美味しい店の隣も美味しい説
以前この企画を
東京の神保町でやったことがある。
神保町というまちは古書店が有名なだけでなく、食べ物屋さんの激戦区だ。であれば、行列のできる店のお隣もおいしいお店に違いない、という発想で始まった企画である。
今回は第二弾として大阪でやってみることに。しかし問題は土地勘が全くないこと。どこに行けばいいのだ。
立派な大阪駅。大阪をじっくり歩くのは初めてでドキドキする。いきなりどつかれたりしない?
大阪駅のお隣に行列の店が集中とのうわさ
右も左もわからず泣きそうになったので大阪在住のライター仲間、小堀さんに聞いてみることに。すると、大阪駅の隣にある福島駅周辺に多いらしいということがわかった。
福島駅前。大阪駅や梅田駅からひと駅なのに一気に親しみやすい雰囲気に。
情報を元にやってきたのは「中国菜オイル」という店。週末の閑静な住宅街に突如現れた行列!
さっそくいたいた! 思わず笑ってしまう程の行列をなしていたのは、四川料理が食べられるというお店。ついたのがちょうどお昼時とあり長蛇である。3~40人はいるだろうか。
会社で仲のいい大阪出身のおっちゃんが、「大阪人は並ばへん! 並ぶくらいなら別のとこ行く」と言っていたので少し心配してたのだけど、そんなことなかった。
マンションの一階にズラリ。
先頭の人に聞いてみるとなんと2時間待ちだそうだ。ちなみにお目当ては麻婆豆腐らしい。
食べたくなるよね…
2時間も待てる料理が気になる。なかなか来れない地だからなおさらだ。でも2時間もあったら映画一本見れるぞ。ちょっとしたバイトなら2000円ほど稼げるんだぞ。
自分の食欲を紛らわすかのようにそう言い聞かせながらお隣を調査した。が、どちらも住宅地で、食べ物にはありつけなかった。
つぎにやってきたのはラーメン人生JETというお店。20人くらいか。
先に食券を買ってから並ぶそうだ。1時間待ち。
福島駅周辺でラーメンといえばここを思い浮かぶ人が多いらしい。券売機をみたところ、土日限定のメニューがあったのでさらに並んでいるのかもしれない。
隣は脱毛サロンや夜だけ開くような食事処。もう片側の隣は住宅、奥は駐車場だった。
ここでも食べる事は叶わず、である。気合入れて朝から何も食べてないので猛烈にお腹がすいてきた。なんでもいいから早く食べたい。
今度は駅の反対側の、人通りの多い方へ移動。こちらもラーメン屋に並ぶ行列を発見した。
「燃えよ麺助」というラーメン屋の行列。
表の通りにも並んでいた。
が、お隣はカメラ屋さんで、もう反対側はお茶やコーヒーを販売するお店。しかもシャッターが閉まっていた。
神保町にも負けないくらい飲食店が豊富なエリアなのだけど、隣接してるかというと別のようである。
こちらは有名なパン屋さん「パネ・ポルチーニ」。店内が狭いため、入れるのは5人まで。時間問わず夜も並ぶという。
パン屋さんに行列ができているのを初めてみた。回転は悪くなさそうなのでつい並びたくなったのだが、グッとこらえてお隣を拝見。
ついに発見! 「浪速育 松月(なにわそだち しょうげつ)」
すると左隣に…あった、和洋菓子店だ! 昭和28年創業の老舗である。
大阪に3店舗かまえるという松月さん。伊丹空港にもお店が入っているそうだ。
ロールケーキや虎の縞模様が入った「トラ焼」が名物。
松月さんにはケーキから和菓子まで色々と並んでいた。さすが大阪、「虎」を意識した商品がいくつかあって楽しい。大阪土産を買うのにピッタリなお店である。
で、私が買ってみたのは「とら吉クリームサンド」。その食感が意外で二度見した。
クリスピーでうまい!
トラ焼きも気になったのだけど、きなこ味と黒ゴマのクリームが挟まった最中に惹かれたのでそちらをいただいた。
これが意外な歯ごたえ。コーンフレークが混ざっているのか、ジャリジャリっと鳴るのだ。味は上品でいかにも「和」なんだけど食感が「洋」だ。クリスピー好きにはたまらないお菓子だった。こりゃいいぞ!
