神ダム登場
もうデイリーポータルZでは何回も登場しているけど、あらためてご紹介したい。12年前に僕をダムの道に進めた張本人、神奈川県にある宮ヶ瀬ダムである。
ちなみにこれは10年前に撮った写真
こんな面白いことを教えてくれた宮ヶ瀬ダム、僕にとってその存在は単なるダムではない。AKB風に言えば神ダム、推しダムである。
12年前に啓示を受けて以来、毎年必ず1~2回はご機嫌伺いに訪れているから、もうかなり長いつき合いだ。でも、ダムの中を詳しく見学させてもらう機会は今までなかった。
軽く放流して子供たちを熱狂させる宮ヶ瀬ダム
台風の日に行ったら本気で戦っている姿を目にしてドキドキした
コンクリートの固まりであるダムの中には、放流するための水門や、さまざまな計測機器などが設置されている。それらはすべてダムの上にある管理所でコントロールしたりモニターできるのだけど、定期的に異常がないか目視したりメンテナンスするために、トンネル状の通路も縦横無尽に通っている。
ダムの中をトンネルが通っている
素人が無闇に入ったら遭難するレベルの複雑さ
しかし宮ヶ瀬ダムは高さが156m、幅が375mもある。その中を歩いて巡視するのは体力的に厳しいし、休憩が多くなっては効率が悪い。そこで、メインの巡視ルートにモノレールを通して、乗ったまま点検できるようになっているのだ。
ちなみに、宮ヶ瀬ダムにはダムの上と下を行き来するためのケーブルカーもあるけど、それとは違う。
これは誰でも乗れるケーブルカー
ダムの中の通路自体が非日常空間なのに、そこにモノレールが通っているなんて、その想像つかない世界は一般人から見たら叶姉妹の私生活並みである。ベクトルは真逆だけど。
いよいよ乗車!
モノレールの出発点は、ダムの上に建つ管理所の地下にある。管理所から階段を下りていくと、いかにも業務用といった、殺風景な乗り場があった。広さ的には切符売り場や待合室も置けそうなほどなので、将来的な営業化も可能である(しません)。
モノレールはまさかの懸垂式
スキー場のゴンドラ程度の大きさ
実際に見てみるとこれはすごい。ダムの中のトンネル状の通路に線路が敷かれていて、そこをぶら下がり式モノレールで進むのだ。何度も似たような説明してしまうくらいよく分からないけど、雰囲気はなんだか宇宙的だ。
実際は地上というか地下というか壁の中、それも片側は水深100m以上の湖、もう片側は高さ150mくらいの絶壁の中。ある意味、これ以上の極地を通るモノレールはないのではないか。
キャビンは大人4人が座ったらもういっぱいな広さ。でも僕と同行のダム好き2人、職員さんの計4人を乗せたモノレールは、かつてない熱気を発しながら動き出した。
熱気ムンムン
今回の乗車区間は管理所地下から出発して、50mほど下の通路まで。時間は5分くらいであっという間だけど、ダムマニアにとっては大きな5分である。
外から見るとこんな位置を移動する
狭い通路の中にモーター音と接近を知らせるチャイムを響かせながら、モノレールはゆるゆると動き出した。
先の方がカーブしていて見えないのがわくわくする
トンネルの中をぶら下がり式のモノレールで進むというのは、想像以上に非日常的だ。これはそこらの遊園地のライドより楽しい!
カーブを抜けると信じられない下りが待ち構えていた
気づいたときには目の前の視界がこんなことになっていた。ちょっと待った!
そういえば5分で50m下に向かうんだった。そういえば出発するときに職員さんが「下りで少し加速しますけど驚かないでください」と言っていた。つまりそれらはこういうところを下る、ということを意味していたのか。一瞬、走馬灯状態に陥る。
待ったなし!
では、おそらく本邦初公開の宮ヶ瀬ダム点検用モノレール動画をどうぞ。
途中で急傾斜の坂が出現したときの、マニアならではの静かな興奮が伝わるだろうか。本当に転げ落ちるような傾斜だったけど、モノレールは安定して下っていった。
でも予告されていたとは言え、傾斜の途中でふいにスピードが上がったときは驚いた。正直に白状すると、あっ、という叫び声は僕のものだ。
背中に冷たい汗をかいた
別のグループを乗せて登っていくシーンも撮ったので見てください。
それにしてもすごい傾斜
モノレールはこの先も続いてていつか行ってみたい
神のご加護を受けた
ダムの中のモノレール、存在は知っていたけど乗せてもらったのは初めてで感動した。職員さん以外に、きっと偉い人が視察などで乗ったことはあるだろうけど、いわゆる「ダム好き」を乗せたのは初めてのことらしい。これは孫の代まで自慢しよう。
モノレールには乗れないけど、宮ヶ瀬ダムでは毎年夏に見学会を行っているので、ダムの中に興味のある人はぜひチェックしてください。放流するための水門の駆動部分とか見られます。