風船を持ってうろうろする着ぐるみが、頭の中にいる
遊園地には、あふれんばかりの風船を持ってうろうろしている着ぐるみがいる。
言えばきっと誰もが思い浮かべてくれると思うのだが、実際に見たのはいつ、どこでだったかと考えると急に頭が真っ白になる。
こういう着ぐるみ。実はマンガの中でしか見たことないんじゃないか。
風船をいっぱい持ってうろうろするというのはどういうことなのか。
着ぐるみでもなんでもないがやってみることにした。
風船屋さんに行った
風船をいっぱい持ちたいのだが、どこで手に入れればいいのか。
遊園地に行けば風船をくれる着ぐるみがいる…!と思いかけてそれでは堂々巡りになってしまうので、顔をはたいて気持ちを落ち着けた。
調べたら浅草から少しいったところに風船屋さんがあるらしい。
ここだ。どう見ても風船屋さんだ。
風船をいっぱい持ってうろうろしていそうな、風船でできたうさぎ。
店内は、圧倒されるくらい風船がある。
気持ちもフワーッとしてくる。
『
風船タウン』は、お祝いやイベントの会場を風船で装飾してくれるお店である。
ここでお客さんが実際の風船を見ながら「バルーンパフェ」やアレンジメントを、スタッフの方と一緒に考えるのだ。
バルーンアートのキットもある。かなりネズミに近い容姿の「きゅんきゅんバニー」
アレンジメントで使うぬいぐるみ。
今回はスタンダードな風船を持ちたいのでこのコーナーを見る。色のバリエーションがこんなにある。
10個から15個持つとボリュームが出る!
まず、何個持っていいかが全く分からない。
スタッフの方に、「遊園地の着ぐるみくらいの風船を持ちたいんですけど…」と勇気を出して聞いてみたら色々教えてくれた。
10個から15個ぐらいで、かなりボリュームのある見た目になるそうである。
意外と少ない!
でもそれ以上抱えると持ちにくくて大変になっちゃうそうだ。
聞いておいてよかった。
「分からないからとりあえず100個で」とか言うところだった。
個数を決めて色を選んでいく。ボリュームが欲しくて結局16個注文。
風船の色には、透けて見えるタイプと、透けない、色がはっきり見えるタイプがある。
今回は透けない風船を選んだ。
風船の紐は、全部の風船がきれいに見えるようにと長さを調節してくれた。
調節の仕方も、上に高く広がるような見せ方と、左右に大きく広がる見せ方があるらしい。
しかし何をするにもノウハウがあるのだ。
感心してしまった。
こういうことだ。今回は高く見えるようにお願いした。
重りがいるのだ
そしてさらに、これ持ってうろうろしたいなら重りを付けたほうがいい、ということでそちらも用意してもらった。
確かに何か工夫をしないと絶対に飛んでいってしまうだろう。
僕の想像の中にいる着ぐるみたちは、風船の先に重りを付けていただろうか。
なんか付けていない気がする。
重り。正体は、水を入れた風船である。風船タウンは何でも風船で対応する。確定申告も犬の散歩も風船でやる。嘘だ。
重りは、ディスプレイに用意してあったものでは軽くて機能しなかったので、新たに大きいものを作ってもらった。
16個風船持つ人、あんまりいないのだな。
しかしずっと風船見ていたら早く持ちたくてうずうずしてくる。
持って何をするでもないのだが、とにかく本能的に持ちたいのだ。風船。
「長い木の棒」みたいなものだ。
持つ前に、風船タウンで分かったことをまとめておこう。
風船タウンでわかったこと
●色が透ける風船と透けない風船がある
●ボリュームが欲しいなら、10個~15個が目安
●上に高く見える持ち方と、左右に大きく見える持ち方がある
●うろうろするなら重りを付けるといい
ついに持つ
持った。
持った。
風船をたくさん持っている。
確かに遊園地でうろうろしている着ぐるみが持っている風船だ。
うろうろしてみよう。
遊園地にいる着ぐるみのように風船を持ってうろうろしてわかったこと①
●楽しげ
いきなりだが何だか楽しげである。
