特集 2017年5月10日

麻婆豆腐に4種類のスパイスをまぶすとカレーになる

化けます
化けます
今さら何を言うなのだけれども、カレーのにおいって強すぎないだろうか。

そんなカレーだが、同じくらい強そうな四川風麻婆豆腐にもあっさり勝利してしまった。麻婆豆腐に、ほんの出来心でさささっとカレー用スパイスをまぶしてみたら、あっという間にインド風カレーに変身したのだ。

このささやかな発見を、壮大なユーラシア大陸の大地(一部)に照らし合わせながらお伝えしたいと思う。
1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

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カレーのにおいは強い

会社に勤めていたころ、カレーチェーン店「カレーの王様」で昼ごはんを食べることばかりだった。そしてそれは、言葉では伝えていないのに周囲にすっかりバレてしまっていた。
においで
においで
街を歩いていたら、カレーっぽいスパイスのにおいがふわっとにおってきたこともあった。その先には、インド人っぽい人たちが談笑していた。
こういう話、噂には聞いていた気がするが本当にそうだった
こういう話、噂には聞いていた気がするが本当にそうだった
カレーのにおいは強い。まちがいない。だけど、カレー以外にも強いにおいを放つ食べものはある。
中国・重慶市では、唐辛子と花椒の入り交じった麻辣のにおいが充満していた
中国・重慶市では、唐辛子と花椒の入り交じった麻辣のにおいが充満していた
ちなみに、そんな中国の代表的食べ物・麻婆豆腐と、カレーが融合した食べ物をこの前食べたのだが……(この記事で)
ちなみに、そんな中国の代表的食べ物・麻婆豆腐と、カレーが融合した食べ物をこの前食べたのだが……(この記事で
この麻婆豆腐は甘くて、においもほとんどなかった。もうちょっと本気のヒリヒリ四川風麻婆豆腐とカレーをかけあわせてみたら、どうなるのだろう。
そう思ったので本気の麻婆豆腐づくりの材料を招集。下、右から数えて3つがとくに気合いを入れた部分
そう思ったので本気の麻婆豆腐づくりの材料を招集。下、右から数えて3つがとくに気合いを入れた部分
ちなみに、池袋北口近くの中国食材のお店に行ったら、
ちなみに、池袋北口近くの中国食材のお店に行ったら、
レジのおねえさんはオール中国語で話しかけてくれた。異国情緒
レジのおねえさんはオール中国語で話しかけてくれた。異国情緒
ふだん簡単な料理ばかりしているので、複数の材料が混ざっていく行程を見守るだけでも肩に力はいる
ふだん簡単な料理ばかりしているので、複数の材料が混ざっていく行程を見守るだけでも肩に力はいる
染まってくれ!
染まってくれ!
ネギは多めがいい
ネギは多めがいい
できた
できた
この時点ですでに達成感があふれて、布団に横になりたいと思った。GW中日の昼上がりである。しかし、旅路はぜんぜん終わってない。麻婆豆腐とカレー、どちらがどのくらい強いのかを確かめなくては。

ここからは、カレーのスパイスを投入して実験をすすめます。

選手はこちらです

友人に聞いたり、ググったり、読書したりして、ずぶの素人なりに調べたのだが、どうやらカレーに必須なスパイスはまず、以下の3つらしい。

いや、スパイスはもっと沢山存在しているのだけど、まずは脳の処理能力が追いつく規模からはじめてみたい。
コリアンダーの別名はパクチーなはずだが、とくにパクチーの香りはしない。からだの不調とかに効きそうな草っぽいにおいがする。味は草っぽい
コリアンダーの別名はパクチーなはずだが、とくにパクチーの香りはしない。からだの不調とかに効きそうな草っぽいにおいがする。味は草っぽい
色はまんまカレーだが、かぐと薬のようなにおいがする。別名ウコン、なるほど頷くしかないじゃないか!というにおい。強い味はしない
色はまんまカレーだが、かぐと薬のようなにおいがする。別名ウコン、なるほど頷くしかないじゃないか!というにおい。強い味はしない
唐辛子っぽい香りがする。かぎすぎると鼻の粘膜がひりひりしそうでこわい。おそろしい粉だ。味はとにかく辛い、辛い以外の感想はない
唐辛子っぽい香りがする。かぎすぎると鼻の粘膜がひりひりしそうでこわい。おそろしい粉だ。味はとにかく辛い、辛い以外の感想はない
この3つ、単独のにおいでは全然カレーっぽさを感じない。味もだ。でも、そもそもスパイスって、味をつけるためのものではないんだそうだ。

