デジタルリマスター 2022年4月4日

ハブを探しに(デジタルリマスター)

そういえば僕は沖縄に住んでいるのにハブを見たことがない。

住む前は沖縄には猛毒を持ったハブがそのへんににょろにょろいるものだと思っていた。だから油断すると咬まれるのだと。

しかし実際に沖縄に住んでみるとハブなんていない。いや、いないというのは間違い。いるのだろうけど、見ないのだ。ハブの隠れ家となる草むらや石垣がたくさん存在していた昔はハブに会う機会も今より多かったのだろう。今でも農業を営んでいる方や、森に入ることの多い方はハブに出くわすことがあるのかもしれない。だけど以前僕がイメージしていたように、街中ににょろにょろといるようなものではないのだ。

いないとわかると逆に見たくなるのが人というもの。

ということでナマコすら触れない筆者ですが今回はハブを探しに行ってきました。

2005年5月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

前の記事:発泡酒を作ろう(デジタルリマスター)

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

街に溢れるハブ商品

まずは街に出て手がかりを探してみることに。街中でハブを見かけることはほとんどないのだが、ハブに関するグッズなら溢れている。滋養強壮に効果抜群といわれるハブ酒をはじめ、ハブの皮の入ったお守りやらストラップ、ハブをモチーフにしたTシャツやジーパン。観光客向けの土産物屋にはたいていハブに関する商品が売られている。

ハブは恐れられていると同時に沖縄のシンボルとして、また縁起のいい動物としてポピュラーな存在となっているのだ。

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ご存知ハブ酒。姿入りのやつは高いのです。
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指ハブ、という名の指輪。ただしニシキヘビの皮。
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指ハブストラップは指に咬み付きます。
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ジーパンだってモチーフはハブ。
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本物の小ヘビが入ったお守り。
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無邪気な感じのヘビグッズは多数あり。

キャラクターとしてのハブはかわいくアレンジされていてかなり親しみやすくなっている。だけどそれは僕が見たいハブではない。僕が見たいのはもっとリアルなやつ、そう生きたやつだ。いや本当は見たくないのだけど。いや、見たい。やっぱり見たくない。

とりあえずどこに行けば生きたハブを見られるのか調べてみた。ハブの生息条件としては

・水のある場所
・石垣など身を隠しやすい場所
・サトウキビ畑など耕作している畑

そういえばこれまでも取材で行った先で「ハブに注意」の看板を見たことがある。注意が必要ということはハブに会える確率も高いということだろう。

梅雨の晴れ間の午前中、ハブに会いに出かけた。

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野生のハブを探して

ハブの習性として

・夜行性なので昼間は眠っている
・4月から6月にかけて活発に動き回る

え、すると今はもろに活動期ということか。だけど夜行性のハブは昼間ならば眠っているはず。寝込みを襲うために朝一番で草むらに向かった。

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石垣とサトウキビ畑。いかにもいそうな取り合わせです

装備を間違える

ハブを探しにフィールドに出てみたものの、本当に遭遇したらと考えるとかなり不安になる。しかも何も考えずに家を出たので、いつものようにビーチサンダルで来てしまった。これでは咬んでください、って言ってるようなものだ。

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岩の間とかさ

びくびくしながらも畑の多そうな場所へ向かうと、石垣の上がサトウキビ畑になっている場所があった。石垣にサトウキビ、ハブの生息条件をかなりの割合で満たしている。ここならいるかも。

長い棒を持って歩く先をバシバシ叩きながらハブを探してみた。

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棒を持って
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サトウキビ畑をつつくと出てくるかもしれないよ

ハブいない。

もしかして茂みの中とかにいるのかもしれないけど僕の目には見えなかった。見なかった、といった方が正しいかもしれない。実は怖くて3分の2くらい漏らしていた。いきなりハブが飛び出してきたら、咬まれなくてもショックだけで死んでただろう。

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いないいない、ってお前ちゃんと探したか

本気で怖いです

普段街に住んでいると自然の怖さについて考えることなどほとんどないが、茂みの奥、日光の届かない闇の部分には触れてはいけない何かがじっと息を潜めているような気がする。

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もう半分泣きそうです。

街に住み慣れている僕はいわば牙を抜かれたハブだ。恐怖のあまりよくわからない例えになってしまったが、要するに野生のハブは想像しただけで怖いということです。へたれていてごめんなさい。