大半が居酒屋な福島のお店
しかしここからは苦戦した。福島駅周辺には確かに飲食店が多いが居酒屋さんがほとんどのようなのだ。
これが平日なら近くの会社の人向けにランチをやってるお店もあるかもしれないけど、訪れたのは土曜の昼。しばらくさまよってみるも、開いているお店はなかなかない。必然的に行列も見当たらない。
飲み屋さんが多くて夜が楽しそう。
駅から少し離れた所には民家の間に個性的なお店が挟まっているエリアも。でも行列は無し。
たまに開いているお店を発見するたび、お腹が減ってくる。なぜ私は松月さんでトラ焼きも買わなかったのか…。お腹のグーという音が、自分への怒りを表しているかのようだ。お腹がご立腹なのである。
そんなとき、小堀さんが「人気店で全然入れない」と教えてくれていたラーメン屋に到着した。昼の時間帯では最後の頼みの綱である。
あれ? いつも行列ができているという「三く」だが並んでないぞ…。
もう本当に、マックスにお腹が減った時に、人気ラーメン店「三く」に入ることができた。…いやいやいや! 企画からそれるから入るつもりはなかったのだけど、外観を撮影してたら親切な店員さんが出迎えてくれたのだ。
頼んじゃった…だってチャンスだったんだもの。人気のつけ麺。
我慢できずに「三く」に入店
店内に3人ほど並んでいたので、それを理由にしてやんわり断ったのだけど、すぐ店を出そうな客も多くて「ちょっと待てば食べれますよ」と店員さんが引き留める。
そこまで言われたら! である。観念して椅子に座った。断れないこの性格。いやー、つらい。
麺は3種。せっかくなので「マニア必見の全粒粉SP」をオーダー。全粒粉入りの麺だとゆで時間になんと15分かかる。けど、そういうのは待てる。
味がよくしみこんだ柔らかい焼豚がゴロゴロ入っているツユは、梅の香りがほんのり漂いとてもおいしかった。うどんより弾力がある麺も食べごたえあり。
店員さんが必ず外まで「おおきに!」とお見送りしてくれる所もうれしい。
麺が茹で上がるのを待っている間に行列ができていた。入れたのが奇跡!
ちなみに隣は駐車場と居酒屋さんだった。タイミングがちょっとでもズレて人が並んでいたら、私はここで食べる事はなかっただろう。そうと思うと妙なご縁を感じる。
人気のおでん屋「花くじら」の隣は…出た、ご縁!
夜の名店「花くじら」。小雨が降りだしてもめげずに並ぶ人たち。
すぐ近くにある別店舗も並んでいる。
時間をおいて、夜またやってきた。福島駅周辺の夜は想像通りとても賑やか。その中でも特に人気なのは「花くじら」というおでん屋さんだという。
そしてその隣には、落ち着いた装いの蕎麦・うどん屋さんがあった。
花くじら本店のお隣は、蕎麦とうどんが食べられる「讃く」。
お店に入って店員さんに注文の仕方を教わっていると「全粒粉をつかったうどんは15分かかります」とデジャヴのような言葉が発せられた。
「全粒粉入り、15分」が福島で流行ってるのか、と思ったら…
あれ? このハッピ、昼に食べたラーメン屋で見たような…。店員さん「一緒の店ですよ!」
「三く」と「讃く」どちらも「さんく」。気づかなかったけど系列店だった。近いといえば近いけど150メートルくらい離れているのに昼食べた店の系列に入ることになるとは驚いた。
大阪といえばうどんのイメージがあるので迷ったけど、昼にうどんばりの太麺をいただいたので、今回はお蕎麦をチョイス。
海苔と大根おろしを贅沢につかった「かみなり蕎麦」。
昼にたべた極太麺とは違い、細麺のお蕎麦は歯切れが良い。東京よりも色が薄く下まで覗けるツユに関西らしさを感じる。サッパリとして、一杯飲んだあとの締めにちょうど良さそうである。
ちなみに、私は見逃してしまったが大阪名物の「肉すい」も食べられるようなので、一緒に頼むのもいいかも。
さて、次ページでは圧倒の「ミナミ」へ。
人であふれるミナミ。行列がたくさん!
