一年分の「福」を集めに「福」という駅で降りてみた(スズキナオ)
「一生降りなさそう」というのは完全に主観でしかない。
今回ライター3名がそれぞれに降りなさそうな駅を選んだが共感できるかどうかは超ひとそれぞれだと思う。
とはいえ、どの旅も妙にジョイフルなことになっているのでぜひご覧ください。
今回ライター3名がそれぞれに降りなさそうな駅を選んだが共感できるかどうかは超ひとそれぞれだと思う。
とはいえ、どの旅も妙にジョイフルなことになっているのでぜひご覧ください。
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この上なくめでたい名前の駅。それが「福」
一生降りないかもしれない駅に向かうにあたり、大阪生まれの友達に「どこか良さそうなところありますかね?」と相談してみた。「読み方が分からない駅とかどうですか。『喜連瓜破(きれうりわり)駅』とか、響きが好きで知ってはいるけど実際に降りたことないです。あ、逆に『福』っていうのもインパクトあります。一文字で『福』。ふくって読むんです」と言う。
“福”か……。なんだか年末年始っぽい感じがしてちょうどいいじゃないか。こんなタイミングでもなきゃ降りることもなさそうだし、と、友人のアドバイスをありがたく頂戴することにした。
調べてみると福駅は大阪市西淀川区にある駅で、阪神なんば線という電車が通っている。一大繁華街である大阪難波駅からは電車で15分ほどの距離だ。それほど遠い場所ではない。もしかして、相談に乗ってくれた友人や私がたまたま知らなかっただけで実はメジャーな駅なのでは?とも思ったのだが、その後に会った人の誰に聞いても「名前は知っているが降りたことはない」というような返事であった。そんなみんなの分までしっかり見てくるよ!と心の中で決意し、福駅へ向かった。
阪神なんば線に乗り、しばらく電車に揺られていると「次は~福~福~」という車内アナウンスが聞こえてきた。
“福”か……。なんだか年末年始っぽい感じがしてちょうどいいじゃないか。こんなタイミングでもなきゃ降りることもなさそうだし、と、友人のアドバイスをありがたく頂戴することにした。
調べてみると福駅は大阪市西淀川区にある駅で、阪神なんば線という電車が通っている。一大繁華街である大阪難波駅からは電車で15分ほどの距離だ。それほど遠い場所ではない。もしかして、相談に乗ってくれた友人や私がたまたま知らなかっただけで実はメジャーな駅なのでは?とも思ったのだが、その後に会った人の誰に聞いても「名前は知っているが降りたことはない」というような返事であった。そんなみんなの分までしっかり見てくるよ!と心の中で決意し、福駅へ向かった。
阪神なんば線に乗り、しばらく電車に揺られていると「次は~福~福~」という車内アナウンスが聞こえてきた。
「次は福」。なんともめでたいフレーズである。
椅子から立ち上がり、サッとホームに降りる。自分が知らなかった町に足を踏み出すこの瞬間が楽しい。
何度確かめてもただ「福」の一文字。
相対式のホームそれぞれに小さな改札口がある。
駅前には味わいのある飲食店が立ち並ぶ一角が
町の様子についてはまったく調べずに来たのだが、改札を出るとすぐ何軒かの飲食店が立ち並ぶ一角があった。
あら素敵!中華料理、インド料理、居酒屋、スナックなど色々ある。
「日本クラウンレコード さちこの店」。恥ずかしながら知らないけど良さそうである。
「中国料理 鄭山閣」、美味しそうな雰囲気。
居酒屋「世界長」の仕込みはこれから始まるようだ。
時刻は正午過ぎだが、年の瀬ということもあってか閉まっているお店がほとんど。とりあえず、どこか昼食をとれる場所を探しつつ散策してみることにする。
福コレクションをご覧ください
駅周辺の福町(ふくまち)という町名をとって「福」という駅名がついたようだ。西淀川区のサイトによると「地名の由来は不詳」とのこと。何かめでたい由来があるわけではないのか。
でもとにかくここは「福町」なので、歩けば歩くほど「福」という文字がザクザクと手に入る。
でもとにかくここは「福町」なので、歩けば歩くほど「福」という文字がザクザクと手に入る。
ホールも福!
小学校も福!
郵便局も福!
家庭料理も福!
教室も福!
ケアプランセンターも福!
工場も福!
