魅力を引き出すどころが異物感が強まってしまう。レーションか、近未来SF映画に出てくるの固形食料のイメージだ。二度目だが、ほんと勝手にかけ合わせといて申し訳ないんだけども。
マカロニサラダ巻き
水嶋:★☆☆☆☆
水谷:★★☆☆☆
川西:★☆☆☆☆
「春雨サラダ巻き」はそばめし的おいしさが光る
ご飯と春雨、こんな組み合わせあった?
これは!
川西「おいしい!」
水谷「おいしい!」
水嶋「なーにを言って…おいしい!」
川西「春雨も酸っぱいから相性がいいのかな」
水谷「きくらげの食感が仕事してます、あとはゴマ入ってる?海苔との相性もいい」
水嶋「ごま油の風味も大きいよね。中華風に感じるんだ。韓国の海苔巻きはまさにそうだし。あとご飯の粒感と春雨のプリッと感が、そばめしみたいな食感のコントラストを生んでる」
ごまときくらげの食感がご飯とマッチ、ごま油の風味も海苔に合っている。きくらげなどとの掛け合わせはどことなくちらし寿司をイメージさせるかも。ご飯と春雨の相性も、プリプリもちもちと、神戸のそばめしに似たおいしさがある。ダイエット食にいいんじゃないだろうか。というより、これを書いている今実際にそんなダイエットをしていたことを思い出した。ちなみに成功しました。
春雨サラダ巻き
水嶋:★★★★☆
水谷:★★★★☆
川西:★★★★☆
「たまごサラダ巻き」は寿司のくせしてパン感すごい
たまごサラダ巻き、実際にありそうじゃない?
しかしー。
川西「思ったのと違う」
水嶋「どう思ってたの?」
川西「回転寿司チェーンでたまご軍艦とかあるじゃないですか」
水谷「あぁ、あるある」
川西「あれみたいな感じだろうと思ったら肩透かし、なにこれ」
水嶋「寿司を食べたらいきなりたまごサンドみたいな感じか…」
川西「あーそれだ、それです!パンに挟んだら絶対うまいやつ」
水谷「同じたまごなのに、この違いはどこから来るんでしょう」
水嶋「塩とか出汁とかが重要なんじゃない?なんかもう舌が混乱するよね」
たまごサンドをイメージするということは単体では決してまずくない、むしろおいしいはずなのに、食べている最中になぜパンじゃないのと謎の怒りが湧き上がる。サンドウィッチに対する味の知識がかえって邪魔をしている。もしかしたら、醤油一滴で変わったかもしれない。
たまごサラダ巻き
水嶋:★★☆☆☆
水谷:★★☆☆☆
川西:★★☆☆☆
「かぼちゃサラダ巻き」は味のオデッセイ
いよいよ最後!かぼちゃサラダ巻き。
みんな食べたあとで考え込んでしまった。
水嶋「味のオデッセイ(旅)や…」
水谷「えぇ?どういうことですか…(食べる)…あ、なるほど」
川西「しばらく旅しますね…」
水嶋「いや、最初はめちゃくちゃおいしいねん。でもご飯と混ざっていくうちにサラダが散って、一気に味がなくなって、ポテサラ同様に悪い食感だけが残る。入口と出口にこれほどギャップがある食べものってはじめてだわ」
川西「あ、でも私すごく好きかもしれません!」
味の初速だけはすごく高い(おいしい)、まるでスポーツ界におけるバドミントンだ。かぼちゃの甘みはかなりごはんに合うんだけど、撤収!といった具合にザラザラとした食感だけ残し去っていく。が、川西さんは好きとのこと。女性だとその初速もさらに高く感じるのかな。
かぼちゃサラダ巻き
水嶋:★★★★☆
水谷:★★★☆☆
川西:★★★★★
サラダ巻きの肝は「食感」「マヨネーズ」「酸味以外の刺激がない」
味の評価順にサラダ巻きを並べると、こんな結果になった。
1位.ごぼうサラダ巻き
2位.春雨サラダ巻き(同位タイ)
2位.かぼちゃサラダ巻き(同位タイ)
4位.ポテトサラダ巻き
5位.明太ポテトサラダ巻き
6位.たまごサラダ巻き
7位.マカロニサラダ巻き
自分ひとりの基準でも確かにこんな感じだわ。
この内容とコメントをまとめてみると、サラダ巻きに合うサラダのポイントは、こういうことだと思う。
・ごはんよりも固めの食感がある
・マヨネーズの存在感がある
・酸味以外(辛味など)の刺激がない
このお約束さえ守れば、「カニカマ」「レタス」「玉子焼き」などの定番の具材以外を使っても、サラダ巻きって上手くいく気がする。ごまが合うというのもカリフォルニアロールがそうだし、ごま油が合うというのも韓国の巻き寿司がまさにそうだ。食の歴史は伊達じゃないのだ(当たり前だけど)。この失敗を活かしてみなさまサラダを使ったサラダ巻きにいそしんでいただければ、と思います。
サラダはもちろん単体ならめっちゃうまい
サラダ巻きに使い切れなかったのであとでサラダはサラダで単品で食べたが、言うまでもなくもちろんおいしい。あれこれ勝手なコメントをしたけれど、それは勝手な掛け合わせしたからですよ!と声を大にしながら保身を叫んで終わりにします。
撮影後、たまごサラダを単品でもしゃもしゃ食べる川西さん。