この人を見たら幸せになれるんじゃないかという気がする。
特に普通の住宅街の中にこの色合いがあると空間がすごく華やかになるのだ。
すごく楽しいことが始まりそう。
遠くにいても目立つ。待ち合わせ場所になれると思う。
うん。目立つ目立つ。
自転車に乗った少年が「すげぇ…!」と言って通りすぎていったらしい。
ちなみに、子供達から風船をねだられることは全くなかった。
「すげぇ」が、それをくれるタイプの人じゃないことは分かるのだろう。
子供は賢いのだ。
写真は妻にお願いしていたのだが、途中から時間の都合で1人でうろうろしていた。
1人で歩いていると、ビルの窓ガラスやカーブミラーに映る自分がすごく楽しげでいいのだ。
この人陽気だなあ…
いいことあったんだろうな…
いいなあ…
こんな感じで、何かに映った自分を10枚近く撮っていた。
見つけるたびにちょっと元気になれるのでよかった。
風をすごく受ける
遊園地にいる着ぐるみのように風船を持ってうろうろしてわかったこと②
●風をすごく受ける
のほほんと持っていられるかと思ったが、風をすごく受ける。
顔にもさもさくる。
当日はしとしと雨が降っていて「傘にもなるんじゃないか!」とはしゃいで持っていたのだが、安定して頭上にいてくれないので風が吹くと傘にはならないことが分かった。
地面と水平にピーンてなる。こんな傘はない。
縦横無尽に動く。
別にすごく風が強い日だったわけではなくて、周りの方は何てことなく普通に傘をさしていたのだ。
風船ってすごく風を受けやすいのだ。
着ぐるみも大変である。
異様な雰囲気が出たりもする
遊園地にいる着ぐるみのように風船を持ってうろうろしてわかったこと③
●ギャップのある場所に置くと異様な雰囲気に
1人で歩いていて、ふと人気のない駐車場に風船置いてみたら異様な写真が撮れた。
なんだなんだ。
フォトショップでコントラストを強くしてみたらもっとすごい。異様。
夜中にピエロが30人、ここに集まって、常人には理解できない儀式をしたあと、この風船だけ残していった、みたいに見える。
地下道もすげえ。この風船の向こうは魔界に通じている。
工事現場に見えるが、中ではピエロ達が悪魔を召喚しているのである。早く召喚の儀式をやめさせなければいけないが、東西南北に置かれた風船が結界をはっている。結界を壊すには風船を守る番人を倒さなければいけない。
「風船」というアイコンが楽しすぎるのだろう。
ふさわしくない場所に置くと、解釈がねじれて中学生男子が好きそうな設定がバンバン出てくる泉になった。
これはこれで楽しい。
風船を持ってうろうろする着ぐるみはどんな気持ちだったのか
風船を持つまでも色々ノウハウがあったが、持ってからは風がふいて風船が絡まってなかなか大変だった。
雨も降っていたし。
だけど何しろ見た目が楽しげなので、元気が出る。
大変だけど苦ではなかった。
つまり風船によって自分にかけた負荷を、風船で解消しているのである。
プラマイゼロだ。
じゃあ時間の無駄ではないかと思われるかもしれないが、考えてみるとレジャーにはこういうことが多い。
登山だって、大変な思いをして山に登って、登頂した達成感でそれまでの苦労を吹き飛ばしているのだ。
風船持ってうろうろする行動は、一大レジャーになる可能性を秘めているのだ。
風船タウンでわかったこと
●色が透ける風船と透けない風船がある
●ボリュームが欲しいなら、10個~15個が目安
●上に高く見える持ち方と、左右に大きく見える持ち方がある
●うろうろするなら重りを付けるといい
遊園地にいる着ぐるみのように風船を持ってうろうろしてわかったこと
●楽しげ
●風をすごく受ける
●ギャップのある場所に置くと異様な雰囲気に
部屋干しもできる
子供の頃以来に風船と触れ合えたせいか、家に帰ってからも興奮は続いた。
<取材協力>
風船タウン
〒130-0001 東京都墨田区吾妻橋1-6-5
営業時間 10:30~19:00