地域属性からポリタンクまで、さまざまな物事がここで分かれる
以前
「なぜ『金ちゃんヌードル』は西日本でしか販売されていないのか」という記事を書いた。
静岡や沖縄で定番のカップ麺・金ちゃんヌードルは、静岡を境に西日本でしか販売されていないという情報を元に、なぜ西日本でしか販売されていないのか、なぜ静岡が境目になっているのかなどを調べた。
販売元の徳島製粉へのインタビューでその理由はわかったのだが、それとは別に「静岡県民は静岡のことを西日本だと思ってるんかい」というツッコミを多数いただいたのだ。
そうか、静岡は西日本ではないのか。ん?だからといって東日本という感じもしないし、どっちだ?
この疑問をきっかけに、さまざまな物事の境目がいったいどこにあるのか調べてみた。
1988年静岡生まれ・静岡在住。平日は制作会社勤務、休日は大体浜名湖にいる。
ダイエット目的でマラソンに挑戦するが、練習後温泉に入り、美味しいものをたらふく食べるというサイクルを繰り返しているため、半年で10kg近く太る。
前の記事:食べかけみたいな検査メロン
西日本と東日本の境目
まずは、静岡は西日本か東日本か問題に決着をつける。
そもそも西日本・東日本という分け方は法令で定められた分け方ではないので、何を基準に分けるかによって変わるが、調べてみると地質学で分ける考え方が多かった。
結論からいうと2つの説があり、1つはフォッサマグナ(本州の真ん中あたりにある地溝帯)を境目とする分け方、もう1つは糸魚川静岡構造線(新潟県糸魚川市にある親不知という崖が連なった地帯から、静岡県静岡市にある安倍川付近に至る大断層線)を境目とする分け方。
いずれもその境目以西が西日本、以東が東日本だ。
どちらの説にも糸魚川が絡んでいるので、糸魚川を境目に西日本・東日本を分ければいいのでは?と地理の成績が2の筆者は思ってしまうのだが、この2つの境目は違うものらしい(境目ライターの西村さんに怒られそうだ)
オレンジの部分がフォッサマグナで、フォッサマグナの西側にある青い線が糸魚川静岡構造線
静岡市はフォッサマグナの上なので、わたしは今フォッサマグナの上にいるの図
つまり静岡は、西日本でもあり東日本でもあるのだ。筆者の住んでいる掛川市は西日本に属することがわかったので、これからはもっと西日本を感じながら暮らしていきたい。
ポリタンクの色の境目もフォッサマグナ
西日本・東日本を分ける境目のひとつにフォッサマグナが出てきたが、他にもフォッサマグナを境目に分かれている物事がいくつかあるらしい。
編集長林さんに教えてもらったのが、ポリタンクだ。
ポリタンクもフォッサマグナを境目に地域によって色が変わるようだ。フォッサマグナ以西は青色、フォッサマグナ以東は赤が多いという(人生でこれほどフォッサマグナフォッサマグナ言ったのは初めてかもしれない)
ちなみにフォッサマグナより若干西にある我が家のポリタンクは赤だった。地質学では西日本だけどポリタンクは東日本。
※ポリタンクが置いてある勝手口が記事に載せるには汚すぎるので、イメージ画像でお送りします
文具の境目もフォッサマグナ
文具ライターのきだてさんからは、クレヨンの境目もフォッサマグナだという情報をもらった。なにそれ!
