特集 2017年4月5日

出勤前に秩父旅行

!
誰もが一度は思ったことがあるであろう「会社と逆方向の電車に乗って、どこか遠くへ行ってしまいたい……」を実行してみました。
ただし、計画的に。
この方法を使えば、会社にも遅刻せずにちゃんと行けて、誰にも怒られませんよ。
1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。



仕事と現実逃避を「とんち」で両立

毎朝、仕事をしに会社に行くのが楽しくてしかたがない、という方はとても幸せですね。
だけど世の中そううまくいくことばかりでもなく、「今日もまた憂鬱な時間が始まるのか……」なんて思いつつ、生活や家族のために日々がんばっている方も大勢いらっしゃると思います。

そんな日々の中で、誰もが一度は(もしくは毎日)、「あぁ、今日は会社と逆方向の電車に乗って、どこか遠くへ行ってしまいたい……」なんて考えたことがあるんじゃないでしょうか?

もちろん僕もありまくりなんですが、ふと、ある「とんち」を使えば、「どこか遠くへ」と「会社にも行く」を両立できるのでは? と、チーン! と思いついたのです!
って、ちょっと大げさですが、要するに、「早起きして逆方向の電車で遠くへ行って、間に合う時間にとんぼ帰りして出勤する」という方法。

さっそく実行してきましたのでレポートをどうぞ!

AM 5:00 出発

僕の家の最寄駅は、西武池袋線の「大泉学園」。
職場があるのは同じ沿線の「池袋」。
始業時間は10:00で、池袋駅には9:50くらいに着いていればOK。

ここから自分の行動を逆算していくわけですが、時間がたっぷりあるに越したことはないので、とりあえず下りの始発に乗ってから考えることにしました。
前の日、夜10時くらいに寝れば、4時起きでも6時間は寝られるので、余裕余裕!
3月末、朝5時すぎの空はこんな感じ
3月末、朝5時すぎの空はこんな感じ
5:19の下り始発に乗ります。逆側の「池袋」の文字を恨みがましい目で睨みつけながら
5:19の下り始発に乗ります。逆側の「池袋」の文字を恨みがましい目で睨みつけながら
電車に乗り込んだら、スマホ片手に今日の予定を立てていきましょう。
大泉学園から、西武池袋線~西武秩父線を乗りついで「西武秩父」までは、約1時間半、6:50に着けるようです。
そのさらに奥となると路線が変わり、運行本数も減るようで、ちょっと危険。
よし、今日の目的地は秩父にしよう!
沿線な割に、あんまりちゃんと行ったことないしな~。


ちなみに池袋へ戻るには、鈍行でも間に合うことは間に合うんですが、現地であまり時間に余裕がなくても悲しい。
調べてみると、指定席料700円をプラスすれば、ちょうど良い時間に池袋に着く「ちちぶ18号」という特急列車に乗れるようです。
ちょっと贅沢だけど、たまの旅行だし、着いたらこの切符をまず買っておこうっと。
・立てた予定
5:19「大泉学園」発(普通列車)
5:42「小手指」で「飯能」行きに乗り換え
6:01「飯能」で「西武秩父」行きに乗り換え
6:50「西武秩父」着~自由行動
8:25「西武秩父」発(ちちぶ18号)
9:46「池袋」着~出社
車窓からは燃えるような朝日
車窓からは燃えるような朝日
電車に乗り込み、数駅下っただけでもう押し寄せる旅情。
「朝日ってこんなにきれいだったっけ」としみじみ眺めるのもいつ以来か。
すでにかなり楽しいです。
飯能からは座席が2列前向きシートに
飯能からは座席が2列前向きシートに
完全に旅行
完全に旅行
進めば進むほど乗客は減ってゆき、車内は貸切状態。
これこそが朝の下り電車の醍醐味かもしれませんね。
「東吾野(ひがしあがの)」という駅から見えた売店。こんど行ってみたい!
「東吾野(ひがしあがの)」という駅から見えた売店。こんど行ってみたい!
3分間の停車中、写真を撮りにホームへ降りた「吾野」駅のかわいい駅舎
3分間の停車中、写真を撮りにホームへ降りた「吾野」駅のかわいい駅舎
の奥に……
「武蔵美晴休憩所」なる店が!
「武蔵美晴休憩所」なる店が!
うおー、これはやばい!

