特集 2016年10月5日

ベトナムの看板フォントが縦長すぎる

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いきなりタイトルと関係ないっぽい話になるのだが、日本でのTwitter人気は世界においても高いらしい。
日本人の性に合っていたということもあるんだろうけど、日本語は文字数に対して情報量が大きいということもデカイ。140字という字数にいろいろ意味を込められる。ある研究によると、1文字あたりの情報量は中国語に次いで二番目なんだそうだ。対するベトナム語は圏外(27位以下)とのこと。
ここで話が変わるようで戻ってくるので聞いてほしい。
ある日、「ベトナム語の看板が縦長すぎる」ということに気づいた。
1984年大阪生まれ。2011~2019年までベトナムでダチョウに乗ったりドリアンを装備してました。今は沖永良部島という島にひきこもってます。(動画インタビュー

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なぜそこまで縦長に?ベトナムの看板フォントたち

ベトナムに住みはじめて11月で5年が経つ。ネタを見つける上でもっとも恐れていることが、「住み慣れてしまう」ということだ。付かず、離れず、一定の距離を保ちつつ暮らす。以前にポケモンGOの流行を取り上げたときも、編集・古賀さんと私の「歩きスマホが危ない理由」に対する解釈が見事に違っていた。
古賀さんは「人にぶつかって危ない」、私は「盗まれるから危ない」だった。
古賀さんは「人にぶつかって危ない」、私は「盗まれるから危ない」だった。
そんな訳で、これまで常に視界に入りながらもずっと認識できていなかったことがある。

おい、ベトナムの看板!君たち…フォントが縦長すぎないか!?
屋台も!
屋台も!
ホテルも!
ホテルも!
ドリアンまんじゅう屋も!
ドリアンまんじゅう屋も!
どいつもこいつも縦長すぎるだろ!!
どいつもこいつも縦長すぎるだろ!!
なお、こちらがドリアンまんじゅう。お茶請けにいいんです。
なお、こちらがドリアンまんじゅう。お茶請けにいいんです。
で、言っちゃうと今回はこれがすべてなんだけど、短すぎると記事にならないのであとはダラダラつづけていきます。嘘です、まだ最後にラスボス級の縦長フォントが控えています。サムネイル(一番はじめの写真)にもあえて出さなかったのでぜひ見ていってほしい。飛ばしてでも。

手書きですら縦長に引っ張られているんじゃないか

この通り、なぜか縦長すぎるフォントの看板だけど、どれもこれもフォント・タイプが似ている。もしかしたらこのタイプに限るのか?と思ったらそうでもなかった。
あれはミカンの屋台だが、
あれはミカンの屋台だが、
手書きの看板すらちょっと縦長。
手書きの看板すらちょっと縦長。
外資系のパン屋も、「意識してる?」と思ってしまう。
外資系のパン屋も、「意識してる?」と思ってしまう。
本旨と関係はないが、ヤドカリみたいなバイクがあった。
本旨と関係はないが、ヤドカリみたいなバイクがあった。

縦長じゃないフォントもある…?

しかしながら、すべてが縦長という訳ではないらしい。
街に出てみた。
建物の1/3くらいは…
建物の1/3くらいは…
看板で埋め尽くされているなぁ。
看板で埋め尽くされているなぁ。
あれ?こうして見ると、全体に対して縦長は決して多くないように見える…。いや、これは、二階以上の位置に縦長フォントが少ないってことなんじゃないか。法則性を読み解けないままに謎が深まる。
肉屋は普通。
肉屋は普通。
質屋も普通だ。
質屋も普通だ。
歯医者だって普通だね(看板そのものは普通じゃないが)。
歯医者だって普通だね(看板そのものは普通じゃないが)。
これらは…ただ単純に、文字数が少ないから1文字あたりの横幅が取れているという感じ。冒頭で書いた通り、ベトナム語は文字数に対して情報量が少ないため(あくまで日本語に比べてだけど)、その分だけどうしても文字数が必要になる。それを押し込めているから、こうも長くなるということか。
ここでバイクが壊れてしまったので、修理屋に駆け込む。
ここでバイクが壊れてしまったので、修理屋に駆け込む。
さっき買ったドリアンまんじゅうの中身。卵黄を囲むようにドリアンが入ってる。
さっき買ったドリアンまんじゅうの中身。卵黄を囲むようにドリアンが入ってる。
ドリアンまんじゅう。さっき「お茶請けにいい」と書いたけど、早速訂正したい。以前食べたものはかなりマイルドだったらしく、このドリアンまんじゅうはそのまんまネッチョ~リとしたドリアンが入っていた。個人的にドリアンは嫌いではないが、胃袋が想像以上にドリアン臭で満たされる。数時間経った今でもゲップがドリアンだ。

