青森には4~5回行ったことがあったが、このせんべいの文化に触れたのは初めてだった。……というのも、大人になってから知り合った友人・知人でなぜか青森出身の人が多く(しかも偶然にもみんな八戸)、案内してもらう機会も何度かあったのだった。そのうちまた遊びに行く気満々なので、そのときは本場のせんべいを食べに行こう。
はじめての「南部せんべい」
ちょっと前に青森・岩手へ行ったときに、駅の売店で売られてたせんべいを買ってみた。
そしてこれがこの周辺地域でよく食べられてる「南部せんべい」だと知る。種類は主にゴマ入り、豆入り、プレーンがある。
そしてこれがこの周辺地域でよく食べられてる「南部せんべい」だと知る。種類は主にゴマ入り、豆入り、プレーンがある。
「あまちゃん」の駅(岩手の久慈駅)
地元のものをなにか買いたくて買った
八戸市(青森の南部)出身の友人にどの程度馴染みがあるものなのか聞いてみたら、
「おばあちゃんちではマーガリンを塗ったやつが出てきた」「赤飯挟む人もいるらしいけどうちでは挟まない」と。
これってもしかして家によって食べ方が違ってたり、バリエーションがあるやつでは……? Twitterで質問をなげてみたところ、
「おばあちゃんちではマーガリンを塗ったやつが出てきた」「赤飯挟む人もいるらしいけどうちでは挟まない」と。
これってもしかして家によって食べ方が違ってたり、バリエーションがあるやつでは……? Twitterで質問をなげてみたところ、
「南部せんべい」を食べる地域の人たちからの反応がドサーーーッと! おおお……そんなにも食べ方が!?
回答は主に青森県、岩手県から。そしてたまに北海道も混じってる。届いた声をいくつかピックアップしてみる。
・母の実家が三戸なのでよく食べていますが、食べ方としてはゴマ入りのはそのまま、マーガリン、醤油、マーガリン+醤油、水飴、辺りですね。プレーンなやつはそのままかせんべい汁。
・バター塗って、焼き海苔を貼り付ける、ですかねぇ(三戸)
・我が家では、水飴かマーガリンです(^^*)
・岩手県北部です。マヨネーズを塗ってトースターで焼いて食べます。
・バター塗って、焼き海苔を貼り付ける、ですかねぇ(三戸)
・我が家では、水飴かマーガリンです(^^*)
・岩手県北部です。マヨネーズを塗ってトースターで焼いて食べます。
はじめての「飴せんべい」
友人が言ってたマーガリン以外にもマヨネーズやバターが出てくるところを見ると、「パンに何を塗るか」に近いか……?
と思ってたら、それ以上に多かったのは「水飴」だ。
と思ってたら、それ以上に多かったのは「水飴」だ。
・宵宮に行くと津軽飴をはさんである「飴せんべい」を買ったりします
・近年はミニサイズの近年はミニサイズの「バターせんべい」もあります。黒ゴマの南部せんべい生地なんですけど、生地にバターを使っててバター風味なんです。これがまた飴と合っておいしいんです。
・北海道です。子供の頃から「麦芽糖水飴」を掛けて食べていました^_^
・青森市に住んでいた祖母のいとこが合浦公園の露店で、ゴマせんべいに津軽飴をはさんだものを売る「飴せんべいや」をしていました。
・友人がよくお土産にくれた南部せんべいは水飴が挟まっていました。すごく美味しかったけど今は歯がヤバくて無理…
・飴せんべいで乳歯が折れたのも良い思い出です。
・近年はミニサイズの近年はミニサイズの「バターせんべい」もあります。黒ゴマの南部せんべい生地なんですけど、生地にバターを使っててバター風味なんです。これがまた飴と合っておいしいんです。
・北海道です。子供の頃から「麦芽糖水飴」を掛けて食べていました^_^
・青森市に住んでいた祖母のいとこが合浦公園の露店で、ゴマせんべいに津軽飴をはさんだものを売る「飴せんべいや」をしていました。
・友人がよくお土産にくれた南部せんべいは水飴が挟まっていました。すごく美味しかったけど今は歯がヤバくて無理…
・飴せんべいで乳歯が折れたのも良い思い出です。
どうやら「飴せんべい」は青森の祭りの屋台では定番で、それと似た食べ方を家でやる人も多いようだ。そして歯のエピソードの投稿も多い。
北海道の方からの投稿には違う種類の飴が書かれてたが、青森だと「津軽飴」が定番らしい。
投稿読みつつ「そんなに水飴が歯に……?」と思ったが、実物を見て納得。かたいなこれ!