フォッサマグナ以西はサクラクレパス、以東はぺんてるのシェアが高いそうでだ。消しゴムも基本的にフォッサマグナ以西はRadar、以東はMONOが多いらしい。
挟まれた静岡はKEEPという独自路線を走っているという情報ももらったが、我が家の消しゴムはMONO。クレヨンは今でこそあまり使わないものの、子どもの頃はぺんてるを使っていた。
文具は東寄り。購入する店にもよるかもしれない。
MONO(ソフトタイプ)
電源周波数の境目は糸魚川静岡構造線
電源周波数の境目はフォッサマグナの西側にある大断層線、糸魚川静岡構造線だ。
糸魚川静岡構造線以西は60Hz、糸魚川静岡構造線以東は50Hzの電気が送られている。
電力会社も西側は中部電力、東側は東京電力。
1つの国で周波数は2種類あるのはとても珍しいそうだ。
周波数の違いでどちらかが損、もしくは得をしていたらイヤだなと思い調べてみたら、どうやら60Hzの方が得をしているようだ。これまた理科の成績が2の筆者はこの欄で随分長いこと筆が止まっているのだが、60Hzの方が交流モーターの回転数が1.2倍速くなり、機械のパワーが出やすいとのこと。
あまり理解しないまま書いていて申し訳ないが、体育と音楽で成績を補てんしていたので許してほしい。
糸魚川静岡構造線で生物も分かれる
ライターの北村ヂンさんからは「糸魚川静岡構造線でモグラの生息域が分かれている」という情報をいただいた。
その情報を元に調べたところ、糸魚川静岡構造線以東はヤマトモグラというモグラが、以西はチョウセンモグラというモグラが生息しているということがわかった。地質が違うため、生息しているモグラの種類も違うそうだ。
モグラの他にも、ゲンジボタルも糸魚川静岡構造線を境目として西日本型・東日本型に分かれるらしい。西日本型は2秒に1回光り、東日本型は4秒に1回光ると書いてあった。
西日本の方がせっかちで、東日本はゆとりがある。
糸魚川静岡構造線の南端・安倍川。川の手前はチョウセンモグラが、川の向こうはヤマトモグラが生息している、らしい
静岡のNTTは基本西日本だが、一部地域は東日本
冒頭でご紹介した金ちゃんヌードルの記事でなぜ静岡も西日本に属すると思ったかというと、静岡はNTT西日本の管轄だからだ。
利用しているNTTのサービスはNTT西日本のものだし、テレビCMもNTT西日本のものがバンバン流れている。
しかし、境目ライター西村さんにNTT西日本とNTT東日本の境目が伊豆の方にあったかも?という情報をもらい調べてみると、基本はやはりNTT西日本の管轄だが、ごく一部地域はNTT東日本の管轄だということがわかった。
静岡県裾野市の一部地域、静岡県熱海市の一部地域は、NTT東日本の管轄らしい。
なぜそこだけ…
食文化の境目は三重県が多い
他にも西日本・東日本で分かれるものといったら、食べ物が多い。
・どん兵衛のだし
西日本…昆布だし
東日本…かつおだし
・いなり寿司のかたち
西日本…三角形
東日本…俵型
・餅のかたち
西日本…丸
東日本…四角
・ところてんの食べ方
西日本…黒蜜でデザートのように食べる
東日本…酢醤油でおかずのように食べる
など挙げていくときりがないが、調べてみると今挙げた4項目はすべて三重県が境目になっていることがわかった。
食文化の境目は、静岡より若干西にずれるのだ。
食べ物のことを調べていたらお腹が鳴った。恥ずかしい。
ちなみに以前、イラストレーターのべつやくさんが
「浜松では関東風、関西風のうなぎが食べられる」という記事を書いていた。この記事によると浜松では関東風、関西風両方のうなぎが食べられることがわかるが、お腹が鳴り過ぎて見ていられないので、そっとタブを閉じた。
新所原駅(静岡県湖西市)にあるうなぎ屋で食べられるうなぎうどん。こちらは関西風
呼び方の境目も三重県が多い
食文化の境目は三重県が多いことがわかったが、調べ進めていくと物事の呼び方の境目も三重県が多いことが判明した。
例えば「マクドナルド」の略称が関西は「マクド」、関東は「マック」であることは有名な話だが、その境目も三重県だそうだ。
他にも「なす」と「なすび」、「チヌ」と「クロダイ」の呼び方の境目もどうやら三重県らしい。
食べ物も呼び方も、愛知県側から奈良県側に順に聞いていって、さらに細かい境目を見つけてみたい。
ちょうど境目になっている地域は、いったいどんな環境なんだろう。混沌としているのか、それともスパッと分かれているのか…
境目を知ると、なんだか得した気分
さまざまな境目を知って、なんだか得した気分だ。
普段赤いポリタンクを使う人は青いポリタンクに変えれば気軽に西日本を感じることができるし、青いポリタンクを使う人は赤いポリタンクに変えれば東日本を感じることができる。
ホタルも光り方の間隔が西日本型と東日本型とで違うことがわかったので、糸魚川静岡構造線以西に住んでいるわたしは本当に2秒に1回光る西日本型ホタルが見られるのか、来年の夏、この目で確かめてみたい。
境目を意識すると、生活がちょっと楽しくなりそうだ。
安倍川のほとりでフォッサマグナの上にいることを実感しながらシフォンケーキを食べた。断層っぽさはなかった。