翌日、心斎橋・道頓堀・なんば周辺のいわゆる「ミナミ」と呼ばれるエリアにやってきた。昨日より人が増しに増してなにこの熱気、すごいんですけど!
いや、TVとかネットとかでなんとなく雰囲気は知ってたけど、週末だからか浅草の三社祭かのように人であふれかえっている。これが大阪か…圧倒された。
な、なんじゃこりゃー! お祭りみたいだ。すでに大行列といって良い。
ネット情報を頼りつつ、お店の行列を探す。しかしこの繁華街、広い。それに店がぎっしり詰まってる。浅草、渋谷、新宿、東京駅あたりがギュッと集まっちゃったかのようだ。ほんとにすごいなあ。。
東京生まれ(下町だけど)なのにすっかりおのぼりさん状態だ。
で、まず向かったのは、なんば駅近くの「DINING あじと」。人がミルフィーユ状態。
炭焼き炙り肉重が評判の、安くておいしい洋食屋さんのようだ。しかしこの行列よ…みんな忍耐力あるなあ。
さて隣の店は…こちらも行列のできるうどん屋さんだった。
隣も行列のうどん屋さん。
さらに奥には、もうひとつうどん屋さんの行列。行列密集地帯だ。すごい!
行列密集地帯に挟まっているお店が角っこにあるので覗いてみることに。そこは食べ物やさんではなく、お皿やグラスなどの食器や調理器具を扱うお店だった。
実はこの辺りは、東京でいうとかっぱ橋道具街のようなエリア。こういったお店や食品サンプルとか店の看板や制服を扱うお店が多いのだ。
行列のできるうどん屋の隣「ANNON」さん。眺めていると、飲食店を営んでるらしき人が皿を大量に買っていった。
せっかくなのでお土産に器を買う事にした。こういう風に飲食店でないお店に寄るのもアリだな。
ラップいらずの蓋つき容器を買った。かわいい。
行列多すぎ!
引き続きたくさんの行列を見た。だが、隣が居酒屋だったりシャッター降りてたり、予約で一杯で入れなかったり、等々でちょうどいい「隣の店」がなかった。
たこ焼き屋さんはやっぱり人気。右下は「法善寺横丁」という小道でここも行列密集地。
他、ラーメン屋さん、オムライス屋さん、寿司屋さんなど。
中には開店前なのに並んでいるところもある。お好み焼き屋の福太郎。
そんな中、見つけた行列は「mog」というスイーツ屋さん。ふんわりと焼き上げたパンケーキが名物のようだ。
なんばマルイの目の前。かわいらしいお店だ。
ああ、これは並ぶ気持ちわかる。
隣は落ち着く高級喫茶「CAFE英國屋(なんば本社)」
お隣についに食事ができるところを発見! 昭和36年に創業した老舗で、大阪を拠点に名古屋・神戸・京都・東京など40店舗以上あるカフェだそうだ。
そのうち約30店舗が大阪にあるみたいだから、大阪に住んでいる人にはお馴染みかもしれない。
ヨーロピアンな外観。
こちらの名物は、焼きたてワッフルと欧風カレー。え、カフェでカレー? と意外に思うが、レジの所にレトルトがたくさん売られているのを見ると、人気な様子。
ワッフルも美味しそうなのでどちらにするか悩んだが、「カレーEXPO 2017選出記念」ということでお安くなっていたカレーにした。
焼きカレーセット1000円(フェア中なのでこのお値段だが通常は1300円)。飲み物は単品だと一番高いミックスジュースフロート(700円)をチョイス。セットだとだいぶお得だ。
ウハー、チーズがたっぷり! うーまい!
カレーは甘口でマイルド。ホロホロの柔らかいビーフとチーズが焼けてカリカリとした部分がおいしい。食べてる間からまた食べに来たいなと思わせるほどだ。意外とスッキリな飲み口のミックスジュースもグイグイすすんだ。
ちなみに店内は座り心地のよい椅子。隣との間もほどよく空いていて、ゆっくりと会話を楽しむのにもってこいな空間だった。
つぎにやってきたのは食い倒れ太郎のすぐ近く、「たこ焼き十八番」の行列の左隣。
うどんや蕎麦がメインの「道頓堀 今井本店」。中は4階まであり客席に余裕があった。
白蜜でいただくわらび餅
昭和21年創業の今井さんは上品なダシが人気の老舗店。メニューを見るとうどん推しだし、親子丼も凄くそそられる。しかし残念ながら、カレーを食べた後なのでそんなに食べられない。
そこでお土産にも人気という「わらび餅」をいただくことに。
白蜜でいただく。東京では黒蜜で食べるのがほとんどなのでちょっと新鮮!
