ビジネスポータルZ 2018年3月24日

ヨガの先生と看護師さんは冬も足の爪をかわいく塗る ~職種別ネイル事情を聞いた

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ここ20年くらいでネイルサロンは本当に増えた。

繁華街にはあちこちにチェーン店があるし、商業施設にあるサロンも多い。住宅街でも個人のサロンの看板をよく見かける。

以前は限られた趣味人が凝ったアートを楽しむイメージだったネイルのおしゃれがどんどん手軽なものになっている。

ファッション業界やコアなネイルファンではない様々な業種の人も普通に通うようになったんじゃないか。

ベテランのネイリストのお二人に、ビジネスとネイルの関係を経験をふまえて聞いてみた。
東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

前の記事:白いご飯にかける調味料選挙1位は「そのほか」!?

> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

職場でのネイルの許容度は上がっている

お話を聞かせてくれたのは20年近くネイル業界にいるネイリストのゆきさんとあっこさん。

ゆきさんは東京郊外でサロンを経営、あっこさんは丸の内の美容院でネイリストをしていた方。

今回はあっこさんがデイリーポータルZのライター、べつやくれいさんのお友達ということでお話を聞かせてもらえることになったのだった。
場所はゆきさんが経営するネイルサロンで
場所はゆきさんが経営するネイルサロンで。やべえ興奮する
同行のべつやくさんにお二人の似顔絵を書いてもらいました。左がゆきさんで右があっこさん(背景はべつやくさんの独断です)
同行のべつやくさんにお二人の似顔絵を書いてもらいました。左がゆきさんで右があっこさん(それにしても迫りくる背景)
べつやくさんも私もネイル好きなのでもう一から十まで興味深すぎて2人して「へー!」連発のインタビューとなった。

ビジネスとネイル、まずざっくりと分かったのは

・ビジネス上のネイルの許容度は徐々に上がりつつある

・職業によるネイル不可の理由は「衛生保守のため不可」「長いと仕事に差し支える」「派手だとお客さんがびびる」の3つにわけられる

・可能な職場の場合「マイルール」でネイルの制限をもうけている人が多い


ということ。

おはなしを聞いて、「器用でおしゃれな人が人の爪をかわいくする仕事」というイメージしかなかったネイリストという仕事のイメージもずいぶん変わった。

いろいろなパターンの生活を送るお客さんの指先の日常を熟知し、アドバイスしながら好みにあったファッションに仕上げる仕事なのだ。しびれる。

さらなる「へ~~!」を続くインタビューでお伝えしましょう…!
最近は昔にくらべてOKのところが増えた気がしますね。

たとえば、「派手なのがダメな会社なんです」っていうわりにオーダーは「ラメグラ(ラメのグラデーション)に…」なんてこともあったり。「ラメならOK」っていうその人のルールらしくて。
ラメ、こういうの
ラメ、こういうの
マイルールがけっこう強いんですよ。

ラメも、シルバーだと目だつけどゴールドなら…大丈夫です!って。
大丈夫ですか!? ってこちらは聞くんですけど。確かにラメはゴールドだと肌なじみはいいんですよね。シルバーの方が派手になります。
ラメは大丈夫だけど意外とフレンチ(爪先に白をのせるデザイン)がダメとかね。ある一部分が目につくのでだめなんじゃないかなと思うんですけれど。
ゆきさんのネイルがちょうどフレンチだった。かっこいい
ゆきさんのネイルがちょうどフレンチだった。かっこいい
アート(爪に乗せる絵や柄)も小さい白い花ならOKっていうマイルールある子よくいますね。
業界ネイルまめちしき

●ネイルに特に規定のない会社の場合「マイルール」を適用している人が多い
確かにきびしく「ベージュじゃなきゃだめ!」「アートはだめ!」「ストーンは2粒まで!」と決まっている会社のほうが珍しい。

