簡単に作る方法から模索する
話は、まずおはぎを真っ二つにするところからだ。
おはぎの断面。予想以上でも予想以下でもない。ああ、こんな感じだろうなという断面。
この断面から、味も予想できる。餅のようなご飯のような、その中間の食感と、あんこの味。
ただ、ここで一つポイントがある。
米のご飯と甘い味の組み合わせを嫌いがちな日本人の味覚において、おはぎは、ほぼ唯一といっていいぐらいに許された「米粒と甘味」のコンビなのだ。
デパ地下ならどこでもだいたいおこわ専門店があるので、調達も簡単だ。
逆に言えば、おはぎの形さえしていれば、米と甘味の組み合わせが許されるのである。
じゃあ、白米じゃなくてもうちょっと違う状態のご飯でも、おはぎならアリなんじゃないか。
餅米を使っていて、白米じゃない食べ物と言えば「おこわ」だ。
おこわを使ったおはぎ、どうだろう。提案している自分が結構ドキドキしているのは自覚できている。それでもあえてもう一回提案する。おこわをおはぎ、どうだろう。
おはぎ、意外と簡単
おはぎというのは、先にも書いた通り、餅米を餅にするでもなくそのままでもなく、なんとなく中途半端な感じのままあんこでくるむというもの。
これだけラフな食べ物なので、もちろん作り方も適当で差し支えないらしい。
お赤飯を潰すとなんか結構な罪悪感がある、という豆知識。
まずおこわだが、そのままではちょっと米粒が固い。なんせ漢字で「御強」と書くぐらいだ。
実際ちょっと味見してみても「固いなー」という印象だったので、ちょっと水を振りかけてレンジにかけて、柔らかめに蒸し直してみた。
あとは、すりこぎで適当に米粒を押し潰してもっちり感を出し、軽く小粒のおにぎりぐらいのサイズに握れば、おはぎの中身となる。
対してあんこをべしょべしょと弄ぶのは、わりと楽しい。
今回あんこは自作したが、別に出来合いのパックや缶のあんこでも問題無い。
これをラップに広げて、先ほどのおこわを包み込むだけでおはぎ2.0の完成となる。
あまりにも手軽すぎてちょっと正解を疑ってしまうレベルである。
作るのは簡単だったが、食べる方はどうなることか。
ちなみに今回用意したおこわは松茸おこわ、五目おこわ、栗おこわ、お赤飯の4種類。
デパ地下のおこわ屋さんに並んでいたセットだが、奇しくも2種類が「美味いだろう」予測、2種類がチャレンジという半々の組み合わせとなった。
どれがどっちか、は言うまでも無いだろうが、まぁ松茸と五目はヤバげだ。
おはぎ2.0、実食
「ヤバげだ」とは言ったものの、おはぎにしてしまえば黒一色で見た目的な差は無い。
見た目は普通のおはぎだが、中身は次世代型。
差は無いというか、真っ黒すぎて見分けが付かない。
昨年ぐらいに、光の反射率0.03%で世界一黒い物質(ベンタブラック)というのが話題になっていたが、和菓子界で最も黒いのが、おはぎだ。
ちゃんとした和菓子だ!うまいやつ!
さて、一発目は安全牌部門の栗おこわおはぎをいただいてみた。
写真の笑顔で分かっていただけると思うが、これがなぜ既に和菓子として存在しないのか不思議なぐらいの美味さである。
柔らかめのもっちりした餅米とホクホクした栗と、おこわのうっすらした塩っ気が、おはぎとしてのクオリティを数段上に持ち上げてる感がある。
今後、栗おこわを作る機会があったら、ちょっと残してこれ作るな。
飲み込むのもためらう組み合わせ。これは良くないものだ。
さっき「真っ黒すぎて見分けが付かない」と書いたが、実は一つだけはっきり区別がつくのがあった。松茸おこわおはぎ、匂いで分かるのだ。
そして、松茸とあんこの甘い香りの組み合わせは、間違いを犯す予感に満ちている。
そしてそういう予感はだいたい正しい。松茸とあんこは、間違いだ。
みたらし風おはぎとして売り出せないか、五目おこわおはぎ。
意外だったのは、ハズレ枠としてエントリーしていたはずの五目おこわだ。
醤油の甘辛い味付けをしたご飯とあんこが一緒になると、ちょっとみたらし団子風の甘じょっぱい味になるのだ。
もちろん、ウマイ!と歓声を上げるほどストレートではないが、気まぐれに食べてみたら悪くないな、程度にはイケる。
具材の人参やタケノコもあんこに合わないわけじゃない。コンニャクなんか、むしろいいアクセントになる。鶏肉はそんなでもないけど。
クオリティ高いな、お赤飯おはぎ。
こんなものマズいはずがない、と初手から確信していたのが、お赤飯おはぎだ。
甘いあんこの層の下に甘くない小豆のポソッとした豆の味がして、あんことお赤飯の両方の味が引き立つ感じ。しかも小豆つながりで一体感も高い。これはこのまま市販できるレベルで満足できるぞ。そりゃ、
赤飯饅頭という先達があるのも納得だ。
できれば、一口かじった後はお赤飯部分にごま塩をちょっとかけると、なおいい。
とりあえず4種類のおこわを新世代のおはぎとして食べてみたのだが、結論としてまず分かったのは、おはぎ4つも食べたら腹パンパンになるな、ということだ。
実際、五目おこわおはぎのような甘じょっぱ系なら、おやつではなく、ごはんとしてのポテンシャルも充分にある。
おこわおはぎを主食にして、既存のレガシーなおはぎをデザートにする、という離れ業も不可能ではない。さらには朝食用のおはぎ、昼食用のおはぎ、夕食用のおはぎなどきちんと三食楽しめるおはぎも考えられるだろう。
参考までに買っておいたレガシーおはぎ、さすがにデザートには無理だったので、翌日以降にいただきました。