という感じ。もう2018年の一年分の福が見つかった気分だ。「福」を探して福町をウロウロ歩いている今の自分を「福男」と呼んであげてもいいんじゃないだろうか。
駅の線路を挟んだ反対側へ歩いてみると「GU」や「seria」も入った巨大なショッピング施設「イズミヤ スーパーセンター」があり、その向かいには「ユニクロ」もある。
駅の線路を挟んだ反対側へ歩いてみると「GU」や「seria」も入った巨大なショッピング施設「イズミヤ スーパーセンター」があり、その向かいには「ユニクロ」もある。
「カレーハウスCoCo壱番屋」や「ポポラマーマ」までこの中に入っている。
このユニクロに行くためだけに福駅に降りたことがあるという友人もいた。
他にも大型のドラッグストアなどがあり、駅の東側のこの一角は整備が行き届いている印象。お腹が減ってきたが、どうせ福駅にしかない何かを見つけたい。そう思って散策を続ける。
「ポークピカタ焼き」というメニューに誘われて
歩いていると工場がたくさんある。大規模な工場ではなく、町工場という感じの小さな規模の工場が多い印象だ。
「ここは工業地域です」という看板があったり
使用しているガスの種類を掲示する看板をあちこちで見かけたりする。
そんな風景の中を歩いていくと、通り沿いに飲食店が何軒か並んでいるのが見えてきた。
良い店がありそうな気がする。
「釜勝」といううどん屋さんを折れるとちょっとした飲食店街が。
カレーうどんが名物だと言う「釜勝」 も美味しそうだなーと思いつつ、「廣」というお店の黒板メニューに目が留まった。
町の定食屋さんという感じです。
「ポークピカタ焼き」が気になる。
「ピカタ」、私はあまり聞き慣れなかったのだが、イタリア料理のひとつで、肉や魚に小麦粉と溶き卵をつけてソテーにしたものだと後で検索して知った。
どんなものなんだろうと思い、お昼ご飯はこのお店で食べることに。定食と生ビールを注文し、許可をもらってパシャリ。
どんなものなんだろうと思い、お昼ご飯はこのお店で食べることに。定食と生ビールを注文し、許可をもらってパシャリ。
600円で満足のボリューム。
これが私の人生の初ピカタだ。
卵をまとった柔らかい豚肉にデミグラスソースがかかっており、ご飯がずんずん進む。この味わいをどう表現したらいいだろう……老舗洋食店の名物料理っていう感じだ。
美味しい定食をモグモグ食べつつ、お店のご主人に色々とお話を聞くことができた。
美味しい定食をモグモグ食べつつ、お店のご主人に色々とお話を聞くことができた。
店主の高木さんです。
お話によると高木さんはもともと大阪の高級ホテルでフレンチのシェフをしていたそうで、独立して自分の店を持った後、馴染みの深いこの場所に戻ってきてお店をやっているんだという。当初はこの店でもフランス料理を出そうと考えていたらしいのだが、この辺りは工場が多く、お腹を空かして食べに来る人が多い。
「ここで一杯800円のコンソメスープ出しても誰も食べてくれないでしょう(笑)それでこういう定食を出すことにしたんです」という。今日私が食べた「ピカタ」についても、「フレンチでもピカタを出すことがあるので昔から作っていましたよ。でもコースではお皿にちょこっと盛るだから、こんなボリュームでは出してなかったです」とのこと。なるほど、この美味しさは、フレンチシェフだった高木さんの腕が活かされてこそのものだったんだ、となおさら美味に思えてくる。
お店の住所は“西淀川区姫島”で、今私がいる場所は福駅と姫島という駅の中間あたりだそう。この辺のことについて聞くと、「都会の中の田舎みたいな場所」だという。すぐ近くを流れる淀川の川幅は現在800メートルほどあるらしいのだが、「今のように整備される前、昔はもっと川幅が狭くて、それでよく増水していたんです。それでこの辺りは大阪の中でも開発が遅れたようです」とのこと。それでも、パナソニックの前身の松下電器の大きな工場があった時はそこに勤める人々で賑わっていたらしく、姫島駅前には5軒もの映画館が建っていたんだとか。その映画館も工場が撤退して無くなってしまった。
「福も姫島も今は“住むための町”ですね。梅田にも難波にも近いし神戸にもすぐ行けるでしょう。交通の便が良いので買い物をする時はそういう大きな町に出れば済む。昔はこの辺ももっと賑やかだったんですが、小さな商店が潰れてだんだん梅田だとか、一か所に集中していったんです。今は日本のどこの町でもそうかもしれないですねぇ。うちのような店もコンビニのイートインに押されてますし」
この「廣」は、昼は店主の作る和洋定食を出すお店として、夜は奥さんの作る家庭的なおつまみが味わえるカラオケ居酒屋として営業しているらしい。常連さんが入れたボトルが棚にずらっと並び、この店の愛されぶりをあらわしていた。
店主の高木さんにおすすめスポットを聞いてみたところ、淀川の河川敷から見る梅田方面の夜景がすごく綺麗だという。夏はちょっとしたデートスポットになるそうだ。お店を出て川沿いへ向かってみることにした。
「川の方は、えーと」、とスマホで調べていると高木さんが追いかけてきて道を教えてくれた。なんといい人であろうか。
「ここで一杯800円のコンソメスープ出しても誰も食べてくれないでしょう(笑)それでこういう定食を出すことにしたんです」という。今日私が食べた「ピカタ」についても、「フレンチでもピカタを出すことがあるので昔から作っていましたよ。でもコースではお皿にちょこっと盛るだから、こんなボリュームでは出してなかったです」とのこと。なるほど、この美味しさは、フレンチシェフだった高木さんの腕が活かされてこそのものだったんだ、となおさら美味に思えてくる。
お店の住所は“西淀川区姫島”で、今私がいる場所は福駅と姫島という駅の中間あたりだそう。この辺のことについて聞くと、「都会の中の田舎みたいな場所」だという。すぐ近くを流れる淀川の川幅は現在800メートルほどあるらしいのだが、「今のように整備される前、昔はもっと川幅が狭くて、それでよく増水していたんです。それでこの辺りは大阪の中でも開発が遅れたようです」とのこと。それでも、パナソニックの前身の松下電器の大きな工場があった時はそこに勤める人々で賑わっていたらしく、姫島駅前には5軒もの映画館が建っていたんだとか。その映画館も工場が撤退して無くなってしまった。
「福も姫島も今は“住むための町”ですね。梅田にも難波にも近いし神戸にもすぐ行けるでしょう。交通の便が良いので買い物をする時はそういう大きな町に出れば済む。昔はこの辺ももっと賑やかだったんですが、小さな商店が潰れてだんだん梅田だとか、一か所に集中していったんです。今は日本のどこの町でもそうかもしれないですねぇ。うちのような店もコンビニのイートインに押されてますし」
この「廣」は、昼は店主の作る和洋定食を出すお店として、夜は奥さんの作る家庭的なおつまみが味わえるカラオケ居酒屋として営業しているらしい。常連さんが入れたボトルが棚にずらっと並び、この店の愛されぶりをあらわしていた。
店主の高木さんにおすすめスポットを聞いてみたところ、淀川の河川敷から見る梅田方面の夜景がすごく綺麗だという。夏はちょっとしたデートスポットになるそうだ。お店を出て川沿いへ向かってみることにした。
「川の方は、えーと」、とスマホで調べていると高木さんが追いかけてきて道を教えてくれた。なんといい人であろうか。
高木さん、ありがとうございます!
