雪の中に裸足でいるのがどれだけ辛いか
剛の者になりたいんです。
剛の者と言えば雪の中を裸足でランニングだ。これはむかし何かの番組で体力自慢のタレントが「冬の北海道を裸足で走った」ということを言ってたのを見たことによる。
以来、自分の中で剛の者とは「雪の中を裸足で走る人」になった。
そんなの自分には絶対に無理だと思うが、やる前から決めつけるのはよくない。もしかしたら案外ガマン出来るものかもしれないから、いつもの河原でちょっとやってみた。
やるの?
ホントにやるの?
やっちゃった!
痛い。冷たいけどそれ以上にめちゃくちゃ痛い。まるで足に無数の小人が群がって、一斉にヤリで突いてくるようだ。
そして足の痛みは全身を貫き、お腹を冷やし、脳みそまで凍った。アイスを急いで食べたときに頭がキーンとなる現象も起こった。アイスを食べずにそれを味わえるなんて得した、と思った。剛の者を目指す者の、せめてもの強がりである。
しかし程無くして激しい悪寒が襲ってきたので、あえなくギブアップした。
無理。
絶対無理。
長靴に足を描いてください
裸足で雪を歩くのが無理なのは挑戦する前から分かっていた。そこで前からもっと知恵のある方法で雪の上を歩けないか考えていた。
そして考えたのは、長靴の前後左右に足の絵を描き、長靴を履きながらもまるで裸足でいるかのように見せる方法だ。この時点で自分が剛の者になることではなく、他人に剛の者として見られることしか頭になくなってる。
前後左右の四面に足の絵を描いて視覚を騙す。
この方法にはリアルな足が描ける人が必要なので、知人のあてを伝って紹介してもらった。
これに足を描いてください。
と言われ微妙な表情を見せるのは、足を描いてもらうことになった宮崎さん。まったくの初対面なので絵がうまい以外にどういった方なのか詳しくは知らないが、宮崎さんにとってはそれ以上に変なヤツが来たと思っただろう。すいません。
じゃあさっそく企画の話をということで・・・
「こんな風に四面に分けて描いて欲しいんですが」
「これは出来ないね」「出来ないですね」
というような感じのこと言われ(実際にはもっと柔らかい表現で)、四面に分けて描くのは不可能だということが明らかになった。どれだけ絵のことを分かってないかがバレバレに。
僕が打ち合わせ中に描いたメモ。
宮崎さんのメモ。
そういったわけで、長靴には四面ではなく全体に足の絵を描くということでお願いすることになった。完成した長靴はおよそ2週間後に持ってきてくださるという。
よろしくお願いします。
そしておよそ2週間後、出来た長靴を持ってきてくれました。
ありがとうございます。
ちなみに上の2枚の写真はどちらもやらせ写真だ。長靴を持ってるところを無理やり撮らせてもらいました。
しかもたいした説明もないまませわしなく撮るものだから、すごい戸惑いと怯えを与えてしまったと思う。ホントすみません。
というのが前日までの話で、実はいつもの河原に来たとき既に足を描いてもらった長靴は持ってきていたのだ。次ページでその全貌が明らかに。
これが誰でも剛の者になれる靴だ
なんだろう。なんて言えばいいのかよく分からない。ただ言えるのは、なんだか分からないけどとにかくものすごいということだ。
それと同時に、ずいぶん変なことをお願いしてしまったんだなと申し訳ない気持ちで一杯になった。
じゃあ剛の者になってみます。
剛の者に変身中。
剛の者になりました。
裸足で立ってる、スッゲー。
剛の者は極度の外反母趾だ。
剛の者は雪の上でも裸足で思索にふける(つもりのポーズ)。
スッゲー。
と、ここで無敵に思われた剛の者にも弱点が露わになった、なんと剛の者は敏感肌だったのだ。
剛の者の足にひび割れが!
どうやら雪と擦れて絵の具が落ちてきたらしい。しかし剛の者はこの程度のことで怖じ気づきはしない。気にせず撮影を行った。
自分の思う剛の者の歩き方。
右足だけ見ると完璧に足だ。
剛の者は悪を許さない。
これはすごくリアルに見える。
魔法が解けてゆく。
これ以上雪の中でのやるのはマズイ。雪の少ないところで撮影を続けようと荷物を片付け始めたとき、大地震が起こった。自分の中で。
地震の原因。
身体がプルプルリンと震えて止まらない。実は本物の裸足で雪の上に立ってから、面白いぐらいに体調が悪くなっていた。本当に面白いぐらいにグングン具合が悪くなるので、思わず笑ったほどだ。
剛の者への道はかくも厳しい
足を描いた長靴を履いて剛の者になれたかと聞かれれば、
「なれた」
と言うことが出来る。
しかし正攻法で剛の者になるのに対して簡単かというと、風邪を引いたり初対面の女性に迷惑をかけたりで、決して楽なものではなかった。
しかしこれにめげず、これからも楽して剛の者になれる方法を探っていきたいと思う。