メニューには3つで540円とあったけど、店内で食べるときはひとつからでもOKとのことなので2つにした。
甘さ控えめの白蜜ときなこがたっぷりかかる。
すべすべモッチリで、こんなお肌になりたい、といった食感。
ああ、すごく落ち着く。外の賑やかさに疲れたらここに入るのもいいかも。食後にちょうど良いスイーツだった。
長蛇の列ができるお好み焼き屋の隣は
つぎにやってきたのは「味乃家」さん。まさに長い蛇がうねるかのように並んでいた。
並びますなあ。
右隣は夜だけやってる居酒屋さん。左隣の雑居ビルもそうかな、とジックリ見てみると…1階に占い屋さんがある!
占い屋さんに入ってみる
こういう機会がないと入ることがない。試しに占ってもらうことにした。一人旅なので、話し相手に飢えていたのもある。
占い「ルビーの館」。写真が並んでて、現在お店にいる占い師さんから指名する。
店に入ると鑑定用の券売機が。一番安い10分1050円というのにした。
ミューズ麻榊さんが出迎えてくれた。キッチリとタイマーをセットし、誕生日を元に占い開始。
そもそもの私の性格を伝えてくれたあと、仕事や恋愛、お金、家族などについて軽快に喋ってくれる。ああ、本場の関西弁だ、とニヤニヤしながら相槌を打った。
「あなた束縛が嫌いで結婚する気ないでしょ? このままだと50過ぎになるよ。」とのこと。ウウ…
10分はあっという間だったけど、たくさん占ってくれた。特に「お金に困るような人じゃない」というのは強く信じて生きていこうとおもう。あと来年社会的地位が変わるんですって。どうなるか楽しみだ。
時間を過ぎたあとも大阪を周った感想など余計なおしゃべりにもつきあってくれて、最後に「がんばってね!」と送り出してくれた。
いやー、いつもの旅なら占いをするという発想にならないけど、地元の人と話せるきっかけになったし、なかなか良い思い出になった。
上機嫌で最後となる「隣のお店」に向かった。
やってきたのは、お好み焼き「美津の」の行列のお隣
たこ焼きやの「たこ昌」だ。たこ焼き食べたかったからうれしい!
たこ昌さんは大阪に5店舗を構えている、たこ焼きと明石焼きのお店だ。興味深いのが店舗のなかに「たこ焼き懐石」が楽しめる店があったり、贈答用に6種類の味のたこ焼きセットがあったりする。
特に、お持ち帰りの冷凍たこ焼きは、この後お土産やさんや駅・空港などにも置かれているのを見たから、大阪では有名なのだろう。そんなお店に入れるなんて幸せである。
ほろ酔いセット930円。二種類のたこ焼きと、たこのから揚げせんべいと生ビール。
このトロトロが美味しいんだよね!
冷凍でも人気なのだから、焼きたてのたこ焼きは間違いない。期待どおりのトロトロ感とタコの大きさ。ハフハフ言いながらビールを流し込む。最高だ!
周りに持ち帰り専門のたこ焼き屋が多いなか、店内でゆっくり食べられるのもうれしい。
はじめて食べた「ねぎたこ焼き」もおいしい。ねぎが多めに乗ってるだけかと思ったら中にビッシリ。
ああー、いいよいいよ、大阪大好き。
酔った勢いで一人ニヤけてしまうのだった。
「隣の店」でも充分感じた大阪色
住宅街の福島と、観光地のミナミ。両方まるで違うまちを訪れることができて、初めての大阪にしては堪能できたとおもう。
それに今回は、飲食店以外のお店をのぞけたのも良かった。お陰で食器などの道具街があることや、私はお金に困らない人生であることを知ることができたのだ。
ひとつ残念なのは大阪の肝であるお笑いを見る機会がなかったこと。劇場はいくつか見たのだけど隣ではなかったのだ。また来よう。