9月、メキャベツの苗を植える
遡ること約半年、秋がメキャベツの育てやすいタイミングということで、園芸店でメキャベツの苗を購入し、母親が趣味でやっている畑に植えさせてもらった。
48円で安売りされていたメキャベツの苗に、その片鱗は今のところ一切ない。
メキャベツの苗。普通の大きさだ。
この苗のどこからメキャベツが育つのだろうか。
比較として普通のキャベツも植えてみたが、その苗とだいたい同じ大きさであり、松の盆栽のようにメキャベツがキャベツの小さく育ったバージョンではないことが証明された。
そういえば今はメキャベツの不思議さが気になっているけど、よく考えればキャベツの丸まっていく様子も不思議だ。
こっちはキャベツの苗。最初から丸まっている訳ではない。
10月、メキャベツの芽らしきものを発見
苗を植えてから約一か月が経過。すくすくと育ったメキャベツは、中央の太い茎からグイグイと葉っぱを伸ばしていた。
これは本当にメキャベツの苗だったのだろうか。なんだか青汁の材料になる野菜みたいだ。
植えてから一か月のメキャベツ。
私の予想では、真ん中の茎から小さなキャベツがポコポコと出てくると思ったのだが、どうやらそうではないらしい。
キャベツではなくセロリみたいに立派な葉っぱが生えてるな。君は千手観音か。
はて。ではメキャベツはどこから育つのだろうとよく観察してみたら、葉っぱの付け根の上側になにかがあった。
虫かと思ったがちょっと違う。
あれ、もしかしてこれがメキャベツになるのかな?
休憩中のアマガエルみたいだが、これがメキャベツの芽?
普通のキャベツの方も確認してみると、同じ場所に芽らしきものがあるが、こちらはとても小さかった。
縦に伸びずに横に広がっている普通のキャベツ。
こっちにも小さい芽があった。
メキャベツの成長を記録する
しばらくしてからまた覗いてみると、あの葉の付け根にあった小さな芽が成長していた。
やはりこれがメキャベツの正体らしい!
メキャベツは縦に延びるので、虫よけのネットをまくり上げてしまうな。
11月上旬、ものすごく小さなキャベツになっている!
11月中旬、葉っぱが重なりあって、よりキャベツらしくなってきた。
11月下旬、これはもう立派なメキャベツだ。
なぜそこにという場所に発生したメキャベツ、なんだかかわいいじゃないか。そこらじゅうに芽があるところは、妖怪の百目っぽいけれど。
今頃になってメキャベツの育て方を確認してみたところ(先に答えを知ると育てる楽しみがなくなるので)、どうやら「葉柄」からでた「わき芽」が「結球」して「芽球」となったのがメキャベツらしい。わき芽のキャベツだから、ミニキャベツではなくメキャベツなのかな。
そして日当たりや風通しを良くするために、もっと早い段階で、上の方を残して葉っぱをカットする「葉かき」をしなければいけなかったようだ。
葉かきをしたところ、なんだか魚の骨みたいになった。下の方にでているモワっと開いたメキャベツは、早めに「下芽かき」をするのが正解だったらしい。
葉柄のわき芽が結球したら葉かきをして芽球へと育てる訳か。知らない単語のオンパレードだ。すごいぞ、メキャベツ。
メキャベツは収穫が気持ち良い
このメキャベツがどこまで大きくなるのかがよくわからないため収穫のタイミングも謎なのだが、とりあえず育ちの良いものからどんどん食べていくことにした。
クキクキ、クキン。あ、これ楽しい。
残った葉柄が邪魔でハサミが入れられなかったので、指でつまんで捻りを加えてクキンと付け根を折って収穫するのだが、「おー」って小さく声が出るほどびっくりした。
このときの手ごたえが最高に気持ち良いのである。今まででの最高が食べ頃のタラノメだったが、メキャベツはそれを超えるかもしれない。
そういえばどちらも芽。そうか、私は若い芽を摘むことに悦びを覚えるのか。こう書くとすごく悪い人みたいですね。
これがメキャベツか。小さいなー。
あらためて収穫したメキャベツをよくみてみると、まさにキャベツのミニチュア版。オモチャみたいだ。
キャベツとメキャベツ、育ち方や大きさがここまで違うのに、その姿だけは同じという謎。ここにプチトマトや芽ネギの栽培では味わえない、進化のロマンを感じてしまう。
普通のキャベツってでかいなー。
これは収穫後のブロッコリーから生えてきたわき芽。メブロッコリーですね。
メキャベツを生で食べてみよう
