北京はシェアサイクルだらけ
今、北京に行くと、街中のいたるところにカラフルな自転車が大量に置いてある、というか放置(?)してあるのが目につく。これは、半年ほど前から中国で流行りはじめたシェアサイクルの自転車だ。
黄色いやつ
大通りのちょっと広めの歩道なんかには、こうやってシェアサイクルがズラッときれいに並べられているけれど、ちょっと小さめの道や地下鉄の出入口付近には無造作に自転車が並んでいる。
色んな色のシェアサイクルと個人の持ち物の自転車、スクーターがバラバラに並んでいる
北京市内で、ぼくが行った場所にかんしていえば、ほんとうにどこにでも置いてあり、たとえば胡同(フートン)と呼ばれる細い路地がいりくんだ古い住宅街のなかにも貸自転車は置いてあった。
赤い矢印がシェアサイクル
もちろん、置いてあるだけじゃない。実際にみんな使っている。若者から年配まで男女問わず、老若男女みんな乗っている。
北京は自転車用の車線があって便利
ちなみに真ん中のバイクはネットで注文できる出前サービスのバイクらしい
地下鉄駅の入口まで兄ちゃんが乗ってきて鍵をかけて乗り捨てた自転車を、おっさんがすぐにスマホを使って解錠して乗っていったシーンも見かけた。
ほんとにみんな乗ってる
とにかく、街中にある鍵のかかっているシェアサイクルは、スマホで解錠して誰が乗ってもいいし、どこに乗り捨ててもいいというしくみになっているらしい。
頑丈そうな自転車
シェアサイクルをよく見てみると、つくりがかなり頑丈なことがわかる。変速機能などはついておらず、タイヤは全部ゴムのいわゆるノーパンクタイヤというやつだ。また中には、自転車のチェーンがシャフトタイプのやつもある。
パンクしないタイヤ、軽くするため、穴が開けてある
シャフトタイプの自転車。リムがプラスチック
しかし、徹底的に無駄をなくした上、壊れにくいように工夫されているのがわかる。
乗ってみたい
これだけ見かけるシェアサイクル。ビジターだけど、ぼくもぜひ乗りたい……が、調べてみると実際に乗るのはけっこう難しいことがわかった。
まず、自転車の鍵を解錠するためには、スマホと専用アプリが必要で、アプリをダウンロードしても、利用登録するために、微信支付(ウィーチャットペイ)とか支付宝(アリペイ)といったモバイル決済サービスに登録していることが必要で、モバイル決済サービスを登録するためには、中国国内の銀行口座が必要……という手順を踏まねばならず、物見遊山に来ているだけの外国人にとっては、ハードルがかなり高い。
中国国内の銀行口座は、外国人でも作ろうと思えば作れるらしいけれど、さすがに自転車にちょっと乗るためだけに口座を作るのは、二の足を踏んでしまう。
そこで、北京に住んでいる方におねがいしてみることにした。
待ち合わせ場所までシェアサイクルできてくれた
協力してくださったのは、北京在住の峰岸さん。峰岸さんは、もちろんシェアサイクルに登録住みで自転車を借りることができる。
そこで、実際に自転車を借りてもらって、ちょっと乗せてもらうようおねがいしたところ、快諾してもらった。こりゃありがてぇ。
品定めをする峰岸さん
自転車がたくさん停めてあるところに行くと、峰岸さんは、自転車のサドルをなでまわしはじめた。
何をしてるのか聞くと、たまにいたずらで針金や針がサドルに突き刺さっていることがあるから、ねんのために調べてから乗るという。
サドルの後ろに値段が書いてある
上の写真の自転車は、リング式の鍵がついていて、そこについているQRコードをスマホの専用アプリで読み取り、パスワードなどを入れると鍵が解錠される。
きいろいやつの鍵は押しボタン式
上の黄色い自転車は、QRコードを読み取ると送られてくる数字を入力すれば解錠できる。
解錠の方法は微妙に違うものの、いずれのシェアサイクルも、概ねアプリを利用して自転車の施錠を解除する仕組みになっている。
シェアサイクルのアプリ
これらのシェアサイクルは、値段も安く、どの事業者のものでも30分から1時間で1人民元(16円ぐらい)程度で乗ることができる。
今、日本で16円ほどで受けられるサービスってなかなか無いことを考えると、異常な安さだ。
なお、これらのシェアサイクルには、全てGPSが付けられており、どこに使用可能な自転車があるのかアプリですぐにわかるようになっている。
また、事業者の方でもGPSで、自転車がどこにあるのかは常に把握されており、定期的に回収され、然るべき場所に設置し直されるらしい。
シェアサイクル回収業のおっちゃん
実際、自転車を回収するおっちゃんを見かけたが、オート三輪に自転車をドサドサのせていた。2017の最新トレンド・シェアサイクルをオート三輪に山積みにして運ぶというところが、中国らしくて実にいい。
めちゃくちゃ重いけど、気にはならない
というわけで、ついに自転車に乗せてもらうことになった。
おー、これがあの有名な!
