特集 2017年11月24日

圧力により改名した音楽ユニットのライブがカオス

これ、音楽のライブ中です。
これいま音楽のライブ中です。
僕の好きなバンドが突然改名した。

旧)ザ・プーチンズ
新)ザ・ぷー

である。

今回、改名後初のライブが行われるというので見に行き、ついでにどうして改名したのかも聞いた。

理由は、外圧、とのことでした。
1975年愛知県生まれ。行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。(動画インタビュー)

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> 個人サイト むかない安藤 Twitter

もともとは「ザ・プーチンズ」だった

4人組音楽ユニット「ザ・ぷー」は、もともと「ザ・プーチンズ」という名前で活動していた。すくなくとも僕が彼らを知った時にはその名前だったはずである。それがある日突然「ザ・ぷー」と改名されていた。
ザ・ぷーの4人。左からプロデューサーのSONE太郎、ギター担当街角マチオ、川島さる太郎(サル)、テルミン担当街角マチコ。
ザ・ぷーの4人。左からプロデューサーのSONE太郎、ギター担当街角マチオ、川島さる太郎(サル)、テルミン担当街角マチコ。
改名について、公式サイトには動画がアップされている。
要点をまとめるとこういうことだ。

・これまで様々な圧力に負けずに活動をしてきた。
・しかし名前のおかげか、いまいちインディーズ感がぬぐえない。
・いったん解散して名前を変え、ブレイクしたい。

歯に衣を3重に着せたような言い方である。どうなんだろう、馴染んだ名前を変えるからには、なにか決定的な事件でもあったのではないのか。

今回、彼らの改名後初の単独ライブがあるというので行ってきた。ライブレポートを交えながらインタビューした内容を紹介したいと思います。
ライブが始まる30分くらい前から人形劇とかコントなんかが始まるので会場へは早めに入った方がいいです
ライブが始まる30分くらい前から人形劇とかコント(今回はオールナイトニッポンをジャックした、という茶番)なんかが始まるので会場へは早めに入った方がいいです。
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ライブの冒頭、あの人が出てくる

ライブが始まった。満員の会場が暗転するとまず映像でプーチンが出てくる。ご存じあのプーチンである。

「ほんまいいかげんにしてや~」

しかもこのプーチン、関西弁なのだ。
ライブの冒頭でプーチンからのメッセージが流れる(もちろん茶番である)。
ライブの冒頭でプーチンからのメッセージが流れる(もちろん茶番)。
このあとプーチンからの「贈り物」とされるドリンクを飲んだメンバーがいったん死ぬ。毒が入っていたのだ。いったん死ぬ、から始まるライブも珍しいと思うが、死んだ状態で担架に乗せられメンバーが入場してくる。
で、とつぜん生き返る。
で、とつぜん生き返る。
メンバーはなんとあらかじめ解毒剤を飲んでいたのだ。悔しがるプーチン。何度も言うが茶番である。

このあとぴんぴんした状態でライブが進行するのだが、この通り、プーチンズあらため「ザ・ぷー」のライブは一般的に考えられる音楽ユニットのライブとはかなり趣が異なる。前回のライブではお客含め全員で盆踊りを踊った。

ライブの内容については後ほど詳しくつっこむことにして、とりいそぎ改名について、ライブ後のメンバーに聞いた。

きっかけはネドベージェフからプーチンに大統領が変わったこと

--ライブを見ていると、これはまあ叱られるだろうな、という感じはしますね。
まあ、そうですよね。
まあ、そうですよね。
マチコ「もともとはかっこいいから、という理由で適当につけた名前だったんです。ザ・ビートルズみたいに、最初に『ザ』がついて最後に『ズ』がつくバンド名にしたかっただけでして。」

マチオ「あと当時はネドベージェフが大統領だったから問題なかったんだと思うんですよね。」

それはロシアの話ですよね。
にこやかに怖い話をする。
にこやかに怖い話をする。
彼らがザ・プーチンズとして活動をはじめて5年。奇しくも2012年にウラジミール・プーチンがロシアの大統領に就任する。これで急に風当たりが強くなる。

マチコ「そういうことですね。」

マチオ「そういうことです。」

怖い話になってきたので、ここで彼らのライブの様子を少しだけ紹介したい。ザ・ぷーのステージに登場するのは主に街角マチコ、マチオの二人である。
ギター担当のマチオ、テルミン担当のマチコ。ただし二人ともめったに演奏はしない。
ギター担当のマチオ、テルミン担当のマチコ。ただし二人ともめったに演奏はしない。
失礼のないように紹介したいとは思うのだが、事実と異なることは書けないのでそのまま書くと、ザ・ぷーのライブは主にコントで構成されている。二人ともめったに演奏はしない。

マチオ「演劇に近いですね。音楽もまあまあやる演劇、という認識でいいかと思います。」

とはいえ二人とも演奏の腕前はさすがプロである。特にマチコさんの演奏する憂いのあるテルミンは必聴。以前取材させてもらったときには僕もmegayaくんも見事にはまり、家に帰ってすぐテルミンを注文したほどだ(だからうちにはテルミンがある)。
マチコ「ではエリックサティでも演奏しましょうか。」
マチコ「ではエリックサティでも演奏しましょうか。」
お、ようやくマチコさんのテルミンが聴けそうだぞ、と期待すると。
すぐふざけはじめる。
すぐふざけはじめる。

音楽のライブだと思って聴きに来るとあっけにとられると思う。だけどこの人たちのライブは中毒性があって、一度見るとまた来ないといけないような気分になるのだ。中毒性というか、人を不安にさせる力というか。