河川敷の広がりに屋台村の幻影をみる
南東へ向かうと淀川が近づいてくる。
「河川敷へ続く道はこっちよ!」「いーや、こっちさ!」とからかわれているようだ
河川敷へと降りる階段を見つけて下っていくと、広大な敷地が東西へ続いているのが目に入り、「おおっ」と声が漏れた。
桜島方面。
夜景が綺麗だという梅田方面。
それにしても淀川の川幅の広さよ。
こんな風にして撮ったらもはや海じゃね?
真冬なので川からの風が冷たくて震えるが、確かに暖かい季節にここでぼんやり夜景を眺めて過ごすのはいいかもしれない。穴場という感じ。
高木さんは言っていた。「夏に期間限定で河川敷に屋台村みたいなものを作ったらいいんじゃないかと思うんですよ。対岸の夜景を見ながらお酒を飲むなんて良いでしょう?大阪市にぜひやって欲しいと思ってるんですけどねぇ」と。
今回は時間の都合上、夜景を見ることができなかったので昼の写真で申し訳ないが、この場に屋台村が出現したらきっとこんな感じだろうというイメージ画像を友達に頼んで作ってもらった。
高木さんは言っていた。「夏に期間限定で河川敷に屋台村みたいなものを作ったらいいんじゃないかと思うんですよ。対岸の夜景を見ながらお酒を飲むなんて良いでしょう?大阪市にぜひやって欲しいと思ってるんですけどねぇ」と。
今回は時間の都合上、夜景を見ることができなかったので昼の写真で申し訳ないが、この場に屋台村が出現したらきっとこんな感じだろうというイメージ画像を友達に頼んで作ってもらった。
すごく楽しそうだ。
いつか実現したら最高だなと想像しながら川を後にする。
姫島駅へ向かい再び福へ。途中、煙突に騙される
映画館は無くなってしまったが、こちらも「福」と同じく味わい深い町である「姫島」を散策。
「姫島駅前センター街」にのどかな時間が流れていた
「琴奨菊関 御用達の店」が気になる
方々で見かけた「姫島地車」のシール。近くの姫嶋神社の夏祭りにはだんじりが出るんだとか
考えれば考えるほど“会”の概念が分からなくなってくる。
姫島周辺にも工場が多い。
さて、福へ引き返すかとウネウネと住宅街を歩いていて目印になるのがこの大きな煙突である。
「大阪市・八尾市・松原市環境施設組合 西淀工場」の煙突。
ゴミの焼却等を行う工場だそうで、後から聞いた話では、この辺りの小学校の生徒たちはみんなこの工場を見学しに来るんだとか。
福駅の割と近くに建っている工場なので、この煙突を目指して歩くだけで駅の方へ行けるのだ。方向感覚がめちゃくちゃな私にとっては非常に助かる。
しかし、時折煙突を見上げながら歩いていたら、ふと自分が目指しているのがさっきとは別の煙突であることに気づいた。
福駅の割と近くに建っている工場なので、この煙突を目指して歩くだけで駅の方へ行けるのだ。方向感覚がめちゃくちゃな私にとっては非常に助かる。
しかし、時折煙突を見上げながら歩いていたら、ふと自分が目指しているのがさっきとは別の煙突であることに気づいた。
あれ!?これじゃない!とゾッとした。
確かめてみると、工場の敷地内に建つ煙突であった。福駅周辺を煙突だよりで歩かれる際は、こういうこともあるので注意して欲しい。
銭湯だったらいいなと思ったのがその目論見も外れた。
再び気を取り直して正しい煙突を目指し、「大阪市・八尾市・松原市環境施設組合 西淀工場」にやってきた。
でかい!渋いカラーリングに好感がもてる。
駅前の立ち飲み屋は常連さんでギュウギュウ
再度、福駅に戻って周囲を見渡してみると高木さんが聞かせてくれた話が改めてよくわかる。ユニクロの脇には大きなマンションが建っているし、その近くには別の入居者募集中のマンションが。
ユニクロ行き放題のマンション。
“住む町”へと変貌を遂げつつある福駅。今後もどんどん大きなマンションが建っていくんじゃないだろうか。
日も暮れてきたので、駅の反対側の飲食店街を改めて覗いてみる。その中に「立ち飲み処 29 FUKU」という店がある。今日の締めにぴったりだと思ったがまだオープン前のようだ。
日も暮れてきたので、駅の反対側の飲食店街を改めて覗いてみる。その中に「立ち飲み処 29 FUKU」という店がある。今日の締めにぴったりだと思ったがまだオープン前のようだ。
きっとリーズナブルにいい酒が飲める店に違いない。
お店の方が仕込みをしていたので「何時から営業してますか?」とガラッとドアを開けて聞いてみると、「まだなんやけど、いいですよ。どうぞー!」と迎え入れてくれた。
なみなみと注いでくれたレモンチューハイとシラスに青唐辛子をパラッと振りかけた突き出し。最高。
お店のママも、福駅は“住む場所”だと言っていた。「なんか食べに行こう思ったら塚口か尼崎やね。この辺はそんなにお店もないから」と。それでも、「イズミヤ スーパーセンター」が去年オープンし、大規模な総合病院である「千船病院」が今年になってこの地に移転してきて、少しずつ賑やかになってきてはいるという。
駅前から北側にイズミヤ内の「GU」、千船病院、ごみ処理場の3大施設が並んでいる。
3年前にオープンしたという「立ち飲み処 29 FUKU」。キレイなお店なんだけど、昔ながらのお店のようなアットホームな雰囲気もあり、飲み物もおつまみもどれも安い。チューハイ300円、おでん3品200円といったところから察していただけるであろう安心価格だ。
冷えた体にダシが優しく染みわたります。
私が入店して間もなく、常連さんが次々にやってきて店内は一気に満員に。「有馬賞どうやった!?」とか「年内いつまで?え~明日!寂しくなるやん」とか「ママ、関東炊きちょうだい」、「関東炊きなんて今もう誰もいわへんよ!おでんやで!なー」とか、店内を満たすそんな会話に耳を傾けながら飲んでいるうちに、私が知らなかったこの町は、こうしていつもここにあったということがしみじみ実感できた。私がいなかっただけだったのだ。
ありがとう福駅。またきっと来ます!
