とくべつ企画「骨付き肉」 2017年5月30日

骨に残った肉まで味わい尽くす中華料理の知恵

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一般的に「骨付き肉」と聞いて思い浮かぶのは、「はじめ人間ギャートルズ」で有名な、丸い塊が骨に突き刺さったマンモスの肉や、鳥の骨付き唐揚げ、豚やラムのスペアリブ、Tボーンステーキ、そういったところだと思います。

が、僕が真っ先に思い浮かべるのはちょっと特殊な骨付き肉。

いや、骨付き肉というより「肉付き骨」というか……それは中国・ハルビンの名物料理だそうなんですが、日本でも食べられるお店があるので、ぜひご紹介させてください!

※この記事はとくべつ企画「骨付き肉」の1本です。
1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

前の記事:雀荘でカレーだけ食べてきた


池袋北口には中華街が広がっていた!

もう何年も前から、池袋の北口一帯が、ちょっとしたチャイナタウン化していることをご存知でしょうか?

といっても、横浜、神戸、長崎の「日本三大中華街」のようにメディアで特集されたりする機会もあまりないし、知らない方の方が多いと思います。
そもそも、大げさな門かなんかが建ってて「ここからここまでが中華街です!」というようなわかりやすいものではなく、いつのまにか、自然発生的に、中国出身の方々が多くお店を出すようになり、相乗効果でそういったお店がさらに集まり、「な~んかこのへん、やたらと本場の人がやってる中華屋さん多くない?」となったのが成り立ちのようで。
こんな感じ
こんな感じ
友達に「上海来てる~♪」とLINEしたら信じてもらえるかもしれない風景
友達に「上海来てる~♪」とLINEしたら信じてもらえるかもしれない風景
飲食店が多いので、中国食材屋も多い
飲食店が多いので、中国食材屋も多い
このあたりの中華屋さん、どこも本場の方がやっていて、入ってみたらお客さんも全員向こうの方だった、なんてパターンもあって楽しく、何より安くて美味しいので、僕はよく利用しています。
一口に中華といっても、定番の「四川料理」や「北京料理」から、北朝鮮との国境付近で親しまれている「延辺料理」といった珍しいものまで、幅広い特色を持ったお店が集まっているのも嬉しいポイント。
流行に合わせたお店の入れ替わりも激しい
流行に合わせたお店の入れ替わりも激しい
こちらはどうやら「鴨肉専門店」のようですね。
しかも24時間営業。
最近このあたりを歩いていると、やたらと鴨肉押しのお店が多く、今は鴨がブームなのかもしれませんね。
万一レポートをご所望でしたら、いつでも行ってきますので、編集部までおたよりを。

界隈屈指の人気店「永利」で食べられる「東北醤大骨」とは!?

本題に入りましょう。

池袋北口界隈中華街の中でも古株で、トップクラスの人気店、「永利」。
ここで食べられる骨付き肉料理「東北醤大骨」が、お酒のつまみにぴったりの、クセになるうまさなんです!

お店があるのは、駅前からちょっと歩いた、
「へいわ通り」
「へいわ通り」
という平和な通り。

駅前の喧騒から抜けた、のんびりとした昔ながらの商店街ですが、ここにも「チャイナタウン化」の波は押し寄せています。
中国東北家郷料理「永利」
中国東北家郷料理「永利」
はい着きました。
本当に大人気店なので、特に夜に行くならば予約が吉です。
外観からして要素の多さにワクワク!
外観からして要素の多さにワクワク!
この、何度通っても到底制覇できないであろうメニューの豊富さは、本場系中華料理屋の特徴ですよね。
お店の人、大変すぎないかしら?
関係ないけど、永利の隣の店
関係ないけど、永利の隣の店
こっちも、とても日本とは思えないディープさですな。


さてさて、無事に永利に入店できました。
肉々しいメニューに心躍る!
肉々しいメニューに心躍る!
さっそく注文するのは、
「焼きコーンの砂糖かけ」
「焼きコーンの砂糖かけ」
ではなくて、こっちの、
「豚背骨のタレ煮付け」
「豚背骨のタレ煮付け」
正式な料理名は「東北醤大骨」。
醤大骨は「ジャンダーグー」と発音するようです。

が、メニューの写真だけではまだ想像が付かないですよね?

なので手っ取り早く、届いた醤大骨の写真を見ていただきましょう。
ドン!!!!!!!!!!
ドン!!!!!!!!!!
これです!
僕が真っ先に思い浮かべる骨付き肉!

