特集 2017年6月16日

不動の絶叫マシン、宮ヶ瀬ダムを味わい尽くす!

まさにクライマックス
まさにクライマックス
先日、デイリーポータルZ新人賞の授賞式が行われた。会場は僕がダム好きになったきっかけになった神奈川県の宮ヶ瀬ダム。なぜ宮ヶ瀬ダムなのかよく分からないまま、授賞式のあとに行うダム見学の引率を仰せつかり、受賞された方々や当サイトライター陣をご案内した。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

前の記事:重要文化財になるらしい日本初のダムを見てきた

> 個人サイト ダムサイト

いきなり流木に興奮

授賞式が行われたのは、ダム湖畔に広がる公園の中に建つ野外ステージ。天気にも恵まれ、ほどよく日焼けしつつ無事に授賞式が終わり、一同はバスに乗って5分くらいの場所にあるダム本体に到着した。
授賞式の全景
授賞式の全景
集合場所の新宿からわざわざ1時間以上かけてやってきたのだ。ダム見学も授賞式と同じくらいの重要イベントだろう。バスを降りるなり、いや降りる前からみんなダムという非日常に興奮していた。参加者およそ30人が、いきなり目に入った「流木無料配布中」の柵の中に突進。これがいい、あれにしようなど、思い思いに流木を選んでいる。

まって、これから約2時間ダム見学なのだ。帰りにしてはどうか。あと使いみち。
わー流木だ無料だ
わー流木だ無料だ
ダム湖に流れ着いた流木を引き上げて配布している
ダム湖に流れ着いた流木を引き上げて配布している

動かない絶叫マシン

みんなにかかっていた流木の魔法が解けるのを待って、ダムの説明をすることにした。宮ヶ瀬ダムは主に神奈川県の水源と相模川水系の治水、そして発電の目的で造られたダムだ。特に水源として絶大な効果があって、水源を利根川水系に頼っている一都五県が水不足に喘いだ昨年も宮ヶ瀬ダムは水たっぷりで、神奈川県は悔しいくらい余裕を持っていた。
貯水量は芦ノ湖と同じくらいある
貯水量は芦ノ湖と同じくらいある
高さは156mで全国6位タイ、向こう岸までの幅は375mで、コンクリートのダムとしては日本一の体積を持っている。ひたすら巨大なのだけど、言葉で説明してもいまいちピンと来ないかも知れない。ならば身体で感じてもらおう、とダムの上から下を覗いてもらった。
うわー!!
うわー!!
高すぎるのと吹き上げる風とでまともに立てない
高すぎるのと吹き上げる風とでまともに立てない
高所恐怖症とか関係なくなると思う
高所恐怖症とか関係なくなると思う
写真ではそれほど迫力が伝わらないかも知れないけれど、読者の皆さんもぜひ体験していただきたい。高いだけじゃない、150mクラスのダムの上から下を覗いたときに見える異次元の光景を。
右上に見える黒い粒々は人である
右上に見える黒い粒々は人である
たぶん笑っていないと正気を保てない
たぶん笑っていないと正気を保てない
しかしなぜか離れられなくなる
しかしなぜか離れられなくなる
一様に引きつった笑顔
一様に引きつった笑顔
それにしてもみんないい表情だ!
それにしてもみんないい表情だ
というわけで宮ヶ瀬ダムの高さを味わってもらったら、次はダムの中を通るエレベーターに乗って下へ降りる。宮ヶ瀬ダムはダムの上と下をつなぐ通路やエレベーターが解放されていて、珍しく下から見上げることができるダムでもあるのだ。上から覗くのもいいけれど、個人的にはダムは下から見上げてこそだと思っている。
ダムの中の通路が解放されている
ダムの中の通路が解放されている
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ちょっと自分語り入ります

ここで、どういうきっかけで僕がダム好きになったか、ちょっと個人的な話をしたい。
およそ20年前、車の免許を取得しあちこちドライブに行っていた。昔から地図が好きだったので、地図で気になった場所に行ってはそこがどうなっているのか見てくる、ということを繰り返していた。

そんな遊びもひと段落し、ドライブの行き場所を探していたとき、友人がさり気なくこんなことを言った。

「そういえばこの辺でダムを造っているよ」

それを聞いた瞬間、俄然興味が湧いた。ダムと言えば巨大なコンクリートの壁だ。それを造っているというとどれだけ大規模な現場だろう。ぜひ見てみたい!