ライブをつっこみ始めるときりがないので改名の話に戻る。

プロデューサーのSONE太郎は直接はステージに上がらない。裏でザ・ぷーをあやつっている。
プロデューサーのSONE太郎は直接はステージに上がらない。裏でザ・ぷーをあやつっている。
ザ・プーチンズというユニット名だった頃は、それはもう様々な団体からいろいろな反応があったという。それでも5年以上続けてきたのだから愛着もあったのだろう。簡単に改名できるようなものではなかったはず。

SONE太郎「最終的にはとある団体からの圧力が決め手となりましたね。」

マチオ「連絡をいただいてから3日後には改名しましたから。待ったなしです。」

圧力。

テキストで書くとさほどでもないが、口に出して言ってみてもらいたい。あつりょく、がいあつ。なんとも物々しい響きではないか。日本でも事務所の圧力で活動できなくなったタレント、みたいな話を聞いたりするが、彼らの場合もう少し上の方の話だ。
僕は最初このサルがプーチンという名前なのかと思っていたのだけれど、川島さる太郎というらしい。ギリギリのところで礼節をわきまえている。
僕は最初このサルがプーチンという名前なのかと思っていたのだけれど、川島さる太郎というらしい。ギリギリのところで礼節をわきまえている。

改名の理由はなんとなく理解できた。テルミン→ロシア→プーチンズ、この流れには違和感もないのだけれど、たまたま大統領の名前を冠した日本のアーティストがライブで盆踊りとか踊っているとなると、また話が違ってくるのだ。勉強になった。

気を取り直して楽しいライブのレポートをどうぞ。

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デカ顔箱からのお祓い

そうそう、ザ・ぷーはわれわれ考案のデカ顔箱を最初にステージに取り入れたアーティストでもある。
こんなにデカ顔箱がしっくりくるユニットもいない。
こんなにデカ顔箱がしっくりくるユニットもいない。
この人たちのライブはほんとに面白い。奥は同じくファンであるライター乙幡さん。以前のライブでも会場で会った。
この人たちのライブはほんとに面白い。奥は同じくファンであるライター乙幡さん。以前のライブでも会場で会った。
ライブも中盤にさしかかり、会場が温まってきたところで急にマチコさんのテルミンから音が出なくなった。

マチコ「おかしいですね、これはお祓いしかないですね。」

テルミンが本当に壊れたかと心配したのもつかのま、これも茶番のひとつだった。マチコさんのテルミンが治るよう、これから全員でお祓いに行く。
ではこちらから、と会場の外へ誘導され。
ではこちらから、と会場の外へ誘導され。
廊下に並ばされる。
廊下に並ばされる。
何度も言うが、音楽ユニットのライブ中である。
廊下には鳥居があり、それを全員でくぐる。
廊下には鳥居があり、それを全員でくぐる。お祓い完了。
前回のライブではみんなで太鼓の音に合わせて盆踊りを踊った。そのあと椅子取りゲームもした。何言ってるのかわからないかもしれないが、今回のライブを見てもらうとなんでもありだということがわかるだろう。
鳥居をくぐるとマチコさんからイルミネーション棒がもらえるが、マチコさんいわくこれは原価が500円もするので、タダであげる代わりに物販ブースで500円以上買い物をしろ、と。無茶苦茶である。
鳥居をくぐるとマチコさんからイルミネーション棒がもらえるが、マチコさんいわくこれは原価が500円もするので、タダであげる代わりに物販ブースで500円以上買い物をしろ、と。無茶苦茶である。
このあと全員で会場に戻り、新曲「ハイパーインフレーション」が披露される。うまい棒が3000円以上するディストピアを歌った曲である。マチコさんはこの曲のMCで「このライブのチケット、やっぱり1万円にするから帰りに差額を払ってほしい」とも言っていた。何度でも言うが無茶苦茶である(褒めてる)。

温厚だからこうなった

それにしてもどういう経緯でこうしたライブが出来上がったのだろうか。二人ともちゃんと楽器ができるのに静かに演奏したいとは思わないのか。
「そこそこ演奏してるからいいんじゃないかなー。」
「そこそこ演奏してるからいいんじゃないかなー。」

マチオ「メンバー全員が温厚だから誰もつっこむことができないんですよね。気分よくボケ続けていたら結果的にこういうことになっていた。」

SONE太郎「つっこみはお客さんに任せています。そうそう、お客が積極的に手伝ってくれるのも我々のライブのいいところですね。今日もデカ顔箱を裏に忘れて出て来てしまったんですが、お客に助けられました。」

つっこみ担当がいない、お客が助けてくれる、ちょっとデイリーポータルZとも通じるところがあるな、と思った。

最後に今回のライブでも演奏された僕の好きな曲を紹介しておしまいにしたいと思います。

「恋愛契約書」
二人が真剣に楽器を演奏している貴重なショット。
二人が真剣に楽器を演奏している貴重なショット。
次のライブも行かないとまずいような気分になっています。

これからもめちゃくちゃやってほしい

この人たちの魅力はいったい何なんだろうと考えていたのだけれど、一つは「緊張感」なんじゃないかと思うのだ。どこに緊張感があるんだよ、と思うかもしれないが、とにかくライブに行ってみてほしい。つっこみどころが多すぎて見ていて緊張するから。

もう圧力もないと思うので、これからものびのびとすごいことやってほしいと期待しています。
ザ・ぷーとチームラボとのコラボイベント。すごすぎて漏らしそうになった。
ザ・ぷーとチームラボとのコラボイベント。すごすぎて漏らしそうになった。
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