知らない町を歩くのは楽しい。最初は緊張しながら歩いて、どこかでふらっと食事をしてみると少しそのふところに飛び込めたような気持ちになり、そのままさらに歩き回っているうちにふいに町に馴染むような瞬間がある。そして日が暮れた頃にどこかで一杯ひっかえて帰る。それだけで昨日までまったく知らなかった町がかけがえのない場所に思えてきたりするから不思議だ。
一生降りなかったはずの駅に下りるという行為自体、運命に逆らうみたいな、別の未来に足を踏み出すみたいな痛快さがある。そして考えると目まいがするのだが、世の中にある駅、ほとんどが一生降りないかもしれない駅なのである。なんということでしょう!これからも運命に逆らい続けていきたい。
一生降りなかったはずの駅に下りるという行為自体、運命に逆らうみたいな、別の未来に足を踏み出すみたいな痛快さがある。そして考えると目まいがするのだが、世の中にある駅、ほとんどが一生降りないかもしれない駅なのである。なんということでしょう!これからも運命に逆らい続けていきたい。
福駅で降りてみてわかったこと。
・いたるところに「福」と名のつく施設がある
・昔から工業地帯だったが最近は大型マンションも建ちベッドタウン化しつつある
・巨大なイズミヤ、ユニクロ、総合病院などがある
・西淀工場の煙突が散策の目印になる
・河川敷が広くて夜景が綺麗らしい
・駅前の居酒屋は常連さんで開店前から賑わっている
・昔から工業地帯だったが最近は大型マンションも建ちベッドタウン化しつつある
・巨大なイズミヤ、ユニクロ、総合病院などがある
・西淀工場の煙突が散策の目印になる
・河川敷が広くて夜景が綺麗らしい
・駅前の居酒屋は常連さんで開店前から賑わっている
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給食キウイとバウムクーヘンの耳、跡地、武蔵砂川(古賀及子)
こんなに魅力的な看板みたことない
このままだと一生降りなさそうな駅、私が選んだのは西武拝島線の武蔵砂川駅だ。東京都立川市の北西側に位置する。
今年出会って仲良くなった友達の地元駅であるが、はじめて駅名を聞いたときその一生行かなさそうさに身震いさえした(個人の感想です)。
で、行ってみたらこれがみどころ満載だったのだ。
玉川上水の流れは美しく、八王子ラーメンはおいしくて、道では学校給食用のキウイが売られ、「すたみな太郎NEO」があり(NEO…!)、日産自動車の工場跡地は広々とし、そして文明堂の工場直営店が天国だった。
うちの地元駅にはこの力はあるだろうか、いや、ない。地元を思い不安にすらなる旅であった。
今年出会って仲良くなった友達の地元駅であるが、はじめて駅名を聞いたときその一生行かなさそうさに身震いさえした(個人の感想です)。
で、行ってみたらこれがみどころ満載だったのだ。
玉川上水の流れは美しく、八王子ラーメンはおいしくて、道では学校給食用のキウイが売られ、「すたみな太郎NEO」があり(NEO…!)、日産自動車の工場跡地は広々とし、そして文明堂の工場直営店が天国だった。
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「おすすめの店や見どころはないっす笑!」
武蔵砂川駅のちかくに住んでいた(いまも実家がある)という友人、今年べつやくれいさんの「リアクション上手になろう」という記事で出会ったリアクションでかい仲間の杉原さんだ。
左が私で右が杉原さん
家が近所ということもあり記事公開のあともずいぶん仲良くさせてもらっている。
※杉原さんも私もこの記事のおかげでリアクションの高さを長所としてとらえられるようになりずいぶん生きやすくなったよねとよく話しています。この場を借りてあらためてべつやくさんにお礼申し上げます。
さて、そんな杉原さんに武蔵砂川のみどころを聞いてみた。
※杉原さんも私もこの記事のおかげでリアクションの高さを長所としてとらえられるようになりずいぶん生きやすくなったよねとよく話しています。この場を借りてあらためてべつやくさんにお礼申し上げます。
さて、そんな杉原さんに武蔵砂川のみどころを聞いてみた。
元気に「ないっす笑!」
ここにはなにもないという絶望が、こんなにも明るく伝わるものなのか。
感心してしまったが、いや、そんなことないでしょう、なんかあんでしょう! むしろわくわくした気持ちだい。
感心してしまったが、いや、そんなことないでしょう、なんかあんでしょう! むしろわくわくした気持ちだい。
「ふせこし」と八王子ラーメン
なるほど小さな駅である。
杉原さんがなにもないと胸を張る気持ちもわかる。
しかし冒頭にも書いた通り武蔵砂川駅周辺はむしろむしろめっちゃなんかあるのだ。
杉原さんがなにもないと胸を張る気持ちもわかる。