香りと辛みと色をつけるのがスパイス。味を引き出すことはあっても、味そのものをつけるわけではない、と。

まじか!そこ、全然ちゃんとわかってなかったすみません!
色、香り、辛み。しっかり役割分担がされているし明記されてる
色、香り、辛み。しっかり役割分担がされているし明記されてる
諸説あるが、こんな配分で入れるといいらしい
諸説あるが、こんな配分で入れるといいらしい
さらに。
これもやっぱ入れた方がいいんじゃないか?とクミンシードを加算
これもやっぱ入れた方がいいんじゃないか?とクミンシードを加算
クミンシードは油で煎ってから入れる。他の3つのスパイスに比べて、においだけで既にカレーを彷彿とさせる。頼もしい。
4選手の集合写真
4選手の集合写真
量の設定はこんなかんじ。コリアンダー小さじ3に対して、チリとターメリックは小さじ2分の1。クミンシードはひとつまみくらい
量の設定はこんなかんじ。コリアンダー小さじ3に対して、チリとターメリックは小さじ2分の1。クミンシードはひとつまみくらい
鼻息で粉をまき散らさぬよう、粛々と
鼻息で粉をまき散らさぬよう、粛々と
ターメリック効果で、色合いがカレーっぽい
ターメリック効果で、色合いがカレーっぽい
正直なところ、まあそんな簡単には変わらんのだろうと思っていた。しかし。

食べてみたところ、けっこうカレーに近い。
いや、近いというよりももう、カレーの境界線の上に足をのせている。
麻婆=中国、カレー=インドとするなら、国境付近にいる
麻婆=中国、カレー=インドとするなら、国境付近にいる
いや、国境を超えてる。入国審査のゲートあたりには進んでいるな
いや、国境を超えてる。入国審査のゲートあたりには進んでいるな
自分がなんでこの食べものに「カレー」を感じているのか。ちょっと頭をひねりたくなる部分もあるのだけど、まずはにおいがカレー。あと、口をすぎていったあとの、体の中での反応がカレー。結果、「これ、かなりカレーっぽい!」と脳内でジャッジが下るかんじだ。

適当に振ったつもりのバッドで、思わぬヒットを打ってしまった。もっといけるんじゃないだろうか。
調子にのってスパイスを2倍配合してみた
調子にのってスパイスを2倍配合してみた
すっかりカレー色に染まってしまった感
すっかりカレー色に染まってしまった感
口にしてみたところ、ますますもうすっかり「カレー」である。麻婆豆腐というより、豆腐カレーだ。
さっきの地図の続きで例えるなら、インド国内を周遊しているかんじ
さっきの地図の続きで例えるなら、インド国内を周遊しているかんじ
もう自分が四川風麻婆豆腐だなんて忘れて、観光地でピースしていると思う
もう自分が四川風麻婆豆腐だなんて忘れて、観光地でピースしていると思う
ダブルピースかもしれない
ダブルピースかもしれない
ところで、クミンシードだけではどうなんだろうか。気になったので試してみた
ところで、クミンシードだけではどうなんだろうか。気になったので試してみた
混ぜすぎたかもしれない
混ぜすぎたかもしれない
クミンシードだけでは、どんなにいっぱい入れても海を渡れなかった。カレーぽさを感じなくはないけど、根底は麻婆
クミンシードだけでは、どんなにいっぱい入れても海を渡れなかった。カレーぽさを感じなくはないけど、根底は麻婆
中国(麻婆)にいながら、インド(カレー)コスプレをしているような感じだ!