見方を変えれば、飛行機に持ち込めない(というより入国時の検疫に引っ掛かる)ドリアンをまんじゅうとして日本へ持ち帰られるので、ネタにしたいお土産としてはオススメしたい。十中八九、余るけど。

ラスボス級のクソ縦長フォントたち

そんな中、反対に長過ぎ、あるいはスペースが狭すぎて、とんでもなく縦長になっているフォントもあった。
小さな外国語学校のようだけど…
小さな外国語学校のようだけど…
うわぁ~!
うわぁ~!
縦長すぎだろ!二分割しても成立する長さだぞ。
下から見上げた方がまだ見やすいし。
下から見上げた方がまだ見やすいし。
そして、両サイドのフォントもすごい。
向かって右、こちらも大概の長さだが…。
向かって右、こちらも大概の長さだが…。
左!おい左!!
左!おい左!!
さらに一行あるからね!
さらに一行あるからね!
比べる意味はあんまりないが、iPhone(4S)の2.5個分はありそうです。
比べる意味はあんまりないが、iPhone(4S)の2.5個分はありそうです。
やっぱり見上げた方がまだ見やすい。
やっぱり見上げた方がまだ見やすい。
最後に、ベスト・オブ・縦長フォントを紹介します。
もうここまで来ると、本当に読ませたいのかと問いたい。
もうここまで来ると、本当に読ませたいのかと問いたい。
ここまで調べてみて、どうしてここまで縦長フォントが多いのかベトナム人の友人に聞いてみた。

縦長フォントの影には格安フォントと目立ってなんぼの世界があった

私 「なんでよ?」
友人「看板制作の業者があるんですけど、どこでも見かけるあのフォントは一番安いやつみたいですね」
私 「安めに抑えたい人はみんなそれで頼むってことか」
友人「はい」
私 「でも、なんで縦長なの?」
友人「それは…単に目立つからでしょ
私 「読みづらいじゃないか」
友人「よく読めば分かる」
私 「えぇ…あ、でも、そうかー」
ここで思った。ベトナムはバイク社会、みんなスピードを出して走り抜ける中で、体裁を整えた結果小さくなってしまったフォントなんて見向きもしないのかもしれない。そう考えると、たとえ読みづらかったとしても、少しでも大きくして興味を引く必要があるのか。
友人「ちなみに、90年代頃からだけど、薬局や写真屋とかの分類で看板の色やフォントが別れてるよ」
私 「えっ!そうだったんか…」
友人「以前政府が看板のフォントやレイアウトを規制化しようとしたことがあったんだけど、世間で『ダサすぎる』とボロクソに叩かれてお蔵入りしたことがあった」
私 「えー、どういう内容だったの?」
友人「英語ならベトナム語のふりがなを必ず振るとか」
私 「そりゃダサいわ、教科書かよ。ある意味で社会主義国っぽいけど」

スペースがあればとにかく埋めろ、それがベトナムフォントだ!

そういえば、ベトナムのウェブサイトも色や文字でガチャガチャしているものが多く、求めてもいないポップアップ広告がしばしば上がってくるんですよね。よくこれで平然としていられるなぁと思っていたのですが、この縦長フォントを見るあたりまさしく国民性だったのだと思います。レイアウトなんか知ったことか、描き入れられるなら描き入れるんだ!という、ある意味では野郎っぽい姿勢が窺える。

それも、ベトナムの商品や建築などあらゆるものが洗練される中で、いつかは淘汰されていってしまうような気がします。ベトナムにお越しの際には、今回紹介したもの以上の縦長フォントを探してみてくださいな。
近所にあったフォトコピーの看板、「P」がひとつ多くて「コッピー」になっていた。かわいい。
近所にあったフォトコピーの看板、「P」がひとつ多くて「コッピー」になっていた。かわいい。
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