特集 2018年2月11日

書き出し小説大賞第140回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


前の記事:書き出し小説大賞第139回秀作発表

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特報!! さて、今月末2月28日に開催される「第4回 書き出し小説大賞授賞式」のチケット販売がはじまりました。会場の渋谷ロフト9さまのHPから申し込めますのでよろしくお願いします。久しぶりのイベントです、ゲストは自由律「カキフライが無いなら来なかった」などでお馴染みのせきしろ氏。投稿作家のみなさま、読者のみなさま、楽しい夜を過ごしましょう!

第4回 書き出し小説大賞授賞式(チケット販売リンク

書き出し自由部門

新幹線の窓越しに冬を触る。
xissa
父のことを「あなた」と呼ぶ時、母は女優だった。
八重樫
その女はじっと目を見て守備的な微笑みを返した。
君と僕と雨
脳内の天使と悪魔が仲間を呼び出し始めたので、司会を務める。
桜草
腕時計が止まっていた。周りも止まっていた。
セッドあとむ
彼女は輪唱を食い過ぎている。
suzukishika
彼とはこのレベル上げの作業だけで繋がっている。
あや幹部
能面のような彼女の膝だ。
suzukishika
干してあった傘が勝手に回りだした。あいつが来る
もんぜん
頭上にケーキがある。電車はそこまで混んでいない。
井沢
ナンは彼の足のサイズとぴったり合った。
七世
軟膏刑事はまず握手を求めた。
ヘリコプター
ビットコイン1枚の姿でいたところを逮捕された。
マークパン助
「私はもう、ユネスコの人間じゃないんだよ? 」泣きながら彼女は出て行った。
轍眼鏡
呪いながら、地元を離れた。
轍眼鏡
寸評

●xissa氏「新幹線の窓越し」新幹線の車窓だからこそ「触る」の動詞が効くのだと思う。上手いなあ。
●suzukishika氏「彼女は輪唱」静かな湖畔の「静か」のところでもう入っちゃう。。
●井沢氏「頭上にケーキ」頭上のケーキは目の前のつり革に掴まっている人のだろうか。想像するにつれディテールが見えてくる秀作。
●七世氏「ナンは彼の足」主人公を男にしたインド版シンデレラ?
●マークパン助氏「ビットコイン1枚の姿」つまりは全裸?
●轍眼鏡氏「私はもう、ユネスコ」君がユネスコだからつき合ってたわけじゃないんだ!的な展開に期待。

続いては規定部門。今回のテーマは『サイコパス』だった。イイ感じに病んだ作品が集まりましたよ!

規定部門・モチーフ『サイコパス』

目障りな人ができた。楽しみが増えた。
ちやん
殺人衝動は重力に似ている
馬mm
「うわー、サイコパスじゃん」下校途中の女子高生、言われた方は鼻を膨らませている。
ペプシと私
いつも骨格から好きになる。次に声帯。たまに虹彩。
住民パワー
彼女のあいうえお作文に、スタジオは凍りついた。
大伴
こんな高層階でぬいぐるみを外向きに置いて誰に見せるつもりなのだろう。
井沢
珈琲に眼球いくつ入れるんだっけ?
いずいず
先生はたまに生徒を「個」で数える。
くのゐち
双子のくせに、痛がる場所は違うのか。
人馬一体勘
答え合わせまで生きられたら、俺が正しいとわかるのに。
正夢の3人目
あなたが黒猫と戯れるのを見る度に僕は思う。あなたには白が似合う。
けー
男の行動に法律が追いつかない。
ビールおかわり
そういえば、弟以外の死を受け入れたことがない。
オレンジ的
「監禁と出勤、好きな方を選ばせてやる」白い悪魔が愉快そうに笑った。
kinumi
サイコパス教習所では目つきから教わる。
茂具田
可愛い子は天然、そうでなければサイコパス。
ぐるりん
弊社に佐藤は二人おりまして、サイコパスの方でしょうか?
中山っぺ
サイコパスが一人辞めて、一人入った。
まじいい
オラが村にサイコパスが越して来た。
いがそ君
東京→サイコパス、大阪→サイコヤン、京都→サイコハン、鹿児島→サイコードン
タクタクさん
「サイコパス丼、へいお待ち。」俺は割ってない割り箸を2本使って丼を掻っ込んだ。
葱山紫蘇子
部屋の壁全面が水道工事業者のマグネット広告で埋められていた。
g-udon
サイコパスにならないための授業で、サイコパスが育った。
松っこ
子どもたちが作っている雪ダルマを金属バットで吹き飛ばした。
もんぜん
町内のお地蔵様をすべてあの家に向けた。
ウチボリ
響きに憧れていた。
わけわけ
寸評

●ちやん氏「目障りな人」サイコパスって前向き思考なんですね。
●ペプシと私氏「うわー、サイコパスじゃん」サイコパスに見られたいよねえ、高校生なら。分かる。
●人馬一体勘氏「双子のくせに」こういう漫画、ありそうw
●いがそ君「オラが村に」スタバができた!的感覚で。
●タクタクさん「東京→サイコパス」京都のサイコハンは是非会いたい。
●松っこ氏「サイコパスにならないための授業」そういうことはままあると思う。
●わけわけ氏「響きに憧れていた」タイコモチなら憧れない。

それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
「帯文」
さて、次回のお題は書き出しはと違い、本の帯に書いている宣伝文句、いわゆる帯文を募集します。どの本の帯かも自由。例えば『雪国』なら『あの冒頭のつづきが読める!』といった感じ(あくまで例です)でお願いします。帯文の後にその本の書名を明記してください。締め切りは2月23日正午、発表は2月25日を予定しております。下記の投稿フォームより部門を選んで送って下さい。力作待ってます!
最終選考通過者
ジェングウ/哲ロマ/terayo/絹わらび/ラタン/ウウタルレロ/
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