特集 2016年10月4日

アルスエレクトロニカで顔が大きくなる箱

伝わりにくいですが、オーストリアにいます
伝わりにくいですが、オーストリアにいます
8月、東京のメイカーフェアで顔が大きくなる箱を展示した。9月にそれを持ってオーストリアに行ってきた。
オーストリア・リンツで開催されたアルス・エレクトロニカに出展したのだ。

結論から言うと東京に続いて大好評だった。

顔が大きくなる面白さは日本とオーストリアで共通である。
面白さの種類も地域も限定的すぎるがとりあえずそれを実感できた。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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アルス・エレクトロニカとはなにか?

アルス・エレクトロニカとはオーストリアの小都市、リンツで開催されるメディアアートの祭典である。
メディアアートなのでいわゆる油絵とか彫刻ではなく、コンピューターやプロジェクターを使った作品が展示されている。

例えばこんな作品である。
シャボン玉を出す巨大なラッパ(音も鳴る)
シャボン玉を出す巨大なラッパ(音も鳴る)
天井から床までの光る棒
天井から床までの光る棒
斜めの板の上をズリズリと動く石
斜めの板の上をズリズリと動く石
彫刻もあったが彫ってるのがロボットだった
彫刻もあったが彫ってるのがロボットだった
メディアアートは新しい芸術の分野だが、セレモニーには市長やEU議員が来て、みな正装で参加していた。ラウンジでカクテルとか飲んでたぞ。カウンターカルチャーではなく、超メインカルチャーだ。

また、アルスエレクトロニカでは賞を設けていて、これまでに日本からは明和電機、パフュームの演出をしているライゾマティクス、坂本龍一などが受賞している。つまり、このブロックで僕が言いたいことは「すごくちゃんとしてた」ということである。
セレモニーのステージ。年末ジャンボ宝くじの抽選会っぽいな、という感想である。
セレモニーのステージ。年末ジャンボ宝くじの抽選会っぽいな、という感想である。

なんで私がリンツに?

アルスエレクトロニカで我々は受賞したわけではなく(応募してない)、招待されたのだ。4月に大阪で開催したデカ顔マスクワークショップを関係者が見たらしく、最初はあれをやらないかという話であった。
ペーパークラフトで自分の顔を作るワークショップだ
ペーパークラフトで自分の顔を作るワークショップだ
しかし参加者ひとりあたり2時間かかるワークショップである。しかも説明はオーストリア人にドイツ語で行わなければならない。ありえない難易度である。
NHKプロフェッショナル仕事の流儀なら「林は、うけた」とナレーションが入るところだが、逃げた。

東京のメイカーフェアのためにレンズを使った顔が大きくなる箱を作っていたので、もっといいものがあるからと伝えて展示内容を変えてもらった。
そうしたらこんなのが来てしまったのだ。林、テクノ手芸部よしだ、安藤、べつやく
そうしたらこんなのが来てしまったのだ。林、テクノ手芸部よしだ、安藤、べつやく
4人で撮った集合写真がなかったので、ひとりひとりの写真をくっつけたらアウトレイジのポスターのようになってしまった。全員、デカ顔である。

オーストリア人も顔が大きくなると変顔する

デカ顔箱は合計18個用意した。ハプスブルク家のふるさとに行くのだからこれぐらい用意しておいたほうがいいだろう
(行く前にオーストリアの歴史を勉強した。しかし行ってから気づいたが、ドイツ語を勉強しておくべきだった)。
地べたにおいてご自由にお試しください状態にした
地べたにおいてご自由にお試しください状態にした
今回は顔が大きくなる箱の新作、4面バージョンも制作した。
どこから見ても顔が大きく見えるぞ
どこから見ても顔が大きく見えるぞ
正面の顔だけではなく、横顔、後頭部まで大きくなる。横顔はねっとりと振り向いたときが面白い。勢いあまって後頭部まで大きくしてしまった。

そして本番、9月9日から11日まで展示を行った。
3日間を通して我々のブースはこのような状態だった。
3日間を通して我々のブースはこのような状態だった。
知らない国の人たちがダンボールの箱をかぶって喜んでいるのを見るのは謎の達成感があった。去年、サンフランシスコで札束風呂をやったときも思ったが、オーストリアでも意識の低い海外交流ができてよかった。

上の写真でも右奥で僕がドヤ顔をしている。3日間で約500人が試した、と思う。
笑っているところを短い動画にまとめたのでどうぞ
女の子も
女の子も
男の子も
男子も
親子
親子
年配の夫婦も(オーストリアは年配の夫婦の仲がよかった)
年配の夫婦も(オーストリアは年配の夫婦の仲がよかった)
オーストリアのヘボコンオーガナイザーと
オーストリアのヘボコンオーガナイザーと
美女ふたり
美女ふたり
左の写真で僕の隣りにいるのはオーストリアのヘボコンオーガナイザーである。さすがヘボコンを主催するだけあってデカ顔箱もすっとかぶってポーズを決めていた。デイリーポータルZのライターになってくれないだろうか。