しかし冒頭にも書いた通り武蔵砂川駅周辺はむしろむしろめっちゃなんかあるのだ。
まずもって、線路と並走する玉川上水が堂々たるこの流れ
そして残堀川と交差する地点がある
川が交差している。どういうことかと思うが、残堀川の下を玉川上水がくぐる形で交差させているんだそうだ。これを「ふせこし」という。
玉川上水全域でほかの河川と交差しているのはここだけである。玉川上水ファンにはたまらなすぎる場所だろう。
玉川上水全域でほかの河川と交差しているのはここだけである。玉川上水ファンにはたまらなすぎる場所だろう。
急ですが八王子ラーメンですどうぞ
川の話は本当に本当に生きる人民にとって大事なことだし、また趣味として水系にはたくさんのファンがいることは承知である。
しかし(地味かな…)という不安には勝てず、手がすべってラーメンの写真をぶっこんでしまった。川よどうかおゆるしください。
玉川上水のようなよどみない流れでこのままラーメン紹介に移ろう。
しかし(地味かな…)という不安には勝てず、手がすべってラーメンの写真をぶっこんでしまった。川よどうかおゆるしください。
玉川上水のようなよどみない流れでこのままラーメン紹介に移ろう。
八王子ラーメン・三番亭というお店
玉川上水と残堀川の交差地点から10分ちょいのところにあるラーメン屋さんである。
立川で八王子ラーメンが食べられる。沖縄で札幌ラーメンが食べられるみたいな話の熱量を最小限に抑えたような店だ。
立川で八王子ラーメンが食べられる。沖縄で札幌ラーメンが食べられるみたいな話の熱量を最小限に抑えたような店だ。
八王子には古くから醤油のスープにきざみ玉ねぎがトッピングされたラーメンが食べられてきた。
そもそも八王子でラーメンといえばこういうもの、というのが八王子ラーメンなんだそうだ。
そもそも八王子でラーメンといえばこういうもの、というのが八王子ラーメンなんだそうだ。
細めんはデフォルトで固ゆで。にもかかわらず「かため」オーダーをするお客さんが多いようだった
ラーメンに玉ねぎを乗せようと思ったことは一度もなかったが、おいしい。若干辛味が残してあって、でもちゃんと甘い。醤油のスープによく合うのだ。
私はラーメンにはまるで詳しくない。八王子ラーメン、こんな機会がなければそれこそ一生食べられなかったはずだ。
「一生降りなさそうな駅で降りる」という行為による手軽な奇跡がいきなり起きている。
私はラーメンにはまるで詳しくない。八王子ラーメン、こんな機会がなければそれこそ一生食べられなかったはずだ。
「一生降りなさそうな駅で降りる」という行為による手軽な奇跡がいきなり起きている。
チャーシューもやわらかかったよー
学校給食用キウイとは
さて、武蔵砂川駅では昭和記念公園への行き方を案内した看板をいくつか見かけた。
昭和記念公園といえば立川駅から行くイメージだったが、広大な敷地の逆サイドが武蔵砂川駅に近く「砂川口」という入り口があるのだ。
行ってみたら入り口にもかかわらずすでに一つの公園といってもいいくらい広々した気持ちの良いところだった。
昭和記念公園といえば立川駅から行くイメージだったが、広大な敷地の逆サイドが武蔵砂川駅に近く「砂川口」という入り口があるのだ。
行ってみたら入り口にもかかわらずすでに一つの公園といってもいいくらい広々した気持ちの良いところだった。
奥の屋根が公園の入り口
で、昭和記念公園についてはまた別の機会にゆっくり語明かすとして、行き道にこんな看板があった。
学校給食用キウイ
学校給食に出ていることを訴求する商品はあまり見たことがなかったが、これはめちゃめちゃにそそられる。
まわりこむと即売所があった。
店は無人だったが私がいろいろと見ていると奥の畑のほうからおかみさんらしき方が出てきてくれた。
まわりこむと即売所があった。
店は無人だったが私がいろいろと見ていると奥の畑のほうからおかみさんらしき方が出てきてくれた。
この日はブルーベリーのジャムと栗ジャムが売り切れだそう
おもての学校給食用のキウイが気になって、というと「あら、キウイがお好きなのね」と笑顔である。キウイというか学校給食の方にキャッチされたのだが言い出しづらくなってしまった。
300円で5個入り。国産だと思うとずいぶん安い。帰って食べたら色も味も緑のキウイと黄色のキウイを足したような中間の良いとこどりの味わいだった。
300円で5個入り。国産だと思うとずいぶん安い。帰って食べたら色も味も緑のキウイと黄色のキウイを足したような中間の良いとこどりの味わいだった。
ここいらの子はこれが給食で出るのかな、いいな
立川の旅の土産がキウイという発想はまるでなかった。遠出をしているわけではないのだが高純度で旅としての手ごたえがある。
すたみな太郎NEO
そしてこの即売所の正面には「すたみな太郎NEO」という店が。
NEO…?