ビジネスにおけるネイルを自分でコントロールしている人は多いのかもしれない。

「上司ルール」もある

どんな業種でも、上司の方が変わるとOKになったり逆にダメになったりということは多いみたいですね。
「上が変わるらしくて、どんな上司が来るかわからないから今回はおとなしめにしときます」とか。「様子見て大丈夫だったらまた派手にします」って。
新入社員さんも様子見るってみなさん言いますね。
まずはなにもつけずに行って様子を見てって。

あとは、服装規定ではダメってことになってるけど、ほかに社員が男性しかいないからやっても気づかないからって来るお客さんもいますね

雰囲気でいうと学校の先生がそうかな。学校の校風次第というか。基本はNGのところが多いんじゃないかと思うだけど、中学校の先生でストーンつけてる方を見たことがあります。
同じ会社でもお客さんに会わない部署だから自由っていう人はいますよね。
業務内容にお茶出しがあるだとダメだったり。
会社からは「怒られる」というか「ちょっと言われる」ことが多いみたいですよね。
「ネイルやってるんだね」とか「きれいだね」とか。ちょっと刺されちゃう。
「ネイルやってるんだね」たしかにふんわり言われる怖さは、ある(フリー素材が古くて恐縮です)
「ネイルやってるんだね」たしかにふんわり言われる怖さは、ある(フリー素材が古くて恐縮です)
業界ネイルまめちしき

●上司マターでネイルの許容度は変わる
●学校も基本NGかと思われるが校風で変わることも(特に私立)
ちなみにべつやくさんは「きれいだね」と言われたら「そっすか―!?」とか「昨日サロン行ったんすよ~っ」と元気にリアクションしてしまいそうといっていた。

私もそっち寄りの人間な気がする……。

かたい業種でも遊ぶなら「薬指1本ルール」で

私は丸の内のサロンだったから、金融、銀行とかはやっぱり派手にできないお客さんが多かったですね。お客さんの前に出る受付の方はネイル自体NGでした。

銀行でも受付の後ろで作業してる方っているじゃないですか。そういう仕事だとギリギリOKでベージュ、ピンクを選んでますね。
塗ってますか? くらいの感じだよね。

色も趣味で選ぶとかじゃないんです。選択範囲がすごく狭くて。
あたりさわりなさそうな色を選ぶしかない
あたりさわりなさそうな色を選ぶしかない
そういう職場だとアートもなしですね。

それでもやりたいというお客さんに提案するのが、「薬指1本OKルールを作っちゃうのはどうですか」って。1本だけアート入れて仕事のときは絆創膏。
結婚式に出るからちょっと凝るけど、すぐ落とすのはもったいないみたいな場合も使えるわざかな。
全指絆創膏だとちょっとあいつやばいなという感じしちゃうけど薬指1本ならぜんぜん普通だ。そうかー!
全指絆創膏だとちょっとあいつやばいなという感じしちゃうけど薬指1本ならぜんぜん普通だ。そうかー!
ギラつくのは外資系の企業のお客さんかな。
そうそう!外資はOKだよね!
ストーンも大きいのつけたり。
色も濃い目を指のどこか1本くらい入れたりならいけたり。
業界ネイルまめちしき

●かたい業界の受付業務は基本ネイルNGのことが多い。バックヤードもピンクやベージュのワンカラー(10本全部1色)。
●それでもどうしても何かしたい場合は薬指だけ遊んで仕事のときは絆創膏で隠す。
●外資系の企業だと自由度が上がることが多い
外資系のバリキャリさんのファッションが派手めというのはマンガみたいな世界観だが、実際もそうだとは。

長さを出せるのはアパレル、学生

ネイルアートというと昔からのイメージだとバリっとながいかっこいい爪のイメージだ。そういう、長さも出せる職種というのはあるんだろうか
ネイルアートというと昔からのイメージだとバリっとながいかっこいい爪のイメージだ。そういう、長さも出せる職種というのはあるんだろうか
長さ出し(爪の長さを樹脂等で延長するテクニック)はあまりオーダーないですねー。

