大きな頭のガイド登場
今回、サイズの大きな帽子について造詣の深い横山さん(トークライブハウス ロフトプラスワン店長)にショップ案内を頼んだ。
「おれはまじで頭でかいよ。おれより大きな人にあったことないもん」
まずは横山さんのハットをかぶさせてもらった。原宿のパンクショップで偶然みつけたという代物。
衝撃!横山さんの帽子が入らない。
「あれ?え?あれ?」
入らない。帽子が上にのっかって、ミスターピーナッツみたいだ。
「まじ?林くん!ほんと!おおきいねえ!」
仲間だと思った横山さんは妙にうれしそう。
「おれより頭でかい人にはじめて会ったよ!」
「とりあえず、M井に行ってみようか。」
心なしかうきうきしてる横山さんと移動。僕はとぼとぼついていゆく。
まずはM井で
帽子ブームを反映してM井には帽子がたくさん並んでいる。まあ、これだけあればひとつぐらい入る帽子があるはず。
まさか全滅なんてことは………。片っ端から帽子をかぶることにした。
これだけあればひとつぐらい………
現実は僕らの夢を打ち砕いた。どれもまったく入らない。
「なんかいきなり飲みにとかいきたい気分だねえ」
ほんとに。ブルースとか聴きたい気分。
どの帽子も入らず。
明らかに入らないサイズの帽子を手にして動きが止まる。だけど、いちおうかぶってみる。
「ふんっ」
帽子を無理に頭に押し込む。帽子をかぶるときの声ではない。店員が止めにきそうだ。
「hitomi みたいな帽子かぶってみたい」
「帽子というかモノポリーのこまみたいですよ」
「あたらしいポケモンみたいだ」
互いに傷つけあう言葉を吐きながら帽子を試す。僕らの雰囲気に店員も近づいてこない。
僕の頭のなかでブルースが流れている。規格外の大きさの頭でブルースが流れている。
裏原宿の人気ショップ
2軒目の帽子専門店に移動しながら話をする。
「僕らってヘルメットもないんじゃないですかね」
「命にかかわるね」
「映画みたいにさ、地球に惑星が衝突するから別の惑星に逃げる、とかそんなことになったとき、僕らがかぶれるヘルメットはないよ」
「取り残されるんだ。地球に」
打ちひしがれた心は想像まで後ろ向きにする。
専門店ならばいろんなサイズがあるだろう。そのことを横山さんに聞くと
「いや、専門店のほうが地獄だよ」
専門店はデザインがたくさんあるがサイズはあんまりないらしい。
サイズがない地獄。ぬるいが当事者にとっては地獄だ。
「呼んでる」帽子
いわゆる裏原宿と呼ばれる場所にある帽子専門店。専門店だけあってかっこいい帽子がたくさんある。
裏原宿の某帽子専門店
「この帽子、呼んでないかな?」
横山さんはかぶれそうな帽子を見つけると「呼んでる」と言う。
「ウチら業界では『呼んでる』っていうから」
『業界』って頭のでかい人業界だろうか。認めたくないが僕は間違いなくそこにいるんだろう。
幹部になってもいいぐらいだ。
「呼んでる」帽子をかぶってみる。入りそうだと声が出てしまう
「あ!」
しかし頭の途中でつっかり、入らない
「あ~」
その繰り返しだ。「あ!あ~」「あ!あ~」
Lサイズだが、頭に乗っている
XL でも、ちゃんとかぶれない
いちおう店員にも聞く。
「これより大きなサイズはないですか」
「いや、ここに出てるだけですね」
「出てるだけですか………」
この日、何度この「出てるだけです」というセリフを聞いたか。
この帽子の入らなさっぷりはすばらしい
目的を見失う
このショップにはターバンもあった。ターバンの巻き方が書いてある。
「横山さん、僕らにはターバンがいいんじゃないですかね。サイズないし。巻くだけだし」
「いや、ターバンは巻きたくないよ」
………そうだった。
目的を見失っていた。今回はかっこよくてサイズがあう帽子を探すのが目的だ。入ればなんでもいいという気持ちになっていた。
目標はかっこいい帽子だ。入れる学校ではなく、入りたい学校を選びなさい。担任の教師がよく言っていた(でも、僕は入れる学校を選んだんだけどね)。
もうなんでもよくなってる
アメリカ人は頭が大きいはずだ
歩きながら、松井がヤンキーズでいちばん大きな帽子が入らなかったという話題になる。松井は頭が大きいのだ。
「なんか、それだけで応援したくなるよね」
がんばれ松井!頭の大きな日本人代表として。
だが、アメリカでサイズの大きな帽子をたくさん買ってきたという話を聞いたことがある。やっぱりアメリカ人は頭が大きいんじゃないか?急遽アメリカ古着の店に寄ることにする。
「どうする?でもおれらアメリカでもでかい頭だったら。」
「メジャーで通用したら嫌だなあ。」
頭が大きな人ばかりの国、銀河鉄道999が途中で停まる不思議な惑星みたいだ。
メジャーも現実性を帯びてくる
輸入古着屋にも帽子はたくさんあった。
アメリカっぽいキャップがある。サイズ調整のベルトをいちばん広げてかぶってみる
後ろのベルトを全開にして
ここまでしかかぶれてない
………入らない。
いよいよメジャー入りか?