調べてみると焼肉食べ放題のチェーン店「すたみな太郎」の高価格路線の店のようだ。セルフ形式だけではなくオーダーの食べ放題メニューもあるらしい。しかもなんと全国で「NEO」店舗はここのみの模様である。
選ばれし「すたみな太郎」である。
選ばれし「すたみな太郎」である。
選ばれし店舗
私は「スター・ウォーズ」があまりよくわかっていないのだが、武蔵砂川はすたみな太郎界のアナキン・スカイウォーカーということでいいだろうか。
あとは大きな人形のお店があって
Tポイントが貯められるらしかった
旅をするといつも私たちはTポイントがいかにあちこちで貯められるかを思い知らされる。
旅を通じ見聞を広めるということはすなわちTポイントカードの営業さんが誰よりも早く未踏の地を開拓しているのを知るということそのものである。
以上が駅の南側であった。もうすでにみどころいっぱいだ。
デイリーポータルZなら「すたみな太郎NEO」だけで普通に1本記事を書く勢いである。
さらに北側だ。こちら側は日産自動車の工場跡地広がって大変なことになっていた。
旅を通じ見聞を広めるということはすなわちTポイントカードの営業さんが誰よりも早く未踏の地を開拓しているのを知るということそのものである。
以上が駅の南側であった。もうすでにみどころいっぱいだ。
デイリーポータルZなら「すたみな太郎NEO」だけで普通に1本記事を書く勢いである。
さらに北側だ。こちら側は日産自動車の工場跡地広がって大変なことになっていた。
日産自動車村山工場跡地
日産自動車村山工場跡地は1960年代にそもそもプリンス自動工業車が建設し、そのプリンス自動車を日産が吸収した以降は2004年の完全閉鎖まで日産の主力工場だった。
閉鎖決定や完全閉鎖のニュースを聞いたおぼえがあるが、ここだったのか。
閉鎖決定や完全閉鎖のニュースを聞いたおぼえがあるが、ここだったのか。
跡地には病院やイオンが建っている
がらんとしている場所がむしろ多い。日産から宗教法人に譲渡されたそうで、グランドになっている場所もあった
公園になっている場所も
はじめ地図をみていたときに「プリンスの丘公園」というのがあるなとは思っていた。
王子さまの像的なものがあるんだろうかと行ったらあったのは「スカイライン GT-R発祥の地」の碑であった。
王子さまの像的なものがあるんだろうかと行ったらあったのは「スカイライン GT-R発祥の地」の碑であった。
かっこいい碑
プリンス、というのはプリンス自動工業車の名前の名残だそうだ。
逆光の公園名がポップ体(期せずして5・7・5)
工場跡地が広大なので、武蔵砂川の北側の景色はよそものの私にとっては「工場跡地」か「跡地でないか」を見極めることからまずはじまる。なにかの跡地であるという状態が土地のアイデンティティになっているようにも思え感じ入った。
右側、壁の中がずーっと跡地
見知らぬまちの、分かりやすく見知らぬ景色だ。
文明堂の工場があるぞ…!
武蔵砂川駅の北方面、跡地ではないほうで最高に気になる場所があった。文明堂武蔵村山工場だ。
個人の宗教観によってひとの数だけ天国のかたちというものがあるだろう。
私にとっての天国は「工場併設の即売所」だ。信仰の対象が偶然にもあったのだ。これがみちびきである。
文明堂の文字がかわいい
文明堂というのは大きな菓子メーカーであるが運営母体は、たとえば文明堂総本店や文明堂東京のようにいくつかに分かれていて製造もそれぞれに行っている(その後統合などもあったようだが2009年にその辺を調べた記事がこちら)。
調べると、こちらの工場と即売所は「文明堂東京」が運営しているようだ。
調べると、こちらの工場と即売所は「文明堂東京」が運営しているようだ。
即売所の「文明堂壹番舘」
この文明堂壹番舘は洋菓子を扱う「ラ・ミルティーユ」も併設されており、菓子のことならまかせておけよという気概にあふれている。
これは…!
名物は日程限定の焼き立て窯出しカステラのようだ。
この日は開催されていなかったのだが、以前デイリーポータルZではライターの玉置さんが浦和工場での直売を取材している。気になるかたはぜひごらんください。文明堂には事欠かないサイトである。
窯出しカステラ日ではなかったものの、失望は一切ない。だって、こうだ。
この日は開催されていなかったのだが、以前デイリーポータルZではライターの玉置さんが浦和工場での直売を取材している。気になるかたはぜひごらんください。文明堂には事欠かないサイトである。
窯出しカステラ日ではなかったものの、失望は一切ない。だって、こうだ。
カステラの切れ端みっちり…!カステラ巻きもあるぞ
どら焼きの皮だけ売ってる…!
神よ。
……失礼いたしました、しばし即売所の神に祈りをささげておりました。
結局これはたまらんとバウムクーヘンの端っこ詰め合わせと、これは特にアウトレット品ではないのだがかわいすぎる焼き印のついたどら焼きを買って武蔵砂川駅からまた自宅まで帰った。
……失礼いたしました、しばし即売所の神に祈りをささげておりました。
結局これはたまらんとバウムクーヘンの端っこ詰め合わせと、これは特にアウトレット品ではないのだがかわいすぎる焼き印のついたどら焼きを買って武蔵砂川駅からまた自宅まで帰った。
長い棒で焼く、あのバウムクーヘンのはじっこの部分!「耳」だ!
通常売られている部分よりもしっかり焼けている~ララ~!
帰って気づいたのだが、バウムクーヘンはこの武蔵村山工場ではなく船橋工場で作られたものだったのだ。なんと。
遠地の工場間で規格外の品物を流通させているというのは即売店ファンとしてロマンを感じずにはいられない。
※そして船橋工場は「株式会社文明堂東京」ではなく「株式会社文明堂銀座店」の工場である。おや…? とおもったが、文明堂東京と文明堂銀座店はいま「株式会社文明堂東京ホールディングス」傘下の企業なのだった。オタク心を完全にくすぐられた…!
遠地の工場間で規格外の品物を流通させているというのは即売店ファンとしてロマンを感じずにはいられない。
※そして船橋工場は「株式会社文明堂東京」ではなく「株式会社文明堂銀座店」の工場である。おや…? とおもったが、文明堂東京と文明堂銀座店はいま「株式会社文明堂東京ホールディングス」傘下の企業なのだった。オタク心を完全にくすぐられた…!