写真からは見えない位置に「名代 うどん」とあって、となればビールとワンカップくらいはきっと置いてあることでしょう。
実を言うと僕、こういうちょっと特殊なシチュエーションにある渋いお店を「天国酒場」と呼んで愛でる、重度のマニアなんですよね。
いや~、思いがけず宿題店を増やしてしまった~!(満面の笑み)

「芦ヶ久保」駅付近でまさかの……

すっかり山の中を進む電車の車窓から、遠い山並み、交わる清流、味わい深い民家などを飽きずに眺めつつ、ちょっと長めのトンネルを出た瞬間でした。
目の前に予想だにしていなかった光景が!

それは……
3月末の雪景色!
3月末の雪景色!
自分は一体どこに来てしまったんだ!?
自分は一体どこに来てしまったんだ!?
雪景色は芦ヶ久保近辺だけだったので、地形的なものなのでしょう。
いや~驚いたし、いいもの見れました。

車窓から見えはじめた秩父のシンボル。石灰岩の採掘による棚田状の山肌が特徴的な「武甲山」
車窓から見えはじめた秩父のシンボル。石灰岩の採掘による棚田状の山肌が特徴的な「武甲山」

AM6:50 「西武秩父」着

道中退屈するかと文庫本なども持ってきていたんですが、読む暇もなく秩父に到着してしまいました。
もはやもう帰ってもいいくらい楽しかったけど、せっかくなので秩父の街を散策しましょう!
空気がうまい! 息が白い!
空気がうまい! 息が白い!
ホームからの景色がすごい!
ホームからの景色がすごい!
とんでもないものを開放する祭りだな……
とんでもないものを開放する祭りだな……
観光に許された時間は約1時間半、予定は立てておらず、駅前の案内板を見ると、徒歩で行けそうな距離に「牧水の滝」という滝があるようなので行ってみることに。
秩父の景色、とにかく「武甲山」が効いてる
秩父の景色、とにかく「武甲山」が効いてる
おかげで「すき家」もなんだかかっこいいことに
おかげで「すき家」もなんだかかっこいいことに
良い街並みをしばしゆくと
良い街並みをしばしゆくと
「牧水の滝」
「牧水の滝」
徒歩10分ほどでたどり着いた「牧水の滝」(写真の右はし)は、あんまり見ごたえがあるとかそういうタイプの滝ではありませんでした。



が、
そこから見下ろす秩父の街
そこから見下ろす秩父の街
は美しく、山脈をバックに白梅が映える
ジイさんみたいな写真
ジイさんみたいな写真
も撮れて大満足。
地方あるある「このプルタブ、いつの?」
地方あるある「このプルタブ、いつの?」

AM7:15 朝食を求め街を徘徊、そして出会った2杯のそば

こういうかっこいい建物はいくらでもあって写真を載せ切れません
こういうかっこいい建物はいくらでもあって写真を載せ切れません
あ! あれは僕でも知ってる有名な「珍達そば」だ!
あ! あれは僕でも知ってる有名な「珍達そば」だ!
確か斜め切りのネギたっぷりの中華そばが有名なんですよね。
そういえば、まだ朝ごはんを食べてなかったな~。
が、無論やっているはずもなく
が、無論やっているはずもなく
気づいたら無性にお腹が減ってきました。
なんならコンビニでもいいから、とにかく何か食べられるお店を探そう!
やってない良さそうな店ならいくらでもある
やってない良さそうな店ならいくらでもある
しばらく街を徘徊していると、西武秩父駅から徒歩すぐのところにある、秩父鉄道の「御花畑」駅にたどり着きました。
そこに待っていてくれたのは、救いの女神!
路面の立ち食いそば「秩父そば御花畑駅売店」
路面の立ち食いそば「秩父そば御花畑駅売店」
しかもこんな朝早くから、ばっちり営業中です。
立ち食いとはいえ、まさかご当地のそばを頂けるなんて思ってなかったので大感激!
きのこそば(370円)
きのこそば(370円)
を頂くことに。
地元の名門「せきた食品」の「せきたの特挽地そば」を使用とのこと
地元の名門「せきた食品」の「せきたの特挽地そば」を使用とのこと
数種類のキノコがたっぷりと入り、どれも驚くほど強い旨味。
ツユはダシと醤油の立ったキリリとした味で、その温かさが身体中に染みわたるうまさ。
し、幸せすぎる……
し、幸せすぎる……
ふぅ、なんて贅沢な朝食にありつけてしまったんでしょうか。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
と、お店をあとに駅舎を抜け、逆方向へと歩きはじめると、これまたまさかの!