北海道の方からの投稿には違う種類の飴が書かれてたが、青森だと「津軽飴」が定番らしい。
投稿読みつつ「そんなに水飴が歯に……?」と思ったが、実物を見て納得。かたいなこれ!
硬さは生キャラメル並みか。確かにこれは垂れてこない
赤飯? 草もち? 天ぷら?
友人から聞いてた「赤飯」についてもいくつか投稿があり、実物の画像も送ってもらえた。
・三戸郡の辺りは赤飯をサンドした南部せんべいを「こびりっこ」といって農作業の合間のおやつに頂くと聞いてます。八戸でも給食に出ます。
・ゴマの南部せんべいは赤飯(甘い味付け)を挟んだり水飴をつけて食べました。
・赤飯を挟んでラップでくるんでしっとりしてきたところを食べてました。おにぎりみたいなものですね。帰りの電車で食べてね~って持たされる感じです。甘く味付けされた豆を使っていて、おやつでもいけます。
・ゴマの南部せんべいは赤飯(甘い味付け)を挟んだり水飴をつけて食べました。
・赤飯を挟んでラップでくるんでしっとりしてきたところを食べてました。おにぎりみたいなものですね。帰りの電車で食べてね~って持たされる感じです。甘く味付けされた豆を使っていて、おやつでもいけます。
この「帰りの電車で食べてね~」と持たされた方が新幹線で撮影した画像
数名からの回答に共通してたのは、「せんべいに挟む赤飯は甘い味付け」、「農作業の合間のおやつとして持って出る」という点だ。
これ以外の回答もまとめて紹介しよう。
これ以外の回答もまとめて紹介しよう。
・おこわ、赤飯を挟みます。あと、あんこ入りの草もちを縦半分に切って挟みます。
・八戸の屋台村や飲み屋さんでは南部せんべいをベースにしたせんべいピザがありますよ!
・てんぽ煎餅という柔らかいせんべいを天ぷらにして食べます! 赤飯を挟むのもこの柔らかいタイプを使う事もありますね。(「てんぽ煎餅」はパリッと焼き上げるのではなく、もちもちとした焼き上がりとのこと。)
・そのまま衣をつけて天ぷらにもします
・すあげした揚せんべいもウマイですよ
・最近はチョコレートをトッピングしたチョコ南部ってのもあるね
・イカやリンゴ、落花生がトッピングされているものはそのまま食べます。(どうやらこういうの)
・プレーンなやつはそのままかせんべい汁。硬く焼いた耳だけっていうのも売ってまして、それもそのままボリボリいくか、鍋に入れて食べたりします。
・八戸の屋台村や飲み屋さんでは南部せんべいをベースにしたせんべいピザがありますよ!