というわけでさっそく建設地点に向かったのだが、だいぶ手前で道が通行止めになっていて、その日は工事現場を見ることすらできなかった。しかし、僕はなんだか気になって、それからしばらくの間、その通行止めの場所に通い続けた。

すると1年くらい経ったある日、通行止めが解除されていて、それまで通れなかった道の先に進むことができた。真新しい駐車場に車を停め、できたての遊歩道を進んで行くと、目の前にあり得ない高さのコンクリートの壁が出現したのだ。

それが宮ヶ瀬ダムとのファーストコンタクトだった。ダムを下から見上げたのも初めてだし、これだけ巨大なダムを見ること自体経験がなかった。しかし見上げたダムの姿は強烈で、なぜか圧倒的な敗北感を覚えた。

目の前にそびえ立つ巨大ダムの姿に、僕は「ちょっと、これは、すごいぞ」と圧倒され、足を震わせながら家に帰ってすぐにダム専門のホームページを探した。当時、ちょうどインターネットが一般家庭に普及しはじめた頃で、面白い個人ホームページが林立していたのだ。中でも好きだったのが、現在当サイトのウェブマスターである林さんが作っていた、ガスタンクばかり集めた「ガスタンク2001」と、佐藤さんという写真家の方が水門の写真ばかり撮り集めた「Floodgates」で、こういうマニアックすぎるホームページがあるならダム専門のホームページも既にあるんじゃないかと思ったのだけど、見つけられなかった。

仕方ないので自分でダムの写真を撮り歩こうと思い、ヤフオクで5000円くらいの中古デジカメを買っていくつかのダムに行き、2000年の9月に「ダムサイト」というホームページを立ち上げた。

その後「脱ダム宣言」などダム界に吹き荒れた逆風にもめげず、あちこちにダムを見に行って、こんなすごいものはみんなに見せたい、と思って自分で観光バスを借りてバスツアーを企画した。募集人数はあっという間に埋まったのだけど、その中にデイリーポータルZの取材で林さんが参加していた(→この記事)。ちなみに当時僕はまだハンドルネームを名乗っていた。

それからいろいろあって、ダムのDVDや写真集を出させてもらったり、いろいろイベントをやらせてもらったり、いつの間にかデイリーポータルZのライターもさせてもらったりして現在に至るわけだけれど、そういう過程を踏んで10年以上経ってから改めてデイリーポータルZの皆さんを宮ヶ瀬ダムに案内している、ということを思い出して、めぐり合わせというか何というか、なんだか頭がぼーっとして逆上せたような状態になってしまった。

それ以後の記憶はあまり定かではない。
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せーので後ろ向きましょう、せーの!

写真もなく長文失礼しました。
というわけで、僕のこだわりとしては、ダムは下から見上げてこそだと思っているので、エレベーターで下に降りてダムの中から外に出たあともすぐに振り返らず、ベストポジションまで来てから皆で一斉に振り向くことにした。

「ではせーので振り向きましょう、せーの!」
写真であり得ない大きさを感じてもらえるだろうか
写真であり得ない大きさを感じてもらえるだろうか
圧倒的な敗北感を味わった人々の表情だと思う
圧倒的な敗北感を味わった人々の表情だと思う
口を開けて笑うしかないんですよ実際
口を開けて笑うしかないんですよ実際
想像をはるかに超えたものに出くわしたとき、人は口を開けて笑うしかない、ということがよく分かった。

その後、一行はダムのすぐ下にかかる橋の上に移動。宮ヶ瀬ダムは観光放流と言って、毎週6分間の放流を行なっているのだけど、もちろん授与式の日程はその日に合わせた。日曜日なのでほかのお客さんも多く、橋の上は大混雑だ。

みんなの期待も頂点に達した14時、ダムの放流口から勢い良く水が噴き出した。
エレクトリカルパレードを待つ人並みの混雑
エレクトリカルパレードを待つ人並みの混雑
うおおお
うおおお
すっかり観光名所になりました
すっかり観光名所になりました
この20年のいろいろを思い出して頭がぼんやりした微笑み
この20年のいろいろを思い出して頭がぼんやりした微笑み

ヘルメットかぶって内部見学

観光放流が終わると、一般の観光客はぞろぞろと帰途につきはじめた。しかしデイリーポータルZの一行はダムの下に集合。もうひとつの目玉として、ダムの管理事務所にお願いして、通常は見られないダム内部の見学をさせてもらえることになったのだ。

というわけで、全員国土交通省のロゴ入りヘルメットをかぶって立入禁止区域へ。職員さんの案内のもと、いろいろ見せてもらったのだけど、保安上撮影禁止の場所も少なからずあったので、公開可能な写真だけいくつか紹介して終わりにしたい。
ヘルメットかぶってダムの内部へ
ヘルメットかぶってダムの内部へ
ダムの中なら急階段も笑顔
ダムの中なら急階段も笑顔
この記事で乗せてもらった点検用モノレール
この記事で乗せてもらった点検用モノレール
ダムの上から下まで続く階段も一部見せてもらった
ダムの上から下まで続く階段も一部見せてもらった
本来休館の管理事務所内部も(撮影は禁止)
本来休館の管理事務所内部も(撮影は禁止)
というわけで、デイリーポータルZ新人賞in宮ヶ瀬ダムは無事に終了した。参加した皆さんは大興奮だったので僕も嬉しかったのだけど、調子に乗って「来年はどこのダム行きましょうか」と訊いたら担当の石川さんは笑ってスルーしていたのでダムじゃないかも知れません。

頭が沸騰した

たまたま会場が宮ヶ瀬ダム近くということでダム見学引率の大役を仰せつかったけれど、これまで自分がやってきたことの全てがこの日に繋がった気がして、軽く頭が沸騰し後半は記憶が曖昧になった。ダム界は盛り上がったなあという思いと、もっともっと火をつけたいという思いも新たにした。
帰り忘れずに流木ゲットしました
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