なかなかいいぞこれ
タイヤが中にゴムの詰まったノーパンクタイヤの上、チェーンがごついシャフトなので、もちあげようとすると異様に重量がある。サドルの高さも調節できず、変速も無い。たぶん一日中乗るとかなり疲れるとおもうけれど、10分、20分程度であれば、まったく問題ないのではないか。
春節の頃から急に流行りだした
せっかくなので、自転車を借りて、天安門広場前まで行ってみることにした。
天安門広場、こっちです
あーっテレビで見たことあるやつだ!
天安門の前は自転車専用の車線があり、自転車で門の前を横切ることができる。ただ、立ち止まって記念写真なんかを撮ってると、すぐに公安(警察のこと)がやってきてなんか言われるらしいので、走り抜けながら何枚か写真を撮ってみた。
天安門でーす
峰岸さんは、北京に住んでいても、天安門広場にはめったに来ないらしい、東京都民にとっての東京タワー、大阪府民にとっての通天閣みたいなものか
峰岸さんの話によると、シェアサイクル自体は、去年(2016年)の春頃にはサービスが開始されたが、これほどまでに、街中の至る所に自転車が増えたのは今年の春節ごろからだという。
現在、青色のブルーゴーゴーと、オレンジ色のモバイク、黄色のofoあたりがシェアあらそいをしている。
たった1年ほどの間に、街の様子や人の動きを変えてしまうようなサービスが登場して浸透してしまうというのは素直にすごい。
縄文時代の稲作や明治維新のときの洋装みたいな変化が、21世紀ではものすげースピードで進むということがわかる。
現在、中国では政府が学生や若者に対し、起業を行うよう勧めておりそういった雰囲気のなかでこのシェアサイクルの事業も、北京大学の学生などがはじめたという。
地下鉄の中にシェアサイクルの広告があった
大学生ということは、まだ20歳そこそこだろう。自転車に見える「ofo」という文字を社名に採用するあたり、いかにもネットの顔文字文化で育ってきた世代っぽい。
公営のシェアサイクル
今までのシェアサイクルは、自転車のあるステーションで借りて、返すときもステーションまで持っていって返さなければいけなかったけれど、どこから乗ってどこに乗り捨てても構わないというのは、気絶するほど便利としかいいようがない。
もともと北京にもステーションで管理するタイプの市営のシェアサイクルはあったそうだが、今ではお年寄りぐらいしか使ってないらしい。
東京にもシェアサイクルはある
すっかり、中国のシェアサイクルの便利さにあてられてしまい、中国はすごい、日本はダメだ、みたいなことを言ってしまいそうになるけれど、日本にもシェアサイクルサービスはできはじめている。
東京にもシェアサイクルはありまーす。
東京のシェアサイクルは、電動アシスト自転車だ
数年前から、家の近所(中央区)にシェアサイクルのポートができていて
、だれでも登録すれば自転車を借りることができる……というのは知っていた。
うちの近所でいえば、中央区、千代田区、新宿区、文京区、江東区、港区の6区が合同でシェアサイクルを行っており、例えば港区の自転車を借りて、文京区で返す。ということも可能だ。
これは、
東京自転車シェアリングというサービスで、シェアサイクルのサービス自体は、東京以外でも、横浜、仙台、広島などでも行われている。
実は前から気になっていたものの、登録が面倒くさいので使ってなかったけれど、今回せっかくなので登録して実際に乗ってみた。