焼き印かわいすぎだろう…
まさかの再訪フラグ
最終的に文明堂オタクにとってのメシウマ案件にたどり着いて終わるというまさかの展開であったが、冬の晴れの1日、日の高い時間をまるまる楽しんで帰ってきた。
そもそも一生行かないであろうという駅であるから、再訪もないであろう。そう思うとまた不思議である。
と、ほげ~っとしていたら杉原さんがまたメッセージをくれた。
そもそも一生行かないであろうという駅であるから、再訪もないであろう。そう思うとまた不思議である。
と、ほげ~っとしていたら杉原さんがまたメッセージをくれた。
おかあさん!
本記事の公開は2017年12月31日。記事執筆のため取材は1週間以上前に行っているが、杉原さんは31日にライブ更新をすると思ったようなのだ。
杉原さんのお母さんに会いにまた行ける。武蔵砂川駅が一気に身近な駅になってしまった!
そうだ、場所と人生のつながりはいつも急だ。
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ごみステーションとランチクエスト 東能代駅(伊藤健史)
バスケの町、秋田県能代市の玄関口となる五能線の起点、東能代駅は私にとって一生おりなかいかもしれない駅だった。そこでただ昼飯を食うための冒険が繰り広げられたのだった。
おりないかもしれない駅におりるとは
早朝の東京駅を棒みたいになった人がたくさん徘徊している。冬だ。
一生おりないかもしれない駅をなんで一生おりないかもしれなかったなあと思うのだろうか。やはり一番の理由は自らの興味どころか知覚の外にあったからで、そういう駅を目指すには自分で路線図や地図、インターネットを駆使すればまあいろいろ見つかるんだろうけどそれではいまいち面白くない。他人から気づきをもらうのが粋というものだ。
じゃあ実家にしよう、友人の実家の最寄り駅聞いてそこに行こうか、なんてノリでやってみたら真冬の始発の秋田新幹線に乗る羽目になっていた。
じゃあ実家にしよう、友人の実家の最寄り駅聞いてそこに行こうか、なんてノリでやってみたら真冬の始発の秋田新幹線に乗る羽目になっていた。
麗しきこまち。
都内の出版社に勤務する友人Oさんに聞いた実家の最寄り駅が秋田県北部の町、能代で奥羽本線と五能線をつなぐ東能代駅だったのである。
仙台通過!
秋田新幹線のハイライト、大曲駅でのスイッチバック。駅に停車後、新幹線は後ろ向きに出発する。
秋田で奥羽本線東能代行きに乗り換えて終点まで。
秋田から1時間ほどで東能代に到着、東京からの所要時間は約6時間、すでに昼前である。
軽いノリが思わぬ長い旅路となった。
ホームを歩くとまず目につくのがいたるところに散りばめられた杉の木だ。
階段に杉。
)改札も杉。
杉大杉。
看板の情報によると、このあたりは銘木で知られる秋田杉の製材業で栄えた地域らしい。
それでスギちゃんか!というわけでもなさそうだぜぇ。
ここが杉の町だという事はわかったが能代にはもうひとつ有名なものがある。Oさんに東能代駅の見どころとして聞いていた。
「見どころといったらあれですが、バスケの町なので駅にバスケットゴールがあります。駅員に一声かけたらフリースローができるかもしれません」
能代といえば能代工業高校、漫画「SLAM DUNK」に登場する絶対王者、山王工業高校のモデルとなったバスケの超強豪校である。全国大会優勝58回という圧倒的な実績を誇り、日本人初のNBAプレイヤー田臥勇太選手をはじめキラ星のごとくスター選手を輩出している。
能代といえば能代工業高校、漫画「SLAM DUNK」に登場する絶対王者、山王工業高校のモデルとなったバスケの超強豪校である。全国大会優勝58回という圧倒的な実績を誇り、日本人初のNBAプレイヤー田臥勇太選手をはじめキラ星のごとくスター選手を輩出している。
ゴールあった!
おそるおそる駅員さんにフリースローができるのか聞いてみた。
「いや、フリースローができるのは隣の能代駅ですね。しかも特急に乗ったお客様が停車中にできるというものなのでいきなり行ってフリースローしたいと言っても無理です」
「いや、フリースローができるのは隣の能代駅ですね。しかも特急に乗ったお客様が停車中にできるというものなのでいきなり行ってフリースローしたいと言っても無理です」
これに乗らんといかんらしい。
とにかく駅を出てみよう、他にOさんはなんか言ってたっけ。
「車で20分程南に行くと八竜という地名があってそこには竜のでかいオブジェがありますが、駅の近くは本当になんにもないです…」
駅を出る前に見どころ紹介が終わってしまった。
「車で20分程南に行くと八竜という地名があってそこには竜のでかいオブジェがありますが、駅の近くは本当になんにもないです…」
駅を出る前に見どころ紹介が終わってしまった。
シンプルな駅舎。ロータリーの看板には「ようこそ北の町へ」というピュアなメッセージが。
駅前ロータリー。飲食店のたぐいは見当たらない。
しかし何もないといわれるところほどぶらぶらおじさんの真骨頂が発揮されるのだ。
能代界隈ではほぼ「月極」ではなく「月決め」表記だった(私調べ)
駅前から国道7号線につながる通り。理容店や精肉店などが点在する。
旅先で必ず探すものシリーズ「犬」。猛犬とはやはり秋田県だろうか。少なくともイングリッシュ・コッカースパニエルとかではなさそうだ。
ごみステーションに誘われて
いろいろコレクションしているもののひとつにごみステーション、つまりごみ捨て場があるのだけれど東能代駅界隈のこれがまたよかった、いいのだ。
なんとなくゴミ捨て場になっているのではなくきっちりカーゴが設置されている。
