なぜ厚くなるのか
二つ折りの名刺入れを使っている
そもそも名刺というのは1枚あげたら1枚もらうもので、だから名刺「交換」なのである。
そのため、なんど名刺交換を繰り返しても、名刺入れに入っている枚数は変わらないはずだ。
なのに名刺交換すればするほど名刺入れはパンパンになっていく。
最初は自分の名刺を二つ折りの名刺入れにピッタリ入れていたはずなのに、だんだん名刺の圧が高まり、二つ折りにできなくなってくるのだ。
もちろん途中で継ぎ足したりもしていない。なぜだ。
もしかして俺だけなのか
検証のまえに、ほかの人にも同様の現象が起きているのかきいてみた。
もしかしたら自分の勘違いということもありうるし、自分以外に起こっていなければ、あえてここで記事にする必要もあるまい。
手近なところで、同僚二人にたずねた。
「なるよ」(編集部・橋田)
「なるなるー!」(編集部・古賀)
古賀さんの過剰にノリノリなポーズでむしろ信憑性が下がっている気がするが、それは事後に改めて写真だけ撮らせてもらったからこうなっちゃったのであって、最初は「あ、なるなる」と神妙なトーンで言っていたことを補足しておきたい。
なんにせよ、ウラは取れた。みんな名刺入れが厚くなっているのである。これは検証に値する問題だ。理由を究明するのだ!
仮説1.名刺は交換すると厚くなる
いきなりオカルトみたいな仮説が出てきた。いや違うんです!交換すると厚くなるの、死ぬと21g軽くなるみたいな話じゃないんですよ。
最初に名刺入れに入れておく名刺って、まっさらの新品じゃないですか。でも交換の時に手に持ったり、出し入れする過程で、ちょっとヨレる。名刺入れの中で何枚も何枚も重なるなかでそのヨレが蓄積し、全体の厚みが増しているのではないかという説だ。
実験
この現象を確認するには、実際に新品の名刺を交換してみればよいだろう。
新品の名刺を財布いっぱいに入れる
厚みを測ってみると、19.7mm
名刺入れには47枚の名刺が入った。これを、全部交換してみる。
名刺を渡す→渡した名刺をいったん古賀さんの名刺入れに収納してもらった上で、次の名刺交換でまた取り出して返してもらう、という作業を47枚分
これで47枚、すべての名刺が交換されたことになる(1枚ごとに渡すときと戻ってくるとき、2回ずつの交換を経ている)。
結果
さあ果たして、名刺入れは厚くなったのか?改めて測ってみよう。ちなみに交換前は19.7mmであった。
19.6mm…
むしろ薄くなってる!!
正直、大本命のはずだった仮説なのに、全くの的外れであることがわかった。人は死んでも21g軽くはならないのだ。
仮説2.名刺の紙自体の厚さが違う
考えてみりゃそうかもしれない。枚数が変わらないのに全体の厚みが違う。それはつまり、個々の厚みが違うということなのだ。
実験
さきほどの実験で、自分の名刺を名刺入れいっぱいにつめたとき、入ったのはこれだけだった。
47枚。厚みでいうと19.7mm
無作為に選んだ47枚を、名刺入れに詰める。
2つ折りの名刺入れが、たためなくなった!!
見た目からすでに、かさが増えている。
厚みを測ってみよう。
23.4mm!!!
19.7mm→23.4mmということで、なんと4ミリ近く厚くなったのだ。
気づき
いよいよ検証も核心に近づいてきたが、ちょっとだけ寄り道をさせてほしい。
話をこの記事の冒頭に戻そう。実験の前に、僕は自分以外の2人から、「私も名刺入れが厚くなる」という証言を得ている。
編集部・橋田、古賀
いずれも僕と同じ編集部の同僚である。すくなくとも同じ会社に勤める仲間たちは、名刺交換により名刺入れが厚くなると感じている。
うん?同僚?同じ会社…?ということは……???
結論
弊社の名刺が薄い
弊社の、名刺が、薄い。これが結論であった。
「自分だけではない」から検証を始めたはずだったのに、最終的に非常にドメスティックな疑問であったことがわかり、恐縮しきりである。
ちなみにあとで正確に測ってみたところ、弊社の名刺は厚みが0.2mm、他社のは手元のものを平均すると0.27mmであった。計算上、3回名刺交換すると、自分の名刺1枚分、厚みが増えることになる。そりゃパンパンになるはずだわ。
社外の人の意見
ちなみに後日、一応ではあるが、社外の人にも名刺入れがパンパンにならないか聞いてみた。別件の撮影でニフティに来ていた、ライター玉置さんである。
玉置さん、名刺交換すると名刺入れ膨らみませんか?
「別に…」
あっそうですよね、失礼しました! アハハハハ…(乾いた笑いとともに体が21g軽くなる)
人類の半分
とはいえ世の中の半分の名刺は厚みが平均以下なわけで(平均とはそういう概念だ)、つまり人類の半分は「名刺交換すると名刺入れがパンパンになってくる」サイドの人間なはず。
ポリティカルコレクトネスの叫ばれる昨今、願わくば、パンパンになる人間とパンパンにならない人間がお互い憎しみあうことなく、ともに手を取り合い協力し合える平和な世界になるといいなと思う。(もうなっています)