ルーの場合はどうなるのか

スパイスじゃなくて、カレーのルーをごそっと入れてみたらどうなるのだろう。
右上にモヤがかかっていてちょっと神々しい写真になった(たぶんレンズに指紋ついていたんだと思う)
右上にモヤがかかっていてちょっと神々しい写真になった(たぶんレンズに指紋ついていたんだと思う)
おたま2杯分の麻婆豆腐に対して、ルーをひとかけ入れる
おたま2杯分の麻婆豆腐に対して、ルーをひとかけ入れる
フォトショップで加工して美味しそうな色合いを出してみました!みたいな色になった
フォトショップで加工して美味しそうな色合いを出してみました!みたいな色になった
色は良いのだけど、味がけっこう迷走している。
まずくはないけど、どう定義していいのか見当がつかないのだ
まずくはないけど、どう定義していいのか見当がつかないのだ
どの国由来の味なんだか、全然わからん
どの国由来の味なんだか、全然わからん
これでひとつわかった。四川風麻婆豆腐をカレーにしたい場合は、ルーよりスパイスのほうが、断然がっちり決まる。スパイス圧勝だ。

他の食べものでもためしてみたい

当初は麻婆豆腐の実験だけの予定だったんだが、やっているうちに他も試してみたくなってしまったので、やってみたい。

まずサラダチキン。タンドリーチキンが美味しいので、サラダチキンもどうにかなるんじゃないかなーと雑に予測している。
ハーブ味をつかってみます
ハーブ味をつかってみます
スパイスが絡みやすいように切り刻んだチキンに、粉をふるう
スパイスが絡みやすいように切り刻んだチキンに、粉をふるう
味がちょっと濃いめになっちゃったような気もしないでもないけど美味い
味がちょっと濃いめになっちゃったような気もしないでもないけど美味い
サラダチキンがかっこつけているみたいな味がしました
サラダチキンがかっこつけているみたいな味がしました
つぎにヨーグルト。カレーとヨーグルトの親和性は高いので、どうにかなるんじゃないだろうか。いつだって予測は雑だ。食べるの自分だから。
プレーンのブルガリアヨーグルトにハチミツをかけてるところに振る
プレーンのブルガリアヨーグルトにハチミツをかけてるところに振る
見た目だけだと、判別ができない食べものが誕生した
見た目だけだと、判別ができない食べものが誕生した
基本、ふだんどおりのヨーグルトに近いんだけど、なんだか妙ににおうね……っていう味がしました
基本、ふだんどおりのヨーグルトに近いんだけど、なんだか妙ににおうね……っていう味がしました
これもためしたい!カレーヌードルという商品あるけど、どのくらいちがうんだろうか
これもためしたい!カレーヌードルという商品あるけど、どのくらいちがうんだろうか
カップヌードルの乾いたエビとカレーが、夢の競演をはたす!
カップヌードルの乾いたエビとカレーが、夢の競演をはたす!
見た目は大差ない。においもそんなにしない
見た目は大差ない。においもそんなにしない
でも、味はちがう。なにこれ、スパイスが本気出してきてる……!
でも、味はちがう。なにこれ、スパイスが本気出してきてる……!
なにしろカレーヌードルとは、カレーの種別がちがった。比べながら食べると、カレーヌードルのほうが敷居が低いのだ。「カレーの概念をわかりやすくまとめました!」っていうかんじの味。

対して、スパイスを調合したカップヌードルは、本気でぶつからないとひっくり返りそうな本気を感じる。カレーヌードルが角丸の四角だとすると、スパイス調合したカップヌードルは、鋭角ががっちがちの三角形みたいだ。
もしくは、こんな例えが出来るかもしれない
もしくは、こんな例えが出来るかもしれない
ちなみにどっちも美味い。「カレー味のカップ麺が大好きなんだが、いつも同じものばっかり食べてると飽きちゃうかも」っていう人がいたら、おすすめしたい。

スパイスが面白くて、よくわからなくなった

まだ相変わらず、スパイスのことがよくわかっていない。教えてもらったとおりに混ぜたらちゃんとカレー味になったが、原理が見えないのだ。一体どうしたら、4種類の組み合わせがこの味になるんだ。全然わからない。試してみてますます、わからなくなった。

カレーってなんなんだろう。追っても追っても、答えが増えていくばかりになりそうだ。だから、カレーづくりにハマる人は多いのだろうか。


これを機に、わたしもスパイスからのカレーづくりにもっと挑戦してみたいという気持ちはある。でも、めんどくさがりなので複雑な料理が苦手だ。ここ(あとがき)で言った限りになってしまいそうで不安だ。
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