メッシュの帽子だったので網目のむこうに実際の頭が透けて見える。
ものすごくかぶれていない。
口数も少なくなり、帽子以外の古着をふたりで見はじめる。
「古着をうまく着こなせるようになりたいよねー。」
目のまえの問題を見ないようにしている。
椎名林檎みたいな帽子も余裕で入らず
服を見はじめる
でかい頭ポータル
店を出て雨の中を歩く。そこで話したことは
・頭でかいひとのポータルサイトがあってもいい
・でかい帽子の情報や、頭が大きなことを励ましあう掲示板があるのだ
・「でかい頭ナイト」というイベントをやろう
・そう見えないんだけど頭が大きな女の子がいたらぐっとくる
・着やせするみたいな感じで
・太ってるのはダイエットできるけど頭はできない
・そういえば劇作家は頭の大きな人が多い
少し元気になって、偶然通りかかった帽子屋でXLサイズ以上の帽子があるかきいた。
「ないです」
ないというのはこの店にないのか、この世に存在しないのかと食い下がる。
「存在しないです」
さらに落ち込む。
僕らがかぶると帽子にシワがない
最後に原宿の帽子専門店に寄る。人気の店だけあって混雑している。
X-LARGE というブランドのキャップを見て横山さんが怒っている。
「なにが X-LARGE だ。どうせはいらねえんだ」
確かに入らない。当然僕も入らない。
(X-LARGE はブランド名でサイズのことではない。でも横山さんはそれが気に入らなかった様子)
X-LARGEといっても僕には小さすぎます
ここまでくるとハットはあきらめてニットキャップを中心にチャレンジしている。
気づいたのは、僕らがかぶるとキャップにしわができないのだ。
いっぱいいっぱい感、詰まってる感じになる。
「ざくっとラフにかぶった感じがしないんだよね」
互いに力なく笑う。
競泳用のキャップではありません
靴下をかぶろうとしているのではありません
まだ見ぬ同士よ!
横山さんが店員に聞いていた。
「大きな帽子を買いに来る人とかいませんか?」
昔は注文を受けて特注で作っていて、いままでに3人ぐらい来たとのこと。
「来たんだ!林くん、仲間がいたんだよ!」
各地に散ったでかい頭の同士がここに来たんだ。そう思うと僕もうれしくなった。
里見八犬伝みたいだ。
盛り上がる僕らを見て、店員は本気でひいていた(ほんとに)。
好みじゃなくてかぶれるやつを買った
いろんな帽子を見て、なんだかかわらなくなってかぶれればいいという基準で帽子を買ってしまった。
イノシシ柄のニットキャップ。あとから見るとちょっとどうかしている。
「おれ、いのしし年だし」という理由で買った。だからといって帽子の柄である必要はまったくない。
結局、帽子はみつからなかったのだ。僕の頭が大きすぎるのか、流行の帽子のサイズ展開が少ないのかわからない。ここに大きな帽子があります!と書くことができればと思ったが、着るものが選べない切なさを伝えるだけになってしまった。
SMAP の「世界にひとつだけの花」を聴いていて思った。これは頭の歌だ。
> ♪せかいーでひとつーだけーのあたーま
> だけど僕ら人間はーすぐにくらべたがーるー
つまり、サイズを比べちゃいかん、と。ひとりひとりがオンリーワン、だと。
とはいいつつも大きい帽子をこれからも探したいと思います。
次回はでかい頭ポータルで会いましょう!