さて収穫してきたメキャベツをこれから食べる訳だが、育てておいて申し訳ないけど、それほど味に期待はしていない。
今までの人生で食べたことが数回あるはずなのだが、その味はほとんど記憶にない。うまければ覚えているはずだから、まあそういうことなのだろうと。
とりあえず半分に割ってみると、淡い色の葉が折り重なって丸くなっている様は、まさにキャベツそのもの。こいつの成長過程を知っていると、つくづく不思議な野菜である。
瑞々しい。
とりあえずこれを生で齧ってみたのだが、普通のキャベツの外側にある、捨てるか食べるか迷うあたりの葉っぱの硬さと辛さと青臭さだった。
生で食べてうまいもんじゃないかな。
一応千切りにしもしてみたが、まさにミニマムサイズの千切りであり、口の中での存在感がおもしろくはあったが、特においしくはなかった。
スケール感のわからない写真になった。
火を通して開花するメキャベツの魅力
生がダメなら煮物はどうだろう。さすがにロールキャベツは無理そうなので、ポトフをイメージして丸ごと煮ることにした。
メキャベツの相方には、私が絶対的な信頼を置いているシャウエッセンさんにお願いした。彼ならきっとその魅力を引き立たせてくれるだろう。
若干のコンソメと塩で煮てみました。
食べてみるとこれがうまいじゃないですか。加熱によってグッと甘味が引き出され、青臭さがシャウエッセンに対する程よいアクセントとなっている。
そしてなにより、このギュッと詰まった葉っぱという他にはない歯ごたえがおもしろい。キャベツ丸ごとの食感なんて巨人じゃなければ楽しめないが、メキャベツなら誰でも体験できるのだ。まさに食のアミューズメント。メキャベツ、やるじゃないか。
たっぷりのバターで焼いてみよう
メキャベツさんに対する態度をコロッと変えたところで、続いてはバター焼き。贅沢にたっぷりのバターで揚げるように焼いてみた。
バターの海に溺れるように焼かれるメキャベツ。このサイズだからこその調理法。
これがまあすごかった。葉っぱの隙間にたっぷりと有塩バターを染み込ませ、パリッと香ばしく焼かれた一口サイズのキャベツですよ。そりゃうまいですよ。山菜っぽいほろ苦さがいいんですよ。
これもこのサイズだからこその味と食感。いやー、最初はどうやって食べるべきかまったく思いつかなかったけど、これは調理法を考えるのが楽しい食材だ。
これは止まらないやつだね。
メキャベツのフライは定番になるべきだ
続いてはもっとストレートにそのサイズ感を楽しもうと、パン粉を纏わせてフライにしてみた。メキャベツ丸ごとのフライである。
いつもは千切りになって横でフライを支えていたキャベツが、今日ばかりは主役として堂々の登場。こりゃ泣ける。
もう少し衣を厚くして中身を隠し、なにか教えずに食べさせたら楽しそう。
油とメキャベツとの相性の良さは先程確認済み。そしてキャベツはフライの恋女房。もちろんソースとの相性はバッチリ。ほら、完璧だ。
衣で封印されたメキャベツ本来の甘さがすごい。これはミックスフライの勢力図を大きく変える発見かもしれない。そして全ての串カツ屋で導入していただきたい。
春キャベツを超えるか、芽キャベツのスパゲティ
締めの炭水化物はスパゲティにしてみましょうか。春キャベツとベーコンのパスタならよく食べるけど、それがメキャベツになったことでどうなるか。
さっと湯がいたメキャベツを、オリーブオイルでベーコンと炒め、そこに茹でたパスタを加える。味付けは塩と胡椒、そしてアンチョビを少々。
メキャベツ、やっぱり存在感がおもしろいなー。
全体の味としては春キャベツとそんなに変わらないけれど、やっぱりメキャベツだからこその歯ごたえ、そして具としての存在感が素晴らしい。これはエビピラフのエビ、栗ごはんの栗に匹敵する存在感だ。
メキャベツとメカジキは、その味をもっと広く高く評価されていいと思う。
葉っぱが枯れると、より骨っぽくなった。少し残しておいて、ここからどう育つのかを見守ろうかな。
あと何があるだろう、メキャベツの料理。シンプルに串焼きや浅漬け、あるいはチーズフォンデュやグラタンも楽しそうだ。
メキャベツには八宝菜におけるウズラの卵みたいな、そこにいてくれることの嬉しさがある。育ててみるまでは積極的に食べようとは思わない存在だったが、今や大好物のひとつとなった。
売っているメキャベツは一回り大きいみたいで、買ってみたら「でか!」って驚いた。