特集 2017年6月17日

将棋で人間は犬に勝てるのか

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中学生棋士が大活躍するなど、いま将棋が熱い。一方、名人がAIに将棋で敗れるという、AIの進化を物語る衝撃的な出来事も。人間、このままではまずい!ので、人間の可能性を追究するためにも今回は、将棋で人間は犬に勝てるのかを、調べてみたいと思う。
多摩在住のイラストライター。諸メディアにおいて、フマジメなイラストや文章を描くことを専門としながらも、昼は某出版社でマジメな雑誌の編集長をしたりするなど、波乱の人生を送った後に、新たなるありのままの世界へ。そんなデイリーポータルZでのありのままの業務内容はコチラを!(動画インタビュー)

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AIが人間を超越するというシンギュラリティに抗うべく、ある意味AIよりも知能は未知数とされる犬と、将棋の対局をせねばならない(別にマストではない)わけだが、今回決戦の場となるのがこちら、
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和室。実家の。名人戦の会場のような荘厳さは、ない。荘厳にするために、
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今回のタイトル「犬王戦」をつくって
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舞台を彩ることにする。決してボロボロだった障子を補完するためでは、ない。竜王があるなら犬王があってもいいだろう。
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ちなみに将棋だが、将棋って知らない人には全くおもしろくないので、最初に各駒の動きを説明しておこう。将棋ご存知ない方は、愛犬ももと一緒にぜひ知ってほしい。
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まずは「歩兵」。能力はただ前に一歩進めること。ヘボい。ニックネームは「歩(ふ)」。語感から弱い。
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「香車」。前方にならどんだけでも進むことができる。イメージはバックのできない車。後戻りできない武骨さが良い。
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「桂馬」。言葉では説明しにくい位置へとピョンと跳ぶことができる。つまりはヘンな馬。
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「銀将」。いろいろ動けるが、 横と真後ろはいけないもどかしさがある。
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「金将」。だいぶ動けるが、銀とは違い、斜め後ろにはいけないもどかしさがある。
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「飛車」。前方、後方、左方、右方、の方向に行き来できてしまうすごい駒。高級車。
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「角行」。飛車の斜め版。僕は飛車のほうが好きである。
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「王将」。全方向に一個ずつ動ける。王だけに。コイツを取った方が勝ちだ。
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で、これらの駒を、9×9の81マスのなかで、オフェンス&ディフェンスにと、めまぐるしく動かして、相手の王を取ったら勝ち、というゲームである。
あと、相手から取った駒は、自分のモノとなり自由に使えてしまう、ことも知っておこう。
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(ちなみに将棋のこの点がチェスとの大きな違いで、AIの演算処理としては一気に負荷となるのだが、そんな将棋でも人間に勝ってしまったことが、AIとしてエポックメイキングなのであった。)
だいたいわかっていただけただろうか、ちなみに、ももへのレクチャーの手ごたえは、ゼロだ。
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駒の動きを理解してもらったところで、あらためて、対局のスタートだ!!
将棋界騒然の前代未聞の対戦に、ほとばしる緊張感。
ちなみに僕の将棋歴だが、子どものころ町の将棋大会で優勝したことがある。そして上級おっさんの集う将棋クラブに招待されたのだが、そこで大人げないおっさんに、容赦なく、負けた。で、すぐ将棋やめた。千葉の三月のライオンの若い芽は、あっさり摘まれたわけだ。
では、そんな将棋好きな僕から、まずは先手として

●先手ヨシダ 7六歩
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王道の一手を。いわゆる「角の道を開けた」というわけだね。この王道の手に対して、ももは一体、どんな手で対応してくるのか…!
(よく見たら、もも側の左端の駒を微妙に並べ間違えていたが、もうそれは犬へのハンデ、ということにする。)
で、そもそもの話、犬がちゃんと将棋を指すのか気になると思うが、ももの眼前にエサをちらつかせて、
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「お手」をさせれば、なんとなくガチャッと、事実上指すことになるのではなかろうか。たぶんイケるはず。
では、ももに指してもらうべく、
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エサをちらつかせると、
もも、お手!
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を、してはくれたのだが、そのお手の引き潮とともに、その場の駒が
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カッチャカチャに! あぁ、ももったら! でも確かに、こうなるわ!犬だし! 犬の手ゆえに、小さな駒をピンポイントで動かせず、
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その場の駒がカッチャカチャになる。こんなカタストロフも起きてしまうが、今回はもう、その駒の散在に応じてそのままに駒が動いた、とみなすことにする。
マジかよ。それで将棋が成り立つのかという不安はあるが、もういい。それもある種ハンデってことで。もも年齢的にも、ディープラーニングはまだ浅い時期だしね。
ってことで、衝撃により

■後手もも 3二歩
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歩が下がる、というね。いきなり通常ではありえない事態。でも犬将棋ではしょうがないので、そのまま進めていこう。
続いて僕の攻撃、飛車を横へと動かし

●先手ヨシダ 7八飛
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左サイドから一気に攻める予定である。続いて、ももの番だが、
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また同じようなシステムでももにお手させたところ、また手が盤にぶつかり、
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ガチャッという音ともに
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金がフォーリン!