右の女性ふたりは美人だったのでテクノ手芸部よしださんが声をかけてかぶってもらったのだが(とんだ伊達男だ)、顔を大きくしてしまったのでわからない。
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身近な人の顔が大きくなると面白い

僕が箱をかぶって顔を大きくしているとみんな笑顔で寄ってくるのだが、やっぱり親しい人、恋人や友人の顔が大きくなると最高に笑うのだ。

日本でもそうだったが、お母さんの顔が大きくなったのを見た子どもはおかしくなってしまうのではないかと思うほど笑っていた。
でかい顔の自分の写真は人に自慢して欲しい
でかい顔の自分の写真は人に自慢して欲しい
子どもに大きくなった顔を見せる
子どもに大きくなった顔を見せる
デカ顔が親しい関係に入り込むとその面白さがブーストする。カラオケもプロよりも親しい人の下手な歌のほうが楽しかったりするけど、それだろうか。

たくさんの内輪受けを支援するものが魅力的なのだ。いいことに気づいた。

サービス精神が発揮される

そして顔が大きくなったときにみんなおどけた顔をするのも日本と同じである。妙なサービス精神が発揮されるのだ。
リンツでは寄り目が多かった。西欧では寄り目が変顔のスタンダードなのだろうか。
この写真を見ているだけで心理的な距離が縮まった。リンツって中央線沿線だっけ?と思うほどである。

あと、ウイーン少年合唱団みたいな男の子がものすごくこの箱を気に入ったみたいで、1日に4回ぐらいかぶりに来ていた。どこでも男子はアホで安心した。

トラブルがなかったわけではない

素晴らしいこと続きのアルス・エレクトロニカ出展だがトラブルがなかったわけではない。

1. ダンボールが届かない
デカ顔箱を作るためのダンボールを日本から事前に送ってあったのだが、通関で止められていた。「こんなダンボールだけを送るなんて不自然、売るんじゃないのか?」というのが伝え聞いた理由である。

ダンボールの転売なんかするかよ!と思ったが、近くのホームセンターでダンボールを買ってことなきを得た。最初からそうすればよかった。
バウハウス(すごい名前!)という地元のホームセンターの名前が入っているダンボール。
バウハウス(すごい名前!)という地元のホームセンターの名前が入っているダンボール。
ダンボールは追加の関税を払ってようやく届いた。

2. なに書いてあるのかわからない

話し言葉は英語がかなり通じた(タクシーの運転手やお店でも)のだが、注意書きのたぐいがすべてドイツ語なのだ。
「押してください」なのか「絶対押すな」なのかがわからない
「押してください」なのか「絶対押すな」なのかがわからない
説明が読めずに適当にボタン押したら溢れたエスプレッソマシーン
説明が読めずに適当にボタン押したら溢れたエスプレッソマシーン
あとは肝心の写真がないのにソーセージの写真ばかりあるとか、なんとなく撮ってもインスタグラムみたいな写真になることに驚いた。
ソーセージもポテトサラダもうまいのだが、パセリが驚くほどうまかった
ソーセージもポテトサラダもうまいのだが、パセリが驚くほどうまかった
デジカメのサンプル画像のような写真があくびしながらでも撮れる
デジカメのサンプル画像のような写真があくびしながらでも撮れる
トラブルがなかったわけでもない、と書いてみたが、書いてみたらたいしたトラブルではなかった。町の人は親切だし、タクシーは絶対にぼったくらないので安心な街だった。

デカ顔箱の詳しいつくりかたを公開します

デカ顔箱の作りかたを聞かれることがあるので詳しい作り方を公開することにした。
これを見て自由に作ってください。もちろんこの作りかたが正解というものではないので、レンズや箱の大きさを変えていろいろ試してほしい。

顔が大きくなる箱やその前のペーパークラフトもまとめてデカ顔プロジェクトということにしてサイトも作った。
懐かしいインターネットの雰囲気を残したデザインとなっている。

次はエキスポ、深センメイカーフェアです

顔が大きくなる箱、次の展示は10/16 デイリーポータルZエキスポである。外のイベントでばかり展示していて、肝心のホームグラウンドで見せてなかった。どうぞ遊んでください。

その次が10/21~23 深センメイカーフェア。中国である。デイリーポータルZから3~4名行くので、中国はもちろん、東南アジアにお住まいのかたはお越しください。
反射しない加工とか暗闇から顔だけ浮かび上がるバージョンとか改良中です
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