特集 2017年11月22日

チャーハンであの北斎画の大波を再現できるか

チャーハンの波は富士を超えるか。
チャーハンの波は富士を超えるか。
葛飾北斎の手による、あまりにも有名な版画「神奈川沖浪裏」。荒れ狂う波の豪快な描写が印象的である。

あの波を、チャーハンでできないだろうか。
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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物事には理由がある

何の脈絡もなく思いついたわけではない。去年かおととし、近所のホームセンターで私はこんなものを見た。ビルトインコンロの展示コーナーである。
こんなに安易に躍動感を出している食品サンプル、初めて見た。
こんなに安易に躍動感を出している食品サンプル、初めて見た。
ビルトインコンロでこんなに素敵なクッキングライフが送れますよという展示だが、中華鍋から勢い良くはみ出すチャーハンは、特にその火力をアピールしてやまない。

この光景がずっと引っかかっていた。これ、何かに似てる。

そうだ、これだ。富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」の波だ。
この躍動感、まさにさっきのチャーハンそのもの。
この躍動感、まさにさっきのチャーハンそのもの。
中華鍋の底面をすべり、鍋の向こう側で上方へとあふれ出すチャーハンの力のモーメントが、この大波と近似している(物理よくわからないのに適当なこと書いた)。

チャーハンで、できるのではないか?

うっかりそう思っちゃったので、いそいそと準備に取り掛かった。
原画から波を消しにかかる。ブラシやスタンプツールでレタッチの嵐。
原画から波を消しにかかる。ブラシやスタンプツールでレタッチの嵐。
あの絵から、いいところをほとんど取っ払った。凪(なぎ)の神奈川沖である。
あの絵から、いいところをほとんど取っ払った。凪(なぎ)の神奈川沖である。
だいたいの位置を原画と比較しつつ、台所の壁に先ほどの絵を貼る。
だいたいの位置を原画と比較しつつ、台所の壁に先ほどの絵を貼る。
背景の書き割りが設置完了。
背景の書き割りが設置完了。
そう、つまりこの背景画を背に、手前で豪快にチャーハンを炒めて放り上げ、真横から撮影すれば、いずれ「神奈川沖チャーハン裏」が撮れるんじゃないの?というあんばいである。

この計画は、先に夫に伝えていた。家でチャーハン他、豪快系の炒め物をするのは夫の係なので、今回は夫に中華鍋を振るってもらいたいのである。この波みたいに、上に飛ばせるかねぇ?

「まあ、できるんじゃない?」

とのことであった。よしさっそく進行しよう。
冷やご飯、チャーシューその他を用意。
冷やご飯、チャーシューその他を用意。
チャーハンの作り方は人それぞれ一家言あると思うので、ここでは深く触れないのが吉。
チャーハンの作り方は人それぞれ一家言あると思うので、ここでは深く触れないのが吉。
さあ、材料のなじんだところで、中空に飛ばしてパラッとさせよう。
さあ、材料のなじんだところで、中空に飛ばしてパラッとさせよう。
スタート!
スタート!
連写機能をふんだんに使って。・・・うーん?
連写機能をふんだんに使って。・・・うーん?
何回か鍋を振ってもらって、それらしい動きにはなっているようなのだが・・・。

まず、いいタイミングのときに富士山が隠れていたりする。あと、富士山が撮れてもすでにチャーハンに力がなくなって波がしぼんでいたりする。

それに、量も多いのか?波がぼってりしているような。
それと、シャッタースピードが遅くてチャーハンがニューネッシーにしか見えなかったり。
それと、シャッタースピードが遅くてチャーハンがニューネッシーにしか見えなかったり。
ウルトラ怪獣「ウー」っぽくなったりする。怪獣が神奈川沖に出現、これはこれで!
ウルトラ怪獣「ウー」っぽくなったりする。怪獣が神奈川沖に出現、これはこれで!
「もっと上に!振り上げて!」の代償(掃除済みだったし3秒ルールで全部食べました)。
「もっと上に!振り上げて!」の代償(掃除済みだったし3秒ルールで全部食べました)。
途中からはもう火は止めて、振り上げだけに従事すること数回。カメラを替えて連写したりするうち、調理担当が疲れてきたようなので(あと腹も減ったので)、このチャーハンを夕食とする。
よく炒めたせいか、「油が乳化して、いつもよりうまい!」とのこと。
よく炒めたせいか、「油が乳化して、いつもよりうまい!」とのこと。
量が多かったせいか、2人とも腹いっぱいになったが、まだ撮影は終わっていない。食傷気味ではあるが、チャーハンにまた向き合うため、台所へ。残りのご飯はあと撮影1回分だ。
「次は量を少なめにし、最初に水分をもっと飛ばしておく」とのこと。
「次は量を少なめにし、最初に水分をもっと飛ばしておく」とのこと。
やはり、先ほどの実演ではチャーハンの重みが気になったようである。思ったより上に上がらない。いや、上がっているのだけれど、壁の富士山にちょうどよくかかるような位置で放り投げられていなかった。

さて今まで連写で撮影してきたが、コマ数をもっと細かくすくい取るために今度はスマホの動画でトライ。

そして背景画の位置も、もっと上に貼り直して調整。

3度動画を撮影し、データを解析して、あの波に近い動きをしているコマを抜き取ってGIFにしてみよう。
「最後に、最大限に振り上げてみた」ときの図。
「最後に、最大限に振り上げてみた」ときの図。
今までの中で一番、北斎画に近い気がする。北斎の絵は静止画だけで躍動を表現していたが、私のチャーハン画は動画を使ってやっと躍動させていることになる。北斎すごい。

それでも、膨大なコマから1枚選んでみたい。
大波に激似なチャーハンはどれかな。
大波に激似なチャーハンはどれかな。
これだ。
これだ。
いいカメラで撮ればもっとチャーハンが克明に記録されていたかもだが、なんとか構図だけはそれらしいのが撮れていた。

反省点としては、背景画から波を消さなくてよかったかもしれない。手前の大騒ぎと向こうの富士山の静寂の差がハンパないよね。

神奈川沖チャーハン裏。これが今の中華街につながるとかつながらないとか。

まとめ

あの食品サンプルから思い付きで始めてしまった、大波チャーハン化計画。

「チャーハンを放る」こと自体は、けっこうできる気がしていたが、画角に収めることやチャーハンの速度など、いろいろクリアすべき点があることがはっきりした。はっきりしたからといって、またやるかどうかは別問題だが、年賀状には使えるかもしれない。あけおめに使っていいよ。

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https://design.city.kobe.lg.jp/2017/11/zatsu-design8/
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