派手さもそうですけど、長さにNGが出ることも多いみたいですね。
本人も働きながら作業しづらいというのはあると思います。
極端な例だけど、エステティシャンの方はお客さんの肌に触るから爪は常に短くなくちゃいけないんですよね。爪が長いとできない仕事は多いと思う。

あと、一時期よりも長い爪自体がちょっと流行らないところもあるのかな。 やるとしたら10代20代とかの若い子学生さんとか、アパレル勤務の子とか。 昔新宿のサロンに勤めてたときは結構盛ったよね。
そうだね、渋谷とか新宿は10本ゴテゴテのオーダーもありましたね。
「重くない?」っていう笑。
ここまでいくのはもう専門のサロンか(写真はこちらの記事</a>より)
ここまでいくのはもう専門のサロンか(写真はこちらの記事より)
銀座のクラブの和装ママさんがお客さんにいたことあるんですが、銀座だと上品さが大事な感じでしたね。ベージュとか。

そうだ、昔は和装にネイルは無しだったんですよね。
でも最近はそんなことないですよね。パール乗せたりすることもある。
成人式も昔は着物だからネイルもあんまりしない方向だったけど今はむしろしますよね。
業界ネイルまめちしき

●長い爪でも仕事ができるのはアパレル
●水商売系もガンガンに派手にできるとは限らない
長い爪にガッツリアートを盛るような趣味性の高いネイルは生活の条件を考えても若人の特権なのかもしれない。

程度がわからなくなって攻め出す人々

とはいえ、内勤だと思ってるより結構やるかもしれないです、みなさん。

最初は地味目でもだんだん派手になってく笑。
大丈夫ですか、って止めることもありますね。
仕事じゃなくてお稽古事でお茶を習っていて、いつもはわりと派手にする子が今度お茶会があるからって抑えめするということがあって。

私はそれならとかなり地味目な提案をしたんだけど、これくらいならいけるはず!とそこそこ攻めたネイルにして結局翌日だったかな、落としにきました。お茶の先生に怒られたって。
そうそう! 止めても聞いてもらえないんだよね!
エスカレートするのは完全におぼえがある…。ネイルがエスカレートしたこともあるしまつ毛エクステ(まつ毛に植える人口の増毛まつげ)がエスカレートしてめちゃ盛りになったこともあった…。 (写真はこちらの動画</a>から)
まつ毛エクステ(まつ毛に植える人口の増毛まつげ)がエスカレートしてめちゃ盛りになったことがあった私はめちゃシンパシー…。 (写真はこちらの動画から)
だいたい3週間に一回とか通ってくれる人で、どっかでパタッと来なくなることってよくあるんですよ。ちょっとやめてみるって。お腹いっぱい!ってなるんだと思う。
指先に情熱かけるの疲れちゃうのかも。
指先の動きに気を遣うのに疲れるというのもあるかも。
でも結局またやるんだよね。好きだから。
私もまつ毛エクステはげっそり疲れてやめてしまい、しかしその後そろそろ時が来たきがするような気持ちになる。結局またやるのだ、そういう趣味なのだから。

おしゃれではなく保護のネイルもある

医療や介護、あと飲食はホールもキッチンもは基本NGですよね。清潔さが求められるお仕事は。

でも最近、歯医者さんでも手袋しちゃうから赤じゃなければOKというケースもありました。赤だと血みたいに見えちゃうからダメって。

あとナースさんは最近はクリアを塗るひと増えたかな。
手を消毒とか酷使するから爪が割れちゃうっていってケア目的というのもあって。
私は美容院でネイルを担当してたころがあって、そのころは野球やってる男性に補強でクリア塗ってたことありましたね。

ギターリストさんにスカルプ(爪を長くしたり凝った立体の造作をするときに使われる)で長さ出すことあったよね!
あと、美容師さんも手を酷使するからネイルはそもそもやらないか、色濃い色を選ぶ人が多いかな。
染まっちゃうんですよ。カラー剤で。
ネイルを薄いピンクとかにしておくとすぐに濃いカラー剤がついちゃうみたいです。
業界ネイルまめちしき