■後手もも 金消
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金が消えた!! ない、こんなケース。駒が盤上から忽然と消え去った。でも有事もすべて受け入れるのが犬王戦。その手を、受け入れよう。
では普通に将棋を進める人間の僕、

●先手ヨシダ 7五歩
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飛車先の歩を進めて、飛車道を進めていく。
そしてまたももの番だが、もものガチャっとしたお手とともに
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今度は、ん!?

■後手もも 桂消
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今度は桂馬ナイーー!! また盤外へと消えさったのだった。なんだこの将棋。
なら僕としては

●先手ヨシダ 2二角成
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そういや各道が開いていたので一気にももの角を取る。もも的には攻め手を失う大ダメージ。自覚しているのかは謎。(ちなみに相手の3ラインに潜入できた駒は、裏返しに「成る」ことができ、パワーアップできるよ。)
普通だったら銀で、僕の角成を取り返すところだが、
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ももの手は!

■後手もも 香消
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ガチャっと! 今度は端の香車が! 谷底へ!! ももに堕とされた駒たち、さぞ意表を突かれていることだろう。かける言葉もない。
では僕は手堅く

●先手ヨシダ 2三角成
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とりあえず取られぬように逃げる。
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慎重な僕に対し、続いてもも
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またカッチャカチャになった結果、

■後手もも 4二金
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ん? 金がズレた。防御の一手か? 最近のAIはセオリーにない神の一手を打ちがちなので、それかと焦る、が、犬だ。
なら僕は、攻撃の手を緩めることなく

●先手ヨシダ 7四歩
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飛車先を攻めていく。普通は僕の歩に潜入されて成られるのを防ぐため、同歩で取ってくるものだが、
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ももの手は、またガチャっとエクスプロージョンした結果、

■後手もも 6一王
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王がかすかに左にズレた、ので、移動である。寄ってきた。どういうつもりだろう。
気にしない。なら容赦なく

●先手ヨシダ 7三歩成
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成る。歩がパワーアップして「と(金と同様の能力)」になったぜ!
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それに対してももだが、またガチャっとした結果、

■後手もも ヨシダの角成を2四に移動
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なに!? ついには僕の駒動かした! でもそれも容認。なんなのこの将棋。
なら攻め手を緩めず、

●先手ヨシダ 8二「と」
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ももの飛車をGET!やったぜ!
押されるもも、
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起死回生の一手は来るのか!?
そしてガチャっとした結果、

■後手もも 3三歩
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!? 関係ない歩が横に移動! もろ二歩! 通常の将棋では、一列に歩が2個並ぶのはNGなのだが、今回は許さざるをえない!
ではそんな、モモの全く意味のない手に対して、僕は

●先手ヨシダ 7一「と」
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王手! 決着をつけるべく、ついにももの王に襲いかかる!さぁもも、このピンチに対して、
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どう対処するのかッ!!?

■後手もも ヨシダの「と」消
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!!? なにー!! 「と」がヴァニッシング! 僕の王手の「と」を、盤外へと消し去ったー!! 何それ、ずるいよ!
でもこの思いは届かないので、気を取り直して、攻め続ける!

●先手ヨシダ 7二飛車
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改めて、さっきももからGETした飛車で、王手だ!
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さぁもも、再びのピンチに対して、どんな抵抗を示すのか! またガチャっとした結果、

■後手もも 5五歩
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!! 盤の中央に突然舞い降りた! 歩が!! どこかしらから歩が降臨。もう何もわからない。でもこんな有事はすべて認められるのが犬王戦。
ってことで、それにはかかわらず、

●先手ヨシダ 6二同飛車王取り
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王を取った! やったぁ!
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これにて、ついに! みごと、将棋にて、人間が犬に勝利することができたのであった!
つまりは、(犬の将棋との親和性には危ういものがあった点に目をつぶるならば、)将棋ではまだまだ人間の方が有能であることが、明らかになったのであった!
おめでとう人間! ドンマイ犬! いずれにせよ、ももおつかれさまでした。
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というわけでAIには負かされがちな時代になっていきますが、我々人間たちもまだ捨てたもんじゃないので、たくましく生きていきましょう。
ではまたおやすみなさい…。

はい以上いかがでしたでしょうか今週の「将棋したいけど相手がいない」。みんなも将棋しましょう。よろしくおねがいいたします。
「ていうか散歩いきたい」
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