・てんぽ煎餅という柔らかいせんべいを天ぷらにして食べます! 赤飯を挟むのもこの柔らかいタイプを使う事もありますね。(「てんぽ煎餅」はパリッと焼き上げるのではなく、もちもちとした焼き上がりとのこと。)
・そのまま衣をつけて天ぷらにもします
・すあげした揚せんべいもウマイですよ
・最近はチョコレートをトッピングしたチョコ南部ってのもあるね
・イカやリンゴ、落花生がトッピングされているものはそのまま食べます。(どうやらこういうの)
・プレーンなやつはそのままかせんべい汁。硬く焼いた耳だけっていうのも売ってまして、それもそのままボリボリいくか、鍋に入れて食べたりします。
つまりは、まあまあなんでもありか。せっかくいっぱい買ってきたし、何人か集めて教えてもらった食べ方を試してみたい。
と思っていたところで、断捨離中の読者の方からこんな「南部せんべい 手焼きセット」を譲って頂いた。メールにはこう書いてある。
と思っていたところで、断捨離中の読者の方からこんな「南部せんべい 手焼きセット」を譲って頂いた。メールにはこう書いてある。
じいちゃんが「せっかく八戸のせんべいを記事にしてくれるのだから」と言うので、新しいせんべいの粉を入れました。てんぽせんべいと豆せんべい(クッキー風ピーナッツせんべい)の物です。それからクッションのかわりにせんべいの耳とB級品こわれせんべいをいれました。
ばあちゃんがためていた切手が余っていたので、ゆうパックで発送しました。
ばあちゃんがためていた切手が余っていたので、ゆうパックで発送しました。
こちらが送られてきたもの。おおお…… おじいさんとおばあさんまでこの記事のために……
おじいさん・おばあさんにこんなにもナチュラルに登場されると、実家っぽさがすごいな。投稿のエピソードでも「おばあちゃん」というワードが登場する率はまあまあ高かった。
・飴せんべいはおばあちゃんが若かりし頃=私が小学校低学年の頃はオヤツに食べさせてくれました
・せんべいが残ると祖母がストーブやグリルであぶり、熱いせんべいにバターをのせて溶かして食べさせてくれました。冷めてもおいしかったですよ。懐かしい。
・岩手県北部出身です。南部せんべいに水飴はさんで食べてた記憶があります。おばあちゃんがそういう食べ方してましたので。
・せんべいが残ると祖母がストーブやグリルであぶり、熱いせんべいにバターをのせて溶かして食べさせてくれました。冷めてもおいしかったですよ。懐かしい。
・岩手県北部出身です。南部せんべいに水飴はさんで食べてた記憶があります。おばあちゃんがそういう食べ方してましたので。
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せんべいパーティをしよう
せっかくせんべいもたくさんあるので、人を集めて色んな食べ方を試してみよう。譲ってもらった「手焼きセット」も使ってみよう。
Twitterで教えてもらったものと、各自で試してみたいもの集結
塗るものは何でもありのようなので、参加者各自が塗ってみたいものを持ち寄った。
せんべいで「かんぱい!」
参加者にひとり岩手県(盛岡市付近)出身者がいるのだが、「南部せんべいは特に食べない」「最近になるまでせんべい汁の存在すら知らなかった……」とのこと。一応同郷の人たちにも確認したら同じ感じだったらしい。広い県だとそんなもんか。
だがさんざんCMで聞かされたという南部せんべい発祥のナレーションは刷り込まれてるらしい。
だがさんざんCMで聞かされたという南部せんべい発祥のナレーションは刷り込まれてるらしい。
刷り込まれてる「お腹すかせた殿様が……家来がカブト鍋にして……」(30年前のCM)の話をたびたびしてた。持ってるのは帰省土産のせんべい汁用のせんべい
その一方で、読者の方からこんな声も届いた。どっちなんだ……。
盛岡出身の者で、こちらでもせんべい汁はよく食べます。給食のお味噌汁にもよく出ますよ! 普通の南部せんべいではなく、せんべい汁用の南部せんべいを入れます。
そんな「まったく食べ慣れてない」のに買ってきてくれた帰省土産を使ったせんべい汁も作ってみることに。
せんべい焼きセットを送ってもらった方のおすすめレシピを参考に作った
身体にしみわたる……(良いがっつき写真)
せんべいはお麩っぽい食感だ。たっぷりごぼうの入った汁を無言ですする。
そしてこの手焼きセットを使って、生地をこねたり焼いたり一通りたのしむ。
そしてこの手焼きセットを使って、生地をこねたり焼いたり一通りたのしむ。
説明書にはなんと「室内インテリアとしてもお使いいただけます」と書かれてた
ええい! とこねくりまわす
でろろろろろ
うっかり油を敷き忘れると、鉄板に貼りついた生地をはがすのがまた重労働になるので要注意だ。
説明書ちゃんと読んでればこんな間違いはしない
きちんと油を敷くと、生地を挟んだときにキュウウウウウーーーッと音をたてる。
おお、生地が鳴いてる……
片面50秒、裏返したら40秒……と、焼き時間はかなり細かく秒数指定されてる
一度失敗し、鉄板に貼りついて全然はがれようとしない生地をはがす重労働を経たため、ちゃんと出来たときの感動もひとしおだ。
でっっ、できてるーーーーー!!!!