え!?
え!?
立ち食いそば屋、もう1個あった!
立ち食いそば屋、もう1個あった!
こんなこと、都内でもなかなか珍しいと思うんですが、異なる2軒の立ち食いそば屋さんが駅舎を挟むように存在しています。
振り返ると同じ視界に収まってしまう近さ!
振り返ると同じ視界に収まってしまう近さ!
……食うか、もう一杯。



今、腹八分目くらいの一番ちょうどいい状態だけど、キャパオーバーの無茶な飲食も旅行の醍醐味!

現在時刻は7:45、西武秩父からの電車は8:25発。
8:00にそばを注文すれば間に合うだろうということで、それまでの15分間、少しでもお腹をすかせるために、さらに散歩を続けましょう。
途中で立ち寄り、お参りをした神社で飼われていた、もっふもふのウサギ
途中で立ち寄り、お参りをした神社で飼われていた、もっふもふのウサギ
お茶漬けとホルモンの組み合わせ
お茶漬けとホルモンの組み合わせ
「つまみ」が良い
「つまみ」が良い
御花畑駅周辺は、歴史の古そうな建物もたくさん
御花畑駅周辺は、歴史の古そうな建物もたくさん
2軒続けて謎の店
2軒続けて謎の店
特に強く惹かれたのが、

「パリー」という食堂
「パリー」という食堂
うわ、これはかっこよすぎる! 名前にも親近感。

入り口の佇まい!
入り口の佇まい!
「どこから見ても素晴らしいな~」と、舐めるように眺めまわします
「どこから見ても素晴らしいな~」と、舐めるように眺めまわします
く~……メニューサンプル
く~……メニューサンプル
酒類も、あるな
酒類も、あるな
出前(?)のバイクごしのかっこよさ!
出前(?)のバイクごしのかっこよさ!
あ~興奮した。
次に秩父に来た時は、まずこの「パリー」で昼酒を一杯だな。
よしよし。



そんなことをしてるとすぐに時間となり、もう一軒の立ち食いそば屋「はなゆう」さんで、
とろろそば(400円)
とろろそば(400円)
を。
こちらは先ほどとは対照的な甘めのツユがホッとする味で、椅子席もあり、旅の締めくくりをゆったりと過ごすのに最高のお店でした。

ツルッと平らげてさすがに満腹に。
サービスのほうじ茶で秩父との別れを惜しむ
サービスのほうじ茶で秩父との別れを惜しむ
出ないのかぁ、ちぇっ
出ないのかぁ、ちぇっ

AM8:25 日常の世界へ……

はい、ここで時間となりました。
予約していた特急に乗り、一気に池袋へ移動しましょう。
「ちちぶ18号」
「ちちぶ18号」
あまりにも快適なシート
あまりにも快適なシート
所用時間は1時間20分。
本を読んだり、ちょっとウトウトしたりしているうちに電車は会社のある池袋に着いてしまいました。

自宅の最寄り駅をこういう電車で通過するのも不思議な気分。
うわ~、げ、現実だ!
うわ~、げ、現実だ!
仕事、行くかぁ……
仕事、行くかぁ……

きっと医学的にも良い効果のある出勤前旅行

この日の仕事からの帰り道、「あぁ、この前秩父に行ったのはいつだったかなぁ……」なんて遠い昔のことのように思い返した、出勤前の秩父旅行。
かかった往復の電車賃はわずか2141円(実際はそこから定期の区間分が引かれる)で、1日が2倍になったようなお得感満載だし、きっとこういう刺激は、脳や体にもいいに違いまりません。
僕には詳しいことはわからないので、そういうのの専門の方、研究お願いします!

あ、心配していた日中の眠気ですが、やはりものすごく眠くなりましたが、よく考えたらいつものことなので、普段との違いはよくわかりませんでした。
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