登録します
詳しくは省くが、借りるたびにお金を払って使うプランは、クレジットカードを登録して会員になれば30分150円で、使えるようになる。中国のシェアサイクル30分1人民元(約16円)という安さと比べると、その9倍以上もするわけだが、まあ、そこは物価の違いで仕方がないというしかない。
スマホで専用サイトに接続し、使える自転車を確認してボタンを押せば、パスワードが送られてくる。そのパスワードを使いたい自転車に入力すれば鍵が解錠される。このへんの仕組みは、中国のシェアサイクルとそんなに変わらない。
パスワードで解錠
ちなみに、乗る前にバッテリーの残量が多いやつをチェックして解錠したほうがお得
はい乗れましたー
中国のシェアサイクルと違う点として、自転車はポートで借りて、ポートに返さなければいけない、という点もある。
借りるポートと返すポートは別々でもよいとはいうものの、やはり「どこで借りても、どこに置いておいてもよい」という便利さにはかなわない。わかったそこは負けを認めよう。
ただ、ポートはかなりの数ある。
稲荷神社より多いのではないか? これだけ細かくあれば、なんとかなるんじゃないの? という気にはなる。
自転車の性能はこっちのほうがすごい。なんたって電動アシスト自転車である。
乗り心地は最高です
あの、ペダルを踏もうとすると先回って勝手にツィーと動いてくれる感覚。これが楽しいのだ。「電動アシスト自転車に乗る」というのもひとつのアトラクション的な楽しさがあると、ぼくは思うのだけど、どうだろうか?
電動アシスト自転車に乗るのが楽しい
乗り心地は、申し分ない、サドルの位置も調節できる、しかも電動アシスト自転車。これ以上の物を求めると、罰があたる。
登録は、メールアドレスとクレジットカード等があれば、外国人でも登録できる。ちょっと煩雑なところがあるが、10分程度で登録できるはずだ。この点は、外国人観光客には使いづらい中国のシェアサイクルにくらべるとずいぶんいい。
もっとも、中国のシェアサイクルも今後、外国人観光客の利用を念頭に置いた貸出サービスが登場するかもしれない。
鍵を施錠すれば返却完了
それぞれの都市でそれぞれのシェアサイクルが行われている
北京は、地形がまったいらで、東京のような急な坂道があまりない。そのため、自転車で移動するのが便利だ。坂道がなければ、変速や電動アシスト自転車なんかも必要ないかもしれない。
その上、道路が異常に広く、歩道もそこそこ広い。自転車がそのへんに放置されていてもそんなにじゃまにはならない。
ゴミの捨て方など、中国の人の行動などを見ていると、そもそも、町に多少のノイズがあってもそんなに気にならないという人も多いかもしれない。
一方、東京はというと、起伏の激しい丘がアメーバのように広がっており、丘と低地の間にはかなり急な坂があちこちにある。
そんな中で乗る自転車にはやはり変速や、できれば電動アシスト自転車が使えるととっても便利である。
その上、道がせまい。メインストリートである銀座の中央通りでさえ、北京の広い道路の半分ほどしかない。
そんなせまい道から絞り出すように作ったせまい歩道の上に自転車が並んでたら、じゃまになる可能性はいなめない。
どっちがいいとかわるいとかではなく、シェアサイクルは、その町の実情に合ったサービスが手軽に使えるようになればとおもう。