だけどやっぱりハブは見たいので安全なやつを見に行くことにした。

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ここなら安全です

ということでやってきたのはハブ博物公園。ハブのことならなんでもわかる場所だ。以前公式サイトで「人生で一番ヘビと向かい合う日」と紹介されていた。僕にとって今日がその日、ハブ記念日だ。

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ここにハブの全てがある。

いきなりヘビだらけです

中に入るとまずめいっぱい口を開けたハブの写真が出迎えてくれる。ヘビ好きにはたまらない演出だが、僕はうつむいたまま通り過ぎさせてもらった。

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子供なら泣くぞ。

館内はハブはもちろんのこと、世界中のヘビに関する情報がぎゅっと詰め込まれている。ここさえ押さえておけば友達にヘビ博士と呼ばれることうけあいだ。

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アミメニシキヘビの剥製。8m50cm。
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のみこまなくていいですから。
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周りをヘビに取り囲まれます。

ハブ博物公園でわかったこと。

・実はコブラよりハブのほうがやばい(素早く凶暴)
・ハブ対策としてマングースが持ち込まれたが、実際にハブを食べているのを見た人はいない
・オスのハブには性器が4本ある
・ハブは触るとざらざらしている(ニシキヘビはつるつるしている)
・ハブは感覚器官が発達していて匂いとか温度変化とかを敏感に感じられる
・どうやら味覚もありそうだ
・だけどネズミくらいなら味わわずに丸飲みする

理解を深めるにつれ、ますますハブが怖くなってきた。

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史上第二位のハブ。2m15cm。

生きたやつはいないのか

館内には大小さまざまなヘビが展示されていた。だけどどれもこれも剥製ばかりで生きていない。結局ここでも生きたハブには会えないのだろうか。残念だ。

と、内心ほっとしていたのですが。

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どうしてその状況で平気でいられるのか。
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外にいました

館内に生きたハブはいなかった。半分諦めて、だけど内心ほっとして先を急ぐと通路が明るくなった。外へ続いているのだ。出口だろうか。ヘビの世界からの脱出口だ。

安心して小走りに外へ出ると。

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ポップなフォントできっついことを言ってくる

ハブのはなしがい。

と無邪気に書かれた場所が。放し飼い、というくらいだからもしかしたら生きたやつがいるのかもしれない。恐る恐る手摺の向こうを覗き込むと。

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やっとご対面。はじめまして、ハブです。

いました。

ていうか100匹くらいいるらしいよ。平然と書いているが、その場ではかなり足がすくんでいた。よくヘビに睨まれたカエルのようだ、という表現をするが、今まさに僕はその状態。さっきの残りの3分の1はここで漏らした。

ハブ博物館の屋外展示場は生きたヘビだらけだった。沖縄近辺に生息する様々な種類のハブや、東南アジアをはじめ海外で活躍するでかいやつらが所狭しと飼育されている。

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さらに歩みを進めると大蛇ゾーンが。
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大蛇ゾーンはケースがとにかくでかい。手前の壁のところにびたっとでっかいやつが張り付いているのですが、かなり衝撃的にでかいので掲載は避けます。
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こちらゴールデンパイソンのあやちゃん。4m20cm、体重はひみつ。
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マングースも走り回っていました。

やっぱり本物は違います

ようやく会えたハブは芸能人くらいオーラが出ていた。薄茶色のボディーに黄色い斑点、そして瞳孔は常に全開。キングオブヘビ。まさに泣く子も黙る面構えだ。畑に行ったときに出会わなくって本当に良かったと思う。興味本位で僕みたいに無謀な装備で草むらに入ったりしない方がいい。毎年100人前後の咬症被害が出ていることも事実なのだ。

万が一ハブに咬まれた場合の対処法として

1.口で吸って毒を出す(毒は飲み込んでも死なない)
2.傷口から体の中心に近い部分を縛る
3.安静にして救急車を呼ぶ

実際咬まれたら冷静でいられるか不安だけど、きちんと処置をすれば死に至ることはないようです。

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売店には携帯用毒吸出し器が売られていました。

ハブと生きる

今回の取材を通してハブとの距離が縮まった気がしました。一方的にですが。

ハブは恐ろしい生き物、と思われがちですが、観光資源としてのみならず沖縄の重要な生態系の一角を担っている動物なのです。きちんとした知識を持ってハブと共存していきたいものです。


ハブ博物公園

沖縄県南城市玉城字前川1336番地
おきなわワールド文化王国内
TEL:098-949-7421
年中無休

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