ゴミイラスト。以前、東京で調べた傾向どおり可燃ごみでは枝、長靴、ビデオテープが描かれている。
カーゴはどれも絶妙に異なる表情を持っていてテンションがあがる。
雪国ならではの堅牢感。
ネッティング(ネットがけ)もかなり丁寧にされているものが多い。水平の出し方も絶妙。
このネッティングも職人技が光る。
こぎみよいリズムで視界にとびこんでくるゴミステーションを無計画に渡り歩く。ジャングルできれいな蝶を追っかけたらさくっと遭難するパターンである。
めし屋がない
この散歩を一端中断するように告げるサインは腹の音だった。そういえば朝から何も食べていないのでどっか入りますかといってもここまで飲食店を一軒も目にしていない。
どっち方面に向かったらよいのかとたたずんでいたら、軒先を掃除していた初老の女性が、このあたりではたぶん珍しいのだろう一眼レフカメラをぶらさげた観光者風情の私に「ここらになんか被写体でもあるんですか」と話かけてきた。
「いや、ゴミの、看板とかをですね…」
よせばいいのに本当の事を答えてしまい、どうなることかと思ったが「うちにもあるよ」となんか理解が早い。
どっち方面に向かったらよいのかとたたずんでいたら、軒先を掃除していた初老の女性が、このあたりではたぶん珍しいのだろう一眼レフカメラをぶらさげた観光者風情の私に「ここらになんか被写体でもあるんですか」と話かけてきた。
「いや、ゴミの、看板とかをですね…」
よせばいいのに本当の事を答えてしまい、どうなることかと思ったが「うちにもあるよ」となんか理解が早い。
「どうぞ、撮りなさい」「あ、ありがとうございます」
ごみでつながった縁を活かしてこのあたりに食事ができる店があるか聞いてみる。
「このあたりには1つくらいしかないねえ。」
「この先を曲がって線路を越えると防風林に囲まれた道のような道でないような道があるから私を信じてそこをまっすぐいきなさい。そうすると右手に中川食堂っていうのがあるから」
ロールプレイングゲームのようなアドバイスをいただき、中川食堂を目指す。
「このあたりには1つくらいしかないねえ。」
「この先を曲がって線路を越えると防風林に囲まれた道のような道でないような道があるから私を信じてそこをまっすぐいきなさい。そうすると右手に中川食堂っていうのがあるから」
ロールプレイングゲームのようなアドバイスをいただき、中川食堂を目指す。
ゴミステーションを眺めながら。パッチワークの長屋タイプ
おお、これが踏切。
踏切を渡ると先ほどのおばちゃんの道の表現がじつに言い得て妙だったことがわかる。
これは確かに信じないと通らない道だ。
おお!絶対いいに決まってる!
窓に大きく描かれた「定食類」に心を踊らせながら中に入るとなんと本日は臨時の定休日との事。
空腹はピークを迎え目玉もぐるぐる回っちゃう。かくなる上は出身者に頼るべしとOさんに聞いてみた。
空腹はピークを迎え目玉もぐるぐる回っちゃう。かくなる上は出身者に頼るべしとOさんに聞いてみた。
吾作ラーメン?
秋田県内のみに展開するラーメンチェーンらしい。東能代店というのが存在するではないか。でも地図で見てみたらここから3km東ってなにその車社会設定。でも私の腹はいいから早く歩きはじめろよこの野郎と言っている。腹でものを考えはじめた私は毅然と歩みはじめた。
空腹を忘れさせてくれるのはいつだってごみステーションだ。
400坪が激安。
リーディングカンパニーとしか言い様のないカンパニー見つけた。
駅の南を線路に沿うようにして走る国道7号線に出ると道沿いにはでかい建物やおなじみの店舗がぽつぽつと並んでいる。
ほっかほっか亭あるじゃん!
ちょっとした路地にいいごみステーションが。
吾作への道のりは遠い(寄り道もしてるので)。途中、東京では見かけないような店を見つけて「いや、これでもいいんじゃないの?」とそれとなくOさんに相談してみる。
吾作一択か。
ラーメン店居抜きのペットショップがあった。
あれは吾作では?まぼろしじゃないよね。
国道をひたすらあるいて約40分、日は傾きはじめ、身を切るような冷たい風が吹いてきて、空腹と相まってそろそろ幻覚が見えるんじゃないかという頃、念願の吾作は目の前に姿を現した。
立派な門構え。
ねぎラーメンしょうゆ味、うまそう!
濃い味のしょう油スープがやわらかめの縮れ麺や存在感ばりばりのシナチクに沁み入るようにからみ、しょっぱうまい。
そういえば秋田の人は濃い味が好きで、Oさんの地元ではイチゴやトマトにしょう油をつけて食べると聞いていた。
そういえば秋田の人は濃い味が好きで、Oさんの地元ではイチゴやトマトにしょう油をつけて食べると聞いていた。
どんぶりには店のフィロソフィーが刷り込まれていた。
そして何よりあったかい。ずっと外を歩いて冷え切った体にこのあつあつの濃い味スープがみなぎると蘇生感がはんぱない。北風と太陽がどんないきさつか忘れたけど旅人のアウターを脱がそうと勝負する話があったが私のダウンジャケットを脱がしめたのは冷たい豪風でも、午後の日差しでもなく、吾作のラーメンだった。
帰りにみつけた一押しごみステーション
東能代駅はこのような企画があって、さらに友人の実家でなければやはり一生おりなかったかもしれないなあといった駅だった。しかし駅のほうも私がおりる事なんて想定もしてないし歯牙にもかけない感じで堂々と存在しており、乗降者と駅との息詰る乗降戦を体験できたのではないか(なにが)。なんだかんだでもっといろいろ見つけたものもあるのだが、また何かの機会で紹介できればと思う。
夕日に映えるJAみょうが館