ロンドンから2時間、ウスター
ウスターはロンドンの北西にある地方都市。鉄道で約2時間ほど。ウスターシャー州の州都である。
ロンドンからは近いが、ロンドンまで東京から12時間かかる
ウスターシャーというのはウスター!シャー!とウスターソースの水っぽさを表現しているのではなく、古い英語でシャーは行政区分のことらしい。ヨークシャーなども同じである。
ウスターに行く列車はパディントン駅から出る
イギリスは1800年代前半、日本でいえば江戸時代から鉄道を運行している。にもかかわらず、乗客がぜんぜん並ばない。
ぎゅうぎゅう。鉄道発祥の国よ
ついでに言うと、パディントン駅は地方に行く列車の発着駅である。
絵本になっている熊は地方からやってきてこの駅にいたのでパディントンという名前らしい(見てない)。
つまり上野駅にいた上野太郎みたいなものである(見てないのに例える)。
おいら、上野太郎っす!(駅にいたパディントン)
余談が続いてしまったが、つまりそのパディントンから列車に乗ってウスターに向かう。
チケットが高かったので急行ぐらいの位置づけの列車だと思う。
もちろん手に持つのは
コロッケである。
このコロッケ、日本から持っていくと空港で止められそうだしなにより腐るので断念した。
ロンドン中心部にあるジャパンセンターという日本食材の専門店で日本スタイルのコロッケを買った。
CENTREがイギリス英語の綴りである。
鶏つくね、コロッケ、かぼちゃの天ぷらなどロンドンなのに戸越銀座のようなラインナップ
伊藤園だけではなく、サンガリアの「あなたのお茶」まであって感動した
ぜひロンドンでコロッケを食べたくなったら参考にして欲しい。
コロッケについて思いを馳せているあいだにウスターに到着。
博物館にウスターソースが展示されている
下調べによると、ウスター市の博物館にウスターソースについての展示があるらしい。
まずはそれを見て気分を盛り上げていこう。
ウスター市の美術館兼博物館
ヨーロッパはザ・威厳みたいな建物が多い。
MUSEUMがMVSEVMになっているのは古いアルファベットではUをVで書いていたからだそうだ。ブルガリをBVLGARIと書くのも同じ理由。
僕はブブルガリと読んでいた。
館内、2階が博物館である。
しかしFamilyを緑で書くとファミマとしか思えない(イギリスにファミリーマートはないので偶然の一致)。
2階に上がるとすぐにウスターソースコーナーがあった。
ウスターソースが博物館に飾られている!
ウスターソース発祥の地であることをひしひしと感じる。イギリスまで来た甲斐があった。
並んでいるのはリーペリンソース。
今でも売っている(日本のスーパーにもたまにある)リーペリンソースがウスターソースの元祖である。
ウスターソースの歴史
・1822年 薬剤師のリーさんとペリンさんがウスターで「リー&ペリン」という店を開く
・そこに謎の紳士がやってきてソース作ってくれと頼む
・作るが失敗、倉庫に放置
・思い出して開けてみたら熟成して美味しくなっていた
・自分らの店でリーペリンソースとして販売。年は1837年(日本では大塩平八郎の乱)
リー&ペリンの店で売っていたので商品名としては「リーペリンソース」である。ネーミングとしてはおぎやはぎと同じ箱だ。
説明がないのでわからないのだが、両側の胸像がリーさんとペリンさんだろうか
しかしアリストテレスみたいな服を着ているのはなぜだろう
ウスターの名前を世界に知らしめた偉人だからか、それともイギリスでは胸像と言えばこういう服なのかは分からない。
ソースの会社にあった胸像をなんとなく置いてるだけかもしれない。
でも一番古いソース瓶は130年前の瓶だった
ここではウスターソースが特別なものなのだ。それはミュージアムショップでも否応なしに感じることになる。
ウスターソースマグカップ!
ウスターソース絵はがき!
僕がハタチのYouTuberだったらこのマグカップでウスターソース一気飲みするだろう。
ソースそのものは売ってなかったのでグッズを全部買った。
博物館のウスターソースは棚ひとつとおみやげコーナーが主で、あとはウスター地方の軍隊がいかに勇敢に戦ったかなどの展示であった。
熱心に見ていたが、これは特にソースに関係ないやつだと途中で気づいた。
ウスターソース、あまり人気ない
博物館で売ってなかったので市内のスーパーで買うことにした。工業製品でも発祥の地なら出来たてが流通しているかもしれないじゃないか。きっとそうだ。
ソースのコーナーの先頭も当然リーペリンソースである
ソースのトップバッターとも言えるところに陣取っている。ソース売り場の全体を見てみると…。
ウスターソース少ないね
さすが本場はソース売り場がほとんどウスターソースですね~!
というナニコレ珍百景的な展開を想像していたのだが、マヨネーズとチリソースが多いというアメリカ的なラインナップだった。
グローバリゼーション!
ただ、冷凍食品でも雑に売られていた
この取材前にイギリスに住んでいる日本人にウスターに行くことを伝えたら(「すごいですね!」と言われることを期待して)、
「あ、そう言えばそうですね…」「誰も気にしてないんじゃないですか」
と超クールな反応だったことを思い出した。
「隠し味ですからね…」
と気になることも言っていた。そうなのか。
リーペリンの工場前で食べよう
街の中心地から歩いて15分ぐらいのところにリーペリンの工場がある。そこでさっき買ったウスターソースをコロッケにかけて食べよう。
やたらと信号ばかりの道があったり
店の前に巨大な街灯があったり
ソースというデザイン会社あって、やっぱりウスターにかけてるんだねーとか思ったが帰国してからスペルが違うことに気づいたり
外国っぽいが、青森と言われればそんな気がしてくる町並み
そんな景色を抜けると、そこにはウスターソースの聖地、リーペリンソースの工場があった。
ついにウスターソースの聖地に立つ
リーペリンソースの工場だ。
夢にまで見た景色…ではないけど、ストリートビューでは何度も見た景色だ。(下調べで)
東京駅のような(個人の感想です)ソース工場
レンガでできたかっこいいソース工場である。それは自分たちでもそう思っているらしく、この建物はソースのラベルに描かれている。
オレンジ色で背景のように描かれているのがこの建物である
この建物からウスターソースが生まれ、ウスターソースの中にこの建物がある。ウスターソースの入れ子構造である。
その多元宇宙から垂れた汁をコロッケにかける
いただきます
味やシャバシャバな感じは日本製のウスターソースと同じである。ただ、リーペリンのウスターソースは日本製のソースより少しスパイシーだし甘くない。
あーこういうの食べたかった
イギリスの食事がどれもぼんやりした味だったのでウスターソースがすごくおいしく感じた。朝からちゃんとしたごはんを食べてなかったせいかもしれない。
ついにウスターでウスターソースを使った……というオリジナリティあふれる充実感を感じている
リーペリンソースのなかにショップあったりして!工場に人がいたら日本から来たって言ってみよう!という目論見はことごとく外れた。
帰ろう
次はロシアのネリマか
長年の夢であったウスターに行くことができた。移動に12時間以上かけたコロッケ食べ歩きである。食べ歩きというか、1個しか食べてないので歩き食べである。行儀が悪い。
ウスター企画をついにやってしまったので、次は
ロシアのネリマに間違えて帰省するという温めすぎ企画である。(ロシアに詳しい人に聞いたら交通手段がないと言われた)。