具体的にどんな料理か。

食材として使うため、豚の背骨から肉を削ぎ取る際、どうしても骨には肉が残りますよね。
それを捨ててしまうのはもったいないし、「肉は骨のまわりが一番美味」という話もあります。
奥深い食文化を誇る中国の方々が、この骨を放っておくわけがない。
そこで、醤油をベースに各種のスパイスを加えたタレで、そのままグツグツと煮込んでしまったワイルドな一品が、この東北醤大骨なのです。

ちなみに、背景に写り込んでいるのは、一緒にやってくる使い捨てのビニール手袋(100枚入り)。
食べる時はこれを両手に付け、そのまま手掴みでいくという方法が推奨されているのです。
どこまでもワイルド~!
「うっ……重すぎて手が……限界……」
「うっ……重すぎて手が……限界……」
という演技を試みた僕ですが、中途半端なニヤケ面で全く伝わりませんね。
慣れないことをするもんじゃないっす。

それはともかく、醤大骨のスケール感はこの写真からでも伝わりますよね!?
骨付き肉ならぬ「肉付き骨」とはいえ、けっこう食べるとこあるんすわ
骨付き肉ならぬ「肉付き骨」とはいえ、けっこう食べるとこあるんすわ
それじゃあさっそく……
「いただきま~す!」
「いただきま~す!」
ガブッ……モグモグモグ……
「そうそうこれこれ」
「そうそうこれこれ」
バカ舌の僕には複雑すぎてはっきりとはわからないですが、多数のスパイスのハーモニーを感じる、深みのある味わい。
効いてるとグッと本場感が増す、八角の香りなんかもほのかに感じます。
だからといってものすごく刺激が強いというわけではなく、ベースの醤油味が大変優しいので、飽きずにいくらでも食べられる。
これさえほじくっていれば、永遠にビールが飲めてしまうこと間違いなしですね!


同行してくれた編集部の古賀さんにも食べてもらいましょう。
古賀さんは手で丁寧に肉を剥がしてから食べる派と判明
古賀さんは手で丁寧に肉を剥がしてから食べる派と判明
ここ、性格が出るところです。
「どれどれ……」
「どれどれ……」
「うまっっっ!」
「うまっっっ!」
気に入ってもらえたようで一安心。


その後は、無心でほじくる、食べる、ほじくる、食べるの繰り返し。
やっつけてもやっつけても
やっつけてもやっつけても
まだまだある骨付き肉
まだまだある骨付き肉
食べ終わるまではほぼ無言。
カニと全く同じパターン。
食べ終わって骨の皿に目をやると、そこには謎のオブジェが
食べ終わって骨の皿に目をやると、そこには謎のオブジェが
ふ~、今日も美味しかった。
ごちそうさまでした!

以上、池袋永利の東北醤大骨でした。


あ、それで、本筋からはそれるんですが、ここに来ると僕が毎回必ず頼んでしまうメニューが他にもあって、せっかくなのでそちらも紹介させてください。
ゴロゴロげんこつ豚肉の酢豚(1,100円)
ゴロゴロげんこつ豚肉の酢豚(1,100円)
黒酢の深みが食欲をそそる、大人のげんこつほどもある豚肉塊!
少しのジャガイモの他、具は豚肉のみという潔さも最高です。
これがま~、バカでっかいのにトロトロのホロホロで最高なんすわ。
もしお店に行かれる際は、こっちもぜひ試してみてくださいね。
この骨と肉、元はひとつだったのかもな……
この骨と肉、元はひとつだったのかもな……
どこまでも日本人に媚びないスタンス
どこまでも日本人に媚びないスタンス

他にもあるよ、食べられるお店

ところで今回ご紹介した、醤大骨という料理。
呼び名はけっこうバラバラなんですが、他にも出しているお店があります。
冒頭の風景写真に写り込んでいた「知音食堂」や「楽楽屋」にもあって、どちらも素敵なお店ですし、あちこちで食べ比べしてみるのも楽しいかもしれませんね!

ちなみに、僕の地元の駅、石神井公園で、ものすごくよく利用している「玉仙楼」という中華屋さんにも、この背骨の煮込みはあります。
玉仙楼では「風味スペアリブ」という洒落た名前
玉仙楼では「風味スペアリブ」という洒落た名前
僕は、風味スペアリブの下にある「ビールセットA」で始めることが多いんですが、これ、ジョッキの生ビールに、
一盛りの背骨煮込み
一盛りの背骨煮込み
そして、
巨大でジューシーな棒餃子3本
巨大でジューシーな棒餃子3本
がセットで700円という、素晴らしくお得なメニュー!

ていうかここ玉仙楼は、
150円の「ピリ辛もやし」
150円の「ピリ辛もやし」
で3杯は酒が飲めてしまったり、
210円の「唐揚げ」
210円の「唐揚げ」
が、
なぜかメニュー写真の倍以上の量出てきたり
なぜかメニュー写真の倍以上の量出てきたり
と、いろいろととんでもない名店なので、ま~機会があればお立ち寄りください!

中華料理特有の、骨に残った豚肉をそのまま煮るという文化。
食材を無駄にしない姿勢も見習いたいですが、何よりめちゃくちゃ美味しいので、ぜひ一度味わってみてほしいです。
「池袋は遠いな~」という方も、本場の方がやっている中華料理屋さんならば出している可能性は全然あるので、お住まいの近くで探してみては~。
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