●看護師、スポーツ選手、演奏家はケアのためにクリアのネイルを塗ることがある
●美容師はネイルが仕事で染まる
考えてみると「手の職業」は多い。ネイルの深さがここに極まった感がある。

足は自由だ

丸の内のサロンにいたころ、1日中ベージュとかだいたい同じ色を塗りまくってて、それ以外の色は本当へらなかったんです。でも足に使うことがたまにありました。

特に看護師さんが足を派手にするんですよね。
手先がだめだと足は派手になりますね。

ナースさんは冬も足がんばる方多いかも。
あと、ヨガの先生とか。
ヨガは生徒の方も冬場でも足ぬるよね。スポーツクラブ通ってる人も。
人前で裸足になる人は冬もケアしますね。
色も足は濃い色のほうがかわいいと思うのでそういうふうにすすめますし、派手かも。
多いのはやっぱり赤ですね。
業界ネイルまめちしき

●看護師さんのなかにはふしぎと冬も足のネイルをガツっとやる人がいる
●ヨガの先生は冬も足を見せるのできれいにする
都市伝説として、ストレスフルな医療関係者には大酒のみが多いというのがあるだろう。

看護師さんが冬でも足のネイルをかわいくして少しでもストレスを回避しているというのはすごく納得がいくし、どうか癒されてほしいと願うしかない。

手で攻めるギリギリライン

手でいうと、どうしてもなにかやりたいというギリギリのネイルとして、白にクリアを混ぜてフレンチにすると本当に自然な指の色になるんですよね。

マットトップって言って、わざとつやを消すトップコートもありますよ。
つやつやしてるとやってる感出ちゃうから。
ベースがジェル主流になってだいぶサロンの使い方もかわってきてるかもしれないよね
ベースでジェルだけサロンで塗って、ストーンは自分で追加でつけてみたり。
働いてる子のネイルって最近はシール(ネイル専用のシールというものがある)がいっぱい出てきてるから、土日にシールを貼って、トップコート塗って。平日には落とすってパターンも多いんじゃないかな。
業界ネイルまめちしき

●NG業界でどうしてもやりたい人のためのギリギリネイルもある
●セルフネイルも進化して休みの日だけ派手にする人も多いのでは

仕方ないから足ではりきる、バレないようにギリギリわからないくらいのネイルをする、平日は諦めて土日にセルフで工夫する。

やれることで盛り上がって行こうというハングリー精神がすごい。
業界ネイル、思った以上にパワフルな世界であった。

インタビューの後は「歳いくと春にうっかりやりたくなりがちなピンクが本当に似合わなくなる」話で盛り上がりました。

誰にでも似合うのはいま流行してるスモーキーなタイプ!覚えたぞ!
知見を持つネイリストさんのアドバイスよりも意外にお客さんが攻めがちというのは自分にも覚えがあって照れ笑いしかなかった、というのをべつやくさんに描いていただきました。これ気持ちわかる…!
知見を持つネイリストさんのアドバイスよりも意外にお客さんが攻めがちというのは自分にも覚えがあって照れ笑いしかなかった、というのをべつやくさんに描いていただきました。これ気持ちわかる…!

ネイルサロンは計算の場所

おしゃれは足し算であり引き算とよくいうだろう。ネイルサロンはまさにその計算の場所なのかもしれない。

・自分に似合うか
・流行を取り入れているか
・好みに合っているか

このうちどこをどれくらい足してきたいかはそれぞれだ。そこに職種という制限の引き算がかかってくる。

お客さんのほうが攻めがちというのは、その足し算引き算を計算間違えしちゃう感覚かもしれない。

ビジネス面でも美容面でも最高にためになるインタビューだった……。

ゆきさん、あっこさん、ご協力ありがとうございましたー!!
ワンカラーのサンプルがおしゃれなサロンは良いサロンというのは私の持論です
ワンカラーのサンプルがおしゃれなサロンは良いサロンというのは私の持論です
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