映画PRのためのコラボ商品には慣れてる私たち
映画の公開にあわせPRとしてメーカーものの食品や日用品がパッケージに映画のキャラクターをプリントしたコラボ商品を発売することは珍しいことではない。
「スターウォーズ」の新作公開にあわせキャラクターの柄がプリントされた箱ティッシュがドラッグストアに並んでいたのを見たときはその関連性のなさにさすがに「ここまでやんのか…」とひげをなぜたものだがそういう様相にもすっかり慣れた。
ランチパックが映画「美女と野獣」とコラボするというのも大きな新奇性はないはずなのだ。
ランチパック「チーズ&ピザソース」映画「美女と野獣」コラボ
ランチパック「てりやきチキン&たまご」映画「美女と野獣」コラボ
なんだろう、これは
新奇性はないはずだ。そう心で断じながらも、なんだろう、これはという思いがついわきあがる。
まずは、そうだ。ランチパックという手ごろないつもの菓子パンと、ロマンティックな映画の世界観のマッチングがおかしい。
「どういう企画会議をへてこういう商品ができるんだろう」というのは大人の話題に良く出るものだが、まさにこれのことだ。
誤解しないでほしい。批判するつもりは一切ない。
ランチパックは大好きだし、「美女と野獣」は公開したら観にいくつもりでいた。エマ・ワトソンがぼんやりしてたらなんともう26歳なのである。観たいだろうそんなもん。
だから「なんだろう、これは」というのは批判性の一切ない、ほとんど無害な驚きである。
裏表で美女と野獣がプリントされている…
「&」がつなぐランチパックと美女と野獣
状況について一から考えてみよう。
ランチパックと「美女と野獣」は一切関係ないと思う。
「美女と野獣」の本編で登場人物がランチパックを食べているシーンは出てこないだろうし(観ていないので確かなことはいえないがほぼ間違いなく)、愛のついでにてりやきチキンとたまごのマッチングについて語るくだりもおそらくない。
唯一もしかしてもしかするとチーズとピザソース……まではいかなくとも、チーズくらいは出てくるかもしれないが、だからランチパックとコラボを! というのはちょっと発想がポジティブすぎるだろう。
とすると、この場合は「スターウォーズ」が箱ティッシュとなんの関係もなくコラボするのと状況としては同じだ。
さきほど、ランチパックの生活感と映画のロマンティックな世界観の違和について述べたがそれもスターウォーズ箱ティッシュ案件と見比べれば事態としては理解可能である。
ここまではオーケーだ。異存ない。
しかし唯一つながってしまった部分がある。みなさんお気づきだろう。
「チーズ&ピザソース」と「Beauty and the Beast」である。
「&」がうっかり両者を橋渡ししてしまっているではないか。
故意に!? 偶然!?
故意であるとしたらあまりにもスリリングだ。
「美女と野獣」にならべるのが「チーズとピザソース」もしくは「てりやきチキンとたまご」でいいのか。チーズが美女でピザソースが野獣であり、てりやきチキンが美女で、たまごが野獣だというのだ。
どうしよう、ハラハラする。
ハラハラしたあと「なんなのかよ」という思いもまたわきあがる。
映画の予告編ではきっといい声で誰かが「Beauty and the Beast」とタイトルを読み上げる、ランチパックの「美女と野獣」コラボ商品を手にしてしまった今、私には「Beauty and the Beast」という荘厳なナレーションと同じ抑揚と声でこう聞こえる。
「チーズ&ピザソース」「てりやきチキン&たまご」。
なんなのかよ…。
やはりそう小さく(あくまで小さく)叫ばずにはいられない。
封を開けました。こちらが「美女と野獣」の「チーズ&ピザソース」
そしてこちらが「美女と野獣」の「てりやきチキン&たまご」となっております
そりゃあうまいよ普通に
自信のない主張である。小さく小さく叫ぶというのは大声で叫ぶよりも疲れる。
疲れたのでランチパックは食べた。
てりやきチキン&たまごは、しっかり味のチキンにマイルドなたまごがやさしい
焼くとパンのさくさく感が軽く中の重さとの対比が良い
チーズ&ピザソースは、はっと気づけばそれは具のないピザなのではないかということに気づき大きな虚無を感じるというチャレンジングな一品
だがピザソースにパンチがあって満足だ
普通にうまい。ヤマザキさんの余裕の仕事ぶりだった。
そしてはぎ捨てられた袋を見ると「美女と野獣」の柄がプリントされている。
これが2017年の我々の日常である。
ごちそうさまでしたという感情と「美女と野獣」が一切クロスせずやはり困惑する
関連性のないコラボ商品警察出動
その商品自体とは一切関連性のない、映画PRのためのコラボ商品にはもう慣れたと書いた。
しかし今回のランチパックの「美女と野獣」コラボを目の当たりにして、いやこの日常の変さに慣れてはいけないのではないかという思いを新たにした。
我々は誇り高き消費者として、小さな違和感、違和感がネガティブ要素の一切ないポジティブな違和感だとしても積極的に笛を吹いていかねばならない。
なんなのこれ!