この感動を得るために一度失敗して面倒くさい思いをした気すらしてきた。
さて、いざ試食。味はというと……
さて、いざ試食。味はというと……
あら? ナンっぽい食感?
焼きあがったせんべいを食べてみると、パリパリしてない。これはこれで美味しいけどなぜだ。
……と思ったら、どうやらこれは「てんぽせんべい」(別名:餅せんべい)という種類の柔らかいタイプのせんべいだったらしい。(今この記事で初めて参加者のみなさんに伝えた。)
すべてにおいて「ちゃんと読めよ」である。
……と思ったら、どうやらこれは「てんぽせんべい」(別名:餅せんべい)という種類の柔らかいタイプのせんべいだったらしい。(今この記事で初めて参加者のみなさんに伝えた。)
すべてにおいて「ちゃんと読めよ」である。
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「推しペ」はどれだ!?
汁をすすり酒を飲みつつ、せんべいに一通り塗って食べてみた。
各自の「推しペースト」をひとり1~2種類言い合った結果、人気だったものをざざっと紹介しよう。
まずはこちら。個人的に一番を決めるならこれか。
各自の「推しペースト」をひとり1~2種類言い合った結果、人気だったものをざざっと紹介しよう。
まずはこちら。個人的に一番を決めるならこれか。
これで主食として完成されてる「ごはんですよ」(なんとなくインスタ映えっぽい写真)
初めてのはずなのに、「昔からよく食べてました」と言ってしまいそうなほどの食べ慣れ感。ご飯に添えて食べるのと同じぐらいの違和感のなさ。「美味しくておどろく」のではなく、安心感を満場一致で感じてた。
これだけで何枚でもいける
つぎに塩辛。塩辛だけをせんべいに乗せると、どうしても「塩辛」と「せんべい」を食べてる感があった。口の中で味が分離し、別のものを食べてる感……!
そこでつなぎとしてクリームチーズを乗せたところ、当然うまい。さすが居酒屋の定番メニューだ。
そこでつなぎとしてクリームチーズを乗せたところ、当然うまい。さすが居酒屋の定番メニューだ。
さすが定番になるだけのことある
そして意外な美味しさだったのがこの「ぬるゴルゴンゾーラ」。だいぶ癖のないゴルゴンゾーラではあったが、せんべいとの相性にみんな驚いてた。
こ、これは……!! クラッカーやリッツでもここまでの美味しさを出せるだろうか
「水飴」も屋台の定番だけあって文句なしに美味しいが、この水飴そのものが人気だ。
水飴に群がる
上位に入らなかったやつ
「塩辛」だけのときのように、「せんべいとペーストの分離」は「明太マヨ」でも起きた。この二者は馴染まない。
相容れない二者
あとは「草餅」を試してみよう。どうなんだろう。挟んでしばらく置いて、しんなりしてきたところで……と思ってたが、なかなかしんなりせず。
中に餡が入った草餅サンド
食べてみると、こ……これは……食べるのがむずかしい……! そしてこれを言ったら元も子もないが「別々に食べたい……」の声があがる。
こういう違和感があるのだ。
こういう違和感があるのだ。
せんべいという先入観で食べてるせいか、中がこうもやわらかいと生焼けのような感覚を覚える。味は美味しいのに。
噛みづらく、「美味しいのに置きたくなる食べ物があるなんて」とうなだれる
……とか言ってたが、しばらくすると、「慣れてきた」と違和感なく食べれるようになってた人もいた。慣れか。
「似たものを食べたことある気がする…… 所沢の航空公園のパン屋さん」と言いつつ、食が進んでた
そういえばTwitterに送られてた投稿のなかに「赤飯を挟むのもこの柔らかいタイプ(てんぽせんべい)を使う事もありますね」とあった。
草餅もてんぽせんべいで挟むべきだったんだろうか。おそらく家によって異なるものだから「なにが正解」ってのはないんだろうなぁ。
草餅もてんぽせんべいで挟むべきだったんだろうか。おそらく家によって異なるものだから「なにが正解」ってのはないんだろうなぁ。
記事の中で言いそびれてたが、このように網の上に乗せて焼くのがいいらしいので、もしやるときはこのやり方で……(今回はうまく乗ったので使わず)